2017/11/04 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城・第七師団執務室」にマリーさんが現れました。
マリー >  
「御機嫌よう、オーギュスト将軍閣下はおられるかしら」

その言葉に入り口に立つ兵士は言葉に詰まったような表情を浮かべ、いないと答える

予想通りの答えに満面の笑みを返して

「それじゃあ、中で待たせていただきますわ♪」

ドアを開けて、室内へと
兵士達は僅かに眼を伏せ、それを黙認する

マリー >  
曰く、腑抜けてしまった
曰く、別人のようだ───

かの将軍の変わりようはもはや関係者では知らぬ者も少ない程
それに、このマリーという少女が関わっているのも暗黙の了解の内であった

仕事をする気もない男が、執務室になど来る訳もない
それを承知で、この部屋へと訪れたのだ

ダイラスに拠を構えるマリーは王城で自由に使える部屋を持たない
……つまり第七師団の執務室を勝手に客間として使っているのだった

「(いまいちくつろげないのだけど、ね)」

ソファに沈み込むように座ればギッと音がする
決して高級なものではないあたりが、騎士団の仕事部屋という感じではあるが

ご案内:「王都マグメール 王城・第七師団執務室」にタマモさんが現れました。
マリー > ソファから立ち上がり、机へと
 
しばらく使われていないのであろう、
上には書類があるわけでもなければ、持つ者のいない羽ペンが寂しげに鎮座している

「あら♪」

なんとなしに引き出しを開けてみれば酒瓶が入っている

「将軍様らしいといえばらしいけれど、ふふ。
 私はお茶何かがいいわねえ~」

引き出しを閉める
定期的に訪れるマリーを客人だと思っていないのか、
それとも将軍を唆した悪女だと思っているのか、特にお茶を運んでくる様子もない

お客にお茶も出さないなんて、なんて唇を尖らせてみる

タマモ > 誰もいない執務室、それがこの部屋の少女の印象。
何せ、何度か来ているが、誰かが居た事がほとんどないからだ。
だからなのか、少女にとっては適当に漁ると酒が出てくる便利な場所だった。
今日も今日とて酒を探しに、少女はこの執務室に姿を現わす。

ただし、入り口から素直に入ってくるような事はしない。
執務室内、誰もいないはずのその何も無い空間から、ゆらりと少女は姿を現わした。

「さて、おーちゃんや、今日も何か………うおっ!?」

この部屋の大体の配置は覚えている、酒をよく見付ける棚へと視線を向ければ…その途中、流れる視線の中に人影が入った。
誰も居ない、そう思っていたからか、びくーっと驚きに肩が跳ね、耳と尻尾をおっ立てた。

マリー >  
「……あら…?」

闖入者、と言っても差し支えないであろう…狐
そちらに目を向けると、少女は僅かにその眼を細めて

「お城に獣が入り込んでいるわぁ…警備の者を喚びませんと…」

驚いている様子の相手に、クスクスと笑みを浮かべながらそう言葉をかける
……特に声を張っているわけでもなく、本当に騒ぐつもりもないようである、が

タマモ > まぁ、びっくりしたのはその一瞬だけだった。
考えてみれば、別に誰か居てはいけない場所、という訳ではないのだ。
はふー…と一度深呼吸をすれば、改めて相手を確認する。
少女だ、見た目は自分よりも少し上だが。
笑みを浮かべ掛けられる言葉、その一部分にはぴくり、と耳が揺れるが…それに関しては、そう驚く様子は無かった。

「あー…呼ばれて問題はそう無いが、面倒なので止めてくれると助かるが…
一応、第七師団の客人扱いされておるでのぅ?」

と、そんな理由である。
確かに呼ばれても、第七師団の関係者からの証言は得られるはずだが…後でここの主からの小言があるかもしれないのだ。

言葉を交わしている間も、不思議そうに首を傾げたりしていた。
すん、と軽く鼻を鳴らし…もう一度、確認をするように。
そうすれば、何か分かったのか、ふむ…と軽く頷いた。

マリー >  
「そうなの?
 もしかして、おーちゃんって、将軍様のコトかしらぁ…」

口元に手を当てて、こんな知り合いもいたのかとまじまじと眺める
にしても、突然この場に現れた…人間ではない、ミレーでもなさそうな少女に大してさして慌てる様子を見せないマリー
それはそれでどこか不自然な振る舞いでもあるのだが…

