2018/10/24 のログ
■ラキア > 「て、き…………」
敵、味方。
分かりやすい言葉である筈だが、己にその概念は無い。
ただ、お仕事の邪魔をしてはいけない、ということだけは、辛うじて知識として。
そういえば、己自身に課せられているお仕事、については、
すっぽりと頭から抜け落ちているようだった。
多分、それはおもに彼にとって、幸いなことである筈だけれど。
「ラキア、人間のことはよく、分からないの……。
でも、お仕事は大事だから、邪魔しちゃだめだから、
ブレイドは、ブレイドのお仕事、して?
ラキアは、大丈夫……痛いのも、寒いのも、怖いのも嫌いだけど、
―――――でも、平気」
だって魔族の身体は、人間よりもずっと壊れにくい。
だからそう言いながら見せた笑顔は、強がりでは無く本心からのもの。
ひた、ひたと触れられていると、何故だか肌よりもずっと奥の方が暖かくなって、
無意識に腰が蠢いてしまうのだが。
「……ラキアの、して欲しい、こと……?」
そう尋ねられて、きょとりと瞬き。
大切なお仕事のことを思い出しかけて、それを口に出しかけて、
けれどそのとき、扉の向こうから音が聞こえた。
未だ遠いけれど、覚えのある足音だ。
心なし、血の気の引いた顔を強張らせて。
「ブレイド、……誰か、来るわ。
このままじゃ、ブレイドが叱られちゃう」
早く、外に出て、なんて、きっと言う必要も無いだろうけれど。
足音は少しずつ、近づいてきている。
■ブレイド > お仕事をしてという彼女。
つまりは彼女の見張りなのだが、そこのところがわかっているのだろうか?
健気にも痛みや恐怖に耐える姿…
そんなものを見ていれば、その仕事を放棄してしまいたくなるのだが。
「お前なぁ…寂しかったり寒かったり
そういう目にあってるのを見張るのがオレの仕事だぞ?
いやだろ?そんなのさ。
オレだって嫌だしよ」
少し呆れたように、少女の頬から髪を撫でて
彼女の言葉が紡がれるのを待つ。
だが、響く足音はそれを許さなかった。
「ちっ…間がわりーな……。
ちょっと外に出る。わりーけどよ。
えーと、またな。できりゃ今度は外でといきてーけど…
ここにいれば、また見張りに来るだろうしよ」
正直心苦しい。だが、外に出ねばこちらも危うい。
彼女に目隠しを付け直し…少しばかりと鎖の高さを微妙に下げておくことにした。
それから素知らぬ顔で外に出るだろう。
■ラキア > 当然の如く、彼の言うお仕事の中身なんて、ロクに分かっていなかった。
彼がそこのところを説明してくれるのを、やはり、首を傾げながら聞いて。
「でも、……ブレイドが居てくれると思ったら、きっと、
ラキアはもっと、平気になると思うわ」
普通の少女の思考回路では、到底弾き出せない結論であろう。
しかし生憎、己は普通の少女では無かった。
暖かい手と優しい声の、この少年が扉の向こうに居てくれるなら、
ほんの少し、心強いような気がした、だけなのだが。
けれど、優しい時間は長く続かない。
彼にとっての雇い主、が戻ってくるのなら、この時間は秘匿されねばならない。
目隠しをされる前にもう一度だけ、じっと彼の顔を見つめて。
「ブレイド、……お仕事、頑張って、ね。
ラキアも……頑張るから」
そうして、もと通りの暗闇が己を包み込む。
先刻よりも少しだけ、体勢が楽になった気がしたけれど―――それも、
己をここに閉じ込めた人物が戻ってくるまでのこと。
その人物がお楽しみの前に人払いをするのなら、彼は解放される。
けれどもし、彼をギャラリーとして望んだなら、そこから先の時間は、
己にとっても、彼にとっても、辛い時間になったかも知れない。
夜明けは未だ遠く、暗闇に果ては見えない。
響き渡るのは悲鳴か、嗚咽か、それとも嬌声であったか―――――。
ご案内:「王都マグメール王城 地下尋問室」からラキアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール王城 地下尋問室」からブレイドさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」にラキアさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 王城」からラキアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール王城 地下尋問室」にラキアさんが現れました。
