2016/07/25 のログ
ご案内:「王都マグメール 庭園」にエーヴさんが現れました。
エーヴ >  ―――偵察、あるいは視察。

 「ひゃあ……豪華だなぁ。庭師さん何人雇ってるんだろう」

 口を半開きにして呟くは布服にカバンを斜にかけた配達帽子姿であった。
 ここは王城の庭園。メインとなる庭園とは異なってはいたが、それでも平民の家を数十敷き詰めてなお余る広大な面積を誇っていた。
 王城はいかなる身分のものも入ることが出来る。一応、理由が必要なのではあるが、配達員と嘘をついて勝手に忍び込んでいた。
 『これから王城からお宝盗むんでよろしくね』などと言おうモノならばとっ掴まって牢屋行きだ。仮に別の理由を並べていても怪しいフード姿がうろついては目立ちすぎる。そこで適当な服を見繕ってやってきたのだ。

 「やっぱ見えないかあ」

 瞳が青く染まる。見遣るのは庭園の門の錠前であった。内部構造を見てやろうとしたのだが、魔術的な防御が施されているのか突破できなかった。
 やれやれと首を振ると、あたりをうろつく。秘密の入り口でもあれば面白いだろうにと。

エーヴ >  「噂じゃこの辺にぃっと……ないなあ。
  あんにゃろー嘘付いたな。今度とっちめてやるっ」

 色とりどりの花が萌える花壇脇の木々の根元にある扉らしきものの傍に屈むと、こじ開ける。中に入っていたのはごく普通の道具であった。シャベル。ジョウロ。どう足掻いても道具であり、秘密の抜け口には見えない。
 盗賊仲間から教えてもらった情報が大嘘であることを確認した少女は、見回りにきた衛兵の視線を避ける為に身を翻した。
 庭園の片隅にあるベンチへと腰掛ける。道行く人を観察する。秘密の入り口とやらを見張っている人はいないか。秘密の入り口に入ろうとするものはいないか。

 「…………ふぁ……あ」

 大あくび。
 見れば見るほどこれは退屈だと思った。
 庭園をにぎわそうと音楽を奏でる一団を見た。美しい旋律はやがて脳に染み渡る甘い子守唄と化していた。
 こくり、こくり、と頭が揺れる。

ご案内:「王都マグメール 庭園」にアシュトンさんが現れました。
アシュトン > 首尾は、まぁそれなりか……
(足音を消すのは楽団の音色と人々の声、姿を紛らわすのは庭木の数々。
王城の影になる部分から滲み出、駆けて抜けてゆくのは文字通りに『怪しいフード姿』
もっとも、ヒトの視線は十分に考慮している、のろまな衛兵にそう簡単とバレル事はないだろう。
巡回の合間を縫うように、駆ける身が一陣と通り過ぎてゆく)

…………
(今宵の目的は本格的な盗み、ではない。
どうやら城の地下、とある一室に表へは公表できない財がたくわえられているとの話。
本格的に手を付けるのは後の事として、その下調べと、確認、道順の把握、警備の程度、その他もろもろ
――後はヒトを動かす手付となる、証拠を少しとばかり失敬、といった所だ。
流石にアレは、一人で全部どうにかするには手に余る。
懐には盗んだ金と宝石の装飾を忍ばせ、呑気に欠伸をしているその人物、近くに植えてある木の片隅を通り過ぎてゆこうとする)

エーヴ >  「………はっ」

 目を開く。演奏が止まったというきっかけがあったのは確かだが、妙な音を聞いた様な気がするのだ。これでも耳と鼻と目はいい方だ。宝石やら金貨やらが擦れる音。足早に立ち去ろうとする気配。
 涎を手の甲で擦ると、キャスケットの奥の眠そうな目をぱちくりさせた。

