2023/07/11 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にセレンルーナさんが現れました。
セレンルーナ > 「ふぁ……」

昼下がりの富裕地区のカフェのテラス席。
植えられた木とパラソルが日陰を作り出して、おそらく空調魔法も効いているのだろう。
過ごしやすく調整された席の一つで、騎士団の制服姿で口元を押さえてアクビを咬み殺す女性がひとり。

「アイスティー一つ」

注文を聞きにやってきたウエイトレスに、そう注文をして、んーと伸びを一つ。
傍から見れば騎士のひとりが、テラス席で休憩…もといさぼっているように見える光景だろう。

「…………。」

伸びをしたあとに、テーブルに肘をついて両手を組んでその上に額を載せて顔を伏せるような姿勢になり。

『いやいや…勘弁してほしいかな…。
 いや、こんな不足の事態なんてあって当たり前なんだけど、巡回途中に見るからに怪しい相手と対象が連れ立ってカフェに入るとか…もうちょっとタイミングというか…。
 こっちがフリーのときにやってほしいかな……。
 とりあえず、咄嗟に盗聴用の子機を付けることには成功したけど……騎士団の制服だとどうしても目立ってしまうかなぁ……。」

対象を見つけたときの焦りの余韻に、少し心拍が乱れているのを感じつつ、
内心で不満を漏らし、思わずため息が漏れてしまう。
二足の草鞋を履いて活動していると、こういう時に非常に不便だ。
最近、運の巡りが悪いような気がするけど…気のせいではないだろう。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にヴァンさんが現れました。
セレンルーナ > 【ザ…ザザ……ほん…は……これは…これ…で…】

片耳に入れた受信機からの音に耳を澄ますが、少し雑音がひどい。
顔を伏せたまま、ちらっと店内へと視線を送る。
対象と怪しい人物の二人連れは、個室へと入っていったため視線を送ったところで視認はできない。

「ふー……。」

基本的に尾行や内偵調査時に、スターチェンバーのメンバーと連絡を取り合うような道具や魔法は使用しないこととなっている。
それは、魔力の流れから探知されるリスクが高まるためだ。
今回の盗聴器に関しても、やむを得ず使用したというところ。

『ただ現実問題、巡回の最中なわけで…隊長にでも見つかったら、ひきずって任務に戻されてしまうかな…。
 そうなったら、監視の続行は不可能になるし緊急事態ということで代わりの誰かに来てもらう方が賢明かな…。』

仕方がないと、体を起こすとポケットからメモ用紙程度の紙を取り出して手早くペンを滑らせていく。
手のひらの上に乗せたそれに、ふっと息を吹き込むとメモ用紙は小さな鳥の形になって飛び立っていくだろう。

「ありがとう。」

鳥が飛び立って、王城の方面へと飛んでいくのを見届けたあとアイスティーと運んできたウエイトレスになに食わぬ顔でお礼を言って。

『誰か、手が空いてる人がいればいいんだけど……。』

薄ピンクの唇でストローに口をつけていけば、アイスティーを吸い上げていく。
ともかく、今のスターチェンバーは人手が足りず、王国の腐敗の進み具合は留まるところを知らず貴族や王族の不正は増え続けている状況。
猫の手も借りたい状況というわけだ…。

頬杖をつくようにしながら、耳元の機器のゾーニングをしつつカラカラとストローでアイスティーの中の氷をかき混ぜていく。

ヴァン > カフェに入る前、テラス席に騎士服を見つけて目を細める。
近づくと王城で何度か目にしたことがある顔だった。

「これはこれは……聖騎士団の副隊長どのがカフェで一息とは。
ま、この暑さだとそうでもしないと体がもちませんな……」

どこか疲れているような表情を認めると、空へと視線を向ける。
王城警護が主な任務だと思っていたが、外に出ることもあるだろう。

銀髪の男はホットコーヒーを頼み、目の前の騎士の許可を得る前に対面の椅子へと腰掛ける。
スターチェンバーの監視対象として常に候補であり続けるも実際の内偵には至らない男がそこにいた。
ヴァン=シルバーブレイド。“味方殺し”。辺境伯の三男で、王都での名代。

「今日は外での警護ですか?宮仕えは大変だ」

注文を受け付けたウェイトレスの後ろ姿と、更にその向こうを一瞥してから目の前の騎士に語り掛ける。

セレンルーナ > 頬杖をつきながら、だらけているような格好で指先で耳の中の受信機を弄って雑音をなくしていく。

【こちらの商品を、このように金額を上乗せして……】

どうやら、感度はよくなったようだと個室の扉の向こうの会話に耳を澄まそうとしていれば、誰かがこちらへと歩み寄ってくる。

「こうも暑いと、溶けてしまいそうになるからね。適度な休憩は大事大事。」

グリーンブルーの視線をそちらへと向ければ、銀髪の青年が近寄ってきていた。
その顔と記憶の中の情報を照らし合わせていく。
南方の島であるラインメタルを収める辺境伯家の三男。
最近は、仲違いしていた父親との関係改善したため王都での当主の名代となっている青年。
怪しい金の流れや、異名から監査対象として上がっているものの内偵まで至っていない彼を認識すると、肩を竦めながら口調を少々改めて答えていく。