■ラキア > ――――がくん、と膝から崩れ落ちかけると、腕や手首、鳩尾辺りへ痛みが走った。
声にならない悲鳴を上げて目を開け―――た心算だったけれど、視界は黒く覆われたまま。
暫し、よたよたと踏鞴を踏んでから、何とか両脚を床につけて体勢を保つことに成功すると、
泣き叫び過ぎて嗄れた喉を、ざらつく吐息が震わせた。
しん、と静まり返った部屋の中、今は己一人である様子。
昨夜と同じ、後ろ手に括られた状態で、ローブの胸元と裾が大きく引き裂かれ、
半分以上露出した乳房を縊り出すように、上下に縄を打たれて吊るされた格好。
足許には昨夜、散々噴かされた愛液の水溜まりが、未だ乾き切らずに残っていた。
いったい、どれぐらい意識を飛ばしていたのか。
覚醒を促したのは苦痛だったけれど―――再度、意識を手放すことを許さないのは、
どうしようもない渇きだった。
昨夜、たっぷりと苛められ、潮を噴かされたのに、男の精を与えて貰えなかった。
だから、熱は身体中に燻ったまま―――飢えて、渇いて、堪らない。
昨夜とは違う理由で、嗚咽が込み上げてきていた。
誰か、―――誰か、お願い。
そう、声に出す余力さえ、もう絞り出せないほどに。
ご案内:「王都マグメール王城 地下尋問室」にヴィンセントさんが現れました。
■ヴィンセント > やってしまった。
暗い石造りの回廊を進みながら、後悔とも悪態とも言えぬ感情を抱えていた。
――事の発端は半刻ほど前、用事があって王城へと入った際に「うっかり」この間の貴族と鉢合わせてしまい、咄嗟のことで気絶・・・もとい無力化してしまったのだ。
そのまま慌てて遁走、気が付けばこのようなところへ迷い込んだ始末。
恐らく今は目を覚ましたであろう貴族が血眼になって自分を探しているはず、階段を上るのは自殺行為であろう。
ならばと半分開き直り周囲の探索を始めるのだった。
「しかし、嫌な場所だな――」
かつん、かつん――踵の音が反響し何人もが歩いているような、そんな錯覚さえ覚えてひどく居心地が悪い。
やがて回廊の突き当たり、木製の扉に封された部屋の前へたどり着く。
「何もないな――ン?」
不意に、視界に入ったのはこのような場所においてはありえないはずの半開きの扉。
不注意か、それとも罠か、鍵も掛けられていないそれは無用心にも。
――扉を開ける。
ぎいぃ、と軋むような音を立てて開けられた扉、その先に待つものはだだっ広い石畳と、四方を囲うように配された蝋燭、そしてその中心――逆手に縛られ、立っているのがやっとの様子の少女。
薄がりと、向きから顔のほどまでは見えないが酷く衰弱しているように見える。
「おい、大丈夫か――今解いてやるからな」
当然のように、突き動かされるように、少女の元へ歩きよりながら声をかけてみる。
そのまま腰に差した短剣でロープを切り解いてしまおうと抜きながら。
■ラキア > ―――何処かから、靴音が聞こえる。
それが近づいて来たとしても、己にとって良いこととは限らないことを、
もう既に嫌というほど知っている己は、それでも軽く唇を噛み締めただけで、
身構えることさえ出来ずにいた。
部屋の前で止まる靴音、軋むような物音は、そう、扉が大きく開かれるときのもの。
澱んでいた室内の空気に、僅かな流れが生じる。
甘い香りを纏った風が、そよりと廊下へ流れ出て―――
ぞく、と背筋が粟立つ感覚に、危うく喘ぎ声を噛み殺した。
「―――だ、れ………?」
やっとの思いでそれだけ、声に出せた。
俯いた顔を持ち上げるのさえ億劫で、目隠しをされたままでは、
どうせ声のする方を向いたところで何も見えはしない。
「解、く………?
だめ、……ラキア、は、ここに、居なきゃだめ、なの、
でないと、………で、ないと、――――」
逃げたらどれだけ酷い目に遭うか、については、もう、たっぷり教え込まれていた。
だからこそ、折角の親切だけれど―――悲痛に掠れた声が、懸命の訴えを絞り出す。
■ヴィンセント > 「――わかった。取り敢えず解くのはナシだ、な?
