2017/09/10 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城 庭園」にルークさんが現れました。
ルーク > 夏の盛りをすぎて、次第に季節は秋めいてきたなかで季節の移り変わりを色濃く感じさせる、四季折々の花が植えられた庭園では、虫の音色が響いている。
そんな静かな庭園に、バサリと力強い羽音が突然響く。

『今日はこの位にしておこうかね。バランス感覚は大体掴めてきたようだ。』

空を滑るように無音で飛来してきたのは、一羽の隼。
着地直前に庭園に羽音を響かせて、大きく羽ばたいて姿勢を変えると地面に静かに降り立った。
しかし、普通の隼と異なるのはその色と大きさ。
真っ白な羽は月の光を反射して輝いてすら見えるほど。
そこに隼特有のウロコ状の黒い模様が浮かび上がる。
人よりもかなり大きな体の、その背中から人影が飛び降りる。

「有難うございました。」

身軽に地面へと着地したルークは、訓練に付き合ってくれた相方の隼へと礼を告げる。
人の身よりもさらに大きな隼は、その背に契約者を乗せて飛ぶことができるが、乗る者にもある程度技術が必要とされるのは当然の事で、感覚を掴むためにドラゴンフィートから王都までを何往復かして乗り方の感覚をつかむ訓練をしていた。

『体の方は大丈夫かい?』
「ええ、問題ありません。」

昼間はまだいいが、夜ともなれば少し冷えるようになってきた。
ましてや、空を高速で飛ぶとなれば寒風に晒されることになる。
冬用の防寒具までは必要ないが、厚手のショールを羽織るルークへと向けられる気遣いは、隼が雌だからこそだろう。
お腹に宿る命にとって、冷えは大敵だからとショールを勧めたのも彼女だった。

ご案内:「王都マグメール 王城 庭園」にアーヴァインさんが現れました。
アーヴァイン > 羽ばたく音に空を見上げれば、空には大きな隼の姿。
仕事を終え、城へと戻ったものの彼女の姿はなかった。
ハンスが呼びかけるのを辞めておいたほうがいいといったのは、そういう事かと納得しながら、手にした本を閉じる。
立ち上がり、庭園の開けた場所へと歩いていけば、件の隼と愛する人の姿を視野に収めた。

「お疲れ様、今日も練習か?」

労う言葉と共に直ぐ側まで近づくと、彼女に微笑みかける。
傍らに居た隼の方へと向き直れば、ありがとうとお礼を告げて、再び視線は彼女の方へ。
普段と変わらぬ愛らしい格好だが、少し違うのはショールを羽織っていたこと。
それ目にし、嗚呼と一人納得した様子で空を見上げた。

「暑いと思っていたら、あっという間に秋だな。早いものだ」

時が過ぎると共に、彼女の胎内では子供が育っていく。
父親になるまでの時間もあっという間だろうかなんて思いながらも、掌を伸ばせば、彼女の頬を撫でようとする。

ルーク > 『命を育む大切な時期だ。決して無理はしてはいけないよ。』
「…はい、分かりました」

諭すような、けれど優しい言葉にルークは素直に頷く。
こんなふうに、保護されるように気遣われるのは夫となったその人以外には、あまりない経験でどこか擽ったくて戸惑いを感じるが、暖かくもある。
そんなやり取りをしていれば、庭園へと現れたのは愛するその人で労う言葉とともに傍へと歩み寄ってくる彼の姿に、表面に殆ど現れないながらも、琥珀の瞳がぱっと輝く。

「アーヴァイン様。はい、普通に乗る分にはもう問題ないとドリィのお墨付きをもらいました。」

隼は、彼のお礼に応えるように首を振った。
そんな彼女を見上げながら、練習の成果を彼に報告する。
安全第一ということで、通常飛行以上の事は今のところお預けとなっているが王都と集落の往復程度なら、彼の相棒たるハンスに追従する事は可能だろう。
ドリィと彼女を愛称で呼ぶのは、彼女がそう呼ぶといいと勧めてくれたこともあり、お互いよい関係を築きつつあることが伺えるだろう。

「今年は、残暑がそこまで厳しくないように思われます。季節も、時間も意識すればあっという間に過ぎていってしまうようです。」

彼の言葉に釣られるように、視線を空へと向ければ澄んだ空と星と月がきれいに見える。
頬に手が伸びて撫でられれば、微かに撫でられる頬が染まりそのぬくもりに琥珀の瞳が細められる。

アーヴァイン > 他の人達からすれば、表情の変化はとても薄く、気付きづらいほどに微差なもの。
けれど、此方を見やる瞳が、子供のような喜びを感じさせる色合いをみせたりと、感じ取れるだけの変化がある。
そして何より、彼女のそんな小さな変化が愛らしく、笑みを深めていく。