「おーちゃんなら、いないわぁ。
 もしかしたらもう二度とこの部屋には来ないかもぉ…」

口元の指をぺろりと舐めて、くすくすと笑みを浮かべた

タマモ > 「おぉ、理解が早いと助かる。
大体の者は、一度で理解してくれんからのぅ」

むしろ、さっさと名前をちゃんと言えるようになるべきだろう。
だが、世の中には言うに苦手な名前も存在するのだ、仕方ない。
向けられる視線に、内心は分からないが、いつもの物珍しさを含むものを感じる。
ただ、相手にも、こちらの視線に同じ様なものを感じるだろう。

「ほほぅ…?怪我か何か、ではなさそうじゃな?
………お主の仕業か?」

少女の言葉に、ふと思い当たる理由を口にするが…あの男だ、それでここに来ないなんて事はないはずだ。
となれば、他の理由だろうと考える。
目の前の存在が、すでに何であるかは把握しているがゆえに、後の言葉が紡がれた。
そもそも、そういった存在を倒さんと意気込んでいる師団だったはず。
そんな存在が、ここに居る事自体がおかしい。

マリー >  
「仕業?」

クスクスとした笑みを浮かべたまま、執務机の椅子へと座りくるりと回って

「私はただの彼の欲望にどこまでも応えてあげただけ…♪
 ふふ…彼は欲が強いから沼にずぶずぶと沈み込んでいってしまったけれど…♡
 今の彼は第七師団のことなんてどうでもよくなってしまったみたいねぇ」

愉しげに笑う少女は、タマモへと再びその真紅の視線を向ける

「……私のコトをなんとなしには感づいているみたいねぇ…狐さん♡」

タマモ > なるほど、少女の言葉にある程度の予想は立った。
が、向ける視線に敵意が込められたりする事はない。
ただ、少々呆れたような色が含まれている。

「その辺り、やはり人間じゃのぅ…色欲に飲まれてしもうたか。
まぁ、おーちゃんと言えど、やはり女には弱かったんじゃろうな?」

軽く肩を竦めながら、はふん、と軽く溜息。
向けられる真紅の視線に、己が視線を返す。

「ふふんっ、凄いじゃろう?匂いには敏感なのじゃ」

胸を張りながら、自慢げに答えた。
実際のところ、匂いもあるが、似たような感覚を他の者で感じた事があったからだ。
もっとも、それを聞いても、ちゃんとした名前は出てこないだろうが。

マリー >  
「やはりも何も、顔を合わせた瞬間から下心が丸見えの男だったけれど…」

たまたまマリーが好みだったのか、他の女に対しても同じなのかは知らないが

くすりくすり、悪びれもなく笑って椅子の上で脚を組む

「そうねぇ、鼻の効きそうな顔をしているわ。
 これでも人間の国に訪れる時は隠しているつもりなのだけれど」

すごいすごーい、と小さく手を叩いてみせて

「狐さんは、ミレーではないのよねえ…。
 どちらかというと北方の怪異に近いかもしれないけれど……」

王城に軽々しく出入りするこの狐はなんなのだろう?
第七師団の長と知り合い…客人ということはそれなりの地位な者なのだろうか

タマモ > 少女の言葉に、こう、何とも言えぬ表情を浮かべた。
そういえば、前に話していた時にそれらしい雰囲気もあった気がする。
あれか、綺麗どころには弱いんだろう、と。
と、続く言葉に、また一瞬だけ耳が揺れた。