それよりもお前さん喉カラカラだろう、掠れた声が痛々し過ぎるぞ」
ナイフを止める少女の言葉は余りにも痛切であった。
ラキア、と名乗る少女の置かれた環境が如何程のものであるか、正直なところ図りかねるところがあるが、それでも搾り出すような声を無碍にするのもまた、違う気がしては短剣を鞘に収め――代わりに腰に提げた水筒を取り出し、少女の口元へ差し出す。
「ラキアか、俺はヴィンセントだ。人攫いの悪いミレー族だ。
・・・水だ、飲むといい。目隠し、取るぞ?」
掠れた声に苦笑いしながら名前を返す。
同時に空いた手を少女の後頭部へ差し向けつつ、頷くのなら取り去ってしまいその瞳を覗き込むように目を合わせようと。
嫌がられれば・・・行き場をなくした手は苦笑と共に己の後頭部をかりかりと掻くだろう。
■ラキア > 「の、ど――――……」
確かに、喉は渇いている。
相手の考えるのとは、少し違うベクトルの渇きではあるけれども、
喉が焼けつくような痛みを宿しているのも、また事実。
半ば反射めいてこくん、と頷く仕草は、見た目よりも幼げに映るかも知れず。
唇に触れた水筒の口から、なんの警戒も疑念も持たず、与えられるままに水を飲み。
「ん、………んく、……っ、ふ………、
―――ヴィ……ン、セン、ト……?ミレ、ぇ……って、
………なぁ、に………?」
ここが人間の住む場所であることは分かっている、けれど、
ミレーという種族のことも、彼らがおかれている立場のことも、
己は何ひとつ知らなかった。
目隠しが取り去られたところで、数度の瞬きに次いで彼を見つめ返す瞳は、
きょとん、と丸く見開かれていて。
なぁに、と妙に間延びした調子で尋ねながら、いっそ呑気ともとれる仕草でまた、
そっと首を傾げてみせるのだった。
■ヴィンセント > 紫の――まるで水晶のような瞳が、覗き込む緑を映す。
「ああ、ヴィンセントだ。長ければヴィン、でもいいぜ。・・・なんだ、ミレー族知らないのか?
・・・あー、一言で言えば俺みたいにちょっと獣っぽい奴のことさ」
反射的に頷き、こくこくと喉を鳴らす姿は幼げな印象をより強くさせてまるで小児を相手にしているような気分になる。
自ずと、口調もまるで“近所のお兄さん”のような砕けた様子になっていく。
言葉にあわせ自身の耳を、身を捻っては尻尾をそれぞれ見せながら自分の種族についてざっくりと――現状おかれている立場については伏せたまま、説明する。
口が離れたことを確認し蓋を閉めた水筒を再び腰へ吊るす。
「それでだ、ラキアは何でこんなところに吊るされているんだ?
居なきゃダメって言っていたが――」
大方言い終わってしまったが、途中言いよどむ。
あの様子では恐らく一度は脱走を試みたことがあるのだろうか。
そして、相当な仕打ちを受けたのだろうか。
男の心にドロのような黒い感情が生まれるのを感じる。しかし、そんなことは後回しだと、顔に――目に映らないように注意しながら少女を今一度俯瞰する。
綺麗な青銀の長髪とあどけなさを残しつつもどこか熟した雰囲気の貌は、引き裂かれ冷気と甘気にさらす白と桜のコントラストと相まって異様な色気を醸しだす。
――正直、目のやり場に困るのが本音である。
恐らくは普通の――この国における普通が如何な者かはさて置き、男であればこの様な姿を見ては、無防備を晒されれば手のひとつやふたつも出るだろう。
無論、この男もまたそういった正気のような色気に中てられて理性が薄まりかけてはいる。それを危ういところで押し留めているのはお節介と、あくまで助ける側として動けているからである故か。
■ラキア > 「……ヴィ、ン……ヴィンの、お耳……ふかふか、なのね」
うずうずと、身体のなかで荒れ狂う疼きとはまた別の衝動が、
眼差しの先で揺れる深緑の毛並みに覆われた耳や、
己の腿に絡みつくものとはまるで違う、触り心地の良さそうな尻尾を見ていると、
―――触りたい、掴みたい、ナデナデしたい、などと。
それはちょうど無邪気な幼子が、犬猫のたぐいに抱くと同じ衝動だった。
悲しいかな、戒められたままでは叶う筈も無く、僅かに指先を蠢かすに留まるけれど。
そして―――説明には素直に頷き返したが、理解したかどうかは怪しい。
「ラキア、は……悪い子だから、ここに居なきゃだめなの。
逃げたりしちゃ、いけないの……見つかったら、いっぱい、痛いことされるの」
相手の心の機微を察する敏さも持たぬ身、問われればそっと項垂れながら、
訥々と、出ては駄目な理由を口にする。
昨夜、繰り返し浴びせられた脅し文句や責め苦を思い出して―――じわりと、
身体の芯が蕩けてしまいそうな感覚に、刹那、息を詰めてから。
「……それに、ね?
