2016/11/23 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城 オーギュストの執務室」にオーギュストさんが現れました。
■オーギュスト > オーギュストの帰還に、王城は一時騒然となった。
しかし、睨み付けて黙らせると、貴族どもは陰口を叩く方に回った。あいつは不死身だとか悪魔と契約したんじゃないかとか色々とうわさが出回っているらしい。
が、対魔族戦線は活気が戻った。
第七師団も、父親を迎えるが如き喜び様。
ただ、問題はといえば……
「サロメの奴、どこへ行ってんだ……」
ぶつぶつ言いながら書類にペンを走らせる。
書きにくい。あの世界の紙で寄越せと無茶な独り言を言いながらも、山と積まれた書類を片付けていく。
■オーギュスト > 副官であり副将軍でもあるサロメの不在は、ある問題を起こしていた。
事務仕事の決済ができなくなっていたのである。
決定権のある人間が居ないため、仕方が無いのだが。
「ったく、しゃぁねぇな」
文句を言いながらも適当にペンを走らせる。
書類は少しずつだが、減っている。
ご案内:「王都マグメール 王城 オーギュストの執務室」にタマモさんが現れました。
■タマモ > 「ふむ、ここか…」
王城に似合わぬ姿をした少女…では、今はない。
目の前にした執務室の本来の主である人間、その部下であった一人とその姿を変えていた。
たまたまだ、失踪していたこの部屋の主が戻ってきたという話を聞いたのは。
正直、疑っている。
あれだけ見付からなかった者が、こうもひょっこり戻って来る事が。
という訳で、本物かどうか見に来ただけ、というのが理由だったりした。
さて…と、その手がドアに掛かる。
すぱーんっ、勢い良く扉が開いた。
しまった、いつもの癖が出てしまった。
そう思った時は後の祭りだ。
■オーギュスト > 「あん?」
煮詰まっていた所でなにやら部下がやってきた。
とは言っても、部下ならばノックのひとつくらいする筈だ。
第七師団は確かにロクでもない連中だが、それでも執務室に入る時にノックくらいはする。
「誰だ?」
となると。
目の前の部下に見えるこいつは、部下ではない事になる。
■タマモ > 「うぐっ…」
扉を開いた途端に掛かる声に、小さく呻く。
こんな場所に来る者だ、関係者に決まってるだろうと…それは、偽物だった時の反応だ。
つまり…本物の可能性が高い、まぁ、自分の単純な考えの上でだが。
「………むむむ…偽者だと思うておったのに、まさか本物だったとはのぅ…」
はふん、と溜息。
ぱたりと開け放っていた扉を閉じ、同時にぽんっ、とその姿が本来の少女のものへと戻った。
ついでに、挨拶代わりにひらりと手を振っておく。
■オーギュスト > 「偽者だぁ……?」
と、目の前の少女を見る。
どっかで見た事があるような……
「あぁ、お前、ティルヒアに居た……」
そういえば、あの島に置いて来た気がする。
あの時はいやな予感がして撤退するのに精一杯だった。
■タマモ > 「そりゃそうじゃろう、必死の探索の末、見付からず終い。
そんな者が忽然と姿を見せれば、疑う者もおるじゃろう?…妾みたいに、な」
呆れた様子で言葉を返す。
そして、次いで出た言葉に、うむ、と不必要に大きく頷いた。
「そうじゃ、まったく、あの時はあの時で人を放置しよって…
妾がどれだけ苦労したか分かっておるのか?ん?」
びしり、指差し答える。
…うん、実際にそこまで苦労はしてなかった気がするが、気にするな。
言い終えた後、偉そうに腕を組み胸を張ってみせた。
■オーギュスト > 「まぁ、そりゃそうだな。
だが、んな事なら俺の後釜にでも座った方が楽だぞ。
なにせ、方々から恨まれてる身だ」
書類のひとつをまるめてゴミ箱にすてながら言う。
まったく、こんな物まで上がってくるとは。
「大して苦労なさそうだし、生きてるなら問題ねぇな」
それだけ言うと再び書類を机の上に。
訓練の報告書だ。やる事はやっていたようで結構。
目の前の少女は特に気にした様子もない。
■タマモ > 「自覚をしておるというのもあれじゃな…ともあれ、元気そうで何よりじゃ」
そういえば、自分の立場は云々かんぬんと聞いた記憶があった。
まぁ、あんまり気にして聞いてもなかったので、はっきりと覚えてないが。
ひょこひょことデスクに近付けば、ちらりと視線を書類に移す。
…すぐに視線を逸らした。
「うむ、問題ない…って、少しは気に掛けてくれんのかっ!?」
分かっていた、なんとなく分かっていたが、あっさりとした物言いにがくんと肩を落とす。
言ってる事に間違いはないので、強くは言い返せないのが辛いところだ。
「して、なんぞ色々と噂が飛び交っておるようじゃが、実際のところはどうだったのじゃ?
