2018/07/10 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城」にノワールさんが現れました。
■ノワール > 王国騎士団・第12師団の師団長の執務室。
その場所の中央に位置している、執務用の机の上には書類が山と積まれていた。
その書類と格闘しているフルフェイスの女は、机の上でそのくぐもった声で上への文句を垂れていた。
こんな仕事は別のものにやらせればいい、そもそもこれはうちの管轄じゃないだろうにと。
先日の魔族との対戦、そこで壊滅的な打撃を受けた第七師団の生き残りの再編成。
それに関する資料が第12師団にも流れてきていた。
「貴族としてはここで、第七師団を子飼いにできるように手をまわしたいんだろうが…果たして。」
できるはずがない、そう思っていた。
一癖も二癖もある集団だ、それを子飼いにするには相当骨が折れるはず。
その先を考えると、肩を震わせるほどの笑いがこみ上げてきそうだ。
あれらに四苦八苦して、焦る貴族どもの顔を想像するだけで、酒の一杯でも飲めるかもしれない。
この書類が終わったら、というよりもこれを誰かに押し付けてさっさと切り上げてやろうか。
そんな意地悪な考えを巡らせながら、また一枚書類を上に積み上げた。
■ノワール > しかし、この忙しい時にこんな面倒なことを押し付けてくれたものだ。
まだ星の聖猫派というミレー族のテロ集団のことも片付いていないし、管轄にしている商人たちの不正取り締まり。
それらの仕事が重なってしまった結果、この山積みの書類が目の前にある。
夕方からかかっているが、まだ半分も出来上がっていない。
署名をして、ハンコを押すだけの簡単な仕事だと誰が言ったのか。
簡単な仕事だというなら、変わってくれと直訴してやりたいところだ。
だが、それをするとまた自分たちの都合がいいように解釈を捻じ曲げてくるのが目に見える。
自分の利益しか考えない、貴族のやりかねないことだ。
「目の前の仕事を一つ一つ片づけるしかないか。
次の休みが待ち遠しいな…まったく。」
独り言ちながら、がんっと机に顔をぶつける。
丈夫なフルフェイスのおかげで痛くもなんともない、むしろ机のほうがダメージ受けたような音。
書類が揺れるが、高く積みあがった書類は重量もあり、そう簡単には落ちないでくれた。
これが散らばっていたら発狂するだろうな、とぼんやりと考えながら、さらに一枚書類に目を通す。
「…………砦の話はもういいって…。」
何年たっても、魔族と人間が取り合っている砦に興味はない。
対魔族の最前線とか言う話はよく耳にしているが、12師団の仕事はそこじゃない。
まあ、当分は全師団で対応することになるから、この書類があるのだろうけれども。
■ノワール > 面倒になってきた。
律儀に書類に目を通す必要も本当ならないのだろうけども、こういうところはどうしても真面目になってしまう。
だがそれもそこまで、これだけ片付かない書類と格闘しているといやになってくる。
机の上に置いていた鈴を鳴らして、外で待機させていた部下を呼びつけた。
『お呼びでありましょうか、師団長殿!』
「あー……うん。これ片付けておいてくれ、私は帰る。」
『了解でありま………え、ちょっ!?師団長殿!?』
あたふたしている部下を置いて、机から離れる。
セフィルブレードを背負いなおして、肩をまわしながら固まってしまった筋肉をほぐす。
大体こんな書類を一人で片付けろというほうが、無理な話だと思う。
いやがらせか、それとも何かの刑罰化と考えてしまうほどに。
「私は明日休むぞ、今日だけで三日分は働いたんだ。
何かあったら書置きを残しておけ、職場に戻ったら目を通す。
緊急の時にはいつも通り伝書鳩でも飛ばせ、その時にはすぐに現場に行く。
あとは……ああ、そうそう。召集の時は絶対に呼ぶな、いつも通り軽くあしらっておけ。
貴族の間抜けどもの面を見るのはごめんだ、いつも通り足の引っ張り合いの怒鳴り合いもな。」
ガントレットに包まれた手で指さし、そう告げる。
執務室の向こうにある更衣室、自分だけの部屋でフルプレートアーマーを外す。
フルフェイスのヘルメットも外し、身軽になったらそのまま、裏口から誰にも見られることなく、職場を出ていった。
ご案内:「王都マグメール 王城」からノワールさんが去りました。