「………どれだけ誤魔化そうと、隠せぬものがあるって事じゃ。
後、あれじゃ…お主、もう少し言葉を選んだ方が良いぞ?」

さり気なく、棚に視線を向け、ガラス越しに見える酒瓶を物色しつつ言葉を返す。
改めて向ける視線が、僅かに細められる。

「む………あー…遥か東方からやってきたのじゃ。
そういえば、北の方にも、それらしいものが居ったのぅ」

己の存在に対する疑問には、いつもの言葉を伝えておいた。
この師団の客人として扱われている理由…その経緯を、正確に知るのは、ここの将軍ただ一人だ。

マリー > 「うふふ、気をつけないと…♪
 私って正直者なもので♡」

目的の為なら偽りの言葉を嘯くのが常であるが、そんな調子の良いことを述べつつ

「あら、別口なのね……ふぅん……」

話に聞く妖仙だとか妖鬼だとか、そういう類なのだろう

「気位の高い狐さんだったのねぇ、
 ふふ…獣だとか、奴隷のようなミレーと同じにされては傷つくというものかしら♪
 ──お酒なら此方にもあるわよぉ、ほら」

言いながら僅かに椅子を引き、色とりどりの酒瓶が詰まった机の引き出しを開けて見せて

タマモ > 「うむ、正直なのも、限度を過ぎれば痛い目にあうものじゃ。
もちろん、だからと言って平然と嘘を付かれても困るがな?」

少女の思う辺りは、当然分かってはいるのだが…言わずにはいられない、そんな感じに。
ぴっ、と立てた指を振って。

「うむ、まぁ、難しく考えんでも良かろう。
当然じゃ、妾等九尾狐は妖が上に立つ存在…ではあるが…まぁ、それをそのまま言われても、面倒事が多くてな?
おぉ…よもや、こんな場所にもあったとは!?」

こう、自慢気な台詞を吐くたびに、偉そうに胸を張る…まぁ、そんな癖なのだと理解出来るかもしれない。
が、後に言葉が少々窄むのは、その存在自体も人間からすれば良しとはあんまりされてないからだ。

そして、言葉と共に開けられる引き出し。
机に身を乗り出し、上から開かれた棚の中身を見れば、驚嘆の声。
よくやった、みたいな感じに、少女の肩をぽんぽんと叩く。

マリー >  
「誇るにも誇れずといったところかしら、プライドの高い人は大変だわぁ」

そんな言葉が聞けたかと思えば、
机に乗り出し此方の肩を叩いてくる子供じみた様子すら見せる

なかなか、あの将軍閣下も扱いには困ったのではないかと苦笑しつつ

「ふふ、持ち主は今この場にいないことですし…
 もらってしまっても良いのではないかしら───」

乗り出したタマモの耳元でそう囁く、とともに悪戯心
ふぅっ♡とその耳に戯れに息を吹きかけてみる

タマモ > 「まったくじゃ…まぁ、場所さえ考えれば、大丈夫じゃがな?」

と言いながらも、いざその場になれば、平然とやって…小言を聞かされる。
どうしても隠し切れないのが痛いところである、色んな意味で。

己の扱いについては、どうなのか…それは本人しか分からない。
案外、扱い難そうに見えて、扱い易いのかもしれないが…さてはて。

「………うむ、そうじゃな、どうせいつもの事じゃ。
それでは、どれが良いか…お主は、どれが良いと思…んにゃぁっ!?」

身を乗り出した格好のまま、少女からの耳元の囁きに、うんうんと頷いてみせる。
…持ち主にはいい迷惑な会話である。
と、何本かあるようで、ざっと見てどれがどれかいまいち分からない。
なので、少女へと問おうとしたところで…耳に掛かる吐息。
ぞくんっ、と不意に与えられた刺激に声があがり、肩が跳ねた。

マリー >  
「あは♡ 高貴な狐様も可愛らしい声をあげるのね♪」

声と、肩を跳ねさせる様子にクスクスと笑って喜ぶ
そしてそんな様子を捨て置いて、引き出しから茶色と緑、それぞれの硝子のボトルを机へと載せて

「この辺りが高級なお酒かしらぁ、ダイラスでも見たことがあるわ……だいじょうぶ?」

そのかける言葉とは裏腹に、表情はニコニコと非常に愉しげに笑っている

タマモ > 「不意打ちとは卑怯ではないか…!?
お主とて、そんな風にされれば、似たものじゃろうて」

楽しそうに笑う相手と対象的に、むぅ、と頬を膨らませて睨み付ける…まぁ、怖くはない。
お返しとばかりに、ぐいーっと少女の耳を摘み引っ張ろうとしてみた。
それが出来ても出来ずとも、ボトルが机に並べられるか。

