2016/10/13 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城 第七師団執務室」にサロメさんが現れました。
■サロメ > 「…ふぅっ」
ギシッ、と椅子の背凭れに背を預けて天井を仰ぐ
「………」
あれから数週間
依然として師団長オーギュストの行方は知れない
捜索隊の編成を渋る王城の貴族達を尻目に、
オーギュストの持つ類まれな人脈は、その行方の捜索を絶たせることはなかった
私騎士、傭兵、まれ人に至るまで……
「…ふっ、よくよく、あんな粗暴な将軍に人望があったものだ」
不謹慎ではあるが、ついつい笑みが漏れてしまう
■サロメ > 有り難いことである
中には単独で魔族の砦へ捜索の手を伸ばす者まで現れた
…しかし、それでも尚オーギュスト将軍の手がかりは愚か、
その足取りの欠片すらも見つからない
魔族に連れ去られたとしても流石に不自然である
あらゆる報告や状況を整理すると
こつ然とその姿を消してしまったとしか思えないのだ
それではまるで………
「(…突然この世界に現れる者がいるように……もしや…)」
その逆も───
そこまで考えて、一旦思考をカットする
流石に飛躍しすぎだと自分の脳を戒めた
■サロメ >
「……当面の私の仕事は、留守中の第七師団を潰させないことだ」
そう言って再び机に向かうと、出迎えるのは書類の束、束、束
オーギュストが他の士官に処理させていた分まで、副将である自分のところへ回ってきている
しかも大半は、目を通す価値もないほどの、雑多な資料
提出先を見れば王城に巣食う貴族達の名前がズラリである
あれを報告しろ、これを報告しろと、これを機を見んばかりに
連中の考える事など知れたもの
オーギュストがいない今、自分をこの執務室に縛りこんでおけば、
表立って第七師団を指揮できる能力を持った者が不在となる
その間に師団解体の策を練ろうといったところだろう
不幸中の幸い、というよりも、むしろありがたい話ではあるが
一部の高官達が解体を反対してくれているおかげでなんとか師団は現状を保っている
「…事実、第七師団が解体されれば王城の維持すらも怪しいところだな」
現在、王城内部に入り込んでいる魔族は確認できているだけでも十数名
それらは手出しをできない場所にいる数だ
他を数えれば、更にその数は増えてゆく
そんな魔族を発見次第尋問にかけ、粛清を繰り返していたのも、この第七師団である
第七師団解体に向ける一連の動きは、
上の人間にとって魔族を排除されると困る者達がいる
もしくは魔族そのものが成り代わっているという疑念そのものだ
■サロメ > 無論、オーギュストをはじめ第七師団の態度を気に入らないとする貴族もいるが、
それでも彼らにとって自分の命ほど大事なものは在り得ない筈
今の王城や周辺の状態で、対魔族で一番有利な動きを可能とする第七師団を不要と判断するのは余程の愚か者でしかない
「(──とはいえ、だ)」
羽ペンを走らせながら、思考を続ける
「(このまま事が長引けば、どう転ぶかわからないのも事実…)」
トン、と口元にペン尻を当てて、目を細める──…
「(表立って、というわけにはいかないにしろ、何かしら動く必要はある。
王国聖騎士団や志を共にする者達と、足並みを揃えておくべきか…。
……もっとも、それをさせないためにこうやって雑務に私を追い込んでいるのだろうが…)」
小さく息を吐き、ペンを走らせる速度を上げる
雑多な事務処理、報告書類の作成などはお手のものだ
オーギュストはこういった仕事を嫌い、大体の書類仕事を自分に押し付けていた
慣れとは怖いものである
■サロメ > 「……やれやれ」
ペンをペン立てへ、
そして普段はなかなかかけない眼鏡を外し、机へと置いた
……とりあえず一段落といったところである
書類の山はまだまだ健在だが
すっかり冷えた紅茶を口へと運び、一服する
「…こうも事務仕事ばかりではな…剣の腕が鈍ってしまうぞ」
やれやれ、と凝り固まった肩をぽんぽん叩く
もう若くない
いや一応まだ二十代だしそれなりに若いつもりではあるけれど
十代の頃に比べるとさすがに疲労の溜まりが違うし、何より睡眠時間による回復具合が変わる
そんなことを考えてしまうと、余計机の上で山が高く見えてきた
■サロメ > 「………」
ポケットから一枚の便箋を出す
それは、親愛なる騎士からの手紙
内容は──無論今回の一件に関するものだ
「(王国聖騎士団は既に大規模な捜索隊の編成を終えている…。
こちらかの要求があればすぐに動けるとのことだが……)」
おそらく、おそらくではあるがマークされている
幼い頃の自分、そして自分の家柄が彼女と関わりがあることを、知っている貴族は決して少ないわけではない
秘密裏に会おうにも、互いの立場上難しいところがある
「──…(手法を真似てみるか)」
フェイクの本文に、魔力感光による真の本文を隠す手法
幸い、自分の持つ魔法知識でもそれは可能だった
「王国聖騎士団が動いてくれるのであれば願うべくもない…。
何よりも、今の王城の守りは手薄に過ぎる。暫く、力を借りることになるが…」
懐から取り出した、スクロールに魔術式を書き込むためのペン
それに魔力を込めて、さらさらと便箋へその旨を書き記してゆく
■サロメ > 記したのは王城警護の増員、捜索隊の実動要請、そして、労いへの感謝の言葉
そしてその上から、フェイクの本文を書き連ねてゆく
内容は、他愛のない、兵たちの武器や防具の発注状況に関する摺合せなど、無難なものだ
途中誰かに封書を開けられても仕掛けに気づかなければ、問題ない
「セーラ」
少し声を張って、執務室のドアの外で待機していた部下を呼びつける
『では、そのように』
封書を預かった部下は一礼し、部屋を出て行く
執務室から出た彼女は早馬を飛ばし、任務を忠実に遂行するだろう
「……ふぅ」
再び、背凭れにその体重を預けた
■サロメ > 自分は生真面目な性格だ
思い出すにも新しい記憶、その性格を逆手にとられ、
この王城地下で、悪徳貴族達にいいように扱われたこともあった
…その時に押された焼印は今も下腹部にその痕を残している
しかしあの一件があったからこそ、今は、
騎士の誇りや吟二を捨てないままに、誰かに頼ることができるようになった
誰一人として、下賤に身を窶した自分に失望しなかった
むしろ貴族達に対して怒り、戦慄き…
「…ふふ、まったく……」
誇らしい
第七師団という、自分の選んだその道が
■サロメ > 「……よし、もうひと頑張りするとしよう」
凭れていた背を起こし、ペンを手にする
「次は…タナールでの被害内容の報告か。
…全く、何度目だ……同じ内容をいくつも…」
要求する対象、つまりは報告書を提出する相手が違うのだが、
本来ならそんなものは一括して提出でコトが済む
時間稼ぎと嫌がらせ、
こんなにもわかりやすいものだというのに、
自分は抗える立場にいない
せめてこと細やかに、素早く丁寧に
完璧に顔色変えず対応して悔しがらせてやることにする