2018/04/18 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城」にルクレースさんが現れました。
■ルクレース > ――王城内、第零師団執務室。
本棚にはずらりと、様々な書籍が収められ机の上には書類が積み上がっている。
多忙を表すような机の様相を、部屋に入ってまず目にとめるとルークは机へと歩み寄った。
事務官が纏めた本日分の新たな書類は、別の机の上に積み重ねられていた。
まずは、と向かったのは処理済みの書類の重ねられている執務机。
読み終わった資料に、決裁済みの書類は几帳面に分けられているため、より分ける手間は少ない。
「…師団…集落…」
決裁済みの書類を、第零師団や、ドラゴンフィート、ダイラスの輸出入関連、収益報告や雑費申請などなど、多岐に渡る項目別に手早く分類してサインの漏れなど不備がないかを再確認する。
分類し終えると、使い終わった資料を整理してファイリングと破棄の処理を整えて、と黙々と作業をこなしていけば、室内に響くのは書類を捲ったり整えたりする音のみだ。
ご案内:「王都マグメール 王城」にアーヴァインさんが現れました。
■アーヴァイン > 執務室へと近づく足音が複数、そして不規則な足並み。
そして徐々に近づく足音には、少女達特有の甲高いはしゃぐような声が交じる。
それらが近づくと、入りまーすと元気のいい挨拶とともにドアノブが周り、小柄な少女が臀部でドアを押し開けながら中へと入ってくる。
数人の少女たちが抱えてきたのは、大きめの箱。
各々弾んだ声で彼女へ夜のご挨拶をすると、箱を置いて去っていく。
「……流石に、祟り神が荷物抱えて歩くのは妙だといわれてな?」
彼女達が去った後、入れ替わるように部屋の中へと入ると、苦笑いを浮かべながら扉を締める。
降ろされた時の音はそれほど重たそうではなかったとはいえ、大荷物を王族が抱えて歩くのは体裁としてよろしくないのだろう。
荷物はそのままに、彼女の方へと歩いていくと、さも当たり前の様に掌を頬へと滑らせていく。
「まだ体も本調子ではないだろう。あまり無理はしないでくれ?」
じっとしていられない彼女に、産後間もなくとも仕事を任せているが、その度に気遣う言葉を紡いでしまう。
薄っすらと微笑みかけながら顔を近づけていけば、重ねるだけのじゃれるようなキスを夜のご挨拶代わりにしていく。
■ルクレース > 書類をまくっていれば、複数の足音と近づいてくる気配を感じて顔をあげた。
微かに聞こえる甲高いはしゃぐような声は、足音の主を指し示しているようで、すぐに少女たちを連れて彼がやってきたのだと理解すると、少々考えるように指を口元にもっていき視線を動かす。
元気のいい挨拶とともに、ドアノブが下がると半ば後ろ向きで臀部で扉をあける少女が入ってきた。
あまり行儀のいい開け方とは言えない、ドアの開け方に数度瞳を瞬かせながらも、少女たちの手にある箱にその理由を理解する。
弾んだ声での挨拶に、相変わらず抑揚の少ない声で挨拶を返すと少女たちは、そこそこに箱を置いて去っていった。
「…そうですね。祟り神としても、王族としても少々妙な光景になってしまうかと。…しかし、その…少女たちが元気なのは、いいこと、だとは思うのですが、廊下であのようなテンションというのも、威厳を保つ、という点では少し問題があるような…。」
じゃあね~と手を振りながら、去っていく少女たちと入れ違うような形で彼が部屋へと入ってくる。
彼の言葉に頷きつつも、少し遠慮がちに廊下から聞こえた少女たちの明るすぎる声に感想を漏らす。
彼のミレー族への扱いや考え方は、既に十分理解はしているが祟り神としての表向きの顔に影響がでるのでは、と真面目に考えたが故の言葉だったが、気を悪くするだろうかと視線は彼を見上げる。
そんな彼は、真っ直ぐにルークへと歩み寄ると自然な仕草で頬へと手を触れてくる。
「体は、問題ありません。簡単な書類整理をしていただけですし、あとは文官に任せます。」
経験からも、性格からも窓辺に腰掛けて優雅に紅茶を嗜むというのはどうも合わないらしく、仕事の復帰を申し出たときの彼の苦笑を思い出す。
そして、仕事をしている姿を見かけるたびに気遣う言葉をかけてくれるのに、暖かい気持ちになりながら、近づく顔に瞳を閉じて触れるだけのキスを受ける。
何気ないこんな仕草も、最初はどうしていいか分からなかったが、今ではこうやって自然に瞳を閉じて受け入れることができるようになった…と思う。
「…集落や、平民などの母親は出産後間もない間から家事に育児にと動き回っているようですし、気分転換にも、なりますので…。」