「ふむ…これでも、ある魔王達とも飲み明かしたものじゃ、問題ない。
高級だから美味いとも限らんが…味としてもお勧めか?」

ふむふむと、机の上のボルトを見詰めながら、ちらりと少女を見遣る。
まだ身を乗り出したような格好のままだ、上目使いに。
期待になのか、尻尾はゆらゆらと揺れている。

マリー >  
「ふふっ、ついつい出来心みたいなものよ♪ ごめんあそばせ♡
 えらぁい狐さんなら、こういったことも冗談で済ませてくれるものね」

言いつつ、タマモの伸ばした手はすいっと避けやがるのだった
自分がするのは良くて、相手がするのは良くない
この少女の底意地の悪さを表すようなムーブである

「味はどうかしらぁ…
 商品として見たことがあるだけなの、私はお酒なんてそんなには飲まないものだから……」

味、という言葉に、ちょうど眼についたタマモのうなじへと視線が移る
白く細い首……神格にすら届くとも言われる妖かしの血は、さぞ上等な味なのだろう

「……テイスティングしてみたらいかがかしら♪」

腰をあげ、棚から逆さにしてあったグラスを一つ取ってきて、机の上の酒瓶に並ぶよう置いて

「高いものは得てして、相応の味を誇るものよ」

その言葉は酒についてのことなのか、それとも──少女の真紅の視線が揺れる、目の前の狐の血への言葉か

タマモ > 「次にやったらお返しじゃからな?絶対じゃからな?」

そもそも、今の体勢が悪い。
よっぽど鈍い相手でなければ、どちらにしても無理だっただろう。
…と言うか、耳の大きさが違い過ぎる、なにこれきたない。

「むむむ…飲んでおらねば、確かに分からんか…」

酒好きでよく飲んでいるならば、答えられる問いだろうが…そうでないなら、確かに難しい。
唸りながら、並べるボルトに目を通して。
だからなのか、少女から向けられている視線に、気付いていない。

「うん?…ていすてんぐ?」

続く少女の言葉に首を傾けるも、棚へと向かい、グラスを手に戻ってくるのを見れば、何となく分かった…気がする。
本当に分かったのかは、別だが。

「飲んでみれば分かる、と言ったところじゃな?」

少女に言葉に対し、問い掛けながら、酒瓶とグラスと少女と視線を巡らせる。
さて、実際に少女の言葉はどちらを指すのかは、こちらには分からない。
そもそも、視線がこちらを狙うように向けられている事さえも気付いていないのだから。

ご案内:「王都マグメール 王城・第七師団執務室」にグラスシエルさんが現れました。
マリー >  
「ふふ♪」

随分と可愛らしいことを言う狐様である
微笑ましげに笑いつつも、口の端をちろりと舌が舐る

「そうそう…飲んで、味わってみないことにはわからないもの」

どうぞ、とグラスをついとそちらへと差し向ける

───達観した物言いをするようにも思えたが、案外と話の通じる…扱いやすい狐のようであった
…なにかと、利用することもできるかもしれない
敵対するメリットは今のところ見当たらない───

打算的な光をその瞳へと讃えて、様子を伺う

タマモ > 少女の微笑みを浮かべる様子、それが視線の端に見える。
あ、これ、きっと可愛いとか思ってる時の笑い方だ、そう思っていた…その印象が強すぎて、舌なめずりは見てなかったようだ。

「うむ…では、せっかくじゃ、頂こうかのぅ」

グラスを手に、遠慮なく酒瓶にも手を伸ばし、栓を抜く。
グラスへと注ごうとするも、少し考える仕草…間を空け、少なめに注いだ。
あんまり量を注ぐと、全部が試せない、そう思ったからだ。

確かに、下手な事をしなければ、扱い易くはあるだろう。
だが、もし扱いを間違えたならば、その時のデメリットは非常に大きい…今はまだそれを理解は出来ないだろう。

そんな己の様子を伺う少女の視線には、気付いていない。

マリー >  
「狐さんは、お酒をよくお嗜みになるのね───」

再び椅子にかけ、頬杖をついて
さっそく酒の味見をはじめるであろう狐の少女を眺める

「私も美味しい血が飲みたいけれど、
 人間の国ではなかなか難しくって…ふふ、騒ぎになってしまいますものね」

ふっと笑う
似た成分のモノなら、存分に下の口から飲んでいるのだけれど

やはり牙を突き立て啜るそれと比べれば幾分も趣が違う───

「ふふ、ではごゆっくり味見をどうぞ♪
 ……えぇ、ごゆっくり───ね…♡」

真紅の視界に、少女の姿を納めて
誰も訪れないであろうこの部屋で……少しずつ、マリーの心は高鳴りはじめていた───

ご案内:「王都マグメール 王城・第七師団執務室」からマリーさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城・第七師団執務室」からタマモさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」にルクレースさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 王城」にアーヴァインさんが現れました。
アーヴァイン > 「あぁ、それにレザーアーマーと比べても軽い。身のこなしがいいミレー族には打ってつけだ」

