2018/04/11 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城」にゼロさんが現れました。
■ゼロ > ―――カツン、カツン、カツン。
夜の王城の中を歩き回る、一つの金属の塊とも言える、全身鎧の上に、仮面の人物。
第七師団の訓練兵である少年は今宵も王城の警邏の任務を遂行する。
不審な人物を見つけて捕まえる、排除する。
魔族を見つければ、それを狩る。
簡単とは言えない任務だと思う、特に不審な人物という一点。
貴族は皆して、不審だとしか思えないのだ、こう、暗がりに女の子を連れ込んでとか。
今も、そのへんでやたら身なりの良いおじさんが、女の子を犯している。
事前に調べておいたが、やはりそれなりの地位を持つ貴族。
さて、こういうのは叩きだすべきかどうか……それが悩ましい。
個人的な感情一つで言うなら、家でやれ、とたたき出したい。
僻みではない、とおもいたい。
ご案内:「王都マグメール 王城」にベルナデットさんが現れました。
■ベルナデット > 王城の廊下に冷たい風が吹き抜ける。
初春……とは言え、まだ冷える夜もある。
故にこんな時間に王城の窓が開いているということは、メイドが閉め忘れたのか、もしくはわざわざ窓を開けた物好きがいるということなのだろう。
風が吹き込む先、そこでは開いた窓から仄かな月明かりが差し込んでいた。
そして、そこには純白のウェディングドレスを身に纏った少女がいた。
まるで童話の中から飛び出して来たかのような光景の中、少女は両手をドレスで強調された豊かな胸の前に組み、長い睫毛で飾られた瞼を閉じ、静かに祈りを捧げていた。
吹き込む風がその純白の髪をわずかに靡かせていた。
■ゼロ > 「―――……?」
風が吹き込んでいる其方の方に顔を向ければ、確かに窓が空いている。
窓の外はテラスである。テラスから族が入り込むことも考えられるとなると確認する必要が発生する。
少年は迷うことなく足を運び、風に揺れるカーテンの影に気が付いた。
最初は、カーテンかと思ったが、近づいてみればカーテンのように。
否、それ以上に白く美しいドレスを身に纏う少女がいた。
月の明りの下にまるで祈りを捧げるように立ち尽くす姿は、聖女というものを連想させる。
只々、静かに風景に溶け込むようで、しっかりと存在を主張するその女性に、少年は近づいていく。
カツン、とグリーブが地面を踏みしめる音さえ、彼女の祈りを邪魔しているのではないかという気もする。
「もし。」
軽く声をかける、見たことのない少女、貴族の子女なのか、それとも貴族なのか。
自分の知識の中に、彼女の名前は出てこなくて。
ただ―――何処か、引っかかる気がする。
しかし、職務故に、声をかけなければなるまいという義務感。
「そこに居られますと、この時期でも、風邪をひいてしまいます。」
白い仮面で顔を隠した、少年は、聖女を驚かさぬよう注意をはらいつつ声をかけた。
■ベルナデット > 純白の少女は寒さなど感じていないかのように微動だにせず、ただただ一心に身じろぎひとつせず真剣な表情で祈りを捧げ続ける。
まるで彫像のように……だが、風に揺れる純白の髪とドレス、そして、呼吸にわずかに揺れる膨らみが辛うじて少女の生を感じさせる。
「……?」
靴音にも反応を示さなかった少女は声を掛けられて初めて瞳を開き振り返る。
空色の瞳に映るは武骨な鎧姿。
しかし、少女は怯えるそぶりも見せず、長い睫毛に飾られた瞳を細めて柔和な微笑みを浮かべた。
そして、どうやら身体を気遣ってくれている様子に優雅に頭を下げて見せる。
上質な教育と躾を受けた者だけが身に着けられる上品な所作、それだけでも少女の生まれの程が透けて見えることだろう。
