2017/04/11 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城」にルークさんが現れました。
ルーク > 主人が変わり、生活が一変した中の一つ。
自由な時間というものができた。
もちろん、主人の呼び出しには迅速に対応するためにそう遠く離れる事はなく、メイドなども所持している従者の必須用品である、空気中の魔力を振動させて主人の呼び出しを伝える呼び鈴を所持している。

「………。」

正直、この自由な時間というものを少し持て余す。
今までは従者として、駒として、自由な時間というものを持ったことがないからだ。
物であれば『在る』だけだが、ルークを物として見ない以前の主とは異なる価値観を持つ現在の主には、一人になる時間も必要なのだろうと考える。
だからこうして、一人王族の私室から外へと足を踏み出した。
けれど、特に行くあてもなくそう遠くに離れるつもりもなければ辺りを適当にぶらつく事となってしまう。
足音もなく、闇にとけるように気配を感じさせないのは体に染み付いた癖にも近い。
廊下を抜け、階段を下りこの先にあるのは確か庭園だったかと王城の構造を思い浮かべるとそちらへと足を向ける。
扉を開き、庭園へと出ればチラリ、チラリと舞うものがある。
風花が舞うには随分と暖かい季節となる。
それに意識を向けると、白にも見える薄紅色の花弁が月明かりを反射しながら舞い散っていた。

ルーク > ヒラリ、ハラリ、と微かな風に乗って舞う花弁。

「………。」

舞い落ちてきた花弁を、手のひらに載せようと差し出したがふわりと微かに吹いた風に攫われていく。
それを琥珀色の視線で追った後、花弁が流れてきた方へと視線を動かしていく。
そこにあるのは、一本の大きな樹木だった。
春の訪れに、競うように蕾を綻ばせる花々は庭園にそれぞれの存在を主張しながら咲き乱れている。
そんな中で、それは一段と目を引く。
華美に存在を主張するでもなく、静かに佇むように、けれど地味とはいえず。その在り方は逆に際立つ。
春の一瞬の合間だけ咲いて、潔く散っていく異国の花。
天から降り注ぐ月の光に、ぼんやりと輝いているように見えるその木の近くへと歩み寄ると舞い散る花弁が増えていく。
数多の花の中にあり、異質さとどこか妖しささえ感じさせる花は美しくルークは思わず目を奪われた。
今までも、季節の巡りの中で咲いていた花なのかもしれない。
けれど周りに警戒の目を向ける事はあれど、興味を持って見るという事は主が変わるまでなかった。
だから、その存在に気づいたのも恐らくは今の主の影響といえるだろう。
ざぁ、と風が吹くと一斉に花弁が舞いより庭園を幻想の中へと引き込んでいくようだ。

「………。」

彼に見せたいと思った。
浮かんだその考えというよりも想いに、少し戸惑い胸に手を当てる。
これを見たからといって、何かがあるわけでもない。
なのに、今目の前の光景を見せたいと思ったのは何故なのだろうかと浮かぶ感情を考える。

ご案内:「王都マグメール 王城」にアーヴァインさんが現れました。
アーヴァイン > 「……これは凄いな」

庭園に通じる門からやってくると、花吹雪を散らす光景を見上げつつ、月明かりと闇の明暗に薄桜色を生えさせる花弁。
まるで雪のようだと思いながら、感心したように見とれていると、その光景に見覚えのある姿が混じった。
こんなところで会うとは奇遇だなと、挨拶の言葉を紡ごうとするも、彼女の様子にその言葉は喉の押し込まれていく。

「……どうかしたか?」

ほんの僅かだが、彼女が戸惑うようなそんな様子を仕草や気配から察すると、訝しむ表情とともに挨拶は問いかける言葉になる。
風に煽られた花弁は、まだ少しばかり宙を待っていた。
薄桜の風花の中を、ゆっくりと歩きながら彼女へと近づいていく。
先程の様子から、花吹雪に何か思い出でもあるのだろうかと、花を咲かす樹木を見上げる。