魔法適性の高さ、生来の獣らしい名残や生い立ちから来る身のこなしの良さ。
小さく頷きながら答えた言葉は、魔法と機動性の両立をした彼女達の特性もよく理解しての選択だ。
思いの深さに言葉が消えていく様子に、ほんの僅かに違和感を覚えればどうしたのやらと軽く首をかしげるものの、黒髪を遠慮なく撫でていく。

「俺の癒やしと安定に寄り添ってくれる、それだけでも十分感謝している」

オムレツ作りに成功し、小さくも大切な一歩を踏み出した夜を思い出す。
その時の彼女の笑顔や喜びが、暖かな笑顔を浮かばせていき、指の間でくしゃくしゃと黒髪を撫で回した。
しかし、彼とて欲はある、『とはいえ』と小さく呟くと、その掌は頬へと添えられていく。

「俺もルークの手料理を色々食べてみたい。あまり急かすのも良くないから言わないでいたが……男としては至福の一時だからな」

愛する人が手料理と共に、笑顔で帰りを迎えてくれる。
それは身分問わずどんな男でも夢見る、暖かくも幸せな一瞬だろう。
頑張り屋な彼女が、無理に急かないようにと堪えていた言葉を語ったのも、どれだけかかろうと待つ意志を伝える為。
いこうかとささやき、頬に触れた掌が肩に触れると、そのまま私室へと向かっていく。
お湯で陶器を温めながら背後から掛かる言葉に、クスッと笑えば、ポットの湯を捨ててから茶葉を入れ、ゆっくりと湯を注ぐ。

「俺から言わなかったら、ギリギリまで来てたということか…先に聞いて正解だった」

彼女の細さを彩るデザインと、徐々に腹部が膨らんでいく母の身体では噛み合いが悪い。
それでも限界まで自分の目を楽しませようとしてくれる気持ちに、嬉しそうに笑いながらも安堵する。
与えられることの少なかった経緯が、必要以上に大切にしてしまう気持ちを孕む。
それは形は違えど、ずっと面倒を見続けてきたミレー族の少女と一緒で、愛しさと共に淡い痛みを伴う。
その言葉の後、しどろもどろに崩れる言葉に何かを感じ取れば、眉をひそめつつ、ソーサーに乗せたカップを手に、彼女の元へ。

「必要なものは必要、あまり遠慮しなくて大丈夫だ」

ドレスを渡しても、自分にはもったいないからと中々袖を通さない。
買い与えた靴も、中々履けずに少しキツくなったところで泣きべそを見せる。
そんな少女達を見てきた身としては、遠慮の理由に察しがついたのだろう。
柔らかに笑みを浮かべつつ、カップをテーブルの上へ置くと、隣へ腰を下ろす。

「元々は偵察工兵だったからな。水晶や魔石で撮影ができても、それが出来ない時のためにデッサンを教え込まれた。形になり始めると結構楽しくてな、気晴らしに絵を描いたりしてたが、今は違う事に役立ってる」

服のデザインも、背景画から人物、そしてその延長線上で初めたのだろう。
とはいえ、細かな事はできないので、イメージを書き出したら本職に任せるしかない。
御礼の言葉に、どういたしましてと微笑み、こちらもお茶で身体を温める。
渋みが強まらない程よい温度調整、手際の良さなどは彼女に劣るが、基礎は確りと掴んでいるらしい。
カップを置けば、熱の移った掌で太ももに触れ、そのままなぞりあげるように下腹部へ。
日に日に大きくなる結晶の具合を確かめようと、優しく撫でた。

ルクレース > 「確かに、鎧などで防御力をあげてもすばやさが殺されてしまえば彼女たちにとっては致命的となるでしょうね。」

獣らしい身のこなしをするのに、身軽であればあるほどいい。
それは、早さを活かす戦闘スタイルをもつルークにはよくわかる話で頷きながら答え。
彼に贈られたドレスに込められた想いを、改めて実感して言葉をなくしたルークに彼はすこし不思議そうにしながらも彼の手は優しくルークの髪を撫でる。