良い子にして、待って、たら……今日はね、いっぱい、可愛がってくれる、って、
……だから、ラキア、良い子にしてる、の」
まるでそれが、最高のご褒美だと言わんばかりに。
可愛がる、という言葉の意味を、彼がどう捉えるかは知れぬ。
しかし、それを己に告げた人物が意図するところは―――きっと、ロクなことでは無い。
それでも、うふふ、と嬉しそうに笑う表情は甘ったるく、やはり幼く、
しどけなく晒された肢体の艶めかしさとはどこまでもアンバランスに。
■ヴィンセント > 「ああ、俺の耳や尻尾はふさふさのふかふかだ。あったかいぞ」
恐らくさっきの説明は、少女の頭まで届いては居ないのだろう。
それを追及することはせず、逆に尻尾や耳をぱたつかせて少女の目を興味を惹く。
「――、そうか」
少女の口から出た言葉は、概ね予想通りのものだった。
周りから見ればおぞましい、吐き気すら催すものであれど、それしか知らないのであれば、それが至福といわんばかりの笑顔は危うげで、だからか妙に男の欲を煽るのだろう。
結果口を衝いたのは、短い一言だけであり。
男には分かっているのだろう、目の前に居る少女は生半可な気持ちで手を差し伸べてはいけないものであると。
今一時の感情で動いてしまえば少女も、そして自身もろくな結果が待っていないことを。
――己の無力と、中途半端な知性を呪う。
救出するだけの“力”も、無謀で居られる蛮勇さも、どちらも持ち合わせられない事実に、男は憮然とした溜息を漏らすだけだった。
「それじゃあ、大人しくしていないとな」
ぽん、と一度だけ頭を撫でる。
その後取り去った目隠しを再び少女へ取り付けその視界を奪う。
その姿にどうしようもなく欲情してしまっている自身に、心の中で舌打ちを挟みつつ。
おそらくこれ以上は自分の理性が持たないことを察してしまっている。
出来るものなら、このまま立ち去ってしまおうと。
■ラキア > 「………いいなぁ」
ぽつりとそれだけ呟いたのは、足許から忍び入る寒さの所為だったか。
触りたいけれど触れない、―――何故か、触ってはいけないもののようにも思えた。
ぱたぱたと揺れる深緑色に、ほんの一瞬、羨ましげな眼差しを向けて。
「―――うん。
だから、ね、……でもね、――――……」
ここに居なければいけない、という、その部分が揺らぐことは無い。
けれどほんの少しだけ―――引き留めてしまいたいような、
そんな衝動に駆られるまま、口を開きかけたけれども。
頭を撫でられ、落とされたひと言に、再び口を閉ざしてしまう。
こくん、とまた小さく頷いて、視界を覆う暗闇を受け容れて。
飢えも渇きも、鎮まる気配は無い。
けれど、それを和らげて欲しい、満たして欲しい、と訴える術を、
己は未だ持ち合わせていなかった。
だから―――ただ、唇を柔らかく撓ませて微笑んでみせ。
「ヴィン……
もし、また、どこかで会えたら、
……お耳と尻尾、ラキアに触らせてね?」
だからせめて、そんなおねだりをひとつ。
優しいひと時の終わりを悟って、彼が立ち去ろうとしている気配を察して、
―――それでももし、イエスと答えてくれたなら。
目隠しの下から覗く頬に、鮮やかな赤みが差すことだろう。
ばいばい、と囁く唇も、きっと、甘く綻んだままに―――――。
■ヴィンセント > 「ああ、その時は飽きるまでモフらせてやるさ。
――じゃあなラキア、またどこかでな」
少女が何かを言いかけたが、時既に遅し。
おねだりに快く答えれば踵を返し、扉の方へと歩き去っていく。
軋んだ音を立てて開く扉。
振り向くことなく足を踏み出せばそのままぎぃと音を立てて扉が二人を別つ――。
■ヴィンセント > お疲れ様でした。ご縁があれば、また。
それでは失礼します。
ご案内:「王都マグメール王城 地下尋問室」からヴィンセントさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール王城 地下尋問室」からラキアさんが去りました。