2017/08/02 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城」にルークさんが現れました。
■ルーク > 肇国節が終わった。
とはいえ、祭りの後の余韻が残る時期。
国を挙げてのどんちゃん騒ぎのあとは、当然後片付けが待っているものでどの関係部署も忙しく動き回っている。
第零師団の書斎で、分厚く増えた報告書類の整理を終えればこんな時間になってしまっていた。
主よりも一足先に、王族の住まう区画の部屋へと戻ればいつもの通り魔力を通して部屋の安全や、掃除などのチェックを行う。
夜になっても冷めない熱気に、まずは窓辺へと向かい全ての窓を開け放って空気の入れ替えを行う。
「………。」
そよそよと弱く風がカーテンを揺らしながら部屋へと吹き込んでくる。
空には月が浮かび、ゆっくりと雲が流れていく。
昼間にはうるさいほどに鳴き声を響かせる蝉は眠りについて、リーリーと別の虫の声が聞こえてくる。
流れ込んでくる風に、ルークは軽く瞳を閉ざすと少しだけ息を深く吸い込んでゆっくと吐き出した。
ご案内:「王都マグメール 王城」にレナーテさんが現れました。
■レナーテ > 祭りの合間、集落の方はひっそりと潤っていた。
祭りに必要な食料、酒、諸々、それらの売買と運搬ルート。
一般の商売にもひと噛みするようになっていたのもあり、湯水のように使われたそれらを供給した集落の収入は大きい。
オマケに、人々の足も必要となる。
それも馬車の運送網がすべて金を作り出す、こうして集落だけでなく、第零師団の資金も増えていくわけだが、その管理も膨大だ。
それを取りまとめる役割を担う秘書としては、祭りが終わっても仕事は終わらない。
こうして王城くんだりまで出向き、コツコツとドアをノックしていた。
「ドラゴンフィートの者です、組合……アーヴァイン様はいらっしゃいますか?」
普段の癖で組合長と呼びそうになるのを飲み込み、間を置いて言葉を正す。
ドアを開ければ、他の組合員と変わらぬ小柄な体付きと共に、妙に可愛らしい戦闘衣に身を包んだ彼女が見えるだろう。
■ルーク > 少しの間、窓辺で涼み閉じていた瞳を開けば手の中の書簡の入った封筒の束へと落とされる。
私室に持ち帰るのは、主個人に宛てた封書の類だ。
軽く差出人を確認するように封筒をめくりながら、それを置く書斎へと足を向けるがドアからノックの音が聞こえルークは顔をあげた。
ノックに続いた声にガチャリとドアを開けば、眼鏡をかけた可愛らしい小柄な少女がそこには立っていた。
「遠いところをご苦労様です。主は只今不在にしております。お待ちになりますか?」
沢山いる組合員の少女たちと、そう変わらぬ年齢のこの少女は確か…彼の秘書だったはず。
記憶を辿るが、表情に変化として出ることはなく淡々と事実を告げて問いかけを投げる。
■レナーテ > 「……」
ドアが開かれると、少し見上げるようにして彼女を見つめる。
服屋のデザインモデルに呼ばれるような、すらりとした姿と可愛らしい格好をじぃっと見つめていた。
彼女が自分の存在を思い出すのと同じように、確か従者さんだと言っていたのを思い出すも、何処と無く彼の趣味を感じる姿に、それ以上の何かを想像し……真面目そうな顔で言葉へ反応が遅れた。
「……ぁ、えっと、書類を持ってきただけなので…それと別件がありまして」
ハッとしたように表情が動き、少し慌て気味に答えると、あたりを見渡し、人影が無いことを確かめる。
少し背伸びして、耳までの距離を僅かながらに詰めると小声で語り始めた。
「ルークさん、ですよね。……リーゼさん、えっと…アーヴァイン様の義妹さんから、お話を預かってきました」
時折、彼女の主たる男の口からも義妹の話が出ていたことだろう。
何より、集落を調べたなら…義妹の足跡ほど気になったはずだ。
ティルヒアから亡命し、組合の魔法銃講師となり、リトルストーム達を集落に招き、防衛の要を築いた少女。
……そして、忽然と姿を消えてしまい、調査を担うシャドウでも足取りがわからない存在を。
これ以上は廊下で話すには危険が伴うのだろうか、言葉はそこまでで止まった。
■ルーク > こちらを見上げるようになる少女と目が合い、問いかけの言葉への返事が遅れれば一瞬無言で見つめ合う時間が生まれる。
その間も眉一つルークの表情は動かずに返答を待っていた。
「別件ですか…。……?」
慌て気味に返答が返るが、辺りを気にして耳に近くなるようにと背伸びをする彼女に耳を傾けるようにルークも少し屈む。
「はい、そうですが。アーヴァイン様の義妹君からのお話ですか?」
主の血のつながりのない義妹の存在は、一応は知ってはいる。