「―――…。はい、まだまだ未熟ですが、アーヴァイン様が好まれるような料理を作れるよう精進いたします。」

傍にいるだけで十分だと、変わらぬ言葉は嬉しくもありけれどそれ以上何も出来ないのだろうかともどかしくもあった。
しかし、髪を乱すように撫でる手が小さなつぶやきとともに頬へと滑ると言葉が続く。
それは、彼からあまり聞くことのない強請る言葉でしばし彼を見つめたまま何度か瞬きをして、そしてじわりと胸の中に広がる歓喜を覚える。
それを生業とする城のシェフのような極上の料理を作ることは、とても難しいだろう。
けれど、シェフとは違う気取ったものでなく下町で親しまれるような料理を彼が好むのは、夜食の件で知っている。
そんな、彼が安心と安寧を得られるようなものが作れたらという想いが一層強くなっていく。

「後ろのリボンで多少腹部を緩めることができましたので…まだ、大丈夫かと思いまして…。」

ウエストのタイトな作りのドレスに、少々窮屈さを感じてきてはいたため、そろそろ腹部のゆったりしたものを探さなければとは思っていたものの、あと少し、あと少しと先延ばしにして今日まできていた。
テーブルの上に皿を二枚広げ、紙袋から取り出した紙製の箱に収められたアップルパイをナイフで切り分けて載せていく。
戻ってきた彼は、服を仕立てることに対して言いよどんだルークの言葉を聞きとがめるように眉をひそめている。

「…そうなのですが、いただいてばかりで…。」

言いよどんだ理由を察したように、告げられる言葉にテーブルに置かれたカップの中で揺れる紅茶の液面へと視線を落としながら小さな声で遠慮の理由を告げて。

「手先が器用で、いろんなことをなさるのですね。」

こくりと喉を通り抜ける暖かな紅茶に、ほっと一息をつくと彼の以前の経歴から身につけられた趣味の話に関心を向ける。
料理を作ったり、小物を作ったりと手先が器用なのは知っていたが絵まで嗜むとは、できないことのほうが少ないのではないかと思えてくる。

「………お腹の中にもうひとつの命があるというのが、少しずつお腹の中で大きくなっていくのが、とても不思議です。」

紅茶の熱が移った手のひらが太ももに触れると、じんわりとした暖かさが染み込むように伝わってくる。
そこから滑るようにして、服の上からでも少し膨らみが目立ち始めた下腹部に手のひらが触れて優しく撫でるのを感じながら、その手に自らの手を重ね。

アーヴァイン > 色々食べてみたいと強請る言葉を告げたものの……急かすつもりはないと重ねても、気合い充分な言葉が変えれば、困った様笑う。

「ありがとう。だが、急がずじっくりとでいい」

あまり気合を入れすぎて、お腹の子供に差し支えたら良くない。
程々にと苦笑いを浮かべながらも彼女の気持ちに、こちらもじんわりとした喜びで満たされていく。

「お腹の子供が苦しいと悲鳴を上げそうだ」

冗談めかすように微笑みながら宣うと、隣へと腰を下ろす。
言い淀んだ理由は、予測と重なっていたらしい。
もらってばかりと言われれば、俯く彼女の頬を指先で悪戯に突っつこうとする。

「俺もルークから貰ってる。癒やしを、だ。それに月を飾る夜や、薄い雲に、月は恐縮だなんていわないだろう?」

月一つでは、その美しさは際立たないが、朧気に飾る薄雲や星の輝を纏う紺色の空があればこそ、月は一層に輝く。
自分だけの月の姫君、それになぞるような言葉で語るのは、気に病むことではないというところだ。
そして、色んな事…その言葉に何やら痛いところを疲れたのか、少し駄目を見開くと、バツが悪そうに視線をそらす。

「……大体は出来るが、一流とはいかない。これはこれで中々辛い」

色んな所を転々とした結果、色んな技術を身につけはせど超一流とまで言えるのは魔法弓の技術ぐらいだろう。
なんでも出来るが、完全にはやりきれない。
真面目さ故な、小さなコンプレックスをつかれたらしく、困ったものだと眉をひそめて笑う。

「そうだな……こうして触れないと時折忘れそうになる。そして触れれば触れたで、少しルークが遠ざかる気もする」

もっと大きくなれば、その身体を重ねて繋がり合うことも難しくなる。
生まれ落ちれば、最愛の人は暫し子供に独り占めされてしまう。
淡い寂しさを覚えれば、重ねた掌を握りしめ、優しく引き浴せていく。
そのまま此方へ寄りかからせるようにして抱き寄せれば、背中に回した両腕が身体を包み込む。
愛してる と、幾度も囁いた心からの言葉を届ければ、首筋に顔を埋めていく。

