2016/12/20 のログ
ジェイコブ > 「いや何、君が気にすることではない…ふむ、シチューと言うのか。
恥ずかしいことに道に迷ってしまってね。道を聞こうにもこの広さだ、やっと見つけたと思ったが……そう上手くは行かないな」

(見知らぬ相手に尻尾を立てて警戒に緊張している女中には、意識してはいなかったが家にいる犬のことを想起して大男は微笑ましそうにその様子を眺めている。
その大きく硬い掌で、女中の小さな掌をほとんど包み込むように握手する大男は、恐らく地はもっと気さくらしい女中の逡巡する様子には言及せずに、その場にどっかと座りこんでいく。礼儀作法にうるさくない性質だと行動で示して、相手が自然に緊張を解してくれるのを待つことにしたのだ。)

シチュー > 「ああ……此処って広いですからね。最初はお城の中に詳しいメイド長と一緒に来たんだけど、手を引いてくれなかったら角を曲がった瞬間に迷子になってたかも」

(このころになるとすっかり警戒心も、いざ剣戟となればどんな怪物も怯む大声となるはずの彼の声にも慣れ始めていて。廊下に腰下ろす豪胆さに、徐々に敬語が勝手に外れていき。いつもの馴れ馴れしさを取り戻していく。自分もワンピースの裾を軽くまくってしゃがんでは相手と同じ目線を保とうとする。)

「僕でも、少しは道案内できるかも。どこに行きたかったの?ジェイコブさん?」

ジェイコブ > 「ああ、広いのもあるが、元々人の名前を覚えるのは得意じゃない上、あっちこっち飛び回るせいで覚える時間もなかったんだ……まぁ、やることもわかっているし、正直わざわざ国境から戻ってくる意味があったかも微妙だ」

(警戒する女中の緊張を和らげることが主目的ではあったが、廊下の柔らかなカーペットに腰を下ろした感触は、大男が以前から一度味わってみたかったことでもあって。堅苦しい空気よりは気楽な方が好みな大男としても、それに乗って同じくしゃがんでくる女中の行動は好ましく口角を持ち上げる。
そして腕を組みながら、困ったとばかりに髭を撫でて愚痴めいたことを零しているが、腰を落ち着けながらそうのたまっている時点で立派な騎士とは程遠いものだった。)

「ええと、そうだな。第3だか第4だか、やたらと設備の充実した兵舎だと聞いてる。なんでも貴族が多く所属している騎士団らしいが、シチューは知っているか?」

シチュー > 「国境から……!馬を使っても何日かかかるよね。お疲れ様だよ、ジェイコブ。きっと僕らみたいな女中より何倍も大変なんだね、騎士様って。戦うだけじゃないんだね」

(自分はただ、同じ場所にとどまって人の言う事を聞くだけだから。それよりも仕事量も関わる人も、背負う責任も大きく聞こえる相手の言葉と、それをこなしている相手に関心と尊敬の念で見つめ。いつの間にかさん付けまで外れてしまった。金属鎧はつけてなくても……むしろ、身軽で剣を帯び、女中の身分にでも、半獣の身分にもちゃんとした扱いをしてくれる彼の真摯さに騎士精神を感じる。尻尾がリラックスしたように左右に振られ)

「玄武第4連隊本部のことかな。そこなら知ってるよ。……こっち!」

(付近に練兵場や鍛冶炉まで備えている兵舎に見当をつければ、彼の役に立てる事に声音を高くし。相手のよく鍛えられた鋼鉄のような腕に両手をかけて引っ張って歩いていこうとし)

ジェイコブ > 「……そうだろうか?やることは困難だが複雑ではないし、毎日貴族の顔色を伺う女中の方が俺には疲れそうだ。女中の道では、それを為せるシチューには敵わないな」

(女中の眼差しには、大男は少しきょとんとした表情になって首を傾げてから、その小さな頭に掌を乗せながら微笑みを浮かべて言う。どんどん気さくな地が見えてくる女中の尻尾が左右にゆらゆらと動いているのが視界に入れば、まだ家の犬が番犬然としたものではない仔犬の頃を思い出して気分が和んでいって。)

「玄武……ああ、確かそこだ!お、おおっ…!」

(女中が上げた名前に、大男は座ったままぽんと掌と拳を打ち合わせる。そして、歩き出す相手に腕を引かれていくと、慌てて立ち上がり、やや身体を傾ける姿勢で歩いていき。)

「―――――……いやぁ助かった、おかげで任務をすっぽかさずに済んだよ。シチューに何かお礼がしたいが、どうだ?」

(兵舎に着いてからの手続きは本当に僅かな時間しか要さず、一通の書状を受け取った大男はそう女中の頭を撫でくり回しながら笑って問う。)