 「ふーん」

 目に付いたのはいかにもな怪しいフード姿。
 まさか同族だろうか。すぐ傍を通り過ぎていく姿を目ざとく見つけると、大あくびをかみ締めつつ立ち上がる。どうせ手掛かりなんてありはしないのだ。ついていってみようという浅い考えだった。
 手掛かりが得られればよし。駄目でもよし。ベンチで昼寝するよりも遥かに建設的であろう。
 あえて足音を大きく。あえて、相手の視界の隅に映りこむ様に足を運び、尾行していくだろう。

アシュトン > (万事順調、後は戻るだけ、のはずだったのだが。
半ば眠りかけていた人物の傍を通ったその時に、視線と、気配が、明らかにコチラへと向けられる。
舌うちなんてモノは鳴らしはしないが、その事態に眉を僅かに動かす。
流石に、ここでバレルと逃げるには相当骨が折れる。
周囲に報告される前に、眠らせるなりなんなりするのが賢明には思えるが)

…………ふむ
(どうやらそういう心算はないらしい。
むしろ敢えてこちらに気取らせるように、付いてきている。
明らかに意図的なモノだ。
植え木の影を抜けながら、思案するように薄く片目を閉じた後に。
視界の端へと映るのは、恐らく剪定などに使う道具を集めた倉庫……小屋の様なモノだろう。
庭の美観を損なわぬように、目立たぬ場所へと建てられているのが丁度いい。
尾行してくる人物と付かず離れず。
やがて小屋までたどり着けば、他の人々からは見えぬ物陰へと入った――後、跳躍で窓枠に脚を掛けると、片手で屋根の縁を掴み。
軽く蹴る反動で、その上にへと登り上がる。
追跡者が小屋の影まで追っててくれば、上から様子を見てやろう、という魂胆である)

エーヴ >  全くの無関係であれば意図的に尾行されたとて、意に介すまい。
 もし挙動不審になったのであれば、何かしら腹に抱える案件があるということだ。特に後ろめたいことであればなおさら隠しておきたいはずだ。
 そこで少女はあえて相手にこちらのことを気が付かせるために、へたくそすぎる尾行をしたのだ。足音はだだ漏れ。隠れる意図さえ放棄した身のこなし。
 するとどうだろう。尾行対象は道具小屋の上へとあっという間に這い上がっていったではないか。衛兵や民間人ではないことは明らかに思えた。

 「へえ、そうくるわけ」

 少女の口の端がつり上がる。上から様子を見るつもりならば――裏を掻いてやりたい。
 どうするべきかと思考を張り巡らせる。
 身をかがめて相手の視線を掻い潜りつつ歩いていく。目に入ってきたのは小屋の裏手に配置された荷車であった。荷車は花壇に詰めるための石を満載していた。
 小屋の上から見えぬよう身をかがめつつ、駆けた。荷車の取っ手に飛びついた。あろうことか取ってを足がかりに小屋の屋根へと飛びつき、ゆっくりと懸垂で登る。

 「はぁい。お兄さんなにか隠し事? 僕にも一枚噛ませてくれないかなぁ」

 発覚しようがしまいが構うまい。にこにこ笑みを浮かべつつ声をかけた。

アシュトン > (さて、此方が一旦は行った物陰までやってくるのか、それとも、別の方法を取るのか。
目立たない場所にある小屋とはいえ、屋根の上で派手に動くわけにもいかない。
気配を消したままに、暫くと様子をうかがっていたの、だが)

……なるほど、どうやら民間人ではなさそうだな。
(相手の言葉には平たんな声音で返すものの、語尾へと微かに、喉を鳴らすような笑い声が混ざる。
屋根の境からぬっとあらわれた顔へと視線を向けながら、ゴーグルの向こう側で僅かに細める双眸。
右手の陰には、コートの袖から取り出した黒塗りの投げナイフが一本)

一先ず、ご同類、の様ではあるな。
下見か、偵察か……そんな所か。
(もっとも、確証はない。
動きや様子、あくまで状況から見て、といった感じだ。
城に雇われていて、近づいた所を一網打尽、なんて狙いが無いとも言い切れない。
相手の様子を眺めながら、思案気に頭を横へと、傾ける)