見付からんと言っても、あれだけまったく分からんのは、そうは無いと思うんじゃが…」
視線は書類には向けず、むしろ、視界に入らないように相手に向ける。
本物なのは分かった、次に浮かんだ疑問を解消したいところで。
■オーギュスト > 「気にかけた所で、死ぬタマじゃねぇだろお前」
事もなげに言いながらも。
何処で何をしていたかと問われれば、ふと視線を向け、考えこんで。
「――そういや、お前も異世界から召還されたクチだったか」
ふむ、と少し考えつつ。
写真を一枚取り出し、見せる。カメラすらないこの世界では、現像不可能なそれ。
その中で――
オーギュストが生徒達と一緒に寿司を食っている。
■タマモ > 「むぅ…無駄に理解をされておるのも困りものじゃ…」
残念そうに言うも、無駄に期待しても無駄かと諦めたか表情を戻す。
何やら考え込む相手に、かくん?と首を傾げた。
「うむ、そうじゃが…っと、おや、懐かしいのぅ…写真じゃな?
………で、寿司を食べておるのを自慢しておるのか?これは?」
取り出される写真、もちろん知っている。
ただ、それがこの世界には無いとは知らず、普段通りの対応を見せた。
それっぽいものがやはりあったんだな、といった感じだ。
■オーギュスト > 「知ってたか」
なるほど、つまり。
こいつは、こういう物がある世界から来た、って事だ。
「この世界に、寿司なんてねぇぞ。
そもそも新鮮な魚は漁村に行かなきゃ食えねぇしな。
――異世界に行ってたんだよ」
種明かしをしながら、写真をしまう。
あぁ、生魚の味が懐かしい。
醤油はペットボトル一本持って帰ってきたのだが。
つくれるようにならないものか。
■タマモ > 「…うん?いや、知らぬ訳が………ん?」
自分で取り出しておいて、何を言っているのか。
そう言いかけたが、何かを確認してる感じを受けたか、言葉が止まる。
「………わ、妾を騙したなっ!?
いや、しかし、シェンヤンの料理だか何だかに、それっぽいものはあったようじゃぞ?
ともあれ…なるほどのぅ、それは大変じゃったろうに?」
急に世界が変わる、それは自分自身も体験した事だ。
ふむ、と軽く考え込む仕草。
とりあえず、立ちっぱなしは疲れてきたか、デスクの書類が置いてないところに、よいせ、と腰掛けた。
…行儀が悪いとかは気にしない。
■オーギュスト > 「勝手に騙されたんだろ」
まったく。
にしても、確かに異世界で生きていくというのはなかなか骨が折れる事だった。
こいつの便宜も多少図ってやるか。
「シェンヤンか。気軽にゃぁいけねぇな。醤油をこっちでも作れりゃいいんだが……」
はぁとため息をつきつつ、刺身の味を思い出す。
ついでに壁の酒の棚にも視線をやる。
一本持ってきた一升瓶が飾られている。あれを魚と一緒にやりたいもんだ。
「なかなかな。だが、いい所だった。楽園と言ってもいいくらいにな」
■タマモ > 「むぅ…」
再び唸る、ちょっと悔しそうに。
どうやら少しはこちらの事を考えてくれてたようだが、今は思考を読んでいない、残念。
「まぁ、そうじゃろうな?