シチュー > (頭にその大きな温かい手が載せられたら、あっというまに目尻がとろけて緩む。いっそう黒尻尾が揺れたら、彼の脳裏に件の子犬の姿と重なる。すっかりこの大柄の騎士に懐き始めてしまって。――喜々として相手を引っ張っていってしまうのは、そんな相手と親しくなりたいからだなんて子供っぽい動機。歩幅が合わなくてぎこちない体勢になる相手に気づけば、「ああ!ごめん……」とペロっと舌出して)

「えへへー……どういたしまして。お礼!?貰えるの?それじゃあ……どうしようかな。今から少しだけ、中庭のお散歩
に行くからジェイコブに一緒に来てほしいな」

(再び己の黒髪を揺さぶる手の感触に楽しげに双眸を細めて。軽く笑みを返しながらも、ささやかなお礼を強請ってみる。)

ジェイコブ > (ミレー族である相手にそう思うのもどうかと頭によぎりながら、仔犬そのものな反応にうずうずとした衝動が沸き上がるものの、相手は少女、この巨体に擦り寄られることに慣れた愛犬とは違うと言い聞かせて己を律する。
しかし楽しそうに腕を引っ張る女中の舌を出しながら無邪気悪びれる様子に毒気を抜かれたように笑いを零しながら案内をされていく。流石にそのままニヤけた状態で執務室に入るわけにはいかず、敷地に入った瞬間取り繕うように表情を顰めている様は滑稽に見えたかもしれず。)

「ああ、ただあまり懐は温かくはな……うん?散歩?……勿論だとも、行こうか」

(女中の頭を撫でながら、思った以上に食いつく相手に、さてこの王城では喫茶を嗜もうとするだけでどれだけ値が張るかと、若干軽率だったかもしれないという考えがよぎって眉を顰める大男は、笑みと共に返される言葉に一瞬呆気にとられた。
そして自分の短慮を少し自嘲するように大男は笑んでから、太い丸太のような腕を差し出して、相手の手を引いて中庭へと向かおうとする。)

シチュー > (しかし、彼の節制とは裏腹に。新しい知り合いが出来たという喜びのまま、相手の腕をぎゅうぎゅうと胸に抱くように引っ張っていってしまう幼さ。彼の緩んだ表情が、連隊本部に入る寸前でキリっと引きしまる様子にくすくすと肩を揺らしたとか。)

「とっても素敵なお庭だったから。ジェイコブとお散歩できたら素敵かなって。――わあい!」

(彼の手が触れる黒髪を機嫌よさげに軽く揺らしながら見上げる視線。奴隷のメイドとして首輪を下げる己の願いが叶えば、歓声をひとつあげて。丸太のような腕に再びウキウキと両腕を絡めて身体を密にする。新しい人間関係はいつだって心踊るものだった。やがて、広い池を敷地内に含んだ庭園へたどり着く。青空から注ぐ冬の陽射しは柔らかく、日向は十分なほど暖かい。そんな風景の中を歩幅を揃えて歩き)

「ふふ、綺麗……。僕の生まれた集落も、こんな場所だったんだー。ジェイコブの生まれた場所は、どんなところだった?」

(歩きながらの、そんな雑談)

ジェイコブ > (いくら顔をしかめているとはいえ、懐いた仔犬のような女中に引っ張られている様を、大男を知るものは何か信じられないようなものを見たような目でぎょっとしていたのは気にしないことにした。)

「ああ、きっと素敵だと思うぞ。……おほん、さっきも思ったが、貴族を相手にするなら淑女の慎みも大事だぞシチュー……ほぅ…」

(嬉しそうにしている女中には微笑ましい視線を送るものの、警戒心が解れた小さな肢体が密着するように抱き着く様にはわざとらしい咳払いをしながら少しツッコミを入れる。そう言いながら庭園に出れば、そこに広がっている光景に少し嘆息する。そして日差しを浴びながら、女中と並んで庭園を眺めながら歩いて行って。)

「それはいいな、俺の村の周りは森と畑ばっかりだった。柵で囲んでいたけど、毎日動物か魔物かが壊して修理していたよ……ああそうだ、教会はすごく立派で、昔修道院があった周りにできたのが俺の村なんだ」

(周りに広がる庭園の風景が、故郷のようという女中を少し大男は眩しそうに見つめながら、やや色褪せた記憶を掘り起こして語っていく。そして否定的な思い出ばかりなことに気が付いて、必死に探る記憶で、通い詰めた教会について語って。)

