2018/10/03 のログ
■ヴェルム > 「涼しい鎧とか作ったら一儲けできそう。
まぁでも気をつけてね」
やっぱり夏もそれだったのかと驚きつつも冗談を。
正直夏にその格好で冷静な判断ができるのかとか、脱水症状で死んだら威厳も何も無いような気がするとかいろいろ考えたけれど。
夏の間はティルヒアの鎧に一度も袖を通さなかったどころか、半袖で過ごしていたようなこの師団長には何も言うことは無かった。
「僕は適当にあしらったり媚び売ったりしてるだけだからねぇ、やり返せるだけ羨ましいよ。
いらないならここで一緒に飲まない?」
十三師団が上の連中に噛み付けるはずがなく、そんなことをすればたちどころに解体されてしまうだろう。
ウチには清廉潔白な人員など数えるほどしかいないのだから。
彼女が手土産を断ると、向かいの椅子に無遠慮に座り開けるから飲まないかと誘ってみよう。
「そうか、ティルヒア絡みなら少しは手を貸せるかもしれないから、遠慮なく言っていいよ。
あそこも別に一枚岩ってわけじゃなかったからね」
見られて困るものではないと言われたので、ずうずうしくも書類に目を通していく。
なんらかの密輸品の取引相手はティルヒア…そういうことをしそうな名前にはいくつか心当たりがあった。
■ノワール > 「肝に銘じておくよ。まあ、部下にも同じことを言われたけどな。」
いつもその格好だけど、たまには脱いだらどうなのかと。
同じように返して、そしてこの女がこの椅子に座る時間が短くなるだけだ。
やり返すというよりも、貴族が阿呆なことをしてこの国を腐らせたのだから、少しでも。
いい方向にしようとしているだけだとは、口が裂けでも言わなかった。
ただ、苦笑いで答えるだけだ。
「…そうやって、私の子の仮面をとるつもりのようだが、そうはいかんぞ?」
かこん、と口元だけ仮面がはがれる。
ちゃんと飲み食いできるように、改良を加えられている仮面から見える口元は笑みを浮かべていた。
向かいにある、ソファに腰掛けるように促すと、一言「いただこう」と告げた。
「……貴殿は、ティルヒアに所縁があるのか?
だったら…ティルヒアの魔法の力について少し聞きたい。」
どうやら魔法の力を持つ何かを密輸した…ということらしい。
その報告を受け、それらを取り調べているのだが。
■ヴェルム > 「ふふ、僕も人の格好にそう口出ししたりはしないよ、よっぽど変でもない限りは。
まぁ、ノワールがいよいよ倒れたときのために取っておこうか」
今更ヴェルムが言わんでも、部下から小言のように言われなれているのだろう。
リアリストなきらいがあるヴェルムに取ってみれば、国の腐敗の原因は貴族のみならず、現状に甘んじる平民や嘆くだけの奴隷にもあると考えている。
少なくともそういう考えを口にすることはないし、ましてや目の前の彼女が国を良くしたいという理想主義的な考えを持っているなど思いもしていなかった。
「ああ、別にそんなつもりじゃ……便利だね…」
当初は手土産のつもりだったので、素顔を見たいとかそういう気持ちは無かったのだが、言われてしまうと確かに見たことがないなと。
少し期待はしたが、仮面の口元だけが外れる仕組みに色んな意味で驚いた。
つい便利だと口に出したが、普通に脱げばいいのではと思ってしまってもいた…。
「まぁ、出身地だしある程度の政には関わってたし。
分かる範囲であれば答えるよ、ここ数年は戻ってないからティルヒアの現状についてはわかりかねるけど」
ソファに促されればそこに腰掛けボトルを開ければ、用意されたグラスに白ワインを注いでいく。
芳醇で香り高く、程よい酸味のある味が楽しめるだろう。
王国に帰順しているヴェルムは、例の動乱以降一度もティルヒアに戻っていない…そのためかの国の情報は人づてに聞いたものに限られていた。
■ノワール > 「だろう、特注品なんだ。私が騎士団の団長になった時にな。」
身体が大柄だし、顔を見られなければ女に見えないから。
さらに、背中に大剣など背負っておけば、うっとうしい貴族の下卑た笑いを誘わなくて済む。
もっとも、おかげでいろんな仕事を押し付けられる便利屋となり下がったわけだが。
その抵抗として、部下にも徹底的に自分の強さを知らしめることに成功させ、完全な一枚岩の師団を作り上げた。
「…そうか、前年のティルヒア戦争はいろいろとめんどうだったと聞く。
貴殿がそこに携わっていたならば、少し聞きたい。
かの国には、人の精神を狂わせる魔石などというものがあるのだろうか?