あー…醤油か、材料と時間があれば作れるんじゃろうがのぅ…」
そんな単語が出てこれば、自然と普通に食べていた頃をつい思い出す。
色々と料理の手解きは受けており、その内の一つに一応は醤油もあった。
ただ…時間が掛かり過ぎるからか、こちらに来て作る気は無かった。
でも話が出ると食べたくなる、困ったものだ。
「まぁ、妾のところに近い世界ならば…ここと比べれば、慣れれば良いものじゃ。
…刺激は少ないじゃろうがな?」
確かに、ここと比べてしまえば楽園ともいえるかもしれないか。
無意識に同じように棚に視線を向ける。
…きっと考えている事は、相手と同じだろう。
ご案内:「王都マグメール 王城 オーギュストの執務室」にナルラさんが現れました。
■ナルラ > オーギュストの帰還、その噂で城内は持ちきりになっていた。
見つからない彼の行方に様々な憶測が飛び交っていたが。
「まったく、心配させよって」
そう口にする王族のこの男は言葉に反して嬉しかった
数少ない友人と呼べる男、それが無事に帰ってきたのだ
手には何本か酒瓶を抱え、彼の執務室の前までやってきた。
「オーギュスト、どこにいっていた。次の酒の約束もできんかったではないか!!」
そう勢い良くドアを開ける。
鍵がかかってようがしったこっちゃない、そんなものは解呪すればいい
そして扉を開け、中を見れば言葉に詰まる
執務室の机の上に腰掛ける一人の少女……
この男、ナルラがもう一度会いたいと思っていた、一人の恩人の姿を……
■オーギュスト > 「ん、おぉ」
王城に帰還してから、会いたかった人間が来た。
どうせ、手を尽くして探してくれていたのだろう。
「わりぃわりぃ、ちっとな……おぉ」
酒瓶を見て、嬉しそうに目を細める。
が、次の言葉を聞いて。
「ん、なんだ、どうした。こいつがどうかしたか?」
■タマモ > 視線を戻せば、自然と視界に入る書類。
…いい加減、これ除けて欲しいものだと思うものだが、さすがにそれは言えない。
こういうものは、大体は大事なものが混ざっているもの…だが、何かさっき一枚捨ててた気がするが、これも気のせいだ。
手持ちぶたさに一枚手にしてみる…うん、分からん。
と、何やら自分と同じように豪快に扉を開いてやってきた者が居た。
…今はいつもの姿に戻っている、面倒な事にならなければと思ったが…入って来たのは見覚えのある人間だった。
…あ、いや、普通の人間じゃなかった記憶があるが。
「おや、誰かと思えば…ティルヒア以来に会う者ばかりと出会う日じゃのぅ?」
デスクに腰掛けたまま、足を組んで新しく入って来た相手を見遣る。
■ナルラ > しばらく言葉に詰まる、少し頭の中を整理する、まず優先順位を考えよう
危うく酒瓶を落としてしまうところであった
「あ、ああ」
持ってきた酒瓶、年代物のワイン、ブランデー、そしてセーシュをとりあえすオーギュストの前に並べていく
「死んでおらぬ事はわかっていたのだが、どこにいっていたのだ
シェンヤンや魔族の国にさえ手掛かりはない、本当に消えたようにいなくなりおって」
そう友人に文句を口にする、だが本人は嬉しそうである。
「ああ、我が恩人だ……タマモ、ティルヒア動乱の際、
俺の演説の『間違った』部分を訂正するように触れ回ったティル日あの黄金の神獣あれはお前なのだろ?