子供を産んでから、よく目に入るようになった母親という存在を思い起こせば、出産後ゆったりと過ごせるのは、少数派ともいえるだろうことが分かる。
そして、なによりきっちりと答えのある事務作業は少し気分転換にもなっていた。
生まれた我が子はとてもとても可愛くて、世話をする喜びのほうが圧倒的に占めるが子育てという答えのない曖昧さは、手探りで気を遣う部分も大きかったが故。
■アーヴァイン > 「あぁ、あれか……。最初は大人しくさせておこうと思ったんだが、城の前でそれらしく命令したら……滑稽なほどにガチガチになってしまってな。だから、好きに動けと命じたんだ」
敬礼しながら、上ずった声で音程を狂わせながら返事を返すわけだが、見ていて見苦しさすら感じるほどの不慣れ感。
普段なら笑ってしまいそうだが、流石に笑うわけには行かず、溜息を吐いて自由に動いてさっさと仕事を終わらせろと告げたのだ。
部屋について、彼女の顔を見たときには大分本調子だったが、城の前に来た時は全く違ったのだと、苦笑いを浮かべながら説明を重ねていく。
「そうしてくれ、あまりルークに仕事をさせるとあの娘達に怒られる」
元々、出来ると思えば仕事をどんどん少女たちに任せていくきらいがあった。
時折、秘書や今の指南役の少女に仕事をさせ過ぎだと怒られてしまうこともあり、重々注意をするようにもなる。
しかし、出産間もない彼女が動きすぎると、濡れ衣じみた矛先が自分に向かうのだ。
といっても、それを嫌がるわけではなく、冗談めかして告げながら唇を重ねていき、軽く吸い付いてから唇を離す。
「確かに王族や貴族でもなければ…というところだが……それ以外にも思うところがあるんだろう?」
口癖が僅かに溢れてくるのがわかると、薄っすらと微笑みながらそこを指摘していく。
優しく黒髪を撫でた後、先程の箱の方へと近づいていけば、上蓋を開いて何かを取り出す。
ベージュ色のつやつやした四角い包み。
しかし奇妙なのは、ベージュ色の包みがまるで張り付くかのように四角い中身に密着していることだろう。
それを2つほど取り出すと、執務机の裏に置いてあった袋から、野外用の木製のマグカップを2つ引っ張り出した。
「お湯を沸かしてくれるか? 面白いものを持ってきたんだ」
ここ二年以上、組合の糧食として試行錯誤を繰り返した品物。
それがついに完成し、公にも見せられるようになったモノ。
その一部を運ばせたのだが、刺激も彼女の気分転換になるだろうかと考える。
■ルクレース > 「…そうですか。確かに、集落ではのびのびとしていることが許されるため、突然かしこまった対応をするのは難しい、のかもしれませんね。…ローテーションに合わせて、城での対応ように訓練が必要かもしれません。」
滑稽なほどに緊張してしまった少女、というのも傍から見れば見苦しく見える。
そもそも、今まではそれだけ王城に出入りすることもなかった少女たちが、慣れていないのは無理はないのだろうと理解しながら、祟り神や王族としての威厳というものを気にするのも、元々の思考がそちらよりだったが故に仕方のないことだったか。
訓練を、との呟きを彼は受け入れるだろうか、それとも彼女らしさを尊重して拒否するだろうか、と思考のあいだ横に動いていた琥珀の瞳が再び彼を見上げた。
「…怒られます、か…。仕事量としては、それだけ多くを受け持っているわけではないのですが。」
冗談めかした口調から、深刻ではないのはなんとなくわかるが、彼が怒られるというのは避けたいところで、唇が離れたあと、むぅと考えるように微かに眉尻が下がった。
「……セラスは、とてもかわいくて寝顔もいつまででも見ていられますし、一緒にいて苦痛に感じることはないのですが…。赤ん坊というのはわからないことだらけで、明確な答えがないのが難しいといいますか…。もちろん、おむつで泣いているのか、おなかがすいているのかが分かったりすると、とてもうれしくて達成感があるのですが…。」
微笑みながらの指摘に、素直に答えながらも決して子育てが苦痛とか嫌ではないのだと伝えようとすると、何を言っているのか自分でも収集がつかなくなってしまった。
そんなルークの言葉を聞きながら、髪を撫でていた彼の足は持ち込まれた箱の方へと向くと、箱からなにやら不思議な包をとりだしていくのが見える。
ぴっちりと四角の容器に張り付くような素材の包みと、マグカップを取り出すと、主旨を告げないままの頼まれごとに数回瞳を瞬かせて頷いた。
「はい。少々お待ちください。」
執務室にある、お茶を入れるための魔石のはめ込まれた簡易コンロで湯をわかしていくと、次第にポコポコ、シュンシュンと湯の沸き立つ音が部屋に響いていく。
