2018/05/12 のログ
ご案内:「王城内:軍議室」にバルベリトさんが現れました。
バルベリト > 「はーいはいはい。第1小隊は下がって下がって。んで第2小隊から第5小隊までは相手の思考分断と行動を封殺する為に遠巻きに包囲。無理に火力ある魔法や攻撃方法は使わなくていいから、兎に角牽制。タイミングを一斉にそろえないこと。とにかく、相手の脚を奪って奪って。
 第1小隊は動ける人間だけペアで最寄の拠点からの援軍誘導。怪我してる人間は治療優先ね。」

例え夜だろうと領地内に魔物の動きがあればすぐに動かざるを得ない。
現状の8師団は兎に角人も居ないが火力要員がいなすぎる。最大火力が自分の剣という時点で基本的に自分達の師団だけで敵を殲滅と言うのは無理があった。

その為の移動防衛循環警備が主任務なのだが――。
ミレーの叛乱のためと思われる小規模な武装集団が集落に向っているという報告を受けたのが先程の話。
近くの小隊に連絡をつけるために此処に移動してきたが――正直、ギリギリ間に合わない。

乱戦に持ち込めば集落の人間を避難させるくらいは出来るだろうが、これ以上戦力が減るのもまずい。
そう考えて1個小隊だけ当て逃げ同然に突撃させたのが失敗の素だった。
既に相手が此方の動きを察知しており、第1小隊は迎撃の弓矢。迎撃の魔法で打撃を受けたとの報。重傷者こそ居ないが、一当てしてかく乱させる何時もの手法が失敗した事で時間的な猶予まで奪われたに等しい。

もう1つ悪いのは、丁度他師団も殆どが休息やタナールの防衛、迎撃に出払って居る事だろう。
残っているのは――王城の廊下の足音の数からしてもそれほど多くは無い位には、人員が不足しすぎていた。

「あー、他小隊は今めっちゃ遠い。だから今の部隊だけで基本足止め戦になる。取り敢えず死なないように時間を稼いでくれ。相手が防護結界を張り始めたり高速移動し始めたら包囲を解いていい。」

愚策にも程がある。自分達の兵力も減らしたくない。
ミレーの集団も殺害するのではなく何とか追い払うか、捕縛することで情報を得たい。
人間の欲だけを詰まらせたような自分の願望と指揮では状況の打開は難しかった。

バルベリト > 避難誘導しようにも、集落の人間にも持ち出したいものはあるだろう。
何より、逃げろといってすぐに逃げ出せるような思考の切り替えを一般人に迫るのは無理がある。
――一応閃光魔法を打ち上げさせることで包囲が崩れ、強制的に集落の人間を撤退させる事は言い含めてあるが――。出来れば少しでも時間は稼ぎたい。捕縛も、相手を追い払うことも難しいならば、の精神ではある。

地図上に浮かぶ光点、師団の人間は蒼い点だが、ミレーは敵対性を示す赤い光点。蒼の点は数こそ多いし、包囲しているように見えるが――。
実際には厳しい。奴隷すら戦力に組み入れ、そして小隊の中にミレー族も少なからず存在している。
この状況で同族殺しをしろ、などといえば小隊内でこそ反乱まで起こりかねない。
何より、それなりに名が知れたミレーの傭兵が相手側にいるのも拙いを通り越して危機的な状況だろう。
そいつをつぶせるだけの火力、戦力は今の戦場には居ないのだから。

「そーいやアイツって前俺と組んでたっけ……?やっべ俺の作戦とか動きバレたら抑え切れるもんじゃねぇな……。」

第2小隊の弓は精度こそ悪くない。だが威力に欠ける上に矢の数もそこまで多く配備されていない。
第3小隊は小規模ながら魔法を使える傭兵がいる。見た目が派手な爆発を引き起こす魔法ではなく、砂塵を巻き起こすような目くらましの魔法と突風の魔法にて相手の動きを制限させる事で手一杯。
第4小隊は兎に角相手の周辺をぐるぐると馬で駆け巡らせ、牽制程度に手槍で相手の前身を阻み――第5小隊は原始的な投石という手段で相手の集団に攻撃というか、妨害を加えている程度だった。

―――絶対的に火力が不足している。

バルベリト > 集落の避難誘導に向った兵士からの合図はまだない。だが集落には蒼い点が二つあり、状況説明と脱出の準備はさせているのだろう。
こちらからアレコレ言うと余計に混乱や現地の集落から反発を受ける。
向こう側からの通信が無いなら此方は放置で良い。第1小隊は幾つかに分かれて他拠点からの援軍要請に向っている。2ペアという事は残りの大半は怪我をしたのと手当ての為の残留を選択したのだろう。

「外には魔族、内にはミレー。人間同士ですら争ってるって手数も戦力も足りねぇっての……。」

溜息の一つもつきたくなる。
少なくとも対魔族戦線は現状維持で手一杯だろう。というか寧ろ、魔族相手にヘタに攻勢に出るのがどういう事か。
最悪の想像をしてしまえば、正直魔族との講和かミレーと和平は必要なのだが――上の決断には逆らえない。せめて人間同士の戦争を大規模に発生させないように外交部に頑張ってもらうくらいのものだ、期待出来るのは。