「それは凄い……順調でいいことだ」

慣れるまで個差はあるが、彼女はペースも早いほうだろう。
暗部で俊敏で確実な動きを身につけてきた過去は、彼女を人らしさから遠ざけていたが、今回ばかりはそここそ活きたと言わざるをえないか。
そこに気付いているかどうか、気づかないならその方がいいと思いつつ、優しく頬を撫でる。

(彼女が相棒となって正解だったな)

ひっそりと一人思うのは、人付き合いになれていない彼女と隼との関係。
まだ集落の少女達といると、振り回され気味だったが、穏やかで母親のようなドーリスは優しく手を引いてくれるかのように見えた。
愛称で呼び合う程の距離感、寧ろそちらに少しだけ驚きつつ、目を細める。

「そうだな、秋は食もすすむ季節だ。今のルークにはちょうどいいかもしれない」

雲のない空に浮かぶ星々と、くっきりと見える月夜。
涼しく過ごしやすい季節は、色んな事をしやすくなる。
子供の分も栄養が必要そうだと思うと、楽しげに笑いながらそんなことを呟き、恥じらいと喜びを浮かべる彼女の方を優しく抱き寄せた。

ルーク > 『念話の方は、まだまだ練習が必要だけれどね。』
「………ぅ…。」

笑みを深めながら、彼から褒められるのに照れながらも嬉しさを滲ませるルークに、ドーリスがくすくすと笑いながら付け加えると痛いところを突かれて、ルークの視線が少し彷徨う。
愛称で呼ぶことも、ドーリスが望むという形で求められ良い関係に進むようにと誘導された結果距離感はぐっと縮まった。
相手の対人関係を構築するためのスキルの低さを見通して、それに合わせた関係構築ができるのは長きを生きているからこそとも言えるだろう。

「そうなのですか?季節によって食欲が変わるのは、あまり感じたことがありませんが。」

豊かな実りの季節は、寒い冬を迎える前の準備期間でもあり、夏の暑さから涼しくなる気候は、食欲を増進させる。
しかし、食べることに頓着してこなかった事から、食欲の変化は良くも悪くも今まであまりなかったように思う。
真面目に彼の言葉に、そう返しながら微かに首を傾げれば優しく抱き寄せられて近くなる鼓動とぬくもりに体から微かに力が抜けていく。

『さて、私はそろそろ塒に帰るとするかね。』

そんな二人の様子に、お邪魔虫は退散するよとドーリスは翼をはためかせて空へと飛び立っていく。

アーヴァイン > 「ははっ、それだと…甘い言葉を言う時は気をつけないとな」

すらりとその愛の程を伝える言葉を口にしてしまうが、その後に聞こえるダダ漏れの喜びの思考が時折念話に交じるのを知っている。
まだ変わらずと聞けば、ドーリスと共に微笑みながらも、恥じらうように視線を逸らす彼女の髪を優しく撫でた。

「夏は暑さで食も進まず、疲れるだろう? 秋になると、涼しくて過ごしやすいのと、実りの秋でもある。調子を取り戻そうと食はすすむが…食べ過ぎには注意だ」

それこそ最近になって好みが出来たばかりの彼女だとそうかと思いつつ、そんな例え話を重ねていく。
母体として栄養が必要になる今は、ある意味丁度よくあるが、程々にと言うように指先で軽く彼女の臍のあたりをつっつくだろう。

「ん、あぁ…何だか促してしまったみたいですまない」

変わらずに接している中、空気を察したドーリスに苦笑いで謝罪を。
空へ舞い上がる姿を見やりながら、自分の相方たるハンスを思い出した。
アイツなら絶対無言で去るか、程々になといらないお節介をする。
よく出来た人…ならぬ、隼だと思いながら、くったりとしている彼女の体をしっかりと抱きしめ直した。

ルーク > 「……っ…ぅぅ…」

念話の未熟さを指摘されれば、彼の言葉に恥ずかしそうに頬が染まる。
思考がダダ漏れになってしまうのは相変わらずで、騎乗スキルの肉体面での器用さとともに、精神の関わる分野の不器用さを見せて。

「確かに、涼しくなり体の疲労感も暑い時に比べると和らいだように感じます。なるほど…。」

例え話にそういうものかと納得しつつ、ほどほどにというように臍の辺りをつつかれっれば思わぬところに触れられて頬の赤みがさらに増す。
胎児の眠るそこは、微かにふっくらと変化してきていて。

「ドリィ、お疲れ様でした。また明日…。」

極力風を抑えながらも、一気に空へと舞い上がる隼の白い羽は月明かりを反射させてキラキラと輝いて見えた。
彼の腕の中で、飛び立っていく彼女にそう挨拶をするとすぐにその姿は見えなくなっていく。
抱きしめ直され、少し深く息を吸えば彼の香りとぬくもりに包まれる。
彼の背にルークも腕を回し、きゅっと自分からも抱きつくようにしてその身を委ね。