2018/10/27 のログ
ご案内:「王都マグメール 第十二師団執務室」にノワールさんが現れました。
ノワール > 女はいつものように、書類に目を通していた。
ここのところ、寒くなってくるのと比例して暖房器具の輸入が頻繁に行われるようになる。
九頭竜山脈付近で作られている綿花の輸出、その動きがどうもおかしい。
数が多すぎるというのもあるが、その輸出をとある企業が独占しているとの情報を手に入れた。
その報告書に目を通しながら、少しだけうなるように思考を巡らせた。
こういう時には決まって、どこかの貴族が裏で糸を引いているのだが。

「…………この貴族がこんな独占を…、妙だな…。
ウダヤール家の商談は確か…主に貴金属に使われる宝石類のはずだったが…、綿花にも手を出し始めたのか?
いや、ありえん……あそこの農地は確か……。」

この貴族は、金山を持っているという話は以前から既知している。
だが、その貴族が綿花に手を出し始めたという話は聞いてはいない。
勿論、そんなことを報告すぐ義務などないが、ここに絡んでくる取引にはきな臭いものを感じた。
女はベルを鳴らし、侍女を呼んでとあることを指示する。

「シャノーゼに、ウダヤールの取引に纏わる資料を集めるように言ってくれ。
もしかしたら武器の輸入に関することが出てくるかもしれん、くれぐれも慎重にな。」

貴族が力を持ちすぎると、必ず腐敗を招く。
女が懸念していることは、力を持ちすぎた貴族がいずれ訪れるであろう王政に関して。
その武力を傘に自分に有利に働かせようとすること。
それを阻止するために、極力貴族が力を持つことを阻止するのだ。

ノワール > この一件に関しては調べてからでもいいだろう。
武力や私兵団に関しては、そうしないとおそらく結論を出すことはできない。
書類を机の傍らに置き、女は次の書類に目を通した。
その瞬間、仮面の奥でかなり嫌な顔をした。
なんのことはない、貴族による定例会議の出席届けであった。

「……まったく、また嫌味三昧でもいうつもりか…。」

貴族の取引を悉くつぶしている十二師団への出席事例。
そんなもの、貴族にしてみたらただ単なる嫌味三昧を言うためだけに呼ぶようなものだ。
もっとも、一部の貴族にしてみたら、競争相手をつぶしている十二師団は利用価値がある。
そんなふうに思われているかもしれないことも自覚している。
敵であり味方であると、そういう認識をされていると、そう自覚している。

「……はぁ、仕方がない。……出てやるか。」

どうせ、他の師団も出てくるだろう。
だからということはないが、十二師団の団長が出なくてどうするかとは思う。
騎士団長という肩書がある以上、こういう会議には必ず出席しなければならない。
気は進まないが、後日行われる会議に出席するという返事を、あとで出しておくか。

ノワール > この書類も傍らに置いておく。
家に帰るときにでも、これを提出しておけば問題はなかろう。
もっとも、召集を受けて集まる騎士団はどれだけいるのか。
その返答次第では、正直無視してもいいだろうと、そう思う。
少なくとも、第十三のは来るだろうが、第七のは来ないかもしれない。
またあれとワインでも飲むか、そんなことを思いながら、次の書類に目を通した。

「…………ああ、この間のか。」

うちので手柄を立てた新米の、その後の報告だった。
まず、その報告から調べを進めていたのだが、あの男が言ったことは全くの出まかせだった。
そもそも、あの地域にいて貴族のつてがないものが、わざわざそんな大それた物を見せびらかす。
それがなんだか違和感を覚えて、調べを進めさせていたのだが。
調べを、といっても貴族の粗探しをする程度ではあったが。
その結果報告を受けて、女は少し仮面の下で笑っていた。

「貴族詐称罪……こいつはちょっと重罪だな。」

まあ、短くて5年かと、女は笑った。

ノワール > 「さてと……仕事も終わったし。」

目の前の書類は片づけた。
もう女が、ここに残る理由もない。
何かあれば、何かしらの手段で呼びつけてくるだろう。
会議の出席届を破り捨てて、女は奥の部屋へと引っ込んでいった。

ご案内:「王都マグメール 第十二師団執務室」からノワールさんが去りました。