「……。」
少女の細い指先が宙を舞い、そして、光る軌跡がこの国の文字を描く。
――月が綺麗だったので――
少女はほんのりと頬を染め恥ずかしそうにはにかんだ。
■ゼロ > 近づいても、反応がなかった……のではあるが、声をかけたら此方に反応した。
自分を見る視線には、奇異の色も、驚愕の色も無かった、それどころか柔らかな笑みを浮かべていた。
こういう鎧姿、仮面の存在に慣れているのだろうか、正直に思うが全身鎧なら、兵士とか騎士とか多いだろうが、仮面までかぶるのは少ないと思う。
そんな少年に対し、優雅に頭を下げる仕草は、上品である。
こう言う格好の人間に慣れている、上流階級の子女というイメージを持った。
「……?」
彼女の指が文字を描く。少年の仮面は魔力を認識し、文字を読み取る。
が、もともと、この国の人間ではない少年。
流麗に書き連なれた文字を、じっと見る。
「月が、綺麗、だった……ので。」
文字も勉強してそれなりに読めるようになってきている。
会話は問題ないし軍で使う文字とかそういうのはだいたいマスターしてきているが、日常の文法は、咄嗟に止めないことがある。
「――ああ。」
彼女の意図を把握し、仮面に包まれた顔を窓の外に。
冷たいぐらいに綺麗な月が、雲に覆われることなく煌々と、光を放っているのが見える。
「ええ、とても綺麗だと思います。
良く、月を見られているのですか?」
恥ずかしそうにしている彼女の方に、仮面のまま顔を向けて問いかける。
ふと、気がついたように首に巻いているマフラーを外しはじめる
「首に巻くだけでも、随分違いますよ。」
マフラーを外し、自分は懐から予備のスカーフを首元に巻きつけたあと、マフラーを差し出す。
取り替える一瞬、少年の首には刺青が見える。
支配と、隷属の意味を持つ魔法の刺青、読み解けるならば、一時期少年のことを思うがままにできる代物。
■ベルナデット > 同じくらいの年頃だろうか。
描いた文字を少年が読み上げてくれるのが嬉しくて雪の中に咲いた花のような朗らかな笑顔を浮かべて見せる。
それは意図せず清楚で上品な印象を与えてしまう少女を幼く見せるだろう。
「……💛」
少年の問いかけには笑顔のまま小さく頷いて見せ、窓枠に背中を預け、夜空に蒼く輝く月を見上げる。
と、不意に差し出される少年のマフラー。
仮面で隠された少年の顔とマフラーをきょとんとした表情で交互に見つめ、そして、少年の意図を察しほんのりと頬を朱に染める。
少年の首筋、見えてしまったのは古き呪いの言葉。
聖女として施された教育の記憶の中にあるそれの意味を思い出し、わずかに表情を曇らせる。
しかし、同時に誰にも見せたくないはずのそれを晒してまで自分を気遣ってくれたことに嬉しさを感じてしまう。
「……♪」
わずかな表情の変化に気付かれてしまったかも知れない。
表情に出してしまったことは失点であると感じてしまう。
故に、少女は唇を弓の形に瞳を閉じ、おどけたような笑顔を浮かべる。
そして、顎を上げ、少年へと向かって首を伸ばすような仕草。
子供のような仕草で巻いて欲しいとねだった。
■ゼロ > ただただ静かであった。
彼女からは声が出なくて、少年が言葉を放つのみである。
彼女は意思表示として、文字を中空に書き記し、少年がそれを読むだけ。
動きが少ない分、少年の鎧は、金属が擦れる音が響かず、静かに風が吹いて、カーテンや彼女のドレスをくすぐり、揺らすだけ。
言葉がなくても彼女の嬉しそうな表情と動きに意図がなんとなく伝わる。
可愛らしい仕草は聖女の印象を変更させる。自分のマフラーを見て自分の首元に視線を動かす。
呪いは首輪のように首を周り、その力を解き放たれるのを待っているようでもあり。