「王城での警備が主だけど、こうやって城下に駆り出されることもしばしば。暑いのにやってられないよね。」

こちらの了解を得ることなく、正面の席に座った青年は当たり前のように注文していく。
何の意図があるのだろうと、少しだけ警戒を強めながら表面には出さずに応じていくだろう。

ヴァン > 偶然か、男は鳥の形をした紙に気付かなかったようだ。
しばらくしてから供されたホットコーヒーに、軽く手をあげてウェイトレスへの礼とする。
相手の耳元を一瞥するが、髪型を気にしているのだろうと思い視線を顔の中心へと戻した。

「制服ってのも大変だ……仕事じゃなけりゃ麻の服で過ごすんだが」

相手につられるように軽く肩を竦める。普段は平民地区にいる男が富裕地区に出向いてきたということは、そういうことなのだろう。

ヴァンの嫌疑は貴族や教会関係者の殺人、傷害、脅迫、詐欺。
叩けばいくらでも埃が出てきそうな男だが、面倒な点がいくつかあった。

まず、周囲に異端審問庁啓蒙局や護教局の局員の姿がある――いわば同業者も嗅ぎ回っており、内偵が行いづらい。
次に、合法に見せかけるのが巧みだ。暴力沙汰は相手が先に手を出すよう仕向けているし、詐欺に使われた証文も様式に則っている。
最後に――被害者は皆、口を閉ざす。脅迫を受けているのか、被害に遭ったことを恥と感じているのか。
人手不足の状況でそんな男に割ける時間はないと、名前だけがあがっている状態だ。

「王城の警備ってなると何もなくて怠けたり緊張感が緩む奴もいるからな。ここらへんを回って気持ちを引き締めろ、ってことかね。
――あぁ、誰かと待ち合わせだったりするかい?それなら席を外すが。
俺は人と待ち合わせがあるんだが、早く来すぎてね。ちょっと時間を潰そうかと思ったところに、えーと……
あぁ、失礼。名乗ってなかった。神殿騎士団のヴァン、という」

女の顔は知っていても、名前までは咄嗟にでてこなかったのか。逡巡するような声をあげた。
待ち合わせとは言うものの、奥に向かった怪しい相手か対象か、どちらかと接触するのだと直感が告げるだろう。

セレンルーナ > 今すぐに対象をどうこうできる訳でもなし、揺らぎない証拠を記録するためにあとは録音を行っていればいいだろう。
感度がよくなれば、頬杖をつくようにして弄っていた受信機に触る必要はなくなるため、耳元から手を離していく。
そうすれば、陽光を反射させるさらりとした銀髪が流れて耳元を隠していくだろう。
とりあえずは、不審には思われていない様子。

「本当にね。夏服が支給されているとはいえ、こうもカッチリ着込まないといけないとなると、この季節は辛いものがあるね。こういう時は、服装を自由に調整できる職や平民が羨ましくなるよ。」

目の前に座ったヴァンは、今日はきちっとした黒の詰襟の服装。
つまり、正装をしなければならない人物と会う、あるいは場所に用があるということか。
嫌疑はいくつもあるが、確たる証拠は上がってこない上に、神殿関係となると管轄の関係もあり手が出しづらいところである。
こういう狡猾な相手こそ、なんとか証拠をあげて取り締まりたいとこではあるが、物事には優先順位というものがある。
人的資源も時間もたりない状況では、どうしても手がまわらないのだ。
秩序の番人という立場からいえば、情けないことこの上ない訳だが、先王の崩御後未だに後継者がつかない状態では、王の名のもとに裁きを下すという名目的にもスターチェンバーの立場は弱くなっているのが現実。

「どうなんだろうね。王都に出たほうが、こうやって魅力も多いし…かといって王城の警備だと短調で眠気を誘うから、どっちもどっちといった感じではないかな。
 ああ、いや。特に待ち合わせではないね。
 ご覧のとおり暑さの中、涼しいオアシスとアイスティーを求めて職務放棄の最中さ。
 へぇ…このカフェで待ち合わせを?こちらこそ失礼、私はセレンルーナ。職務はもう知られてるようだけどね?」

ヴァンに対して、おどけたように言いながら待ち合わせではないと否定する。
それに対して彼は、待ち合わせがあるようだ。…その間は果たして…。
名乗り返しながらも、最初に副隊長と役職を当てていたことや、王城勤務が主であることなどを知っている様子を指摘して。