2016/10/03 のログ
■イニフィ > 恭しく礼をする彼女を眼にして、イニフィは軽く笑った。
貴族として振舞っているつもりは無かったけれど、やっぱり服装が此れではいやにも解ってしまうか。
頭を下げる、その騎士に近寄るイニフィは、ぺちんっと頭を軽く叩いた。
「そういう堅苦しいの、無しにしてくれないかしら?
私は貴族って言う肩書きになってるけど、そういう堅苦しいの嫌いなのよ。
サロメちゃんね、時々噂は聞いてるわ。」
第七師団の話は、貴族社交場の仲でも時折名前が出てきた。
ただ、一言で言えば評判は最悪、曰く台本どおりに動かない屑のあつまりだとか、成り上がりの傭兵崩れだとか。
「私はイニフィ。…えーっと、堅苦しいフルネームを言うなら、イニフィ=シュヴァンシュタイン=ニンフェンブルグよ。」
普段は名乗ることは無い名前だけれども、一応貴族や騎士の前では名乗ってほしい。
そう、妹に言われたので仕方が無く名乗っている。
毎回舌をかみそうな長い名前に、イニフィはあまり言い感情は無かった。
■サロメ > 「っ…いえ、そういう訳には参りません」
場末の酒場等ならまだしもここは王城である
何処で誰が振る舞いを見ているとも限らない、者によっては不敬であるとし、やはり槍玉にあげられる
「ニルフェンブルグ家の…。
無学が過ぎたようです。ご容赦を」
再び一礼する
貴族当主の家柄の名が出てくるとは、しかし…
「(見た目も、肩書も人間に違いない。しかし…この拭えない疑念は何だ…?)」
ゆっくりと顔を上げて
「これより大会議の間にて陳情が御座います。
ご歓談に応じたいところではありますが……」
■イニフィ > 「気にしないで、というよりも正直に言えば、ニンフェンブルグに姉がいたなんて、つい最近まで知らなかったでしょ?」
突然、いきなり彼女が現れた。
貴族たちの合間で、そこにこんな美女がいたのかと噂になるほどに。
しかし、礼儀はなっていないし、食事のマナーも悪い。
近寄ってもあっけらかんとしていて、つかみどころもなく、貴族だというのに足蹴に扱う。
彼女の評判もあまりよく無いのは、おそらく噂程度には耳にしているだろう。
ただ、随分疑われている感じが、彼女からはする。
まあ当然かと、イニフィは少し肩を竦めた。
「……ふーん?第七師団の人が呼び出されるって珍しいわね?
でも、どうせまた貴族の嫌味でも聞かされるんじゃないの?」
人目をはばかることも無く、誰が聴いているのかわからないような場所で。
香水のような甘い香りを漂わせるイニフィは、サロメの視線に合わせるように、軽く顔を下げた。
「…もしかして、タナールで起きた魔族との戦の件なのかしら?」
■サロメ > 成程、彼女が噂の
その口調や初対面の相手への接する距離は、この国で貴族と呼ばれる人間達とは少し違う
「(…感じた違和感の正体はそれか…?)」
肩を竦め、要点を突いて来る彼女の言葉に再び険しい顔を見せるサロメ
「…お察しの通りです。
既に一度タナールへの出兵を願ったのですが相手にされず…、
それでももう一度、と…… …?」
鼻を擽るような甘い香り
貴族の使うコロンか、と気には留めずに
■イニフィ > 「…だから、そんな顔しないの。
素材がいいんだから、少しくらい余裕をもって接する…のは、さすがに無理か。」
彼女は根っからの騎士、ならばこんな風にかしこまってしまうのは仕方がないことか。
イニフィは半ば諦めたかのように、苦笑しながら険しい表情をするサロメに相槌を打った。
「あー、やっぱりか…。なんかすごい戦だったみたいね?
