2019/01/20 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城 談話室」にギュエスさんが現れました。
ギュエス > 夜も更けて、しんと静まる王城の談話室の中、その巨体を小さな椅子に乗せた男は夜食を貪っていた。
その傍らには黒髪のメイドを携え、こんがりと狐色の、バターと砂糖をたっぷり使った焼き菓子を頬張っては、湯気立つ紅茶で押し流す。
――ゴルトムント伯ギュエス。この国の政務を司る一人である男は、その恰幅に相応しい行いを楽しんでいた。

「いやはや、こうも寒いと熱い茶と菓子が実に美味い。何せ全身が震えて熱を生まんとしておるからな。
 ――して、シゼルよ。休憩の間に夜食を食うのは良いが、何かこう、我が無聊を慰める者はないのか?」

問われたメイドはくすりと笑みを浮かべると、いつの間にやら羊皮紙の束を取り出して。
うちの数枚を捲りながら、考えるしぐさを見せ、後にわざとらしく嘆息を一つ。

『父様、残念ながら、今夜は可愛らしい娘も艶やかな女性も、捕まえられておりませんわ。
 嗚呼、私の体などでよろしければ、父様のお望みのままに弄んでくださいませ、といつでも差し出しますのに』

本気なのか冗談なのか、どちらとも取れない情念を込めた娘の声が部屋に響く。
対する男は、眼前の皿の上で美味しそうに艶めく菓子に手を伸ばしながら。

「――シゼル、お前だけはどうにも、女として見れないから仕方あるまい。何せ、おしめを変えたこともあるのだからな。
 それにしても……普段であれば、街に繰り出すのも一興だが、今日はそう言う気分にもなれぬ。少し待つこととしようか」

口元に菓子を運び、齧り付く。練り込まれたナッツを噛み砕きながら、男は割と上機嫌だ。
その横のメイドも、自らが焼いた菓子を美味そうに食べる主人兼父親の様子を眺めながら、何とも満足そうである。
傍から見れば、なんて事のない親子の対話。しかし、それもこの部屋に哀れな獲物がやってくるまでの事。
もし仮に足を踏み入れる不運なものがいるならば――少なくとも、恥をかかずにはすまないだろう。