もしくは……武器に応用できるもの、とか。」
報告書を手に取り、ワイン片手に仕事の話をする。
報告書の一文に、何かしらの武器のコアにできる魔石がこちらの国に輸入された経緯がある。
だが、ティルヒアとの取引は現在全面的にとは言わないが、非推奨。
特に武器に代用できるものは、シェンヤン帝国の反感を買うものとしてあまり良しとしない。
それを密輸入しているとしたら、これは完全に調査しなければならなくなるのだ。
■ヴェルム > 「ちょっとカッコイイと思ったよ」
鎧の騎士は男の子の憧れでもあったりするが、それに加えてカラクリまで仕込んでいるとなると仄かにロマンを感じざるを得ない、特注品ともなれば尚のこと。
もっと色んな仕組みがあるのではないかと、改めて鎧をじろじろと見てしまう。
「まぁいろいろあったよ。
人を狂わせる魔石か、魔力の高い人間が石に呪いや願いを掛けてできるものもあれば、人の思念を封入して作り上げるものなんかもあるけど、ティルヒアに限った話じゃないかな。
武器への応用なら尚更、高純度の魔導鉱石が採掘されるのは知ってのとおり、それを加工し武具にエンチャントすれば質の良い武具が出来上がるだろうね」
ノワールの質問に対し、とりあえず知っている範囲での解答を述べる。
彼女が具体的に何を調べているのかはさておき、少なくともヴェルムにはティルヒアについて隠し立てするところは少ない。
エールを煽るようにしてワインを飲みながら、彼女の質問に答えていこう。
■ノワール > 「知りたいなら教えてやろう、この鎧は魔鉱石という素材で作っている。
全財産をつぎ込むことにはなったが…それだけいいものだぞ。」
少しの衝撃なら跳ね返せてしまうし、特に魔族との戦いにおいては非常にいい働きをしてくれる。
大きな衝撃でも耐えうることが出来るし、何より思っているよりも重くない。
ただ、熱を逃がさないので暑いのは困りものだがな。
そんなふうに、誇らしげに話しながらワインに口を付けた。
「ふむ……上質ではないな。けど、庶民出身の私にはなじみの味だ。」
こんな酒のほうがいい。
笑って、のどに流し込んだ。
「なるほどな……、加工次第では武器にもなりうる…か。
その技術を持ち帰った人間は、この国にいるのか?
いや、人間とも限らないな……ミレー族、亜人何でもいい。
あの戦争から生き残った技術者は、どのくらいこの国に流れているのか…。
そして、その人物を囲い込んだ人物がいるのか…わかるだろうか?」
その上に貴族がいるならば、ほぼ確定だ。
あとは証拠を押さえることが出来れば、騎士団の私物化を防ぐことはできる。
そして、あわよくばその貴族の位をはく奪し、王国への反逆を未然に防ぐことも可能。
それが、この女の考えだった。
「ヴェルム、私はこうして貴殿や、他の友人と酒を飲むのを邪魔されるのが大嫌いだ。
それを防ぐ意味でも、貴殿からの情報が欲しい。」
■ヴェルム > 「…なるほど、冬用の鎧としては破格の性能と値段だなぁ。
少なくともウチの懐事情じゃ一式用意するだけで冷や飯かな」
金銭的な問題があるわけではないが、潤沢でもないためしばらくは望めなさそう、まして特注品など頼んで上から何を言われるかわかったものではない。
それに一応、今使っているティルヒア騎士の鎧にも愛着はあるし、物理及び魔術的な防御力も水準よりは高いほうだ、無論彼女の鎧には遠く及ばないが。
「あ、わかる?年代物を好む…って感じでもなさそうだったからさ。
ワインでも通ぶって飲むより軽く呷る方が僕も好きだよ」
ワインを気に入ったらしい彼女の様子に、ヴェルムも一安心。
高くもなく安くもない中堅ワインだが、王国ではあまり出回らない品ではある。
「加工業者とはいい目の付け所だね。
あの動乱でかなりの数の技師が流れて、大半はシェンヤンに渡ってる。
正確な数はわからないけど王国にも確実に流れてるだろうね」
もう一口、ワインを飲めば改めて彼女を見よう。
その兜に隠された表情は間違いなく真剣だろうし、眼差しは真摯なものだったかもしれない。
「僕も堅苦しい話しながら飲む酒より、笑いながら飲む酒のほうが好きだよ。
…一人、ティルヒア技師の仕事と思われる剣を持った貴族を知ってる、剣の感じからして最近の作品だと思う」
■ノワール > 「私もしばらくは、禁酒の節約生活をおくったがな。」
騎士だから、無条件に安定しているわけではない。
そんなことを苦笑しながら言って、ワインのグラスを開けた。
エールも嫌いじゃないが、ワインの独特な酸味と口当たりのいい甘みは好きだ。
ここにチーズでもあればいいのだが、あいにくそんな上品なものはない。
だから、こうして友としゃべりながら飲む酒のほうが、性に合っている。
「……そうか、その情報はかなり有意義だ。
今、部下にそのあたりを調査させている…その技師にたどり着くことが出来れば大当たりだな。」
その情報だけでも、しっぽをつかむことが出来る。
勿論時間はかかるだろう、しかし確実な方法だ。
口元に浮かぶ笑みは、どこか勝利を確信しているような笑みだった。
再び、フルフェイスで口元を隠して。
「はぁぁ…まったく、余計な仕事を増やさないでもらいたいよ。
ただでさえ、ここ最近は魔族の攻撃のほうも考えなければならないというのに。
ヴェルム、貴殿の十三師団の精鋭を私に貸してくれないか?」
そんな冗談を言いながら、今日はしばらくは談笑にいそしもうではないか。
他愛のない話から何から…しばらく、この男と語り合うのも、悪くはない。
ご案内:「王都マグメール 第十二師団執務室」からノワールさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 第十二師団執務室」からヴェルムさんが去りました。