その節は世話になった、お前のおかげでティルヒア姫の尊厳は守られたと言っても相違ない」
あの後、彼自身『間違い』を訂正する演説も行っていたのだが、彼女による訂正は、その後押しにもなった
ナルラからすれば恩人に違いない、許されるのであれば
手を握り何度も感謝の言葉を彼女に伝えるだろう。
■オーギュスト > 「おぉ、ちっと色々とな……よし」
折角だ、異世界の物でもてなすとしよう。
オーギュストは机の上の書類をしまうと、土産がわりのつまみを取り出す。
チータラ、スルメ、柿の種、それに缶詰。
およそ王族を歓待するとは思えないラインナップだが、この世界では珍味ばかりだ。
さらにグラスを三つ、持って来る。
何故執務室にあるかは聞いてはいけない。
「なに、珍しい体験ばかりだったぞ、あの世界は」
■タマモ > うん、まずい、あの時の事をしっかりと覚えている者だった。
ティルヒアのあの一件は、覚えられていて困るもの…主に、思い出して小恥ずかしいというレベルで。
後、恩人とかはっきりと言われても、だ。
「いやいやいや、ほれ、妾はこう人の姿をしておるじゃろう?
黄金の…とか、そんな大層なものではないのじゃ、な?」
違う違うとぱたぱた手を振るが、明らかに視線は逸れている。
どう見ても、間違っていないだろう?とか言われそうだ。
「お…おぉ?また懐かしいものが…!」
そんな話題を逸らそうとばかりに、準備される土産と酒にぽんっ、と手を打った。
「久しいのぅ、酒には合うのじゃ。
せっかくなのじゃ、頂こうではないか、のぅ?」
ばんばんっ、とデスクを急かすように叩く。
…うん、かなり必死だ。
■ナルラ > オーギュストは変わりがない、むしろなんかツヤツヤしてないか?
そしてタマモは……あの姿のことは触れられたくないのだろうか
だが黄金の狐の話を聞き、思いついたのは彼女のことだ。
ナルラの視線は彼女のモフモフの尻尾へと向けられていたが
「!! オーギュストなんだこれは?」
オーギュストが机の上に並べた品々に驚いた
ナルラは食べもに関して拘りがあった、穀物青果物や香辛料の栽培の改良
そして表立って言えないが、様々な料理をとある魔王から伝授されている。
ピザやパスタ、そしてカレーに揚げ芋など、一部の庶民に広がった様々な料理をこっそり広めていっているのである。
だがオーギュストの出したものはそのドレにも該当しない
おそるおそるチータラに手を伸ばし口に運ぶ
「これはチーズ? だが魚の味もするな」
そして柿の種
「これは果物の種のように見えるが、ライスクッキーか? それに少々辛い」
そうして一本の酒瓶に手をだす、コレは大枚をはたいて他に入れたとっておきの酒だ
「まったくどこにいっていたのだ、それにタマモ……久しいということはこの食品を知っているのか?」
そういってグラスに酒を注いでいく、注いだ酒は
「宵の口 一閃」コメ100%でできた寒冷仕込みの清酒
魔族の国の酒である。
■オーギュスト > 「…………」
なんか慌てているが、まぁいいか。
自分には関係の無い話だろう。ティルヒアからは逃げ帰った身だ。
そして、ナルラの驚きにはニヤリと笑って答える。
「なかなか珍味だろう。
だが、これが一番面白くてな」
缶詰を手に取ると、近くにあった十徳ナイフを手に取り、缶切りを取り出す。
キコキコとあけてみれば。
鯖の味噌煮。
そう、なんと中から魚料理が出てくるのである。
「タナールでヴァンピーナ相手にちと不覚をとってな。
砦の中に落ちたんだが……気付いたら、まったく別の世界にいたよ」
ぐいと酒を飲み干す。
美味い。あの世界の物ほどではないが、それでもこれは極上の酒だ。