しかし、彼の義妹になった経緯や集落から姿を消したあとの足取りなど詳しい事は分からない。
魔法銃からリトルストームとの契約まで、現在の集落を築き上げた功労者の存在は忽然と消えて調査書でも追跡不可能と記載されていた。
しかし、それよりも記憶に新しいのは肇国節の宴に参加した際に念話を通して聞こえてきた甘いソプラノの声だ。
確か彼は、『義妹に怒られた』と言っていた。
「とりあえず、中へどうぞ。」
言葉が止まったことと、人の気配を気にする様子から此処でする話ではないのだと察すると扉を更に開いて脇に寄って彼女を迎え入れる。
応接セットへと案内すると、少し待ってもらうよう告げ手にしていた書簡を書斎へと置いて、お茶を淹れて彼女の前に置いて。
「お待たせいたしました。アーヴァイン様の義妹君と面識はないと思いますが、どのようなお話でしょうか…。」
念のため魔力を壁に伝わせて、聞き耳をたてている者がいないかを確認したあと、彼女の正面のソファへと腰掛け話しの続きを問いかけて。
■レナーテ > こちらがじっと見つめていることに何も言わぬ様子は、はたから見れば奇妙だったに違いない。
小さく頷きながら続く言葉に肯定すると、そわそわとあたりを気にして視線をちらしていた。
追跡不能となり、忽然と消えた割には子供のように高い音色は暖かく、ある意味義兄たる男とは真逆の雰囲気を音に滲ませただろう。
「ありがとうございます…」
招き入れられるがまま室内へと入れば、ソファーへと腰を下ろし、彼女の後ろ姿を見送る。
組合の部屋にもこうした応接間のセットはあるが…ここまで上等なものではない。
まだ幼心残る年頃故に、視線がない間、ソファーの座面を手のひらで押して、柔らかいなぁと一人楽しみつつ口角が上がる。
「はい、多分お会いしていないかと…組合長もリーゼさんとは1年近く顔をあせていないです。喧嘩したとかではなくて、ですけども」
慎重に盗聴を警戒し、確かめる様子を見つめながら、振り返った彼女へと頷く。
間接的な邂逅も、あの念話でのことが初めてとなるはず。
そんな義妹が持ってきた話、それを切り出しながら真っ黒な羽を一枚、テーブルの上へ差し出した。
「組合長がリーゼさんに、ルークさんが他のリトルストームと契約したい様子があるとお話をしたんです。何時でも追いつけるようにと」
翼があればいいのにと言ったことだろう。
そうでなくても、自分がいない合間に陵辱されて、心がずたずたになっていたこともある。
少しでも守れる力を、何より、望む通り傍に行けるように。
羽は薄っすらと青みを帯びており、光の辺り具合では、鈍く青白く、てかりを見せるだろう。
「……それなら、ちゃんと直接話をしておきたいっていうことで、言伝を預かってきました。その羽は、普通の人がリーゼさんがいるところに行くために必要なものです」
そう告げながら、少しだけ視線を落としていく。
何故話をしたいのかは、こうして目の前で彼女を見ると察しがついてしまう。
少しずつ胸の中に広がる不安に、きゅっとスカートの裾を指先でつかむ。
■ルーク > お茶の準備をして戻れば、ソファの座面を押してその感触を楽しむ様子が見えてしまった。
「………。」
彼が王族に名を連ね、王都で主に暮らすようになってからは秘書が組合の運営を主に任されていたように記憶している。
けれど、ソファの感触を楽しむのは幼さを感じさせる仕草で微笑ましいものがあった。
とはいえ、その微笑ましい光景に実際に微笑みが浮かぶことなくルークの表情は殆ど変化が表面に出ない。
「行方知れずとの事でしたが、全く消息が掴めないというわけではないのですね。」
念話で聞こえてきた声は、無邪気な子供のような声でありそれを聞いた主たる彼の反応も穏やかなものだった。
顔を合わせていないとはいえ、心配するような逼迫した状況というわけでもなさそうだ。
「……そうですか。」
差し出されたのは真っ黒な羽。
それと共に続く言葉に、翼があればいいのにと彼に告げた事を思い出す。
風のように飛び去っていくその背中を、見送り待つことしかできない事を歯がゆく思うようになったのはいつからだったろうか。
濡れたように光沢をもつその羽は、光の当たるところが青みを帯びてみえる。
「察するに、義妹君はどこか特別な場所にいらっしゃるのですね。私などの我儘の為に心を砕いていただき、有難うございます。…どうか、されましたか?」
告げながら、少し目の前の彼女の視線が落ちるのに気づく。
ぎゅっとスカートの裾を握り締めるのに、微かに首をかしげ。
■レナーテ > ミレー族を多く引き入れているせいか、組合の平均年齢は組織としてはかなり低いほうだろう。
女性が多いというのもあり、精神年齢は高めなので問題はないが…やはり子供心は消えない。
