2017/05/30 のログ
■タマモ > 王城のどこかで起こっている争い、時を同じくして、人気のない王城の屋根の一つに二つの影が佇んでいた。
狐の耳と多数の尾を持つ少女と、似たような背丈だがドレスを纏った少女。
二人共、視線は正確にそれが起こる場所へと向けられている。
『うふふ…楽しい楽しいお遊戯ですわね~?
ね、ご主人様?言った通りになっていますでしょう~?』
口元に手を添えながら、くすくすと笑うのはドレス姿の少女。
反して、隣にいる少女は呆れたような表情を浮かべていた。
「相変わらずじゃのぅ…お主は。
しかし、こういった連中というのは明けても暮れても内輪もめか、進歩が無いものじゃ。
それどころか、己だけならず周りの犠牲もものともせん。
………あのような言霊の使い方をすれば、間違いなく連中は二度とまともに動けんじゃろう。
無理矢理に限界を引き上げはするが、根本的なものはそのままなのじゃからのぅ?」
ここからは、どう見ても、その様子が見えるような場所ではない。
それなのに、まるで見えているような会話。
実際には見えているのだ…すでに、王城のどの場所であろうと、その状況は手に取るように分かる。
■タマモ > 『どちらが勝つか、賭けて…』
「………状況は分かった、お主はもう戻るのじゃ」
楽しげに続けようとする言葉、それを妨げるように言葉を返す。
視線が下から、隣の少女へと向けられた。
『あらあら…ご主人様がそう仰るならば、仕方ありませんですの~。
それでは、この子は置いておきますので、ごゆっくりですわ~』
おどけたように肩を竦め、一礼。
その姿は空気に溶けていくかのように、ゆっくりと消えていった。
■タマモ > 「互いに潰し合い、残るは大元の者達のみ…そんなところじゃろう。
犠牲はいつも下の者達じゃ…どう言い繕おうと、な」
ふん、とつまらなさそうに鼻を鳴らす。
視線を再び、下へと戻して。
…正確には、足元にぽつりと留まっている子蜘蛛に。
「潰し合うならば、自分達も一緒に潰れてしまえ」
誰に言うでもなく、ぽつりと呟いた。
「結果は見えた、例の場所を見せて貰おうか?
元々の目的は、そちらじゃからのぅ?」
次いで、子蜘蛛に向かいそう言葉を掛ける。
視線を通し見える映像が、周りには見えぬ中で切り替わる。
庭園から、廊下を通り、どこかに向かう…そんな映像。
まるで、そこからの道順を覚えようとしているように。
■タマモ > じーっとそれを見詰めながら、次第に…首を傾げだす。
「………ちょ、ちょっと待つのじゃ、最初から、すまぬが最初から頼むのじゃ」
先程の真面目な雰囲気はどこへやら、慌てたようにぱたぱたと手を振って頼み込む…子蜘蛛に向かって。
映像がくるりと向きを変え、庭園へと戻っていく。
そして、同じ道を向かい始めるが…
「………ん?…んん?」
やはり、目的地らしき映像になる前に首を傾げる。
今度は制止の声が無かった為、映像はある場所まで行って止まった。
そこは、資料室。
理由はそう大したものではない、王城内に収められた情報を調べたいだけなのだ。
他の場所は誰かしら資料を手に取り見たりしているが、こういった場所に収められたものは、中身が開かれる事がそうそう無い。
見たければ…自分で手に取り広げるしかないのだ。
もちろん、それを頼んだのは先程消えた少女である。
■タマモ > 「あんまり、やりたくはないが…仕方ないのぅ」
はふん、溜息をつくと、屈み込んで子蜘蛛を摘んで肩に乗せる。
ひょい、と屋根の上から庭園を見下ろし、人影が無いのを確認すると…とんっ、と屋根を蹴り身を舞わせた。
当然、かなりの高さだが…地面近くでふわり、と落下速度が和らぎ、音も無く着地。
「ご苦労じゃった、お主は元の場所に戻るが良い。
後は…何とかしよう」
言葉に反応したかのように、肩の子蜘蛛が地面に飛び降りる。
そのまま、かさかさとどこかに消えていった。
確認してから、さて、と立っている庭園から、先程の映像にあった方向へと視線を向ける。
「まぁ、何とかなるじゃろう…多分」
ゆらり、少女の姿が揺れる…それが収まれば、その姿は辺りを巡回するような兵士の姿になった。
■タマモ > 「なにやら既視感を感じるが…まぁ、良いか」
右から左からと、自分の姿を確認し…ふむ、と頷く。
見た目はこれで大丈夫だろう、後は、変に誰かに会って会話やらしなければ…何とかなる、と思う。
資料室に着いたら、それから先はそれから考えよう。
では出発と、先へと向かい足を踏み出す。
庭園から、廊下へ…見ていた廊下の順を思い出しながら、歩き始めた。
■タマモ > そして…
「………よし、迷ったのじゃ」
よし、じゃない。
廊下の途中までは合っていたはずなのだが…もう着くだろう、という距離を歩いていても、到着しない。
しかし、あれだ…道はきっとどこかに通じている。
歩いていれば、いずれは覚えのある扉に着く…に違いない。
そう思いながら、歩き続けていた。
今の姿は巡回の兵士だ、怪しまれる訳がない。
…歩いて行った先が、そんな者が入れないような場所では無い限り。
■タマモ > 結局のところ、目的の場所に着いたのか、着けなかったのか…
それは、待て次回。…次回?