■タマモ > よし、誤魔化せた!そんな感じに一安心。…いや、誤魔化せてないが。
「ふむ…なるほどのぅ」
面白い、の言葉と共に缶詰を開けていくのを見る。
自分にとっては懐かしのものだが、さっきの様子からここでは珍しいものなのだろうとは思っていた。
チータラに手を伸ばし、もぐもぐとたべながら、酒を一口。
…うん、美味しい。
「あー…まぁ、知っておると言えば知っておるのじゃ。
どれほどおーちゃんが仕入れてきたかは知らぬが、しっかりと味わうが良いじゃろう」
食べながら、飲みながら、口を開く。
そうそう別世界を行き来するなんて芸当は出来るものではない、となると、今ある分がすべてだ。
…なのだが、ひょいひょいと土産に伸びる手は容赦が無い。
仕方ないじゃない、久し振りなんだもの。
「………状況はどうあれ、おーちゃんは妾を一度下しておるのじゃ。
あんまり簡単に不覚を取るでないぞ?」
一杯飲み終え、さてもう一杯と手を伸ばしながら、ぽつりと呟いた。
■ナルラ > 様々な珍妙な食品、最初は口に入れていたが途中で神妙な顔つきになり、手に取り見つめている
彼の固有能力である“解析”でこれらの食品を一つ一つ解析しているのである。
「非常に手間な……」
そうこれらの食品は、手作業で全て作るには手間がかかり過ぎるのである
そしてそれらを入れていた袋、ナルラはそれを見てさらに神妙な顔をする
自分の知りえない技術で作られているのは見て判るのだが“解析”した上でその素材がぶっ飛んでいることに驚愕した。
「何なんだこれはって」
オーギュストが缶を開け、中に魚の料理を見てさらに驚く
「オーギュスト、そ、それはとんでもないぞ! 瓶詰めより丈夫で持ち運びに優れる! とんでもない発明だぞ!!」
そう言って未開封の缶はないかと、あれば一つ渡してくれとせがむ
そしてその魚料理を食べると、こう漏らした
「……これは、ミソ?」
この国で一般的でない食材の名を口にした
「タマモ、オーギュスト、コレは何なんだ? 戦場での食糧事情に革新をもたらすぞ」
さっきから自分の持ち込んだ酒に手を付けていない、
目の前のこれらの物品が、知識的欲求を刺激するのだ
魔王から料理を振る舞われた時以来の革新だ。
「と、タマモはオーギュストに負けたのか?
やはり第7師団長は流石だな」
そうナルラはタマモの戦闘を知っている、そして彼女が強者だということも
■オーギュスト > 「あやうく死ぬ所だったがなぁ、あの時は……」
現に、タマモには危うく負けかけた。
まったく、あんな勝負は二度としたくない。
もっとも、この男が死に掛けるのもいつもの事なのだが。
「な、すげぇだろ。
俺も向こうの世界で、どうにかこれを量産できないかと考えたんだがなぁ」
結論から言えば、無理だ。
これは超高熱で『殺菌処理』なるものをした結果らしい。
残念だが、この技術の開発にはまだまだ時間がかかるだろう。
「一個だけだぞ。数に限りがあるからな」
ぽいっとナルラに向かって缶詰を投げる。
危うく蟹缶を投げそうになったが、もったいないので焼き鳥の缶にしておく。
「俺が行ったのは、常世島って場所でな。
俺たちの世界よりも、千年ほど長い時間が流れた場所だ」
オーギュストは語る。
あらゆる種族が平和に、今日の心配をせず、明日がもっと良い日と信じて暮らす世界の事を。
■タマモ > 「まぁ、あの時は終わった後はぼろぼろじゃったな、確かに。
ふむ…機会あれば、能力は抜きでリベンジしたいところじゃ」
思い出すように天井を見上げながら、酒を注いだグラスを傾ける。
負けたままなのは性に合わない、というのもあった。
…次負けたらどうするの?それは、問われれば答えるが…どうだろう?