簡潔に言う、城の地下室、不正に溜められた財がある。
ソレを狙っていて、人手が欲しい――が、お前を信用する材料がない。
何者か明かしてくれれば、考えなくもないんだが。
(周囲から目立たぬように低く姿勢をしたままに、相手の一挙手一投足をうかがい、見つめ続けた)

エーヴ >  「荒事は勘弁して欲しいんだよね。
  ホラ、こっちは丸腰だよ、丸腰。お兄さんは丸腰でもやれちゃうタイプかもしれないけど僕は無理なんだ」

 かすかな笑いを含んだ声。
 相手の片手に武器が隠されていることを見抜くと、すぐにひらりと両手を挙げて降参の仕草。果たして真実無手かどうかはさておき、少なくとも、腰や足に武器の痕跡は見られないであろう。
 深く被ったキャスケットの奥の顔立ちは困り顔ではあったが、人懐っこい笑みに口の端が持ち上がっていた。

 「ん、そんなとこ。暇すぎて死んでたところでお兄さん登場でわくわくしてる。
  あぁーやっぱり地下に隠し財産あったんだ! とっちめるのやっぱなし!
  っと声大きいか……」

 駄目だよなどと相手のせいにしつつ、こちらを見つめる視線には、帽子をとって胸元に当てて一礼してみせた。

 「エーヴ。エーヴ=フォンテイン。ギルドにも入ってないし、この街友達少ないしで信用してもらえるかわかんないけど、
 お察しの通り盗賊だよ。
 手なら空いてるよ。二本だけね」

 言うなり小首を傾げ帽子を被りなおした。

アシュトン > もしご同類なら、そんな恰好されても油断は出来んさ。
まぁコチラとしても荒事――というか、騒ぎは避けたいんでな。
そっちが妙な事をしない限りは、特に手を出す心算はない。
(そもそも、手を出す心算なら既にしている。会話なんてする必要はないのだ。
ソレを含めた上での、今。
視線を相手の足元から頭の天辺へと移動させれば、笑みを浮かべる顔にへと戻していく
ナイフは未だに、右手に握られたままではあるが)

とっちめるね……衛兵がやってきて、困るのはお互い様、だとは思うがな。
騒がしいヤツは嫌いじゃないが、生憎と消音の術を使えるような状況じゃないんでな。
少し大人しく頼む。
(左手の人差し指、立てると己の口元の前にまで持ってくる)

エーヴ……ふむ、名前位は聞いた事があるな。
紅目赤髪のエーヴ。
妙に難しい場所を狙っての盗みを、性懲りもなく繰り返してるとかなんとか。
(直接会うのは、恐らくコレが初めてだろう。
顔は知らないが、特徴に関しては大よそにおいて合致している。
『そういう場所』を主に狙うヤツは、良くも悪くも人のうわさ話に乗るモノだ。
とある者は無茶無理ばかりするバカと言い、とある者は挑戦心に溢れたヤツだと言う。
多分、どちらも正解なのだろう)

――アシュトンだ、一応コレで通っている。
まぁ、俺の事を知っているか知らないかは、どっちでもいいんだが。
(なんて事を言いながら、相手へと動きが分かるように、ゆっくりと左手を懐へと移動させて。
同じ速度で、手にしたモノを外へと取り出す。
それは金細工の豪奢なブローチ。
宝石もふんだんにあしらわれており、価値としては相当なモノだろう。
確かに『有った』という証拠だ)

いいだろう。
万が一の時は相応の対処をさせてもらうが、協力といこう。
本来は一度出て、ヒトを集めてから忍び込み直すつもり、だったんだがな。
手間を考えれば今すぐの方が確か、か。
報酬は盗み出せた分を山分け、異存は?
(次も確実に侵入出来るとは限らない。
なら、幾らかリスクを抱え込んでも、早くの方がいいだろう)