2018/05/08 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城 練兵場」にレナーテさんが現れました。
レナーテ > その日は非情に機嫌が悪かった。
そうでなくても、前日に起きた集落での出来事で余計に気を張り詰めていたのかもしれない。
ピリピリとしている中、派出所へ向かう最中、すれ違った兵士の戯言にピクリと帽子の中の耳が跳ね上がる。
女子供が偉そうに。
普段なら聞き流すような言葉だったが、売り言葉に買い言葉とはまさにこの事。

『女子供に陰口しか叩けないなんて、情けない方達ですね』

満面の微笑みで煽り立てた結果、手合わせの訓練という名目を借りた決闘へと変わり果てた。
互いに刃物はなし、殺傷しない程度なら何でもありの手合わせとなり、マズルブレーキのスパイクをゴムで覆った魔法銃で彼等とぶつかり合う。
懐に入ればと、合図と同時に身を低くして飛び込む男。
それに対してこちらは、曲銃床のライフルという形状の利点を活かした格闘戦で答える。
魔法銃の使い手なら誰しも教え込まれた銃剣術は、さながら短めの槍であり、杖。
額を狙った精密な突きで脳震盪を起こさせると、ぐらりと揺れる男の顎に銃床を叩き込む。
脳は上下に激しく揺さぶられ、男が白目を剥くとそのまま崩れ落ちて泡を吹く始末。
銃口を斜め上へあげた待機の構えで、残りの二人へと振り返る。

「次、どなたですか?」

にっこりと微笑みながら、静かに淡々と問いかける。
城内警備や王都内の警護といった、殺しではなく殺し合いに身を投じぬ兵士達が初めて感じる殺気。
冷たい刃を喉元に突きつけるような猫の視線に抗うように、雄叫びを上げながら二人がかりで木剣を手に突撃を掛ける。
小さく溜息を溢しながらバックステップを踏むと、間合いを取りながら迎撃体制へと移っていく。

「手加減しませんからね、そちらは二人ですから」

ハンデは十分すぎるほどだろうと吐き捨てる合間も、金色は感情を宿さない。
獣が獲物を捉えるように、ただ淡々と力を振るうだけ。
ここまで心が冷え切るほど、今宵は心に余裕がなかった。

ご案内:「王都マグメール 王城 練兵場」にグライドさんが現れました。
グライド > (兵士達の訓練場、であって、騎士達の訓練場で無い
其れはつまり、自分の様な一介の傭兵も、理由さえあれば出入りが出来るという事だ。
此処最近になって、一部騎士団の行軍や討伐に同行する事も増えては
こうして、施設の末端を利用する機会も増えたと言う事で――

だから、こうして足を運んでみた訳だが。
響き渡る苛烈な声は、訓練にしては少々感情を篭め過ぎている其れ。
ただ熱意に溢れているのだと始めは思ったが、実際に現場を目にすると、如何やらそうでもないらしい
傍目から見れば、少女一人に対して兵士らしき姿が二人、一種のイジメかとも思う光景ではあるが。)

―――――……ありゃあ、ダメだな。

(既に、勝負と言う点では見えている。
武器を構える前から気圧された時点で、兵士達に余裕は無い。
まぁ、余裕が無いという意味では、少女の方も変わらない様に見える、が。
――少しばかり考えた後で、ゆっくりと場内へ脚を踏み入れて行く。
全身鎧に身を包んだ、騎士では無い姿の男が、少々近くで見学とばかりに現れるなら
さて、どちらの側にも影響を与えるだろうか、其れとも)。

レナーテ > まるでチンピラの様な罵声を浴びせながら、構えも滅茶苦茶な状態で二人が一斉に襲いかかる。
流石に手数が変わると厄介なもので、威力を弱めた殺傷力のない魔法弾で牽制射撃を行うも、一人が防ぎ、一人が襲いかかる。
次の射撃につなげて畳み掛けるという、魔法銃の特性を殺す連携は偶然ながらに苦戦を強いられていく。
年相応の幼さ残る顔を軽く顰めつつも、切りかかった木剣を小銃で受け止める。
続いて最初に防御に回ったほうが近づき、がら空きとなった脇腹を狙うも、そこは擦り抜けるようにバックステップでいなす。

「っ……」

何処から潰そうか、そう考える自身の視野に新たな来客が映る。
ほんの僅かに気がそれた瞬間、男の一人が放った突きが手の甲に当たり、痛みに緩んだ手の中から小銃が転げ落ちていく。
今だと続くもう一人が袈裟斬りの様に木剣を振り下ろし、風を切り裂く音があっという間に迫った。
けれど、それは顔に飲み込まれること無く、代わりにその勢いが利用されていく。
とっさにその手を捕まえるのは、猫のような靭やかな動き。
そしてグンッと端なく足を開いて踏ん張りながら、横薙ぎに男を振るうようにして投げ飛ばしてしまう。
合気じみた動きだが、もう一度やれと言われても出来ない瞬間的な動作。
そして、手の甲へ一撃を当てた方に背後を向けてしまい、そこに組み付かれてしまう。