「作り方が分かろうと、作る為の手順が踏めぬ。
…まぁ、食べ物に関しては出来ぬ事はないじゃろうがのぅ?」
こういった技術に関しては、知ってはいるが細かくは知らない。
だからこそ、この保存等の技術に関しては諦めるしかないのは何となく分かった。
と、そんな考えるほどにじわじわと頭が痛くなってきそうな考えをしながらも、土産はしっかりと食べていく。
「はて…聞き覚えの無い場所じゃ。
しかし、千年か…平和を得るのには、人間として見れば長い年月じゃな。
じゃが、それを見る事が出来た事で、それなりに先に希望が持てたものではないじゃろうか?」
くいっともう一杯飲み干し、三杯目に移っていた。
何杯飲むつもりかは、聞かないで貰いたい。
■ナルラ > 「殺し合いでなく、模擬戦であれば立会人でもなろうか?」
そう二人の戦うところは見てみたい、そう興味は湧くものだ
「いや、魔導機械類を駆使すればやってやれんことはないぞ、
それにコレを使えば第7師団は独立採算制をとれるのではないか?
だいいち私はこういう分野の専門家でもあるんだぞ」
焼き鳥の缶を受け取り興味深そうに見ている、
この感の密封方法と殺菌方法、殺菌時高熱を与えるならそれに相性のいい調理方法を
トライエラーを繰り返し、実験を繰り返しさえすれば
そう、缶詰はなんとかなる、だが問題はもう一つ
「問題はこっちだ、これはとんでもない素材だぞ、サンプル、サンプルがいる
オーギュスト、コレをわけてくれ」
そう言ってチータラと柿の種の袋を強請る、チータラの入っていたトレー、薄く透明な素材はナルラは強い興味を持った
そうこの世界に無いもの、だから解析には時間がかかる、創れるかどうかさえも検討はつかない
そしてオーギュストの話に耳を傾ける、あらゆる種族が暮らす平和な世界を
「夢物語だな……例えば、その世界に魔族はいたか? 害をなす存在でなく、気のいい魔族が」
そして、タマモの耳を見て思う
「ミレー族は? 奴隷でなくちゃんと市民権を持っていたか?」
彼女とミレー族を一緒にするのは失礼だが、どうしても聞いておきたかった
そんな夢物語の様な世界を、もしそれが千年後ならばその世界が訪れるようにしなければならないと。
■オーギュスト > 「マジか。そういや、こっちの魔導機械の技術レベルは計算に入れてなかったな」
オーギュストは可能な限り説明する。
なんでも、金属に密封し、熱を伝える事で殺菌する事により、缶詰は恐ろしく長持ちする。
あの世界では、2年間は備蓄ができる事なども。
「お、おう、袋でよければ持ってけ」
そんな物を気にした事もなかった。
なんか妙な手触りのする袋としてしか認識していなかったのだ、この男は。
「そうだな、千年は長い、人間にとってもな。
――だがな。そこには魔族もいたし、エルフも、竜やミレーみたいな獣人も居たな」
しかし、それら全てが平等だった。
落第街と呼ばれるスラムのような場所はあるし、様々な問題もある。
だが、大前提として、だ。
「すくなくとも、飢えれば行政機関が助けてくれるし、今日明日のたれ死にする心配はない。
恐ろしく大量に生産される食料と日常雑貨、それを迅速に行き渡らせるインフラ。
そして、千年の時間が生み出した超高度な医療」
そう、人間達の、技術の積み重ねの歴史が。
「あの島ではな、迫害やら階級やら面倒な事をしなくとも、誰もがある程度満足して生きていけるできるだけの幸福が確保されてる。
それが、あの楽園の『平等』の正体だ」
■タマモ > 「お、おぉ…便利じゃな、魔導機械とは…」
そういえば、逆に自分の知らない技術もあったのを忘れていた。
いや、そもそも魔法自体がいまだにさっぱりなのだから仕方ないか。
2人のやり取りを眺めながら、案外こちらの方が難しいのか…とか、何気なかった自分の生活に改めて考えさせられていた。
「………」
話を聞きながら、それはそれで考えさせられていた。
確かに高度な技術を長い年月で得られ、色々な事が出来ていくだろう。
それと同時に、この地に生きる者として、ある程度の平和も得られるだろう。
だが、また違った問題もあるだろう事は想像出来る。
果たして、この世界の先はそれも解決して進んでいけるだろうか、と。
…難しい事を考えるのは苦手だ。そろそろ止めておこう。
気が付けば、手元の酒やお土産は結構減っていた。
食べ過ぎ飲み過ぎに注意?そんなものは知らない。
■ナルラ > 「貯蔵期間二年か……十分すぎるな、なら熟成させて旨味の増す商品を作るのも面白いかもしれん」
そう言ってビンテージ物のブランデーやワインに目をやる。
奇しくも彼が今手にしている焼き鳥の缶が、熟成して旨味を増す缶詰である事を知るのは、まだ先の話である。
「コレが完成して得た利権は第7師団に回そう、オーギュストうまくやれば面白いことになる
それにだ、この食品、金属缶密閉式食品はその恒久的な平和の礎になるやもしれんぞ」
飢えることのない世界、皆が健康で暮らせる世界
病気や呪い、それらから解放された真の自由と平和を得たのなら
神からも解放されるのかもしれない……ナルラは大きな目標が見えたような気がする。
「本当に言葉だけでは信じられんな……そんな事が可能か?