ルクレース > 「はい、まずは料理の基礎になる所をしっかりと身につけていきたいと思います。」

基本が大切なのは、何においても変わりはない。
基本を疎かにして、いい結果がでることはないのはよく知っているから、彼の苦笑いとともに釘を刺す言葉に頷いて。

「…私は苦しくなくても、お腹の子は苦しかったのでしょうか…。」

彼の冗談めかした言葉を本気にして、お腹の中の子供に障りがあったらどうしようと表情に変化はあまりみられないながらも、動揺しているのが彼にはわかるだろう。
紅茶の液面に視線を落とすと、彼の指先が悪戯に頬を突くのに驚いたように彼のほうを振り仰ぎ見て・

「ですが、それ以上に私はアーヴァイン様にたくさんのものを頂いています。…それは、そうですが…。」

彼に癒しを与えることができているなら、とても嬉しいと思うけれど彼から与えられたものは多すぎて、釣り合っていないように感じてしまう。
ドレスや物だけでなく、心や居場所、ここにいてもいいのだという安心感と安定感を与えてもらっていた。
静かに彼を照らし出す月になぞらえた言葉に、彼が甘く囁く月の姫君という言葉を思い出して頬が微かに染まり。

「何かに特化して、一流と呼ばれる人も凄いのでしょうが広くいろんなことができるのも、それだけ様々なことを学び習得するための努力を要すること、だと思います。」

様々なことができるのは、それだけの努力を今までにしてきた結果だと思うからバツが悪そうに視線を逸らせて、困ったように笑う彼を見つめる。
駒として必要な技術は身につけたが、駒として必要のないもの、例えば料理や家庭的なことなどには目も向けたことがなかったルークからみれば、誰かのためを思い、自分を高めるために努力を続ける彼はそれを誇ってもいいと思う。

「…私は、触れれば貴方様との距離が近くなるように感じます…。貴方様が諸用で遠く離れた地に赴いていらっしゃるときも、お腹の中に貴方様とのお子がいるのだと思うと、つながっているのだと感じられます…。」

女から母になっていくルークを、男の立場から見れば遠ざかっていくように感じられると彼は言うけれど、お腹の中の子は目に見えない他人との繋がりを目に映し、触れられる繋がりの証のようにルークには感じられていた。
重ねられた手が握られ、引き寄せられるとぽすんと彼の腕の中に収まる。

「…っ…」

首筋に顔を埋められ、吐息がそこにかかるだけで擽ったさと熱が生まれて首をすくめながら、彼の頭を抱きしめていく

アーヴァイン > 慌てずにじっくりとステップアップ…とも言える部分はあったと思う。
しかし、自身の体を気遣われているというところに気付いてなさそうな様子に、自分と勝るとも劣らない真面目さだと微笑みつつ、小さく頷いた。

「まだ形になりきってないだろうから大丈夫だろう。ただ意外と寝返りとかは気をつけたほうが良いらしい。同じ方向に傾いていると、そこだけ頭蓋骨が平らになるらしい」

胎児もまだ人の形に近づき始める頃だろうと思えば、大丈夫だというように優しく撫でていく。
添えた言葉も、これから気をつければ良い範疇であり、何より死にはしない。
それを打ち消すように、彼女に恥じらいを与えれば、いまだ言い淀む彼女を抱き寄せる。

「そうやって俺がここにいることを示してくれる、それだけで十分だ。組合長になって、師団長になり、王族となって……どんどん、自分が消えていきそうなのを留めてくれる」

器用貧乏な一面も、こうして真面目に長所だと褒めてくれる。
そんな存在がいるだけで、自分という個を失わずにいられる。
肩書の上ではなく、ただ一人の男として、愛してもらえるのは、途方もない道を歩きだした自分にとって大きな幸せ。
だからこそ、抱きしめる腕に少し力がこもっていく。

「男はずっと子供だと揶揄されるが、こういう事かもな。それすらも、淡い嫉妬になるんだ」

自分と深く繋がった人、その合間に生まれる結晶に意識を向けられることに、子供ながらな嫉妬を覚える。
もっと自分だけをと、我儘が反射的に浮かべば、抱きしめる腕と僅かな熱の変化に誘われ、首筋に甘噛みをした。
ちゅっと吸い付き、舌先で薄っすらと鬱血したラインをなぞりつつ、背中に回した掌が滑り落ち、臀部を撫でる。