第七師団がほとんど壊滅しちゃったんだって?…貴族たち、笑ってたわ。」
此処で、少しだけ表情が曇った。
付き合いは短いものの、今まで旅行を楽しんで、数多の人間と接点を持っていたイニフィにとって、あの笑い声は非常に癇に障った。
だからこうして、社交場からさっさと退散してきた、というわけだ。
「無理ね。貴族たちの間では、第七師団をさっさと解体したいっていう話が8割を占めてるもの。
もう一度進言したとしても、門前払いが関の山じゃないかしら?」
甘い香りは、精神を落ち着ける効果を持っているかもしれない。
ふわふわ漂う甘い、紅茶のような香りを纏いながら、イニフィは軽く首をふった。
「それよりも……私と少しお話しない?
話を聴いて手、サロメちゃんといつかじっくり話したいなって思ってたところなのよね?」
■サロメ > そう、貴族達は笑いを抑えることもしなかったのだろう
いわば鼻つまみ者、その第七師団が壊滅的打撃を受け、師団長までも行方知れず
そして彼女の言うとおり、陳情は門前払いに終わるだろう
最初から話を聞くつもりもないのだから
「…しかし… …いえ、わかりました」
猛っていた気分が不思議と落ち着く
改めて姿勢を正し、向き直る
「私などで歓談のお相手が務まるかはわかりませんが、そう仰られるのであれば…」
自分たちに友好的に接する貴族などがまず稀だということもあった
少なくとも話をしたい、と自分から申し出てきた者は、これまでに数える程しかいなかった
■イニフィ > このまま、何もしなければ第七師団は空中分解し、彼ら貴族の憂いは一つ減るだろう。
一番鬱陶しいものが消えて、口煩いものはみんな蓋をして見ないフリ。
権力を奪い去られた騎士は、そのうち――――。
「言いたいことは分かるわ、自分が所属している部隊が壊滅的危機なんだものね?
……協力、してあげましょうか…?」
――イニフィの眼が、赤く光る。
先ほどまでたけっていたその心が落ち着き、徐々に心が静かになれば――。
向き直った彼女へ甘い香りを纏わせながら、歓談に応じてくれるという言葉にありがとう、とイニフィは返す。
「ううん、お話してくれるだけでも嬉しいわ。
…サロメちゃんの『愚痴』くらい、いくらでも聴いてあげるわよ。」
友好的というべきなのだろうか、それともただ単なる飄々とした、と言うべきなんだろうか。
雑談に応じてくれるならば、よかったらサロメの私室に案内してくれ、と両手を合わせて頼み込む。
■サロメ > 「協力…ですか?」
少しだけ驚いた表情を見せる
その本意は何なのか、彼女の家にとってのメリットは何もない
…しかし貴族党首たるニンフェンブルグの後ろ盾は強固なものとなるのもまた事実だった
「わかりました、では執務室の方へ──」
第七師団副将の執務室は私室と言って相違ない
将軍と違い、緊急時でもない呼びつけがない限りは人が訪問することも稀である
…それゆえにデスクワークが捗るだろうと大量に仕事を押し付けられたりもしたのだが
■イニフィ > 「そっ、協力。…まあ、さすがにちょっとばかり黒い話しになっちゃうから、ここじゃね?」
さすがに、そんな話をするというのに公の場では難しいものがある。
イニフィとて、ただの肩書きであり、面倒な称号だが――妹には大事な称号であり、肩書きなのだ。
それを失わせたり、地に落とすことがあってはならない。
だからこそ、こういう話は持ちかけても人目だけは避けておこう、と考えた次第だった。
「さっすがね、執務室なんか与えられてるんだ?」
だったら、その部屋へ移動してもなんら問題はない。
誘われるまま、イニフィはサロメと共に、その執務室へと向かうことを了承した。
ご案内:「王都マグメール 王城」からサロメさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」からイニフィさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」にアルバトロスさんが現れました。
■アルバトロス > 王都マグメールの王城。
本来ならば、身分の高い者しか足を踏み入れることすらも許されない場所。
その建物の廊下を闊歩する鎧姿の男が居た。
「………。」
手には丸められて紐で結ばれた羊皮紙が一つ。
飼われているという立場だが、第四師団団長の部下という体で代わりに上からの伝令を受け取っていた。
尤も、他の誰もが行きたがらないに加え、男は誰に何を言われても動じないという理由で押しつけられていたわけだが。