「あー、4小隊は一度離脱。1小隊と馬を交換してもう1回けん制遊撃。1小隊は4小隊と馬の交換をしたら撤退。集落とは逆方向に目立つように撤退していって。後、馬の交換が出来なかった4小隊の人員も撤退。1小隊の護衛たのんだ。」

馬にも疲労は蓄積される。蒼い点が赤い点の周囲を駆け巡る速度が衰えてきたので馬の後退をさせつつ、戦力になりえない人員を退避させる。目立つように撤退させるのは、撤退していく芳香には相手側の援軍や拠点があるのではないかという考えを持たせたい為でしかない。
2小隊の矢の数の減り具合からも、そろそろ全小隊撤退の指示を出したいが――まだ、集落の避難が終わっていない。

ミレー族の叛乱は王族や貴族狙い――間の悪いことにその集落には、それなりの立場の貴族が翌日の祭りの為に1日早く入り込み、歓待を受けていたのだ。
……間が悪いのか。それとも、それを察知されたのかによって随分と評価も変わる話だが。

バルベリト > 「2小隊、矢を打ち尽くさないこと。小隊で矢の合計本数が10を切ったら即時撤退。5小隊は2小隊の撤退時の殿。3小隊はすまねぇ。今回ババひいてもらう。」

魔法が使える3小隊を最後まで残すのはミレーの叛乱軍が時間を喰ったことで方針転換をする事を願う為の物だ。
彼らしか、魔法による閃光信号の打ち上げが出来ない。
矢を残して撤退をさせる理由は、反乱軍の矛先が小隊に向いた場合に最低限の反撃と脚を奪う為の矢を残させる為。
……5小隊は投石をしている分多少だが兵装に余裕はある。最悪でも2小隊と武装のシェアをすれば仮に全力での追撃を受けても全滅は免れるだろう。

「3師団は相手の指揮官の視線注意な。視線がお前等の方に向いたら迅速に殺到して来る。その時は逃げろ。集合地点は近場の砦でいい。他小隊も砦に合流。歩哨は適宜決めといてくれ。」

援軍要請に向った光点が動かないのは、8師団の風評による物か。単純に時間が掛かっているのかはわからない。
だが、既に援軍が出発したとて彼ら叛乱軍の足止めに間に合う訳でもない。だから通信にて集合地点の砦に向う事と、援軍要請の破棄を伝えた。

寧ろ必要なのは――先ほどから呼び出しの信号が鳴り響く呪札の方。
集落に向った組からの連絡通信だ。……一部の蒼点が動いている、それも少し広がるようにしているのは集落の民を護衛しながら移動している為だろう。
こちらの組で貧乏くじをひかされたのは、最後まで集落に残っていた彼らか。……現地の状況に気まずそうに肩を竦めてから呪札を引っつかんだ。

「あー、はい、こちら第8師団師団長代理、バルb」

言葉の中断をされるほどの凄まじい大声での罵詈雑言。
貴族サマからすれば騎士団が足止めすらロクに出来ずに叛乱軍が向っている事が納得もいかないのだろう。
面子がつぶされたとでも思ったか、泥を顔に投げつけられたとでも思っているのか。
よくもまぁそんな大声を出せるものだと感心するが――それは鈍感さへの感心でもある。
そんな大声を出せば叛乱軍に直ぐに聞きつけられるだろうに。
実際、赤い点は真っ直ぐに集落の方に突き進んでいる。迅速な行動力と馬の脚にも並ぶような移動速度だ。

「クロ、カラ。撤退しろ、それ以上は無理だ。あー、デルフ卿?後10分程で叛乱軍がそこに到着します。捕まった貴族がどうなるかは聡明なデルフ卿ならわかるかと思いますが。」

最後通牒のように相手に撤退を促す。それと、最後まで貧乏くじをひかされた2人の騎士には真っ先に撤退指示を出したのは……真面目な二人には、期待をしているからでもあり、こんな貴族サマを守る為に命を使わせるには余りにも惜しかったからだ。

「ガガガピーガガガガ。あ、なんかガガガガガ。ジャミング入り始めましたねガガガガガガ通信終わり通信終わり、逃げピーガシャン。」

最後は適当にも程があるジャミングの口真似で強制的に通信を叩ききる。どうせ通信が繋がっていれば文句しか言わずに時間を無駄に使うだけだ。呪札はそれから少しの間呼び出す為に光を発していたようだが、やがて光は途切れた。
地図を見る限り、なんとか最後まで残っていた2人も安全に離脱は出来たようだ。他の蒼点も当初の目標の砦に向かい集合し始めている。

此方の人員の被害こそ無かったが――小規模な叛乱軍でさえ足止めが難しい現状はいかんともしがたい。
魔法や武術といったものを急ぎ習得させるより、まず死なない戦い方を自分よりも上手くなって欲しいと思う。
――今、一人一人の戦力を育てるだけの余裕が徐々に失われているのだから。

尚、後日談だが。この時生き延びた貴族からはさらに第8師団は不興を買い、補充人員や補充の武具は又質が落ちたというおまけ話までついてくる有様だった。

ご案内:「王城内:軍議室」からバルベリトさんが去りました。