2017/09/01 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城 庭園」にルークさんが現れました。
ルーク > 夜ともなれば、吹く風は冷たく過ごしやすくなり季節の移り変わりを感じさせる。
魔石によって仄かな光が点在して、庭園の道、足元を照らし出している。
空を見上げれば、満ち始めた月と、星が夜空を彩っている。
さらさらと流れる小川の音と、虫たちの声の協和は耳に心地いい。
小川近くにあるベンチまで歩み寄ると、ルークは手に持っていた幾つかの書籍を先に置いてからそこに腰掛けた。
初夏の時期、ここには蛍という光る虫が飛んでいたのを思い出すと、夏が過ぎ去ろうとしている今、時間の早さを感じる。
そんな風に、過ぎ去る季節に思いを馳せることも、変化を気に留めることもなかった今までの感覚からすれば、それを感じる感性そのものが大きく変化していて。

ご案内:「王都マグメール 王城 庭園」にアーヴァインさんが現れました。
アーヴァイン > いつもなら私室か執務室に姿が見えたはずの彼女が見当たらず、何処へ行ったのやらと王城内を歩き回る。
バルコニーから見える庭園は、魔石の明かりに照らされ、中々情緒のある景色を見せていた。
そこに見え覚えのある姿を確かめれば、足早に階段の方へと周り、直ぐに駆け足気味の足音が聞こえるだろう。

「一気に涼しくなったな?」

月を跨ぎ、ページを捲ったかのように様変わりする気温。
苦笑いを浮かべながら彼女へと近づくと、その隣へと腰を下ろす。
バルコニーから見えた景色もきれいなものだが、こうして間近で見るのもまた、彼女が思い浮かべたホタルを彷彿とさせ、風流だと思いつつ目を細めた。

「……それは?」

傍らに置かれていた書籍へと視線を向けると、視線を彼女へと戻し、問いかける。
同時にすっと腕を伸ばし、細い身体、その肩へと掌を掛けて、ゆっくりと抱き寄せようとする。

ルーク > 小川の流れる音と、虫の声に耳を傾けていれば無意識にこの間見た夢のことを思い出していた。
振り返った先に累々と積み重なる、駒になれなかったモノたち。
それに抱く感情は――まだよく分からない。
哀れだと思うほどに、彼らに対して優越感を感じることもなく、罪悪感を抱くには、彼らに自分の存在は近すぎる。
駒として作られるモノの必要性と、弱きモノが淘汰されて要らないモノになるという図式は、物心つく前から息をするのと同じように教え込まれてきたから。
駒として、子を産む道具として在った自分が、人のぬくもりと与えられ、人らしさというものを得られたのは幸運以外の何物でもない。
そんなふうに考えている思考に、足早な靴音が聞こえてすぐに反応すると振り返った先には、駆け寄ってくる主の姿が見えた。

「はい、暑気が嘘のように消えて…。」

がらりと変わった季節感の感想の声に、ルークもひとつ頷いて同意を示す。
となりへと腰掛けた彼が、傍らに置かれた数冊の書籍を目に留めて問いかけてくるのにそれを持ち上げると膝の上に載せて。

「妊娠に関する本と、この国の神について書かれた書籍を図書館より借りてきました。子を生むための道具として孕んだ場合、専門の施設で母体として管理される予定でしたので、妊娠の事はあまり知識がありませんでしたので。」

医学的な書籍の類は、妊娠で起こる体の変化を図解つきで解説している。
世間一般の母親になる女は、自分の母親などから学び兄弟などの出生によって身近に経験することも多いのだろうが、ルークにはその経験は全くない。
育児書などではなく、専門的な医学書を借りてきたあたりはやはり少しずれているのかもしれない。
そして、もう一つ、この国の神話などの書かれた本は、彼や
彼の組織が扱う隼について知りたいと思ったから借りてきたわけだが、旧神の存在が消されている今資料としては役にたたないだろう内容だった。

「――‥……。」

自然に伸ばされた手が、肩へと掛かり抱き寄せられるのにきゅぅっと胸が締め付けられるような、けれど心地よい感覚に頬を微かに染めながらその腕にその身を委ねる。

アーヴァイン > 「あぁ、ようやくスノーフルーフ達もやる気を出すようになった。いい仕事はするが…マイペースでな」

風が吹けば、僅かに肌寒さを覚えるほどだ。
また夏日が戻ってくれば変わってしまうのかもしれないが、秋はすぐそこだろう。
以前氷室で間近で出会ったエナガ達の事をぼやきながら微笑むと、膝の上へ乗せられた本の表紙へと視線が向かった。

「妙な組み合わせだな? ……あの義父の事だから人道的な場所、ではないだろうな。その…俺もこういう事は初めてだが、悪阻が大変というのは聞いたことがある」

一つは彼女の体で育ちつつある子の事。
本から前学習のように理解しようとする辺りが、真面目な彼女らしいと思えて、柔らかに微笑んだものの、もう一つの本に訝しげに首を傾げた。
ともあれ、気になったのは腹部に宿った子供から流れる老廃物が引き起こすという吐き気。
酸味のモノを求めるようになると、頃合いだとか耳にしたことがあり、心配そうに見やりつつ、肩を抱き寄せる。
恥じらう仕草が見えると、その愛らしさに思うがまま頬へキスを重ねて、甘くじゃれついた。