いやだが……今は無理でも、その千年先の未来であれば、そういう目標を持った者が増えれば」
一人でできることは限られる、だが千年の時と、その発展のために関わった多くの人間があれば再現は可能であろう。
そういうことに夢中になって、大枚を叩いて手に入れた清酒は、まだ一口も口をつけていなかった
「おっとそうだった、清酒と一緒にこういうのも手に入れたんだ」
そう言って、竹の皮に包まれたモノを取り出し、それを開封する
「大豆を特殊加工したトーフという食品を薄く切って揚げた、ア・ブラーゲという食品だ、炙って魚醤で食うとうまいぞ」
■オーギュスト > 「本当にできるなら、タナールへの遠征も楽になるな。
籠城してる時もこれがあれば飯の心配はない」
清酒を傾けながら呟く。
この男なら、案外やってのけそうなものだ。
「行く前の俺なら、夢物語だと一笑に付しただろうがな。
だが、目の前で見た以上、信じるしかねぇよ」
そう、実際にあの世界は存在し。
そこで暮らしたのだ。信じるしかないだろう。
「ん、おぉ、豆腐に油揚げか。あれは味噌汁に入れると……」
そこでふと気付く。
油揚げといえば、狐の大好物ではなかったか。
ぐるりとタマモの方へ視線を向け
■タマモ > 「ふむ…」
なんだかんだで、話は進んでいるようだ。
案外、気が付いたら完成しました!とか、あるかもしれない。
まぁ…うん、技術ってのは意外性の塊だな、とか思っていた。
難しい話からは離れそう、そう思っていたからこそ…それがよりはっきりと目に入った。
さっきまで飲み食いに集中していたはずの手、それが止まったのが分かるだろう。
「………い、いや、別に妾はなんとも思ってはおらんぞ?
うむ、そうじゃ、別に油揚げなんて何とも思っておらんからな?
