2016/12/02 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城 オーギュストの執務室」にオーギュストさんが現れました。
オーギュスト > カリカリと。
オーギュストが執務室で書類と格闘している。

その様は、すこぶる不機嫌に見えた。
さもありなん、普段はなんだかんだ言ってサロメに押し付けていた書類仕事。
しかし、彼女が消えてしまっては、自分でやるしかない。

「ちっ……」

乱雑にサインすると、決済済みの方に置く。
書類の束はなくならない。

オーギュスト > 不機嫌な理由は、サロメが行方不明な事だけではない。
昼間の出来事も関係していた。

昼間、王城への出仕の途中。
オーギュストは、ある占い師の老婆に呼び止められた。
本来無視するのだが、オーギュストは他の師団長と違い、徒歩で出仕している。
占い師の老婆は、オーギュストの目の前でじっと彼を見つめ。

「なんだ、婆さん」

そして、オーギュストにこう告げた。

オーギュスト > .





      復讐の刻までに、大切なモノを取り戻せなければ


                                        お前は無惨に死ぬだろう







.

オーギュスト > 師団の兵たちは怒りに任せ老婆を斬ろうとしたが、オーギュストは放っておかせた。

だが……

「――――」

元来、軍人は迷信深い。
どんなに戦略を尽くし、戦術を駆使し、戦闘を有利に進めようとも。

死ぬ時は、死ぬ。

それが戦場だからだ。

オーギュスト > カリカリと。
書類を処理し続ける。
ただひたすらに、何かを忘れるように。

そう。

「俺自身以外に、大切なモノなんざあるかってんだ」

この男は、己の大切なモノとは何なのか。
それが、分かっていないのだ。

オーギュスト > 師団の兵達は、再三サロメを探しに行くよう、オーギュストに要求した。
中には師団を抜けてまで、彼女を探しに行った連中がいるくらいだ。

だが、オーギュストは頑なに彼女を探そうとはしなかった。
あれは必ず戻る、そう信じていた。

(救ってやるのに、二度は多すぎる)

悲しいかな、この男は家族には特に厳しい。
自立と唯我。それこそが第七師団であるのだから。

――本来ならば、この男こそが、真っ先にサロメを探しに行きたいだろうに。

ご案内:「王都マグメール 王城 オーギュストの執務室」にクラーラさんが現れました。
クラーラ > 書類仕事に勤しむ彼の部屋に、小さなノックの音が響く。

「練兵小隊のクラーラです、入っていい?」

ドアの向こうから彼へと呼びかける。
その手には通りがかりのついでと、別の部署から預けられたマニラ封筒が握られていた。
元々はこちらの報告書を届けに行っただけなのに、ついでと使い走りされている。
何時もなら用事があると嘘をついて断ってしまうものの、今日は気になることあり、気まぐれに引き受けた。
第七師団の将軍が戻ったと言うのに、まるで部隊がまとまった様子が見えない。
寧ろ、抜け出していく者すらいる。
新兵たちが噂する言葉は戯言ばかりだが、嫌でも耳に入ることは気になったのだ。

オーギュスト > 「入れ」

ぶっきらぼうにいいながら、書類をまた一枚、完成させる。

まったく、師団の兵達もバラバラだ。
ある者は今すぐ仲間の敵討ちにキルフリートに乗り込もうとし
ある者はサロメを助ける為に探索に抜け出し
ある者は師団の建て直しが先だとオーギュストについてくる。

頭が痛い。副将軍のあいつがどれほど役に立っていたかを痛感する。

クラーラ > 「お邪魔します……これ、貴方に渡せって言われたから」

ドアを開き、静かに中に入るとペンを走らせる彼へマニラ封筒を差し出す。
中に何が入っているかは知らないが、何かの催促か、何かの命令書か、大体そんなところだろうと思っている。
大量の書類の束、そして苛立った様子の将軍。
これは何かあるのだろうなと思いつつ、封筒を渡し終えるとそのまま部屋を後にする……。
だが、暫くすれば再び勝手に戻ってきた。
ティーカートの上には紅茶の一式が乗っており、彼に何を言うでもなくお茶の用意をすると、ことりとティーカップを机へと差し出す。
男性でも馴染みやすいと聞いたダージリンティー、夏摘みのそれは、程よくクドすぎない香りが広がる。

「……第七師団、纏まらないけど何かあったの? 師団を出てった人もいるって、新兵すら知ってるけど」

無遠慮なストレートな言葉で、さらりと問いかける。
表情の変化の少ない、澄まし顔がその答えを求めてじっと彼の様子を見やった。

オーギュスト > 「あん?」

随分と無礼な口を利く奴だ。が。

ここまでストレートな方が、むしろオーギュストには心地良い。
これで何やら迂遠な物言いで聞いて来たら、怒鳴りつけてやろうかと思ったところだ。

オーギュストは一度手を休め、紅茶を手に取る。
どんな時にも急速は必要だ。

「知らん。俺に不満でもあるんだろう、去る奴は追わん」

クラーラ > 「……」

あまり表情は変わらないが、不機嫌そうな言葉に少しビクッとしている。
物言いがふてぶてしくなるのは、人付き合いが下手すぎた結果ではあるけれど。

「……嘘ね、貴方の部隊は…部隊って言うよりゴロツキの集まりだから。それが纏まっているのは貴方と副官さんの人柄でしょう。貴方に不満があるなら、もう師団なんて無くなってる」

