2017/05/31 のログ
タマモ > 「………ん?」

ひょい、と顔を上げる。
その先に見えたものは、数人の人影。
考えるまでもなく、ここは廊下だ。ここまで誰も居なかったのが不思議なくらいである。
なるほど、小声であろうと言葉を交わしていれば怪しまれるだろう。

危ない危ない…そう思いながら、視線を前に。
その人影が何者なのかは、正直どうでも良い。
そのまま、普通に素通りすれば、それで終わり…だろう、多分。

タマモ > …だが、ここまで来て、急に誰かが見えればやはり色々と気になるもの。
一人ならばともかく、数人は…ちょっと、あれだ。

ちらりと視線の端に見える扉、ここが何なのか考えるのは後回し。
こう、その扉の前まで来れば、その前に向かい立つ。
まるで、この部屋に何か用事があるかのように…がちゃりと扉を開け、そのまま何食わぬ顔で入っていった。
何も無い部屋ならば万々歳、誰か居たら…何とか誤魔化そう、と。

タマモ > 入った先は…目的の資料室でした。
なるほど、あの言葉の意味はこれか、そう考える。
つまり、あれだ、運良く着いてしまった事に対するものだった。
…いや、楽しませるつもりはないんだが。

ともあれ、幸いに資料を管理する者は居ない。
うっかり鍵でも掛け忘れた、とかもあるだろうか?
ふぅ…と一息、ぽんっと姿が元の少女のものに戻る。
どうせ誰もいないのだ、変化を持続していても仕方ない。

「さて…とりあえず、目的の題目は何じゃ?
お主なら、適当に頁でも捲れば記憶出来るじゃろう?」

肩の子蜘蛛に言葉を掛ければ、今度は沈黙ではなく、指示が向けられた。
それが分かれば後は楽だ、指定した本を抜き取り、ぱらぱらと捲って見せていく、そんな作業の開始。

タマモ > こんな文字ばかりの本、自分が読んだりしたら数分でダウンするだろう。
何だろうか、この主と式の頭の違い…そんな事を、ふと考えた。

とりあえず、それは置いておき…本を取り出しては頁を捲り、終わったら戻す。
必要最低限に絞ってあるらしく、そんなに冊数は無いとの事だが…

「のぅ…すでに3冊目なのじゃが、まだ続くのか…?」

自分はただ捲り続けるだけだが、こう続けていると、少々疲れてくる。
というか、これ本当に記憶しているのか?と問いたくもなる。
それをぐっと我慢しながら、ただただそれを繰り返すのだが…何で自分は我慢しているのだろう?と。
まぁ、誰かが居て誤魔化すのに力を消耗して…なんてものよりは、疲れはしないので良しとするしかないのだろうか。

タマモ > 『最低限の歴史と、王族や貴族について、手元にある資料と照らし合わせたいんですの~。
不思議な事に、ある時を境にがらりと変わっていたりするのがとても興味深いものですから~』
「何と言うか…変なところにこだわったり、興味を持ったりするんじゃのぅ?
妾には、とても面倒そうでやってられないのじゃ」

自分の世界の歴史や人物にさえ、大した興味を向けれない少女なのだ。
この考え方は、どうしても付いていけないものである。
4冊目、一体それだけを調べるのに何冊の本をこうして捲り続ければ良いのだろうか…?
かなり飽きてきているのだろう、それはぐたーっとテーブルに突っ伏した姿勢と共に、ぺたりと垂れる耳や尻尾でも示されていた。

タマモ > 「それにしても…一悶着あったのが幸いしておるのか、こうも簡単にいってくれるのは助かるものじゃ。
それとも、今更過ぎて大してこうした資料は気にされておらんのかのぅ…?」

くぁ…と欠伸、ぐーっと伸びをしながら問う。
その手は、そんな問いを掛けている間も頁を捲り続けている。
こうしている間も、あちらではこうしたスピードと同じくらいに資料が作り上げられていっているのだろう。
…うん、想像したくない。
何冊目となったのだろう、次の本と手に取ったところで…

『それで最後ですの、ラストスパート、頑張って下さいませ~』

そんな声が聞こえてきた。
よし、終わりが見えれば、ちょっとは元気が出てきた気がする。
その本を広げ、同じように捲っていって。

タマモ > 『はい、それで終わりです、お疲れ様ですの~』

ぱたん…その言葉と共に、本が閉じられた。
はふーっ…深々と息を吐き、閉じた本を手に、ひょいっと書架へと戻す。

「ふむ…では、後の小難しい事は任せるぞ?
妾はこのまま戻るとするのじゃ」

正直、こんな文字ばかりの空間に居たくない。
さっさと入り口の扉へと向かい…ぽんっ、と再びその姿を兵士のものと変化させる。
戻るだけなら、もう迷ったって大丈夫だろう。
がちゃり、と扉を開き悠々と廊下に出れば、そのまま資料室を後にして…

ご案内:「王都マグメール 王城」からタマモさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城 オーギュストの執務室」にオーギュストさんが現れました。
オーギュスト > 「相互不可侵だぁ!?」