■アーヴァイン > 「そうだな、なるべく言葉遣いは覚えるようにさせてはいたが……今までとは度合いが異なる。それなら、女性らしい畏まった振る舞いを教えてあげてくれるか? あまり軍属のようにしすぎても、苦しくさせてしまう」
彼女が元々自分の祟り神としての外殻を維持するために送られたのは、忘れていない。
そこを否定せずに、彼女の思うままに言わせるのも、自身が見落とすような部分を拾い上げてもらう為でもあった。
ただ、そのままだと固さが強まりそうだと思えば、一つだけオーダーを咥えて微笑む。
貴族の娘や、令嬢がするような上品で礼儀正しくも、女性らしさを失わぬ振る舞い方。
そのうち夜会などに連れ出すケースも考えれば、どちらにも対応できそうな、そちらを覚えさせたほうが良かろうと考え、受け止めながらに手を加える。
「冗談だ。最近はあの娘達も、俺に戯れる口実に使うぐらいのものだ」
深く考えなくていいと、眉尻の下がる彼女に微笑みながら髪を撫でる。
そして語られるのは、母として満喫した日常を過ごす記憶。
与えられなかったものを与えてあげて欲しい、その想いは確りと実っていくようで、娘を可愛がり、愛を注ぐ言葉にクスッと思わず喜びの笑みが溢れた。
「子育てがストレスになる女性もいるが、ルークは大丈夫なようだな。逆に……何か区切りをつけないと、ずっと構ってしまいそう、というところか?」
楽しみすぎて、逆に離れられないという答えが浮かぶ中、確かめるように問いかける。
その合間、マグカップの中に包みの中身を開けていくと、粉の音ではなくコトンと固形の音が響く。
真四角に固まった黄色い何か、所々にとうもろこしの粒のようなものも見えるかも知れない。
甘い香りが僅かに溢れる中、やかんから吹き出す水蒸気につられ、付近を片手にそちらへと向かう。
「中身をよく見ててくれ?」
机の上に置いたカップへお湯を注いでいくと、ティースプーンで軽く中を掻き回す。
すると四角いキューブはお湯を吸って膨らんでいき、ほぐれて溶けていくのだ。
更にスプーンで撹拌されると、完全に溶け切って水気を取り戻す。
カラカラの固形から、お湯一つでコーンスープが出来上がる様は、魔法よりも奇跡の様に見えるかも知れない。
■ルクレース > 「女性らしい畏まった振る舞いを…私が、ですか…。」
ルーク自身が訓練を、と提案しながら想像していたのは軍属のような統制のとれた対応の仕方だったが、同意とともに付け加えられた提案は、想像とは違うものだった。
貴族の令嬢が習うような、上品な女性的な所作。
確かに、少女たちを傍に控えさせるならそのほうが見栄えもいいかもしれない。
集落にいるとはいえ、表向き奴隷という扱いになるミレー族の少女たちにとっても、プラスになるのは間違いないだろうと言葉を聞きながら納得していたが、教える役をとの声に驚きに琥珀の瞳が微かに丸くなる。
提案はしたが、他人に丸なげというつもりはなかったが、集落には指南役の少女や秘書の少女など教えることに慣れた、適任な人材が確かにいたからで。
「上流階級的な女性の所作というものも、仕込まれているので可能ではありますが…。人にものを教えるというのは、したことがないので…出来るでしょうか。」
女性的な所作が仕込まれているというのは、今まで彼の隣に立ってこなしている事から彼も承知してのことだろう。
しかし、教える立場になるというのはなかったため、そこだけが心配だった。
「…そうですか…。乳母や侍女に教わりながらで、まだまだ手探りの状態ですが…ストレスではない、です。そうですね…それもありますし、そうなってしまうと外の情報に触れる機会もなくなってしまいそうですし、アーヴァイン様のお役に少しでも立てることはしたいです。」
確かめるような答えに、肯定に頷きながら希望を口にする。
話しながら、包みを破ってマグカップへと中身があけられるとコトンと固形物が落ちる音が小さくなる。
カップを覗き込めば、黄色いとうもろこしのような粒の見える不思議な塊があった。
調味料とも違う、茶葉とも違うそれは何度みても、見たことのないものだった。
「……はい。」
目の前で沸いた湯がカップへと注ぎ込まれると、ふわりと甘い香りが広がっていく。
それは嗅いだことのある香りで、とうもろこしのものだと認識するもなぜそれから香るのかがわからない。
お湯がかけられたキューブは、形がくずれていきスプーンでかき混ぜられると次第に見たことのある形状へと変わっていく。
黄色くとろりとした液状のコーンスープと、そこに浮かんでいくとうもろこしに驚きに目を丸くしながら、思わず小さく口が開いたままになってしまった。