ご案内:「王都マグメール 王城」からタマモさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」にゼノさんが現れました。
■ゼノ > 人気の薄い廊下は――この場内においてはだが――狭く簡素だ。主に使用人の通用口としてしか普段用いられていない。
かつ、かつと革靴のいきり立った足音がその静謐を乱す。
憤懣遣る方なしといった風情で肩で風を切る男が、出口へと向け早足に進んでいた。
「……糞、糞ったれめ――よりにもよってこの俺を、誰を丁稚みてェに呼びつけてやがる…!」
罵詈雑言を、よもやこんな場所で大声で叫べる程に剛胆ではない。
ではない故に、ボリュームだけは囁きのそれながらも、声音の調子にだけ憤怒を込めるという器用な真似をしでかしていた。
「だから、…どいつもこいつも、ご大層な身分の人間はこれだから好かん」
どん、と壁を義足で蹴りつけるが、よもやそんな非力で穴が開くわけもない。
些少な汚れをつけるのみに留まった。
怒りの原因は他でもない―――とある貴族の代理で、王族の子弟に家庭教師を施しに赴いたまではいい。
少なくないだけの謝礼は支払われたのだし、そこはむしろ喜ぶべき事で、けれども平民出の教師への風当たりは決して緩いものではない。
下人がうろつくような通路を人目を憚って行き来させられる憤激を、押さえ込める程の器はなかった――と。
■ゼノ > 「てめェらの自慢はその青い血だけだろうがよ、俺の論文の半ばまでも理解できない連中に、そもそもなぜ俺がこの頭を下げる必要がある?」
気晴らしに辺り一面吹き飛ばしてやろうか―――攻撃性で思考が満たされる。
調子こいてる馬鹿は全員くたばれ、を座右の銘として標榜する身として、ただ術師としての実績を無視され生まれの貴賤だけを評点とされるのはとてもじゃないが、するりと容赦できる話ではなかった。
すれ違うメイドの一人がこちらの身なりに頭を下げたが、しかし、
「……―――」
あえて、視線を外す。
馬鹿げた八つ当たりでこれ以上惨めな気分になるよりかは、どう思われようが無視をしてやり過ごすのが懸命に思われた。
どうせこの会う事もないだろう、おそらく。
「次はねぇぞ、……二度とやるか、アホくせえバカバカしい」
金につられた己の自業自得――という正論からはあえて目を背ける。
重ねて、視認できるかも怪しいくらいのミニマム器っぷりは今日も今日とて遺憾なく発揮されるワケで。
ご案内:「王都マグメール 王城」からゼノさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」にタマモさんが現れました。
■タマモ > さて、王城内で迷った少女の運命はいかに。
兵士の姿となったまま、いまだに廊下を突き進んでいる、そんな状況であった。
…が、不意にその肩へとぽとり、と子蜘蛛が落ちてくる。
それには気付いているも、特に気にした様子もなく歩みは続けているが…
「………ふむ、どうやら、賭けはそもそも成立しなかったようじゃな?
それよりも、気になるのは…そうじゃな、一度その者を洗い浚い調べてみれば良い話か。
お主と…後は馬鹿鴉にも動いて貰えば、調べ上げられぬ事なんぞほぼ無かろう?」
今のところ、辺りに誰も居ないと分かっているか、ぽそぽそと小声で話し掛ける。
そして、ふと気付いたように、一度ぐるりと見渡す。
「あー………後、ここは今どこじゃ?」
迷い続ける事に耐え切れないか、ついに聞いた。
■タマモ > 誰の姿も今のところは無い廊下に足を止め、ぼそぼそとなにやら呟き続ける姿は、独り言を呟き続ける怪しい兵士…だろうか?
しかし、今の少女にはそんな事を考えている余裕は無い。
子蜘蛛を伝い道順を聞いてはいるも、思ったよりも複雑に道に迷ったらしく、首を傾げ続けるばかり。
移動しながら話しても良いが、それこそ、そちらに意識を集中し過ぎて不意に何者かに会った時の対応を間違える可能性が高い。
とりあえず…
「………一度、庭園に戻るのじゃ…」
と、なった。
くるりと踵を返し、来た道を戻り始める。
■タマモ > 「そもそも、シノ…お主が言い出した事じゃろうに、なぜに妾がここに居るんじゃろう?」
はふん、溜息を一つ。
呟きを漏らしながら歩いているも、いくつか目の角を曲がったところで…
『あ…』
と、零した声が耳に入る。
「………あ?…いや、シノ、どうしたのじゃ?」
その一言で言葉が途切れたのだ、それは気になるだろう。
つい足を止め、小声のまま問う。
問うも、その答えが返って来ない。まぁ、そんな理由はそう考えるまでも無いとは思うのだが…