2016/12/03 のログ
■クラーラ > 「……っ!」
以前、身勝手な貴族に苛立ちをつのらせたことがあるが、それはまた違う怒り。
冷たく心が鋭くなるのではなく、爆ぜるように一気に熱が溜まって…溢れる。
「なら、してあげる」
鼻息を鳴らす彼の顔へ、ここぞと言わんばかりに俊敏な動きで往復の平手打ちを叩き込もうとする。
だが、当たったら当たったで、熱が引っ込んでいき、手をおろしながらごめんと小さく呟くはず。
■オーギュスト > パンッ、パンッ、と。
乾いた音が響く。
衛士が顔を真っ青にしてこちらを見ていた。
かの第七師団長に平手打ち。どうなる事かと思ったのだろう。
が。
オーギュストは何も言わず、決済を終えた書類をクラーラに突きつける。
「用が終わって暇なら、こいつを城下の酒場まで持っていけ」
冒険者の酒場として有名な『鉄剣の掟亭』。
オーギュストの書類は、そこへの依頼だった。
目的は――人探し。報酬は、破格の金貨200枚。庶民だったら20年遊んでくらせるだけの金額である。
常世島から帰ってきたおかげで、臨時収入があったのだ。
■クラーラ > やってしまった。
前に悪徳貴族に啖呵を切ったときもそうだけど、感情を顔に出さない割には抑えることを知らない。
回りの衛士が青ざめるのと同じく、顔は変わらぬ表情だが、心臓は酷くうるさく響き、僅かに体が震えた。
「っ…貴方、まだそんな」
突きつけられた書類を掴むと、そこに書かれていたのは冒険者たちへの依頼書。
人探しに金貨200枚、ゴルドに換算すれば相当な金額となるものだ。
その内容に肩の力が抜けていくと、険しい表情も消えていく。
「……叩いてごめん」
ちゃんと彼も考えていたのだと理解すれば、自分の怒りが子供じみていて、目を伏せながら謝罪を紡ぐ。
カップをティーテーブルに下げると、再び彼に振り返る。
「……知らないなら教えておく。犯されて踏みにじられて…人じゃないって扱われることは、生きることを否定される感じ。サロメさんがそうなってるなら…何も分からなくなりたいか、死んじゃいたいか、だと思う。帰ってきても、傷が治っても、ずっと心に残る」
瞳を閉ざしながら、嫌な思い出を脳裏によぎらせる。
自分で傷口を穿り返すようなもので、苦しさに身体が振るえた。
彼が知らぬなら知るべきだと思う、三度そうなれば、奇跡が起きるとは思えない。
「それが弱いっていうなら…見つけたら、王都から離れたところで、深窓の令嬢にしたほうがいいと思う」
彼がそれを聞き届けるかは分からないが…、暗い表情のままカートを押しつつ部屋を後にする。
渡された書類は、しっかりと酒場へと届けて人探しの依頼が始まるはずで。
■オーギュスト > 「――――」
誰も居なくなった部屋で、男は書類仕事を続ける。
その姿は、威厳ある第七師団将軍の姿ではなく。
まるで、妻に逃げられた夫のようであったという。
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ご案内:「王都マグメール 王城 オーギュストの執務室」からクラーラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城 オーギュストの執務室」からオーギュストさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」にオーギュストさんが現れました。
■オーギュスト > オーギュストは本日も大変不機嫌であった。
酒場に張り出した張り紙からも手がかりは無し。
まったく、本当に何処へ行ったんだか……
「――ったく、ようやく目処はついたか」
とりあえず、溜まっていた書類の処理は終わりつつある。
あとは、キルフリート遠征用物資の手配だ。
オーギュストは新たな書類の山へと挑みかかる。
■オーギュスト > 食料は缶詰で用意する。
本当に一週間で作りあげたのだからたいしたものだ。
あれのおかげで、師団の装備の更新も叶いそうだ。
「となると……」
魔族の国への先導役、地図。
これをそろえるのが先決になる。
■オーギュスト > 地図は今まで強行偵察してきた結果が出てきている。
少なくとも、キルフリートがあるという地点までの地図は出来た。
かなり信頼も出来る。
だが、先導役。
これが難しい。
「そもそも魔族の捕虜がなぁ……」