オーギュストは不機嫌そうに声をあげる。
王城の一角、執務室。
彼はそこで密偵からの報告を聞いていた。

曰く、カルネテル家とフェルザ家で相互不可侵が成立。
互いに不信としこりは残るものの、全面衝突へは至らず。

「クソがっ!」

不機嫌そうに机を叩く。

カルネテル家とフェルザ家を争わせ、あわよくば全面抗争でどちらかが潰れるまで対立を煽る。
ついでに潰れた方を逆賊認定して、手入れと称して略奪を行い、漁夫の利を得る。
オーギュストの目算は見事に潰れた。

「貴族なんて奴らはこれだからよぉ!」

自分も下級貴族の出でありながら、見事に棚にあげる。

オーギュスト > 結局どちらかが死ぬまでの殺し合いにはいかない。
手打ちにして、共倒れを防ぐ。
腐った貴族どもが何百年と使ってきた手だ。

胸糞が悪い。

「ちっ、アーヴァインはともかく、あのシャーロットのクソアマなら、死ぬまでやると思ったのによぉ」

目算が外れた。
何でもシャーロットではなく別の思惑が動いた可能性を密偵は言及しているが、そんな事はどうでもいい。

キルフリート遠征は遅れに遅れている。
それが完了するまで、王都は別の争いで釘付けにしておきたかったのだが。

オーギュスト > まぁ、外れた策はどうでもいい。
そもそもオーギュストはこの手の策が得意ではない。
今回はまぁ、途中まで成功したのだからマシな方だ。

「一応、後の対応を見張っとけ。なんらかの動きがあるかもしらん」

さすがにこちらに火の粉が飛んでくる事はないだろうが、用心に越した事はない。

ご案内:「王都マグメール 王城 オーギュストの執務室」からオーギュストさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」にコーデルさんが現れました。
コーデル > 「今日という日を迎えられたことが、私は何よりも嬉しく、また私と同じ志を持つ者たちが、かの神聖都市へ推挙されたことを誇りに思います…!」

青年は神聖都市に所属する修道女たちを推挙した王族に召喚され、王城にやってきていた。
礼を言うために王族との謁見を済ませた後に、王族の曰く「ささやかな」パーティーのために貸し切られたホールには、多くの貴族がやってきていた。
青年は、自らの同士を推薦した王族に向けて感極まったような口ぶりで語っていく。
そう語っている青年の視線の先には、修道女たちが数人いて、その誰もが静謐を守るように静かに立ってたたずんでいた。
全員が若い女であり、修道女の恰好をしていながら、どこか蠱惑的な雰囲気を纏う辺り、娼婦に近い印象すら受ける。
そしてその周りに、貴族や王族、司祭が集って、何事か談笑していた。

「ええ、信徒たちも今日ばかりはこの素晴らしき日の喜びを分かち合えることと思います」

青年の言葉に相槌を打ちながら、別の用があるといって去っていく王族の傍には、先ほどからいた修道女の一人が付き、王族はその腰に腕を回して出ていく。
その異質な光景に、その場にいる者は誰も咎めることはなく、それどころか残された修道女たちを品定めするような視線を送っていた。
つまるところ、彼女たちは青年が信ずる神の教えに深く共感した生え抜きの者たちであり、堕落の徒なのであった。
この場にいる誰もがそれを理解していて、新たに加わる修道女の味見にやってきているのだ。
そんな状況でも、青年は普段と変わらぬ笑みを浮かべたまま、人々の間に高まる魂の堕落の気配を満足気に眺めている。

コーデル > 「はい、彼女をお願いします」

去っていく王族の背中に、胸に手を当てて礼をする青年は、淀みなく保護者然としている。
修道女たちが宛がわれた王族、貴族や司祭たちは、表向きには彼女たちの後見人となる。
そして、後見となった者たちは、青年が経営するささやかな教会の後見も務めることになる。
その取り決めは貴族たちの間では公然の秘密であり、単なる貴族の身分を得ただけでは得難い繋がりを作ることができるのだ。

「それにしても、随分と警備の方が身構えていらっしゃる気がしますが、一体何が…?なるほど、そのようなことが…」

このパーティーを通じて、より多くの権力者と繋がることは、情報を集めることにも効率的であった。
王城で起きていた諍いに、騎士たちは皆殺気立っていると言えるほどの緊迫感を持っていたことの理由を知れば、
少々青年は難しい表情を浮かべる。
あくまで快楽と堕落を貪るためには、人には生きていてもらわなければならない。
それらを司る魔族としての青年には、逆にそのような血生臭い出来事の制御は殆どできない。

「……とても悲しいことです。この私に国を憂うほどの格はなく、神に祈るばかりですが」

そう皮肉げに答えながら、青年は先ほどから用意されている料理には一切手を付けていなかった。
受け取ったグラスも、手に持ったまま口をつけることもなく、ただ握っているだけだ。
それは連れ立っていた修道女たちも同じであり、料理や酒にされている細工に、自ら嵌る愚を犯さないためである。