2018/09/01 のログ
■バルベリト > 髪の毛から飛び出ているのは緑色の濃い青草。
或いは飼料のあまりなのか、色素の落ちた白っぽい枯れ草。
黒い髪の毛の土台から見れば、目立ちすぎるだろう。
まるでアフロヘアの様になんとなく髪の毛の量が増えているようにも見えるかもしれない。
掛けられた声に気がつくのは丁度スコアも表示される頃か。
聞き覚えのある声だが、それ以上に自分の名前に様、の文字が入るとどうしても落ち着かない。
声に振り向くと、干草の様に細い先端が肌に浅く刺さると産み出される紅い湿疹の様な点が浮かぶ顔だった。
「おう、紅月。久々だなぁ。刺身も日本酒も美味かったあの日以来か。元気そう――元気だよな?元気じゃねーとちょっと困る。」
掛ける声音、向けられている視線がどこに向いているかは何と無く判る。
女性が自分のどこを見られているのかを感じ取れるように、男もまたどこを見られているかは何と無く理解出来るからだった。
頭を振り払ったり、草を払わないのは相手が其処に興味を見出していると見たからか。
ことん、と軽い音は訓練用の剣を元有った場所に立てかける音。
刃がついていない関係で割りと持ち出しは自由になっていたりする。
自分の大剣に比べれば小枝とまではいわないが、軽く使いやすい鉄の棒と見れば、まぁ武器にはなるかもしれない。
「後、様は禁止な禁止。むず痒くなってしょうがねぇし。」
■紅月 > いやぁ、青々と茂るグリーンがファッショナブルだなー?
これがホントの"ミドリの黒髪"ってか、なんつって!
…同じギルドの冒険者相手ならば、そのくらいの冗談かましつつケラケラ笑ってやるだろうが。
あくまで、相手は上司である。
「おー、元気元気。
…その後別件でちょっとした好奇心に負けて、なんというかちょっとアレなトラブル抱えてるけども」
あははー、っとユルく笑いかけながら男に近付く。
…ムズ痒そうなのは湿疹だらけのようになってる赤い痕のついた御尊顔の方では、というツッコミは気合いで飲み込みつつに。
「えぇー…?
そしたら、そうさなぁ…"ベリさん"と"リトさん"、どっちがいい?」
困惑、後、やたらフレンドリー。
元々長めの名前の人にはホイホイとニックネームを付けてまわっている紅娘、数拍考えたわりには何とも、様付けとの落差の激しい事に。
けれども、その表情は何だか嬉しげで…本来上下だの何だのと得意では無さそうなのが伺えるだろうか。
「……ぶふっ。
ご、っごめ、っ…やっぱ無理っ!!
ちょっ、大惨事!御髪が大惨事だからっ!」
我慢しようと思った、努力はした…した、が、もうこれは仕方ないと思うの。
むしろ笑わなきゃ失礼な気さえする、見事なヤラレっぷりだ。
…スッ、と、男に手を伸ばす。
もし避けられなければ髪やら頬やらについた雑草の残骸をぱさぱさチョイチョイと払ってあげよう。
■バルベリト > 「冒険者ってのはどうしてこう好奇心に耐性ねぇんだ…いや俺も相当だけどよ。
んー?トラブルってのは面倒なやつ?一人で解決できる類か?」
緩い性格、飄々としてるように見えて妙に義理堅い側面がある。
上司だとか細かい事は気にならないだけに、並べられた二つの呼び名に大変難しい表情をしてみせる。
ランチでデザートは濃厚な甘味か、さっぱりと甘い味わいかを悩む様に。
眉根は寄せられ、悩んでいるのだろう、うぅむ、という呻き声ももれている。
「え?その二択しかねぇの……?