シチュー > 「慎み……?ああ、ごめんなさい……」

(いつの間にか、身体を寄せすぎていたようで。あまり好ましくないのなら、咳払いの音にはっと我に帰るとやや身を離すように態度が縮こまる。手にとる腕にこめられる力はそのままだけれど。――庭師の手によって冬場に咲く花だけでなく、何か魔法がこめられているのか春先の花まで花弁を広げている。その光景に不思議な気分になりゆくまま、浮かべる雑談はどこか似ている出自の景色と彼の故郷の話)

「きっとその森や畑に美味しい果実やお野菜が実ってたんだね。動物だって魔物だって欲しがるような。……そうなんだ?それじゃあジェイコブもそこに通ってたのかな。神様は今も信じてる?」

足元に、リスにも似た耳の立つ小動物の親子の姿が通り抜ける。その様に目を細めつつも、もういちど彼の横顔を見上げ)

ジェイコブ > 「いや、嫌だったわけじゃないんだが、シチューが自分の身を守るためにもだな……いや決して妙な意味ではなく、曲がりなりにも騎士としての忠告のつもりであって……」

(身体に満ちる魔力が多い間は、忌まわしい血と衝動はなりを潜める。その間ぐらいは、真っ当な騎士らしく振舞おうとする大男は、なんといっていいやらと言葉を詰まらせながらしどろもどろになる。そんな中でもしっかり腕は離さない様子に、大男は苦笑しながらどこかほっとした心持ちになっていく。冬であるのに花を咲かせる植物たちの不思議な庭園の風景を眺めていた。)

「確かに、人も並べられたごちそうに飛びつくだろうから、案外間違ってないのかもしれないな。
ああ、そこに通って騎士になるために勉強したんだ。神様は、信じているというよりはその時の助けに感謝する方が近いか。シチューだって俺の案内をしながら別の仕事はできなかっただろう?」

(小さな小動物が駆け抜けていく様子を二人で目で追ってから、下から見つめてくる少女に視線を向ける大男は、純粋な答えに笑みをこぼしつつ、その頭に掌を置きながら、話を女中自身に置き換えて問いかけてみる。)

シチュー > (口の中、歯に何かはさまったよな台詞のつまり具合にきょとんと瞳を瞬かせる。きっと彼が自分を気遣ってくれたのだろう、と勝手にポジティブ解釈して。淑女なりの距離を置いたまま、絡めた腕をきゅっと僅かな力を込める事で何やら感謝めいた事を相手に知らせよう。にーっ、とした笑顔を浮かべて。)

「今のジェイコブからは小さな男の子だった頃があったなんて信じられないや。でもなんとなく、すっごい真面目に勉強してる様子が目に浮かぶなあ……。そうなんだ。それじゃあ、信じてるというか、信頼してるって感じかな。神様はきっと、何か助けるたびにジェイコブが感謝してくれて嬉しいと思うよ。……うん、出来ないね。鼻歌を歌うお仕事でない限り!」

(頭に触れる手のひらの指の感触も心地よさそうに軽く瞳を閉じて。自分から話を始めたとは言えだんだん難しい会話になってしまった。どこか論点がずれてるかもしれないが、そんな事を言って笑い。)

シチュー > (こんな調子で雑談を重ねつつ、庭園内の彫像や花壇を見回っていけばあっという間に過ぎている時間。日の傾き加減に気づけば慌てたようにケモミミが落ち着き無く揺れ。)

「わあ、もうだいぶ時間過ぎちゃったかも……。付き合ってくれてありがと、ジェイコブ。でももう、お屋敷に戻らなきゃ。それじゃ……またね!」

(最後にもう一度、きゅっ、と腕の力をこめて。感謝の念を伝える。一歩をお城の外へ向ければ、振り返って笑い。片手と尻尾を振り。騎士と女中の出会いの一幕が過ぎていく――)

ジェイコブ > 「誰しも子どもの時期はあるさ、いつからか、そうじゃなくなっているけどね。はは、俺は俺を助けてくれなきゃ感謝しないぞ、今は神様よりシチューに感謝してるしな」

(この図体を見れば仕方ないものとは思って大男は笑う。どうやら混乱してしまったらしい女中の様子を見て苦笑していた大男は、そう明解な答えで現金な解答を示していく。)

「おお、わかった。俺も装備をまとめて行いとな、明朝にはまた国境だ。元気でな」

(時間だという女中が腕に強く力を込めてから離れて、腕と一緒に尻尾まで振っている様に微笑みながら見送る。そして一泊置いた後に大男は巌のような騎士の顔に戻り、少し温かくなった心を抱きながら再び戦いの地へと戻っていった。)

ご案内:「王都マグメール 王城」からシチューさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」からジェイコブさんが去りました。