「くっ……」

生意気言った分身体に教え込ませてやるぜ と、下劣な言葉を宣う男が腕力に物を言わせて抱きすくめる。
身体を締め上げるような腕力は、流石に小柄な身体では振り払いようがなく、左右に捩ってもびくともしない。
だが、それは獲物を装う振りであり、その動作に交えて思いっきり固いブーツの踵で脛を蹴り上げる。
目を白黒させた男の腕が緩み、僅かな隙間が生まれれば、そこから擦り抜けるようにしゃがんで魔力を掌に込めていく。
一閃、腕を振り抜いて魔力の衝撃力を加えた拳を無遠慮に男の急所へ叩き込んだ。
青ざめる音は股間を抑えたまま倒れていき、転がされた方も頭から激突して目を回していた。

「はぁ……っ、はぁ……っ」

少々危うかったと、肩で息をしながらよろりと立ち上がると、転がっていった魔法獣へと向かう。
それを拾い上げながら、先ほど見えた人影へと改めて振り返っていく。
屑をのしたことで、多少なり怒りの熱が引いた心模様。
やっと年相応な顔立ちに合うすまし顔になり、レンズ越しに金色が彼の様子を窺う。

グライド > (此方に気が逸れたのは、どちらも同じ条件だ
人数差と言うハンデは、矢張りこの場に置いては戦力差として機能するが
其れでも――実力の差は、主に錬度の差は埋めがたいモノが在る。
どちらがより闘う事に慣れているか、どちらがより戦場を知っているか。
劣勢となっても惑わない、と言う点に置いて、矢張り少女の方が一歩も二歩も上手なのだろう。)

―――――――………。

(おおう…と、一寸苦い顔をした、兜の中でだが。
強烈に急所へと叩き込まれた一撃に、同じ男として色々と合掌したくなる。
地面に転がった二人に、やれやれ、と小さく溜息を零してから
肩で息を切らせる少女へと近付いて行き。)

――……よう、やるじゃねぇか。 っても、随分と熱くなってたみてぇだが。

(掛ける声は、少々太めの軽快な声音。
片掌を掲げては、其の容姿を少しだけ眺めた後で。)

騎士…って訳じゃ無さそうだな、冒険者か?

レナーテ > 組合長曰く、恐らく組み付いたら犯すなり、乱暴するなり、ろくなことを考えなくなるだろうとのこと。
ならば逆手に取って、脛や足の小指、踵で急所を狙うなど、遠慮ない不意打ちで叩けと習ったのはかなり昔のこと。
躊躇なく急所を殴れたのも、そんな戦いの考え方を教え込まれた結果ともいえ、そこらの兵士より妙に戦い慣れている。

「どうも……その、ちょっとだけ、機嫌が悪かったもので……」

近づいてきたのはかなり大柄な男、それも全身鎧に大きな盾を携えた姿は、動く砦と言った印象を受ける。
対してこちらは、深緑色主体に薄いベージュ色の飾り刺繍が施されたケープにコルセットスカート、そして白色のブラウスと可愛らしいデザインで全て収めている。
弛みを帯びたベレー帽も耳を隠すためではあるが、ゆったりとした服装と相成って、ふわふわとしたドレスの様な仕上がり。
緩く編まれた焦げ茶色の入り交じる長い髪に、金色の丸い瞳は静かに落ち着いた様子で彼を見つめていく。

「いえ、どちらでもないです。それらしく言うと傭兵に近いかもですね……国と取引して、軍事を請け負った組合にいます」

自分たちは民間軍事組合と言っているが、あまり馴染まぬ言葉なので概要だけを伝えていった。
ライフルの肩紐を肩に通そうとした瞬間、ビキリと痛みが鋭く駆け抜ける。
掌には赤い擦過傷があったが、それよりも奥に浸透した打撲が痛む。
痛みに顔をしかめると、肩紐を押さえる手が緩んでいく。
ごとっと音を立てて銃床が石畳の床を叩き、肘に紐が掛かった状態でゆらゆらと踊っていく。

グライド > (軽装、と言える姿は、彼女が銃使いである事を考えれば納得する。
近接戦闘も、銃を使うならば護身として必要なものだし
其れも在る程度洗練されているならば、何処かで訓練されたのやも知れない。
機嫌が悪かった、と言う相手に、そうかい、と笑い声を兜の中から響かせれば
一度兜を片掌で外し、相手へと顔を晒して。)

傭兵か、なら俺と同業者ってトコだな。
俺の場合は個人の依頼が多いが、そっちは軍事専門か。
そりゃあ、一端の兵士じゃ相手にゃならん訳だ。

(今も地面で呻いている兵士達を一瞥しては、愉快げに笑いつつ。
けれど、流石に一度かが見込んでは、特に急所を抜かれたほうの兵士を抱えて
持ち上げて、腰から落として、取り合えずタマが落ちて来る様にと多少介抱してやろう。
そんな事をしながら、また少女の事を見上げれば――彼女の歪む表情。)

――――……肩か、やられたな。 外れてる感覚はあるか?

(脱臼…いや、打撲か。 程度のほどは、恐らく彼女自身が判るだろう。
取り合えず、多少なり呻き声が落ち着いた兵士をまた地面に寝かせれば
今度は少女の方だ、落ちそうに為って居る肩紐に手を掛けては、銃を代わりに持ってやろうとしつつ。)

救護室を借りるか、包帯くらいは少なくとも在るだろうよ。