普通にバルベリトとかでいいんだけど。戦場で妙な呼び名で呼ばれたら、それだけで集中力途切れるぜ?」
相手の問い掛けに答える、その頃。
何か爆笑している相手――理由は判る。ゴーレム相手に情けない姿を見せた事か、と。
誤解を抱きながらも続けられた声は、御髪。髪の毛?聞きなれない呼び名だが、手が伸びてくるも逃げようとせず。
払われていく様々な草。頭から払われると肩や装備品に降りかかる。
「おー、サンキュサンキュ。
いやこれ結構難しいんだって!くっそ笑われるのはしょうがねぇけどよ!」
彼女は正式な騎士というわけではなく、確か客将扱いだった。
一応利用は出来るだろう。難易度はやや低い状態に設定されるだろうが――果たしてそれを使うかどうかは彼女次第。
久々に体を動かした為なのか、どっかりと地面に腰を下ろすと――日光降り注ぐ中ではあるが、壁の陰に入る事で暑さは幾分和らいで感じられる。
「トラブルって方に話もどすけどよ、呪とか病気とかか?そういうのなら遠慮せず騎士団の医療班…って紅月に言うのも変な話だけどよ。」
■紅月 > 「いやたぶん逆だよ逆…好奇心に耐性ないド阿呆が危険地帯に率先して突っ込んでって、それをマトモな人が見ると冒険野郎になる、と。
ん、ぅ…解決、解決ねぇ……たぶ~ん?」
顔の前で軽くフリフリと手を振って、己の予想を述べる。
結果的に自分をアホだと言っている事になるが…実際自業自得な事態になっている辺り、やっぱり私ったらアホの子なのやもしれない。
…とりあえずトラブルについては一旦置いといて、結構真剣に悩んでるらしい男の顔をニヤニヤと見上げて。
「…ん?やぁ、だってさぁ?
戦場ではどうせ、周囲へのケジメも考えて"バルベリト殿"って呼ぶし…のんびりの時はのんびりがいいな~、なんて?」
まだ爆笑の余韻を残しつつ…頭から払えば肩、胸板を覆う革鎧、と払おうにも細かい草は隙間に入り込むしキリがない。
…それがまた笑いを誘うのだが、頑張って堪える方向にしておこうかと思う。
「もうコレ一旦脱いで払った方がい…っふ、んんっ……いいかもね?」
笑い上戸に笑いの我慢はむずかしかったよ…とばかりに、途中で一瞬噴いたのを咳でごまかして。
はて、詳しい仕組みなんかは全く訊かずノープランで来てしまった故に…やってみようか凄く悩む所。
何せ"ミスするとこうなる"という見本をしっかり目に焼き付けてしまったが故に。
…きっと青々とした草は紅にも映えるんだろう。
鍛練そのものにも心惹かれるものの、そもそもこのゴーレムに組み込まれているであろう術式や仕組みなんかも気になる。
色々と興味が尽きない。
「…あ、戻しちゃうんだ?
いやぁそのぅ、あー…九頭龍の温泉宿のさ、ちょっぴり怪しいバイト募集してるじゃない?
風呂好き仲間とネタで請けてみて、その時魔導機械に暴走されまして。
…神餐節からずっと媚薬が抜けないんだなーこれが」
思わず苦笑しながら話す。
■バルベリト > 遠くより聴こえるのは己を呼ぶ声。
会議も無いというのにわざわざ呼びに来るのは余程の理由か、面倒事か。
「あー、悪ぃ。紅月…なんか呼び出しみてぇだわ。
って、九頭龍の温泉宿ってあの張り紙か。つーかお前、んな怪しげなモンに首突っ込むなよ…。第二師団辺りなら魔法治療。
んー、俺じゃ精々媚薬を抑える毒薬を少量飲む手法しか勧めらんねぇなぁ。」
媚薬が長期間抜けないと言うのはなんとも難しい話だし、厄介な事だろう。
――と、思う。普通に媚薬のイメージは拷問で使う類の物だと思っているのだから。
そんな物が抜けないのでは――苦痛や苦労の方が濃いのではないか、と。慮る様に向けた視線。
自分を呼ぶ声が少しずつ近付いてきている事もあり、慌てた様に立ち上がり――。
「毒草ってなそれ相応に体を活性化させる。
ま、毒を抜く力を高めて媚薬を抜くってモンだな。んぁ、すまねぇ。
どーも厄介事の呼び出しみてぇだ、そろそろ行くわ。今度はゆっくりと話をしてみてぇもんだ。」
ご案内:「王都マグメール 屋外訓練場」からバルベリトさんが去りました。
■紅月 > 「あらまぁ、やっぱり将軍ともなると忙しいのねぇ…?
ダメなんだよねぇ…あそこまで怪しいと逆に気になって気になって。
案の定アレなやつだったけど、ま、イイ勉強にはなったしなぁ」
何だか微妙な視線をもらってしまった。
けれども女は呑気かつお気楽にケラケラ笑っていて。
…どちらかと言えば、好奇心に勝てない気質の方が問題なのやもしれず。
「毒を以て毒を征す、か…幾つかやってみるかなぁ。
…あ、いやいやありがとう!
