2017/07/05 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城 執務室」にルークさんが現れました。
ルーク > 王城内、執務室。
執務机や来客用のソファなどが備えられ、どれも細工が細かく重厚な作りとなっている。
それもそのはずで、ここを使用するのは王族である。
師団としての名は、一部の王族や軍関係者しかしらずこの国の影としてこの国の維持を目的に動く組織。
明かりの入ったその室内で、ルークは一人書類の整理を行っていた。
第零師団内のものや、各師団や騎士団の動静を記した報告書の類をそれぞれ分けてファイリングしていく。
最近で言えば、第七師団が対魔族戦線ではなくハテグの主戦場にまで出て人相手に戦を行い勝利を収めたという。
動きがあればあるだけ、それを記す報告書も量は多くなっていく。
パラパラと書類をめくる音だけが室内に響いて、見出しをつけては主が読みやすいようにと作業を続けていく。

「………。」

どれくらいの時間そうした作業を続けていたのか、少々筋肉が凝り固まるような感覚を覚えてルークは顔をあげた。
少しだけいつもよりも多く息を吸い、そして静かに吐き出すと凝った筋肉を解すように首もとへと手が伸びる。

ルーク > 数度、凝りを解すように首元を手で揉んだあと止めていた手を再び動かし始める。
纏めた書類の束を、執務机の上へと並べ既に主が読み終えた書類の束のほうへと取り掛かる。

「……っ…。」

ピッと鋭い痛みが左手の人差し指に走った。
視線を向ければ横一文字に指の腹が切れてじわりと血が滲み出す。
どうやら紙で切れたらしい。
紙で切れた傷は、思いのほか深いらしくじわりと滲んだ血がぷっくりと球体になっていく。

ご案内:「王都マグメール 王城 執務室」にアーヴァインさんが現れました。
アーヴァイン > 夏に差し掛かり、日が落ちても熱が抜け落ちぬ夜。
執務室の窓際から薄っすらと、涼しい風を感じるかもしれない。
特に気配を隠すわけでもなく、執務室へとやってくるわけだが、近づく方角は窓の方から。
隼の時のようにあっという間に近づく速度ではなく、その速度の半分ぐらいと言ったところだろう。

「あぁ、あそこだ。近づけてくれれば後は勝手に入る」

窓の外、深夜の空に浮かぶ真っ白な鳥と、その両足に肩を掴まれてぶら下がる彼の姿。
真っ白な鳥は、隼のようにスマートな体付きではなく、まんじゅうのように丸みを帯びて、尻尾が長い。
つぶらな瞳は、成長途中の隼たちよりも幼い雰囲気を醸し出したりと、妙に愛くるしい作りをしている。
窓に近づけば、自ら風をまとい、滑空するようにして窓へと取り付いた。

「っと……ただいまだ、仕事中だったか?」

開いて中に入ると、彼女の姿にうっすらと笑みを浮かべてご挨拶を。
もういいぞと言うように外に手を振れば、真っ白な丸い鳥達はパタパタと集落の方へと飛び去っていった。

ルーク > このまま書類に触れば血で汚してしまう、と何か拭うものはないかと執務机に視線が彷徨う。
それとほぼ同時に、窓のほうから近づいてくる気配に気づいた。
振り返った窓は、開いておりそこにふわりと風を纏って滑り込んでくるのは主の姿。

「おかえりなさいませ。はい、あとは読み終えられた書類を整理すれば終わります。…いつもの隼ではないのですね」

窓からの帰還というのは、初めての事ではなく笑みを浮かべての言葉に頷いて進捗状況を告げる。
しかし、彼の背中に見えた飛び立っていく鳥はいつも彼と共にいる隼のそれではなく、随分と可愛らしいフォルムをしていたのに微かに首をかしげ。

アーヴァイン > 「あぁ、周囲の案内を兼ねて送ってもらった。以前、シェンヤンの国境近くへ調査に行ってもらった娘が見つけてくれた、スノウフルーフという鳥だ。北方側に冬の訪れを告げる精霊がいると聞いていたが、ハンス達の知り合いらしい」

見送る後ろ姿は、忙しなく翼で空気を叩く落ち着きのない姿だ。
空を滑るように飛ぶ隼たちとは全く違う。
雀のような鳴き声も少し聞こえたりと、気質も違うように感じるかもしれない。

