2016/11/20 のログ
フォーク > 七十本目の矢が壁に突き刺さった。ほんの数十メートル先の的は新品のように輝いていた。

「そういえば昔、弓術のセンセに聞いた話を思い出しちまったなぁー」

とある弓の達人が弓術を極めすぎて、弓と矢が何をするものかを忘れてしまったという逸話だ。
件の達人を呆けてしまった老人と受け取るか、はたまた存在自体が弓矢と等しくなった真の達人と思うか。
それは聞いた人の判断に委ねられる所だ。

「ま、俺の解釈はちょっと違うけどね」

男は的ではなく、天井に向かって矢を放った。

「飽きちまったんだよな、要するに……」

くるりと背を向けて訓練場から出ていく。
射られた矢は、矢羽ギリギリまで天井に埋まっていた。

ご案内:「王都マグメール 王城」からフォークさんが去りました。