2016/08/27 のログ
ご案内:「王城 月夜の庭園」にラケルさんが現れました。
■ラケル > ―――どうしよう、と溜め息交じりに呟くのは、今宵、もう何度目か。
夜更けの庭園、母の好む美しい花々が咲き誇るこの場所は、
もともと、城内でも己の『お気に入り』の場所だったのだけれど。
生まれ育った場所、いつもと同じ白絹の夜着、―――けれど、その下に。
「……どうして……
今日は、なんにも…、ん、にも、されてない、のに…。」
ただ、姉の一人が気紛れを起こして、己に飛び切りの化粧を施してくれただけだ。
昼間の、ほんのひと時のお遊び―――なのに気づけば身体が芯から熱く、
膝はがくがく震え、―――変わって、しまった。
こんな筈じゃない、こんな風になる筈が無い。
そう思い詰めればかえって悪循環になるというのか、深夜を迎えても、
この身がもとに戻る気配は無く。
早めに休む、と寝室へ引っ込んでも、こんな状態では眠れたものでは無い。
ふら、ふら、布製の履き物を履いた足で、漂うような歩調を刻みつつも、
微風に捲れ上がるのを恐れるよう、ぎゅ、と夜着のお腹辺りを掴んで。
ご案内:「王城 月夜の庭園」にナルラさんが現れました。
■ナルラ > 溜まっていた仕事も一段落し、庭園とやって来た男
この庭園には彼が育てている植物も数多くあり、その成長の具合を確認しにやって来た。
「……ふむ、順調のようだな」
育成の難しいと言われる白い花、それに触れればかすかに微笑む
月夜に咲くと言われる華の開花を目にすることができたのは、幸運と言っても良い
そんな中、ナルラの視線に一人の少女の姿が見える
先日迷宮で救い出して少年、そしてその身体につい細工をしてしまった少女を
「こんばんは、こんな夜遅くに護衛も付けずにお散歩ですかな……ラケル姫」
静かに近づけばそう声をかけ、そっと肩に手を触れようとする。
■ラケル > 何が引き金になったものか、さえよく分からない以上、
どうすればもとに戻れるものかも、勿論己には分からない。
深く思案の底に意識を沈めていたせいか、近づくひとの気配には気づけなかった。
―――覚えのある男の声が背後からかかり、大きな掌が肩へ乗せられる、その瞬間までは。
「―――――っ、……!」
ひゅ、っ。
鋭く喉を鳴らし、彼に触れられた肩先だけでなく、全身、至るところを
硬く強張らせて、弾かれたように振り返る。
零れ落ちんばかりに見開いた瞳に宿るのは、驚愕と―――恐らくは、恐怖の一種。
「……な、…ナルラ、…さま……」
その名を、震える声で絞り出すのがせいいっぱい。
夜着を掴み締めた両手指は白く色を失くし、月明かりを浴びた面は蒼白く。
―――けれど同時に、身体のずっと奥まったところで。
じわり、なにかが蕩け出すのを感じて、背筋が粟立つ。
■ナルラ > こちらを見れば警戒をする様子、無理も無いナルラ自身もそう思われるような事をした自覚はある。
だが、この少女の愛らしさは今日も変わらない、髪を下ろした姿もまた良いものだ
「先日の洞窟以来だな……その後息災か?」
その身体に訪れた変化についてはナルラは張本人である、よく判っている
そして、肩に触れた時の柔らかさ、今の彼は彼女であるとほぼ確信できた。
「今宵は月灯花の珍しい開花も見れる良き夜だ……だが、一人だけでの散歩は危ないぞ
悪い王子が貴女を拐いに来るかもしれませんからな」
そう言って白い花を指をさす、月明かりで開花する珍しい花を
「ところで今夜は……リヒャルト王子でなく、ラケル姫でよろしいのですね?」
そして改めて問う、本人の口からそれを認める言葉を紡がせる
その上で、何か質問でもあるかとこちらも問に答えようと言葉をかける。
■ラケル > 己の彼に対する心情は、実のところ何とも複雑だ。
化け物から助けてくれた恩人であるのは間違い無く、けれど一方で、
彼に触れられたことが『変化』のきっかけであるのも疑う余地は無く。
そうしてまた―――『この状態』で出会ってしまう、なんて。
「……………、
その、節は、…ありがとう、ございま…し、…た…。」
息災であるとも、そうでは無いとも、今の己には答えられない。
だから、ただ先日の礼だけを短く述べるにとどめた。
視線は俯き加減に、彼の顔から逸れようと―――しかし、白く艶やかな孤高の花には、
思わず誘われて目を向ける。
ほんの一瞬、彼を、彼の存在に感じていた恐怖を、けろりと忘れかけて。
―――けれども。
「―――っ、……めて、くだ、さ……!」
片手を浮かせて肩を捻り、彼の手を振り解こうとしながら、一歩、
後ろへ下がって彼を仰ぎ見る。
視線はおどおどと落ち着き無く、月明かりに満ちた庭園のそこここへ彷徨って。
「やめ、…こん、こんな、ところ、で…、」
こんな、誰の眼が、耳があるかも知れぬ場所で。
どこから父の耳に届くか知れぬ場所で、その名前を持ち出さないで欲しい、と。
けれどその反応は大袈裟に過ぎて、きっと彼の問いに対する答えが
『イエス』であることなど、すぐに悟られてしまうだろう。
駄目押しのように、か細い声音が。
「…あ、…あな、た……ぼくに、いったい、なにを、したん、ですか…。」