「もらってばかりと言ってたが、代わりにルークから普通を奪ってしまおうか? 抜け出せないほどに被虐を覚えさせて」

羞恥の快楽を皮切りに、被虐的な快楽を覚え始めた彼女へ、更に深める誘いを囁く。
心に残るぐらいなら、その棘を快楽で抜いてしまえば、心地よく甘く、楽になれるはずと。

ルクレース > 「そうなのですか?…では、アーヴァイン様に抱きしめていただきながら眠るのは、よくないのでしょうか…。」

お腹の中の子が苦しいことはなかったのに安堵するものの、添えられた言葉にどこかしゅんとする響きが混ざる。
しかし、そんないろんな思考を打ち消すかのように彼の腕の中に抱きしめられていく。

「…ずっとお側にいます。どんな時も、どのような事があっても、貴方様のお側に…。」

組合長でも、師団長でも、祟神でもなくアーヴァインという個人を想い慕い、傍にいることを誓う。
きゅっと彼の背にルークもまた手を回して、彼を抱きしめる。
彼から沢山のものや想いをもらって、ルークから返せるものはとても少ないけれど、それで彼に癒しと安寧を与えられたらと想い。

「…そういうもの、ですか…。―――ぁ…っ…っ」

彼の意外な子供っぽい嫉妬の告白に、呟くが甘く歯をたてられるのに息を呑み、ぴくっと背筋が震える。
そして、ちゅ、と小さな音をたてて吸い上げられ、うっ血したそこに濡れた舌が這うのにきゅうと彼の背に回した手が、彼の服の布にシワをつくる。
するりと臀部へと滑った手がそこを撫でると、猫の背を撫でるように背筋が湾曲するように曲線のラインをつくる。

「普通を、ですか…?どのようなものになるのか、分かりませんが貴方様が、そんな私を望んで下さるなら…。」

彼が与えるのに、芽生え始めた被虐性を更に深いものへと沈める誘いに、それがどのようなものか想像もできないのに、小さく頷いたのはやはり、彼に求められたいという願望からだった。

アーヴァイン > 「そうだな…俺が定期的にルークを転がしてあげないとな?」

抱きしめたままとなると固まってしまう。
分かりやすいほどにしょげた音に、クスッと微笑むと元気づけるように背中をなでた。
それなら寝ながらも子供へ風を送る様に、彼女を優しく転がして寝返りを打たせればいいだけだ。
こうして、自分という存在だけを見てくれる姫君のために。

「ありがとう……あぁ、そういうものだ」

お礼とともに、男が抱く淡い嫉妬を囁やけば、キスから擽る身体に熱が灯っていく。
掌に感じる綺麗な曲線美の感触は崩れず、子を育てるためだけに腹部が変わる歪さも、言い知れぬ色香となって彼の心臓を高鳴らせた。

「望むさ……人前で恥をさらす幻想の中で、あれだけの笑顔をみせてくれたのだから」

人へ見せつけて、自慢して、それでも触れるのは自分だけという甘く勝手なお披露目。
その妄想の合間に見せた笑顔は、ハッキリとしていたのを今でも覚えている。
ああいう、卑猥で甘い一面をもっとと思えば、丁度いいと小さくつぶやき、ぽんぽんと背中をなでてから腕をとき、額にキスをして立ち上がった。

「一度着せてみたいのがあったからな、それを着てもらおうか」

ウォークインクローゼットの方へと向かえば、扉をくぐり、ごそごそと物音を立てて何かを探る。
数分ほどすると、大きめの綺麗な箱を抱えて戻り、それを床におろし、蓋を開ける。
収まっていたのは真っ白なドレスだが、普通のドレスではない。
広げるように取り出すと、今来ている華ロリ系の落ち着いたモノとは違い、ゆったりとしたデザインをしている。
それもそのはず、人形の様に飾り立てる純白のワンピースドレスだからだ。
パフスリーブに姫袖、胸元もフリル飾りが多く華やかで、スカートは腹部辺りから広がり始め、レース飾りも多い。
所謂、甘ロリ系の白いそれは、秘書との記憶を喚起させるだろうか?
極端なものを好む、可愛いなら極振りに可愛らしく。
白薔薇のコサージュの飾りも施され、砂糖のように甘いが、派手さが少ないのは彼の趣味のせいだろう。