「あ、流石に失礼でしたか……。」
表情が曇るのを、自分の首に巻いていたマフラーを差し出したことに対する不快と取りかけて。
「……?」
首を差し出している。
少年は仮面の下で目を瞬き、瞳を閉じて笑顔を浮かべる相手を眺めやる。
おねだりだ、と気がついた時には、あ。と軽く声をこぼしてしまった。
「では、少しだけ失礼しますね。」
彼女の首筋に、ふんわりとマフラーを巻いて緩く縛る。
風が入らぬように、しかしてきつくなく、呼吸を阻害しないように。
巻き終えたなら、うん、と軽く頷く。
「終わりましたよ。」
と、声をかける。
純白の聖女のドレスに、少年のマフラーは、やはり色合い的にも、不格好になってしまう。
もともと、自分のためのマフラーであり、ファッションとか色気とは全然遠いものである。
彼女が本来使うような上等なマフラーと比べても数段以上劣るだろう。
ちょっと申し訳ないかもと思いながらも彼女を眺めやる。
「お体に障る事はあまりしないほうがいいと思います。
あと、誰かしら護衛を付けたほうがいいと思いますよ。
とても美しい人ですから、良からぬ輩が近づかないとも限りません。
王宮は安全でも絶対では、ありませんし。」
彼女に心配なので、老婆心ながらの言葉を。
少女のように美しい人は、貴族でも下賎なものなら先ほど見た彼らのように強引に行為に持ち込もうとするものも、いるだろうと。
■ベルナデット > 首筋に感じる温かさと柔らかさ。
瞳を閉じて子供のような笑顔を浮かべたまま、少年にすべてを任せる。
丁寧に巻かれるマフラーは少年の気遣いや優しさを如実に語る。
それが何とも言えず心地よい。
少女の純白の中に混じる少年の色。
ゆっくりと瞳を開き、巻き終えられたマフラーを両手で持ち上げ頬を埋め、まるで大輪の花のような満面の笑顔を浮かべて見せる。
「………………。」
しかし、そんな笑顔も長くは続かなかった。
それは少年の何気ない一言だったのだろう。
だが、少女の顔はみるみる真っ赤に染まっていく。
恥ずかしそうにマフラーを持ち上げ顔の下半分を隠し、伏せ気味の視線を窓枠の隅へと逃がす。
お世辞だろう……とは思う。
しかし、顔の火照りは抑えられない。
――護衛してもらえますか?――
視線を逸らしたまま細い指先が光の軌跡を描く。
そういえば同年代とこうしてお話しする機会など今までほとんどなかった。
特にこの2年間は人と言葉を交わすことなど……。
故に、半ば無意識にもっとお話がしたいと無理なお願いとわかりつつもねだってしまった。
■ゼロ > 「………」
子供のように無邪気に喜んでいる相手に、少しばかり心が温かくなる。
姫というものはこういうものなのかな、と知識にはない物を空想上のそれを思い、考えてみる。
現実的な思考ではないけれども、聖女のような彼女の花のような笑顔はそれだけ素敵なものだと思えた。
彼女の顔が赤くなり急に下を向いてしまう、何か気に障る事を言ってしまったのか。
失礼なことをしてしまったのだろうか、声がないだけに不安があり、彼女の方を見ていた。
「護衛を……?」
視線を逸らしたままの彼女の問いかけ。
第七師団は基本的に対魔族の部隊であり攻めの部隊とも言える。
自分を作った研究所も、傭兵としての生活も、攻めとしての生活で守ったことが恐ろしく少ない。
一年間砦に駐在していた経験はあるが、対人護衛というわけでもなかった。
―――が。
周りを見ても、護衛になるような人はいなかった。
高貴であろう少女を見捨てるわけにも行かないし、警備の任務中である。
「ええ、私で宜しければ。」
要人が安全なところに移動するための護衛もまた、警備の仕事のはずである。
少年は、彼女に頷いてみせた。