そうねぇ、またそのうちお茶でもしましょ」
慌てた様子の将軍様に軽く手を振って。
…背中に葉っぱ付いたままだけど大丈夫かなぁ、なんて、逆に心配してみたり。
とりあえず、折角だから。
「よっこいしょー…」
っと立ち上がり、植物のゴーレムとの鬼ごっこに興じはじめたのだった。
ご案内:「王都マグメール 屋外訓練場」から紅月さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城/地下」にルビィさんが現れました。
■ルビィ > いったい―――――もう、どれぐらい経ったのだろう。
数時間に過ぎないのかも知れない、あるいは、何日も経っているのかも知れない。
時間の感覚が曖昧になっているのは、ずっと地下に留め置かれているから、か。
床も壁も天井も石造りの、堅牢であることだけが取り柄のような空間。
ドレス、どころか衣服とすら呼べなくなった絹の残骸を、辛うじて腰の辺りへ纏いつかせ、
女は現在、天井から伸びる頑丈な一本の鎖に、金属の枷で纏められた両手首を括りつけられ、
背伸びしてやっと足がつく、という高さへと吊るし上げられていた。
黒い布で目隠しを施されていることも、口に猿轡を噛まされていることも、
今の己にはもう、どうだって良かった。
ただ、―――――飢えて、渇いて、こんな女にも一応は残されている筈の、
理性の軛が崩れ落ちてしまいそうだ。
こんな真似をして、こんな風に己が身を貶める者になど、決して跪きたくはないのだが―――――
牢獄の中に充満する、噎せ返るような花園の芳香。
そろそろ限界なのだと、本能が訴えていた。
ご案内:「王都マグメール 王城/地下」にルヴィエラさんが現れました。
■ルヴィエラ > (其れは、まるで水の上に滴を垂らすかの如く。
部屋の中を満たす数多の影が、闇が、波紋を広げた。
女が其の気配へと気付くかは判らぬ、判らぬが、「其れ」は確かに
女の朦朧とする意識の中へと、まるで堕落の蛇の如くに囁きかけるだろう。)
『――――此処から、出たいかな?』
(其れは或いは、危機に瀕して心が求めた幻聴の様な言葉
けれど確かに、其の脳裏へと響いた其の言葉は、女へと問う。)
『――――出たいのなら、出してあげよう。
だが、その代わり――対価は、必要だがね。』
(誘惑めいた声、其れは、女が此処に囚われてから
幾度かは対峙しただろう、主犯の貴族とは違う音
まるで、女の本能を、或いは、充満する芳香に煽られた情欲を
つま弾き、擽る様な力を以て、選択を迫るのだ)。
■ルビィ > 堕落というなら、そも、堕ちる所まで堕ちた身と言えなくもない。
だからその声が耳に、というよりも頭に届いた時、返答を躊躇う要素など、
本来、無い筈ではあった。
しかし―――――女の身にも流れている、闇に属する者の血が。
この『声』は危険だと、瞬時に警報を鳴らす。
緩く瞬き、項垂れた頭を僅かに起こして、周囲の暗がりを窺い見ながら。
続く言葉を聞くと、ごく自然に、紅の褪せた口角が吊り上がる。
『……随分、御親切なお申し出ですこと』
猿轡に言葉を封じられているが、恐らくこの相手ならば考えるだけで、
己の意思は伝わるものと判じた。
声帯を介さずとも、その『声』には確かに、皮肉気な色が混じるだろう。
『勿論、こんな所、あと一秒だって居たくないわ。
でも……生憎だけどあたし、男に借りは作らない主義なのよ』
『声』の主が男か女か、姿も見えぬ今は不確定ではあるが。
女の己に対価を求めるならば、やはり男なのだろう、と漠然と。
『言葉』を発するだけで充分に、肉体は消耗してしまうのだが―――――
少なくとも、何も考えず飛びついてしまわぬ程度の理性は、未だ残っていたようだ。
『あなたはあたしを此処から出して、あたしから何を奪う気なの?』
それを聞くまでは、相手を救世主とは思えなかった。
■ルヴィエラ > (くすくすと…仄かに笑む気配が、伝わるやも知れぬ。
己に対する警戒心を、この最中に於いて露わとするなら
――きっと、其れは正しい反応、本能こそが察知した危機だろう。
女が思い浮かべるだけで伝わる会話は、誰かに聞かれる心配は無い様だ
再び、脳裏へと声が響く。)
『――成程、其の主義は結構な事だがね。
だが、無条件で此処から逃がす…などと甘い言葉の方が
この場に措いては、余程信用出来ないと思うのだよ』
(こんな場に現れて、危機に陥った女を善意と無償によって救う、等と