何気なく掌で楽しんでいほくそ笑む姿は、年頃の少女より少し幼い子供な一面といったところか。
「えぇ、九頭竜山脈の森の中にいるのですが…出入りしているのは、恋人さんと私だけです。組合長は付けられて見つかったら可哀想だからと、遠慮して入らないんです」
黒い羽は触れると、少しだけひんやりとした感じがするが、それは指先に感じる冷感だけではない。
凍傷の様な冷たくも熱く錯覚するような刺激、それを胸の奥底に一瞬だけ感じさせるだろう。
羽の持ち主が宿す力の片鱗が故に。
「蒼月の森…と、私は呼んでます。ミレー族、若しくは…リトルストームかサンダーバード、そして…その羽の持ち主の鳥と契約した人だけが入れる特別な森です」
そういった点で考えれば、シャドウが消息を追いきれなかったのも納得がいくだろう。
無意識に指先を握り込んでいたのを、彼女の言葉で気づくと、ばっと顔を上げて慌てふためきながら、両手をスカートの裾からあげる。
首をかしげる様は何処と無く、純とも無邪気にも見える。
感情に触れ始めて間もないときいたが、だからこそかと思いながら瞳を伏せた。
「わがままなんて…どっちかと言えばお節介なのかなと思います。ルークさんは…この国の人をどう思いますか?」
そういうと被ったままだったベレー帽を脱ぐ。
垂れた猫耳が顕になり、スカートの中で窮屈にしていた尻尾も露わにすれば、ミレー族のようにも見えるだろう。
困ったように苦笑いを浮かべると、更に言葉を続けた。
「ミレー族だからと、殺さず壊しきらなくても、陵辱して道端に転がす人たち。スキあらば、女性を食い物にしてしまう街。その全てを…どう思いますか?」
この国に巣食う狂気、誰もが普通だと否定も工程も浮かべない普遍的な日常。
それをどう思うか問いかけながら、胸の中に広がる痛みは、言葉と共に思い出す記憶で強まっていた。
■ルーク > 「そうですか。アーヴァイン様らしい、ですね…。…っ…。」
限られた者だけが訪れる事ができる場所、主らしい心遣いは追跡や人の目から隠れる必要があることも示している。
羽へと指を添わせると、冷たく感じる羽からぴりっと火傷をするかのような痛みにも似た刺激が胸の奥に走る。
「蒼月の森…。いいえ、主が風のように飛び立つなら、地上ですべきことは沢山あります。追いかけたいと、いうのは私の欲であり、我儘だと、そう思います。ですが、追いかけることが叶うようになるかもしれないというのは、嬉しい、と思います。」
シャドウの構成員は人間が多かったことを思い出せば、追跡が不可能だったことにも納得がいく。
加えて、組合長である彼自身が義妹の行方を知っていれば打ち切る判断も早かったことだろう。
追いかけたいと思うのは、彼の隣にいることで生まれた欲の一つだと自覚はしていた。
翼がほしいと、その欲を告げて良かったのだろうかと告げたことを後悔する気持ちがルークの中に在った。
けれど、そのための術を与えてくれようとする心遣いに胸がじんわりと暖かくなる。
ぎゅっとスカートの裾を握り締める彼女は、問いかけにそのことを自覚したようで慌てたように裾から手を離す。
まるで葛藤するかのような仕草に、どうしたのだろうと首を微かに傾げればルークへと問いかけが投げかけられる。
「…この国の者を、ですか?……。」
問いかけとともに、室内に入ったあともかぶったままの帽子を脱ぐとそこにあるのは猫の耳。
それと共にスカートの裾から覗く猫の尻尾。
ミレー族。この国の先住民族であり生まれながらに奴隷の身分にある種族である証。
――ただ、彼女がミレー族であったとしても彼女の所属する組織では珍しくはない。
「……ミレー族は、生まれながらの奴隷であり、奴隷という身分は国として労働力や資源であり必要である――…。」
少し考えるように間が空いたあと、淡々とした声が告げる。
それは彼に仕えてまもない頃、初めて集落を訪れた時に彼からの質問に答えた声と同じ。
「そのように教育されてきました。また、女であることは子を産むための道具であると教育されており、疑問を抱くことはありませんでした。この国をどう思うか、という答えにはなりませんが…ドラゴンフィートでのミレー族の在り方や、組合員の少女たちの明るい様を見たことと、少女たちに出会ったことで彼女たちが笑っていてほしいと思いまた。誰かに優しく触れられる事はとても暖かくて、心地の良い事だと…。力で奪われ虐げられるよりも、そちらの方がいいと、思います。」
どのように言葉にすればいいのだろうかと、考えながら少し言葉に詰まりながら彼女の質問に答える。
まだルークにとっての世界はとても狭くて、けれど駒であったときよりも少し広がった世界で見えるのは彼と、彼の周りにある世界。
その世界を見た事で、感じたことをなんとか伝えようと言葉を探し。