傍から見ても、あれは王国軍の師団といい難い荒くれ者が多い。
身を焼くほどの炎の様な力だからこそ、軍としてあり続ける事ができたと見ている。
要を嫌うなんて在るはずがない、静かにその言葉を否定すると、軽く首を傾けた。

「……個人的にも気になるの、どうして?」

変わらぬ表情が改めて問いかける。

オーギュスト > 「……良い度胸してるな、お前」

憮然と言いながらも、怒鳴りつけもしない。
挑んできているのが言葉なら、言葉で返す。
オーギュストの流儀である。
挑みもしないような奴は一喝するか拳をふるってやるのだが。

「行方不明だった俺が帰ってきたと思ったら、今度はサロメが行方不明だ。不安にもなるだろ」

今度こそ、吐き捨てるように言う。

クラーラ > 「……ごめん、私…口下手だから」

その言葉に少しばかり表情が崩れ、ハッとした様子が見えるはず。
悪気が在るわけではないと取り繕いながらも、続く言葉に動きが固まった。

「……じゃあ、抜け出して探しに行ったってこと? 貴方が命令したんじゃなくて」

サロメという名前を知らないはずがない。
魔剣に纏わる事柄だからこそではあるものの、アイスブランドの使い手であり、優れた魔法剣士であることを知っている。
そんな彼女が行方不明となれば、師団が揺らぐのはわかったが。
腑に落ちない物が浮かぶと、訝しげに少し表情が歪む。

「それで…ここで貴方は何をしてるの?」

その書類は彼女を救う何かにつながるのだろうか、苛立つ様子が見えた彼と、山の書類からはそんな気配を感じられず、更に問いかけてしまう。

オーギュスト > 「おそらくな。あいつは師団じゃ姉のような存在で、俺が居ない間はあいつがこの師団を纏めてた。
探しに行く奴だっていらぁな」

ティーカップを机の上に置く。
茶は苦手だ。やはり酒が良い。

「見て分かるだろう。書類仕事だ」

茶を飲み終わり、また一枚、書類を始末する。
大剣で叩き斬れれば楽なものを。

クラーラ > 「……」

探しに行くやつもいるだろう、それは彼が命令したわけではないことを示す。
部下が飛び出してでも探しに出ているというのに、彼はここで書類仕事をしている。
あまり人の上に立ってどうだとか、ああだとかというのはわからないものの、それがおかしいぐらいは思う。

「今度は失礼って分かって言うけど……貴方、馬鹿でしょ? それ、彼女より…優先すること? それを書いて救われるならいいけど…そうじゃないなら馬鹿以外の何者でもない。ここで女の人が行方不明って、意味ぐらい分かるでしょ?」

腐りきった王都、そして腕聞きながら美麗な女騎士。
それが行方不明となれば、何か嫌なことが絡まっているに違いない。
さっきの言葉でも大分苛立たせたと思ったものの、これだけ無遠慮の言葉を吐き出さないと気がすまないほど、感情を煽られた。

オーギュスト > 「そうだな」

無礼と咎めはしなかった。彼女が言う事は正しい。
男として見るならば、ここは何としても探しに行くべき所だ。

だが。

「俺はあいつを一度助けた。
今度はあいつが、自分で立ち上がって戻ってくる番だ」

そう、それが第七師団の掟だ。
魔族に立ち向かい、それを圧倒する。
その為には、実力が求められる。
ましてや、師団の副将軍。戦場でもない王都だ。自力で戻ってこさせる。それが、オーギュストの下した判断だった。

「それで戻ってこれないなら、その程度の奴だったんだろうよ」

クラーラ > 「わかってるなら何で…」

何か怒鳴られるかと思ったものの、彼の言葉は予想よりも静かだった。
しかし、続く言葉に、ガクリと体が揺れる。
首が傾き、ゆっくりと息が溢れていく。
津波の前にすっと水面が引いていくような、そんな心地で心が冷え切っていった。
無言の間が数秒ほど過ぎれば、眉がひくりと動く。

「馬鹿じゃないわね、最低ね。一度助けたから一人で立ち上がれとか…貴方、女の人と長続きしないで自分勝手な人ねって平手打ちされたことあるでしょ?」

更に容赦ない言葉出てしまう、もし彼女が自分と同じ目にあったかそれ以上なら…それは終わりを意味してしまうと思ったから。
眉間にシワを寄せて不機嫌顔を見せながら、言葉をまくし立てた。

オーギュスト > 「残念だがな――」

女を見上げ、獰猛に笑ってみせる。
馬鹿な事を言うな、とばかりに。

「俺は、女と付き合った事はない。俺が所有して、あいつらが耐えられなくなって逃げる。その繰り返しだ」

ふんっと鼻息を鳴らすと、書類仕事に戻る。
心なしか、サインが雑になっているのが分かる。