「……そうだ、義父にはルークを正妻とする旨を伝えておいた。想定通り…とは行かなかったが、許可を得たから安心してくれ」

ずっと欲していたただひとつの場所。
それが彼女のものになった事を語れば、黒髪を優しく撫でる。
血と引き換えに戦う場所へ身を投じる必要も去り、母体にも心身共々に理想的な環境へ近付いたはずだ。

ルーク > 「このくらいの気温でも、冬を司る精霊にとっては暑いものなのでしょうか。」

まだころころと気温が変り、不安定な季節。
暑い~動きたくない~と氷室の中でつぶやいていた、可愛らいいフォルムを思い出す。
またそんなふうに、我が道を進みながらも組合の手伝いをしてくれているのだろうかと、考えて。

「こちらは、アーヴァイン様や組合の少女たちが契約している隼のことなどが乗っていればと思いまして。実際どのような施設なのかは、私も行ったことはないのですが…。悪阻にもいろんなものがあるようで、強い睡気や食べていないと気持ちが悪くなるのも悪阻の一種だそうです。私は、甘いものよりも酸味の強いものが好みになる味覚の変化と、匂いで気分が悪くなるのと、睡気のつわりが少し出ているようです。」

施設は、まさしく母体を子を産むための道具として管理する場所。
母体は様々な管に繋がれ、胎児を育むための機器の一部とされる――そんな、彼の想像通りの人道とは程遠い場所だった。
もう一つの本への問には、神の意思を告げる隼たちのことを知ろうとしたのだと答えた。
悪阻に関しては、本を読んでみれば一般的に想像しやすい吐き気や酸味を求めるようになる他にも、食べつわりや眠り吊わりなど様々なものが書いてあった。

「――……ルーアッハ様が、お認めに、なったのですか…。その、本当に…よろしい、のでしょうか…。」

肩を抱き寄せられ、頬に優しくキスをされてふわふわと暖かくて幸せな心地になる。
その彼から、穏やかな声のまま驚きの事実を聞かされて琥珀の瞳を丸くして何度か瞬きを繰り返す。
確かに、自分は彼の子を孕むという役割も与えられて『駒』として彼に投げ渡された。
子を孕んだこと自体は、ルーアッハの思わくの内ともいえよう。
しかし、駒であるルークを正妻にと言えばそうそう彼は首を縦には振らない事は想像に容易い。
そこにいてもいいのだと、ただ一つの場所を望む気持ちはとても強く、それが叶うのはとても幸せなこと。
けれど、本当にいいのだろうかと大きな幸せに不安な気持ちがこぼれていて。

アーヴァイン > 「嫌ではないが、本調子になれない……というよりは、やる気が出ないというところか。あれでも器用な鳥でな、集落の防壁を組んだりできる」

見た目に惑わされがちだが、冷気と風を操れば、吹雪で敵を凍てつかせ、速度こそないが滞空しながらの作業は目をみはるほどだ。
ただ、加入したのが夏手前というのもあり、その光景は…中々お目にかかれなかったのは、事実だろう。
それを知ってか、楽しげに笑みを浮かべている。

「そういうことか……すまないが、王都の書籍にはほぼ記載がない。あるとすれば、スノーフルーフのおとぎ話ぐらいだろう。ハンスやリトルストームは…ミレー族にしか伝承が残っていない」

旧神の名残たるリトルストームは、特に徹底して情報が潰されていたことだろう。
しかし、奥地に逃げ込んだミレー族達は異なる。
その足がかりを掴んだ昔話を思い出し、笑みを浮かべたものの…続いた言葉に、嗚呼と呟きながらげんなりとした表情を見せる。

「間違いなく、行かないほうが良さそうだ」

ろくな場所ではないだろう、情報提供者すら簡単に殺す奴の設備だ。
実際、想定通りな場所だったとは知りたくもないはず。
続く言葉に、何度か頷きながら耳を傾けると、成る程と行ったように感心した表情で彼女を見つめる。

「それでりんごの味が違って感じたのか、そうか…眠気となると…もう無理はしないでくれ? 敵の前でフラフラになられたら大変だ」

冗談めかして笑いながらも、優しく黒髪を撫でる。
もう、その危険を犯す必要性もないのだからなおさらだ。
だが、仕事を取り上げたら手持ち無沙汰さで罪悪感を覚えるのだろうなと思えば、ひっそりと事務作業ぐらいは振り分けようと考えつつ撫で続けた。

「あぁ、ルークを娘として認めろと突きつけた。王族の娘と婿養子なら何ら問題ないだろう? それに、他の王族の声が混ざらない。案の定、断られたが…声はいれたくないらしい。養子の俺がが王家の血縁者を娶ったということで片が付いた」

所謂交渉術の一つだが、相手に断らせた後、次の要求を魅力的に感じさせるトリックだ。
最初から血縁者としてでは、義父が納得しないのを考え、敢えて無茶を告げたというのもある。
心理的な駆け引きで義父に一杯食わせた辺りは、曲がりなりにも養子に引っ張られた実力、と思いたい。
だから大丈夫だと微笑んでいたものの、驚きから不安に変わる顔に、正面から抱きしめながら不意討ちのように唇を奪う。
重ねるだけのキスを長く、数秒ほど。
虫の音色だけが響く夜空の下、ゆっくりと唇を離すと、耳元へ唇を寄せた。

「誰がなんと言おうと……ルークが欲しい。こんなに純で愛らしいルークを…娶れない方が苦しくて堪らない」

不安にさせる理由は立ち位置という、人ならではのしがらみだ。
そんなものがあろうが無かろうが、彼女がほしい。
真っ直ぐな気持ちで引っ張り寄せ、その不安をほぐそうと微笑みかけた。