そんな取引にすらなって居ない甘言は、単純に好まないのだ、と、声は告げる
其れは、女の嘯く皮肉めいた言葉と同系色のソレ、か。
ともあれ、女が問い返した取引の、対価の中身には
間を措かずにさらりと、答えが返される筈だ。)
『――君の一日を貰い受けよう。 それと、君自身との繋がりもだ。
何、大した事では無いよ…私と言う存在を、知って貰えれば良い。』
(それは、とてもとても、判り易い筈だ。
この先どれだけ続くかも判らぬ拘束を、一日に縮めると言うだけの事
其れは単純に、正体も判らぬだろう己か、其れともあの貴族かを選ぶ
ただ、其れだけの事だと、告げて)。
■ルビィ > 女が普段、僅かなりとも纏っている虚飾の部分は、ドレスと共に剥ぎ取られて久しい。
しかしだからこそ、より鋭敏に、本能が、危険を察知する能力が、
外の世界に在る時よりもずっと研ぎ澄まされていた。
『信用……?』
なんて、可笑しなことを言うのだろう。
こんな場所へ、理由も知らされず閉じ込められて嬲られている女に、
未だ、誰ぞを信用することが出来ると思っているのだろうか。
口を封じられてはいるけれど、女の白い喉が、くく、と小さく鳴った。
『………つまり、あたしに、今夜犯される相手を、何方か選べ、って言ってるのかしら。
あの、いけ好かない成金の豚野郎か、顔も見せずに戯けた提案をしてくる男か?
―――――どっちもどっちね、そんなの』
それとも―――――と、目隠しの下で紅玉が瞬く。
『まさか、お手々も繋がない純情なおデートがお望み、って訳じゃないでしょう?』
だとしたら、お門違いも甚だしい。
己の中に流れる血を隠そうともしない芳香の中で、女はまた咽喉で笑うのだ。
■ルヴィエラ > 『そう、信用。』
(改めて、頷いたみたいにそう言いのけて見せては、笑う
無論、正確には笑った気配が伝わるだけだろうが
其れは、何処か冗句めいた響きで。)
『――おや、其れは失礼。 姿を現さないのは、私なりに気を遣った心算でね。
何せ、私が君を見つけたのは偶然だ、囚われて居る事情も知らぬ存ぜぬ
ただ――其処に美しい女が居た、誘すには其れだけで十分な理由だ。』
(己を取り繕う様子は、欠片も無い。
そして次の刹那、囚われながらも豪胆な姿勢を崩さぬ女の
今度は脳裏では無く、其の耳元で。 鼓膜を揺らす声音が、小さく鳴り響いたと同時
女の体躯を絡め取る様に、両の掌が殆ど裸身と為った肌の上を這い
其の胸元を、其の下腹を、柔く捕えて掌握すれば。
露わと為った闇の気配だけで絡め取り、其の身に流れる闇の血脈を沸騰させ
理性をも、意思をも、そして何よりも先に身体をも
――鮮烈な発情へと導いて行く、か。)
――――……初めまして、お嬢さん。 私はルヴィエラ…、……君の名は?
(――名前を、問う。
女の背に、温かな、紛う事無き雄の体躯を感じさせ
下腹を、ぎゅう、と柔く揉み込もう――その奥に、息衝く器官を、拉げさせる様に)。
■ルビィ > 信用だの、気遣いだのと、囚われの身たる己にはどれもが薄ら寒く聞こえ、
此度は態と、誰とも知れぬ相手に聞かせる為だけに、喉を鳴らして笑ってやった。
『ちゃんちゃら、可笑しいわ……。
あなた、随分と―――――』
事情なぞ知らぬ、と言う割に、随分と自信有り気な。
常になく荒んだ精神状態の己にとっては、無性に癪に障る―――――。
しかし、そこで突然、己の周りを巡る空気の色が変わった。
背後から耳許へ、確かに生きた男の声、息遣いを聞いた、と思う間も無く、
凝縮された濃密な闇が、己の身体を包み込む。
無防備に曝け出された胸の膨らみへ、それから、襤褸布の裂け目から覗く下腹へ。
触れられる、と反射的に腰をくねらせ、振り解こうとした時には、もう、
煮詰められた糖蜜にも似た闇の気配が、女の泣き処を捕えていた。
即ち―――――極上の餌を求めて啜り泣く、雌の本能の在り処を。
「ん、ぐ――――――――っうぅ゛、ん、む、んんん゛………!」
頭上の鎖を高く打ち鳴らしながら、闇に囚われた女の背がきつく反り返る。
洩らした悲鳴は猿轡の下でくぐもってしまったが、今や背後に在る相手の耳には、
切羽詰まった雌の啼き声がはっきりと聞こえただろう。
触れた闇の中からでも、少しでも餌を奪おうと身悶えながら、
柔く拉げた子宮から絞り出されるやに、滴り落ちる愛液の飛沫で床を叩いて。
『もう、良い、もう、分かった、から……攫うなら、早く、して頂戴……!