「指、怪我してるじゃないか」

彼女へと振り返ると、人差し指に浮かぶ赤い雫に気づいた。
苦笑いを浮かべながら近づくと、腰のポーチから小さな筒と小さな布を取り出す。
柔らかな布で血を抑えるようにして拭うと、筒から軟膏のようなものを指にとり、彼女の傷へと薄く塗り広げた。
大した怪我ではないが、書類を血で汚してしまうと色々気にかけるだろうと思えば、察したように手当し、消毒の痛みとともに軟膏が傷口を塞いだ。

「これで大丈夫だな。最近あまり声を掛けられなくてすまなかったな。集落に寄ったら、みんなにルークの事をよく見ろと叱られてしまった」

何かと忙しくなり、ついつい声をかける暇を失ってしまう。
気づけば同じ部屋で眠るときしか顔を合わせていない時もあったりと、振り返れば叱られるほどのことだ。
眉をひそめて苦笑いを浮かべつつ、今までと変わらぬ手付きで、黒髪を優しく撫でようとするだろう。

ルーク > 「冬の訪れを告げる精霊ですか。…なんというか、あまり気質が合わないような感じがしますね。外見的に…。」

シェンヤン帝国の国境付近、北方に冬の訪れを告げるという鳥。
主が雷の隼と契約していることを思えば、当たり前なのかもしれないが思いもよらない方面に顔が広い事を改めて実感して数度瞳が瞬きを繰り返す。
そして見送る白い鳥は、一生懸命に羽を羽ばたかせて飛んでいる丸いフォルム。
ハンス――彼の契約している隼と知り合いだと言われるが、どちらかというと捕食者と捕食対象のように見える気質にそう感想を零して。

「あ、はい…紙の端で切ってしまったようで。血を拭うものを探していたところです。…っ…ありがとうございます。」

スノウフルーフのほうへと意識がそれていたのが、彼の言葉によって指の傷へと意識が戻る。
意識がそれるほどに傷は小さく、そう痛むものでもない。
歩み寄った彼の手で、柔らかな布で押さえられ、じわりと浮き上がった赤い血の玉が吸い取られると小さな痛みを伴って軟膏が薄く塗られる。
そうすれば新たに血が滲む事もなく、書類を汚す心配もないだろう。

「…いえ、ご多忙でしたから。少しでもお手伝いができているといいのですが。…私のことをよく見ろ、ですか……。」


血のとまった指先から、すぐそばにいる彼の顔を見上げる。
あちらこちらと、忙しそうにそれこそ鳥のように飛び回っている彼の背中を、翼をもたないルークは見送ることしかできない。
詫びる言葉に首を横に振りながら、そう告げて。
続いた集落で叱られたとの言葉に首を微かにかしげるが、視線が考えるように彼から少し逸れる。
思い至るのは、集落を訪れたときの個人的な用向きの買い物。
相変わらず優しい手つきで髪を撫でる手を受け入れながら、微かに頬が染まる。

アーヴァイン > 「あぁ、冷たい風を起したり、雪を振らせたりするらしい。ははっ、なんというかマイペースな種族らしい。放っておくと雪原に転がって、丸くなってだらけるといってた」

隼達に聞いた話から辿り着いたとは言え、最初はやめておけと言われた理由もわからず首を傾げたものだ。
苦笑いを浮かべながら、そのおっとりとした正確を語れば、彼らの性質を思いだす。
実際、飛び去る姿は戦い向きには見えないし、速度もない。
けれど、強烈な吹雪や冷気、風を操り、器用さも持ち合わせた彼らは、隼達に勝るとも劣らぬ力を持つ。
だからこそ、旧友と言い合えるのだろうと思う。

「手も顔と同じぐらい綺麗にあるべき場所だ、大事にしてくれ?」

苦笑いのまま手当を済ませると、掛かる言葉に大丈夫だと微笑みかける。
こうして書類の整理をしてくれるだけでも、ほんの少しだけ時間が変わる。
その小さな変化が重ねれば、結構早く仕事も終わるものだ。
視線がそれるのを見やりつつも、頬の赤みに気づけば、淡く悪戯心を擽られ、顔を近づけて唇同士を重ねようとする。
掌は黒髪の上から肩へと滑り、優しく引き寄せて体を重ねるだろう。

「……そういえば、ルークを見たら驚くと言われたんだが」

唇が離れると、改めて彼女を見つめる。
変わらぬ静かな月夜の様な美しくも、愛らしさ覚える彼女にうっすらと微笑むものの、妹達が言う驚くというところは見つからない。
それもそのはず、それは普通には見えないところだからだ。
それでも気づかぬのは失礼だろうと思えば、しげしげと色んな所に視線を向けて、その変化を探そうとしていた。