2017/06/04 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城」にカルニーツォさんが現れました。
カルニーツォ >  城の地下深く、日の光も地上の風も届かぬ場所。湿気と冷気に包まれた真っ暗な石造りの廊下。
 その闇の中、青白い鬼火が浮かび、ユラユラと揺らめきながら進んでいく。よく見ればその青白い炎の奥に真っ黒な人影がその鬼火に見えたランプを手に歩いているの見える。石造りの床を音も立てずに歩くそれは、衣装が闇に溶け込み、地下牢で命落とした音量のともす鬼火が浮かんでいるように見える。

「さて、このあたりだったと思うのですが...」

 鉄板で補強された分厚い木の扉に書かれたかすれて消えかけた番号を確認すると、中の人物に声を掛ける。

「...殿。あなたへの手紙をお持ちしました」

 そう告げると、懐から青白く光る小さな金属棒を取り出す。その棒を鍵穴に差し入れ、呪文を唱えると光は明るさを増す。それをぐるりと回せばガチャリと音がして鍵が開く。ギィィと軋んだ音を立てて扉を開けると、一人の男がこちらをじっと睨むように見つめている。

カルニーツォ >  手足は骨が浮き出るほどに痩せこけ、元は高級であったろう衣服もすでにボロと化し、髪も髭も伸び放題に脂ぎっているにもかかわらず目には力強い光が宿っている。
 その男に懐から一通の手紙と、新しい便箋と封筒、ペンとインクに封蠟と蝋燭を差し出す。

「私はここにて侍らせていただきますので、お返事をお書きになったらお声をお掛けください。...あ、そうそう、差し入れの品だそうです。」

 そういうと懐から小さなワインの瓶とチーズのかけらを取り出す。それをみて相手の男の口元が僅かに動く。目が幾分優しくなったことからすれば笑みを溢したのだろうか。そして小さな机の上に蝋燭をともし、ランプを置くと男に背を向け、直立のままじっと周囲の音に気を巡らせる。

カルニーツォ >  どれだけの時間が経ったであろうか。男に声を掛けられ後ろを振り向く。小さな机の上にはすでに封蠟をした封書と空の瓶、丁寧に畳まれた包み紙と蝋燭の燃えさしが並んでいる。

「確かに...」

 机の上のものを全て懐にしまい込むと、しばし男を見つめた後、小さな声で問いかける。

「差し出がましいようですが...本当にここからお連れしなくてよろしいのですか?」

 問いかけに男の口元の髭が僅かに揺れ、微かに声が漏れる。そしてゆっくりと首を横に振る。

「時にあらず...ですか...」

 小声でつぶやくと、一礼をして牢を出る。再び先ほどの棒で鍵を閉めると、その場を立ち去る。

「さて、もう一仕事ですね...」

 そうつぶやくとと別の牢へと向かう。

カルニーツォ >  しばらく歩いて行くと光が漏れる牢が見つかる。
 中を覗けば、先ほどとは打って変わって、質素ではあるがきちんとしたベッドと机、椅子に戸棚が置かれており、机の上にはランプまである。
 その一方で中の住人はこれまたさきほどとは対照的にこぎれいな服にきちんと整えられた髪をしていて、髭も整えられているにもかかわらず、べっどの上で身体を丸めて身体を震わせている。

『これが命を長らえるものとたたれるものとの差ですかね...』

 心内でつぶやくと、懐から小さな紙包みをとりだす。それを同じく取り出した香炉の中に入れ、火を付ける。香炉を床近くにある、食事の差し入れ口から音もなく牢内に入れる。ゆっくりと立ち上る薄い白い煙が徐々に牢内を満たしていく。
 やがて震えていた住人の身体がピタリと動かなくなる。

 それを確認すると、香炉をとりだし、そのまま闇へと消えていった。

ご案内:「王都マグメール 王城」からカルニーツォさんが去りました。