でないと、あなたの子種……この、紅玉が、根こそぎ、吸い尽くしてやるわよ……!』
これ以上は、もう、我慢ならなかった。
相手から放出される芳醇な闇の香気に触発されて、己の中に宿る闇が、
誰彼構わず牙を剥こうとしている。
ルヴィエラ、と名乗ったこの相手が、今直ぐ、己を攫ってくれぬのならば、
己はきっと、もう理性も矜持も無く、今を限りと暴発させた蠱惑の力で、
偶々地下に降りてきただけの無関係の男でも、この場へ誘い込んでしまおうとする筈。
剥き出しにされた飢餓感は、そうでもしなければ到底、収まらぬところまで来ていた。
常々名乗る偽名すら、口に出来ぬほど追い詰められて―――――。
■ルヴィエラ > (――腕の中で、女の身体が撓り、反り返る。
猿轡によって秘められた唇から蕩けた声音が漏れ出すならば
後頭部の留め具を、かち、としたか、或いは歯先かで緩める気配が在るだろう
程無くして、きっと言葉を戒める器具は外れ落ちて仕舞う筈だ
けれど、恐らくは其れよりも先に――女の身体が、ふわりと微かな、浮遊感を。
最早、秒刻が進む度に女の身が、女の血が、燃え立つ様に侵されて行く。
元よりこの牢獄の中で、餓えに餓えて居た女の身には酷だろう疼きは
僅かな猶予すらなく理性を奪い、本能を引き摺りだして行く。
そうして、追いつめられた女の唇から、攫えと訴えが響くなら
紡がれた其の名を一度、其の耳元で呼び直し。)
―――……紅玉…、……ふふ、其れは随分と愉しみな事だ。
少しばかりふわふわとするやも知れないが、心配要らない…溺れたりはせぬよ。
さて――…捕まって居て貰えるかな?
(予告めいて紡いだ、攫う為の宣言。
未だ視覚だけは閉ざされている女には、まるで、ずぶずぶと泥濘の中へ
深く沈み込んで行くような感覚を、暫し与える事と為るだろう
するりと、両腕を戒めていた手首の金具が、まるで手品の如くに圧迫感を無くし
重力に従って、女の胸元まで落ちるなら。
影の中へと飲み込まれて行く二つの身体が、牢の中から消えてしまうのは、直ぐ
――誰も、気付かぬ其の異変。
巡回の兵が、もぬけの殻となった格子の中に気付く頃には
其の身は、何処かへと攫われて――)。
■ルビィ > 欲しい、飲みたい、喰らいたい、しゃぶり尽くしてしまいたい。
頭の中で明滅する願いは、ひと言ごとに獣じみた欲求に形を変えて、
轡がぼとりと落ちる段には、その唇は閉じることを忘れたように、
浅ましく銀糸を伝わらせながら、荒い呼吸を繰り返すまでに。
己の身体が、重力の軛から解き放たれた気配。
戒めがひとつひとつ取り除かれるごと、己の中に押し込めていたものが、
紅く濡れた血の色をした渇望が、全身から見えぬ霧と化して迸り、
恐らく真面な神経の持ち主であれば、瞬く間に色狂いの廃人と堕ちても可笑しくない、
狂暴なまでの魅了の力を、周囲へ撒き散らし始めていた。
その中で意識を保ち、未だ、愉しみだなぞと言える相手は、恐らく。
喰らわれるのは、絞り尽くされて膝を折るのは、果たして、何方か―――――
「う………る、さい、もう、黙って……、
早く、して、早く、あたしを……、あ、あ゛―――――……」
もう、短い罵言を浴びせる間さえ惜しい。
目隠しの奥に隠れた紅玉の瞳は爛々と濡れ輝き、凝縮した闇の化身へ縋りつく指先は、
意識せずに深く爪を立ててしまう。
そうして、その場に濃密な花の香りだけを残して、虜囚たる女の姿は何処ぞへと消えた。
女の行方も、その後の顛末も、知るのはこの世にただ、二人だけ、と―――――。
ご案内:「王都マグメール 王城/地下」からルビィさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城/地下」からルヴィエラさんが去りました。