2019/01/02 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城」にサロメさんが現れました。
サロメ >  
───綺麗に片付いた王国軍第七師団の執務室
その執務机で、サロメはいくつかの書類を前に眉を顰めていた

手元にあるものは所謂報告書
束になったそれは人によっては目を通すのも億劫だろう
幸い長年あの将軍の下で副官を務めてきたサロメにはそれは苦ではなかった、が…

「…さて、どうしたものかな……」

ばさりと書類を机において、大きな溜息が口元から漏れた

サロメ >  
前将軍、オーギュストに命じられ魔族の国の軍勢を調査していた第七師団の者からの報告書
それは十分に衝撃と困惑を伴う内容だった
裏付けと共に公表すれば、王国軍の軍資金が大きく拡充されそうな程に

「…"翼ある獣"。
 主戦力はデーモン、オーガ、オーク…サキュバス…。
 将軍ラボラスの指揮と能力による神出鬼没の奇襲、隠密行動が可能……か」

厄介だ、という言葉に尽きる
そもそも王国軍側が魔族を相手に優勢に立ち回れるのは特化戦力の存在と、
魔族側の戦力にまともな指揮系統がなかったことが大きな事由となる

サロメ >  
「………」

机に置かれた書類を見下ろすように、視線を戻す
報告にはまだまだ続きがあり、指揮を執る将軍ラボラスの保有する能力
主力部隊数の大凡の数、威力偵察は不可能だったという報告
そして、あくまでも連中の行動が砦を落とすまで、という記述が為されている
それだけの力がありながら、タナールを落とした時点で防衛に専念、もしくは即時撤退
その理由は…サロメは識っている、が…この国でその言葉を口にするには、些か覚悟が必要となる

「(王国領に実質的な被害が出ないのであれば、上も重い腰を上げないわけだ)」

机の上に丁寧に重ねられた、羊皮紙を手に取る
それは、地図のようだった

───魔族の国の地図
以前オーギュストが回収したものと合わせれば、魔族の国の多くの部分が解明されたことになる

サロメ >  
王国軍第七師団の立て直しは完了
まだまだ練兵が浅いとはいえ、初陣は勝利で飾った
新生第七師団としての実戦経験の薄さは他の師団との協力で補う

「他の師団長に礼を言ってまわらないとな」

やれやれ、と椅子から腰をあげると壁にかけてあったマントを羽織り、執務室を後にする

入り口を守る王城の兵に労いの言葉をかけ、渡り廊下へと踏み出す

──何も変わらぬ王城の姿
自身の立場や、王国軍周辺には大きな変化があった筈なのに
その波紋は世界にとっては影響はまるでないに等しい

「…そろそろ石の一つくらい放っても、文句は言われなさそうだな」

口元へ、小さな笑みを浮かべる

サロメ >  
まずはタナールを落とす
第七師団指揮下で砦の保全を行い、その先は…
やはり、魔族の国へと打って出るべきなのだろう
翼ある獣も、仮面の軍団長も
どちらも砦よりこちらら側へ進軍はしてこない

だからといって防衛に徹していては、必ず後手にまわる
それは、結果的に人間側の被害を増やすことになる

──という、お膳立てで良いだろう

実際にはそこには個人的な思惑があり、同時に旧第七師団全体の疑問の解決へと繋がる
前将軍・オーギュストが本当に魔族の国で戦死を遂げたのかどうか…ということ

遺体も遺物もない葬送で全てを諦めた気になれるような、物分りの良い団ではない
気づけば、そこに身を置くうちに自分もそうなっていたというのには、少しばかり驚いたが

サロメ >  
先ずは現状からの脱却
本来ならば魔族の国への侵攻失敗による責任を問われ、
第七師団自体完全に解体されていてもおかしくなかったところを、
他の師団長からの働きかけもあり、存続への道が残された
しかしそれはあくまでも王国貴族の監視下という条件つき、以前のようにはいかない

───廊下ですれ違う、貴族の男に恭しく一礼をし、通り過ぎるのを待つ
そう、現状のままでは第七師団も自分も、王国貴族達の言いなりにならざるを得ない

状況を覆す、大きな戦果が必要だ
"翼ある獣"…そういった意味ではお誂えとも言える

サロメ >  
他に適材がいないということもあって前将軍から引き継ぐ形で師団長の椅子へと座ったが、

この国で"女伊達"を通すのは難しい
それは、これまで王国軍の中で生きてきて重々に理解している
故に自身を鍛える、力をつける、結果を出す───

再び、グリーブを鳴らし絨毯の上を歩み始めれば、同じ鎧に身を包む騎士がその後隣へと追随する

「伝令しろ」

歩きながら、周囲には聞こえないまでもしっかりとした言葉

「新生第七師団はタナールを確保し次第、魔族の国を攻める。
 目的は魔族の軍勢の討伐、及び…オーギュスト前将軍の足取りの追跡。
 決行は、一週間後だ」

親衛隊長らしき女騎士は小さく了解の言葉を呟き、廊下の別れ道で別の方向へと足早に歩いてゆく

「───さて…私にお前の真似事は似合わんだろうから、好きにやらせてもらうぞ」

やがて中庭につくと足を止め、吹き抜けの曇り空を見上げ、そう言葉を漏らした

ご案内:「王都マグメール 王城」からサロメさんが去りました。