本当じゃぞ?嘘ではないぞ?疑うでないぞ?」
誰かさんがこちらに向けている視線の中、明らかに違うだろう、という発言と仕草。
まぁ、実際に油揚げは美味しいので大好物である。
狐イコール油揚げ、というのは本当は少々違うのだが。
■ナルラ > 「俺を誰だと思っている、1週間だ、1週間で完成品を見せてやろう」
そう言って、缶詰を宝物のように見つめている
そして、見たこともない素材でできた袋やトレーもだ。
「なに、俺が出来なくても後に続くものが志ざせば可能であろうよ
王位には興味が無いのだが、そういう世界を創れるなら……いや裏で暗躍のほうがいいな」
ふと、王としてより平和のための暗躍のほうが自分にはしっくりきているかと思う
「ん? ミソシル……そっちの魚料理といいミソが一般的なのか? ショーユとか?」
そう先ほどから気になってたので聞く、油揚げの説明に魚醤と言ったのは、醤油が一般的な食品では無いからだ
「まあ兎に角、こうやって炙ってだな」
小さく呪文を詠唱、油揚げに手をかざせばいい匂いをさせながら表面がカリカリになっていく
醤油をたらせばたまらないだろう。
ちなみにナルラの知識では狐=油揚げというのはない
「なんだ、タマモはコレが好きなのか? 作り方は知っているから今度大量に用意しようか?」
なんといっても彼女は恩人である、恩人に何かできるなら喜んでしよう。
■オーギュスト > 「……本気か」
本気なのだろう。
まぁ、楽しみにしておくとする。
「そうか。そっちはお前に任せる。
俺は、準備が出来次第、対魔族戦線に戻る」
楽園で、確かにオーギュストは理想の世界を見た。
人間、魔族、そして全ての種族がお互いを尊重しあい、そして緩やかに共存する世界を。
しかし、ここはマグメール。
そして、自分は第七師団長。
この生き方を変えるつもりはなかった。
「おっと、それなら……」
オーギュストは持ち帰ったものの中から、醤油を取り出す。
長持ちする真空パック入り。それを油揚げへと軽く垂らし。
「何だ、遠慮する必要は無いぞ。ナルラもこう言ってる事だ、遠慮なく食えよ」
タマモにもすすめる。
ご案内:「王都マグメール 王城 オーギュストの執務室」にロザリアさんが現れました。
■ロザリア > バリッ…という音が突然その部屋に響き渡る
それは、対魔族用の結界を無理矢理に引き裂く音
ほんの僅かな震動を部屋に残し、光が部屋の入口を塞ぐように人を形どり、
黒朱のドレスを纏った金髪の少女の姿へと───
少女は金色に光る蝙蝠を散らせながら、翠眼が3人を見据える
「───魔力の残滓。
どこへ消えたのか思慮していたが、異世界へ落ち延びていたか」
鈴のような、
それでも圧倒的な重圧を感じさせる声を向けて
吸血姫はその場に姿を現した
■タマモ > すでに難しい話は遥か彼方に消え去っている。
目の前に広げられている、油揚げの成り行きを、期待の瞳で見詰めていた。
もちろん、勧められれば、仕方ないなと言った感じに手を伸ばそうとするだろう。
…と、不意に感じる違和感。
魔法やらは分からないので、結界がどうとかは分からない。
ただ、部屋に新たに現われた者がどういった存在かはすぐに理解する。
「………おやおや、今日は客人の多いらしいな?
しかし、吸血鬼がこんな場所にやってくるとは…なんじゃ、おーちゃん、知り合いか?」
無駄に放つ重圧には、どこ吹く風といった感じに無反応。
力があるのは分かるが、色んな強者に出会っているから慣れたものだった。
とりあえず、あれだ…普通の知人と思ったか、ひらりと挨拶代わりに手は振った。
■ナルラ > 「ああ、本気だ……楽しみに待ってな」
そう言った矢先空間の引き裂く異様な感覚、その視線の先に見たのは美しい少女
一瞬、ほんの一瞬だが見惚れてしまった、そう彼女が噂の吸血姫
かつて真龍の少女と出会った時以来の胸の高鳴りを感じてしまった。
「コレはコレは、酒盛りにでも混ざりに来ましたかな?
噂に聞くキルフリートの姫君」
そう言いながらワイングラスを持ってき、ビンテージワインの封を開けそれに注いでいく
「タマモ、ア・ブラーゲふっ飛ばされてもキレるなよ、
ショーユもセットで用意するからな」
それにしてもオーギュストの持っている醤油のパッケージ、恐らく先ほどの袋と似たような素材、
だがそれよりも今は新たなる来客だ。
■オーギュスト > 「――そっちから来てくれるたぁなぁ」
ゆらりと立ち上がり対峙する。
まったく、なんて――都合の良い
「おかげさまで、良い体験をさせてもらったよ。
ったく、後はお前さんを元の奴隷にしてやりゃぁ、万事解決ってやつだ」
あとサロメを探しに行かなければいかないが。
それはさておき。
「王城に乗り込んでくるんだ、覚悟は出来てんだろうな?」