2023/02/19 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にメイラ・ダンタリオさんが現れました。
メイラ・ダンタリオ >
燃える匂い 振動する蹄の行進
勢いづく声 劣勢の悲鳴

戦場で感じる 鼻 肌 耳 とはそれ。

雑多な街中で起こる喧噪なら耳にも入らない。
発展する大事でもなければそれは風景の一部でしかない。

なら、今は?


        「―――…、…。」


泊りに出向いた、不穏な空気が鼻についていた一応の関係者の邸宅
狂人一人いるだけで、手に物を持つ者が不思議と増える。
それを制して一人で片づける従僕に対し、メイラは客室のベッドの上。

今日は不思議と温かい
窓を開けて感じる風すら心地よい日。
開けた窓から感じる 肉の音 臓腑から押し出される声色
寝間着姿 台に掛けている愛刀二本
髪も三つ編みを胸元に下げた、寝姿同然。


        「フフッ。」


恐ろしい物を見たときの小さな物音ひとつをわかってしまうあの集中力のように
小さな煌めきを映す瞳や、物闇に何かを感じてしまうように拾ってしまう耳のように
外の小さな音の出来事をメイラは感じ取っていた。

両腕を枕に、足を組んで伸ばす姿勢
天井を眺めるのみで、終わるまで寝静まらないのは、そういう習性か。
信じていないわけじゃない。 そういう体だ。
従僕が番犬を果たすように、メイラ自身もまた、番犬同然に躾を賜っているのだから。
 

アイネ >  残り二人。否、目を裂かれ声すら出せず蠢く”それ”を含めば三人。

「……まったく」

 忌々し気に独り言ちる。
 主の気配がする。視線や耳を澄ましていることが感じられるわけではない。
 だが起きている。確実に起きている。
 狂人とはいえ女性。逞しい”逸物”があろうが女性なのだ。
 その女性が狂人であるというだけで日々体を作る習慣を乱していい理由にならない。

 その規則正しい習慣を乱しているのは何か?
 自分だ。

 自分が有象無象如きに七文字無駄に言葉を投げかけた。
 現在討伐までに二挙動無駄に行った。
 対象の観察に37秒余計な時間を費やした。

 それだけで罪である。大罪である。
 ダンタリオは王の剣である。守護者である。
 無能な結果を出せない凡庸の評価など無意味である。

 現在真実として貴族の一家を守護しているのはダンタリオの家の者とその従僕である。

「業務終了の時間が迫っております」

 右手に投げナイフが握られ、目を裂かれた者の脳天に放たれる。

「貴女を残します。再利用できますので。
 貴方は、もういいです。」

 ゆっくりと、一歩踏み出す。

「時間は貴重です。判断も貴重です。
 あなた方は全て無駄にしました。
 それによりこちらも実害を被っています。
 よって処遇も待遇もこれ以降保証できかねる状況となりました」

 二歩、三歩。踏み出す度に挙動が早くなる。
 振る腕が大きくなる。

 許せない。赦せない。ゆるせない。ユルセナイ。
 ユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルルユルセユルセユルセ

 ユ ル セ ナ イ

「端的に言います。お前はもう死ね」

 長身の執事のビッグブーツが言葉と共に放たれる。
 底にミスリル製の板を仕込んだ革靴が振りかぶった刃をへし折り
 腹部にめり込み残り一人の横を吹き飛んでいく。

 そのまま情報源として残すと決めた賊の一人を置き去りにして、
 辛うじて呼吸する転がった賊の頭を掴み、傍に転がるレンガを噛ませ、
 声を出せないようにしてから全力でこめかみを蹴りぬく。

 その路地裏に立っているのは執事と、女の賊。

「来なさい」

 それだけ近づいた賊の生き残りに告げ、口をさるぐつわで封じ、
 襟首をつかんで歩き出す。
 後は、襲われかけた屋敷の門戸を叩き、現れた使用人のぎょっとする表情を意にも介さず、
 賊を目の前に蹴り出す。

「私兵に引き渡してください。一晩かければ情報位は吐き出してくれるでしょう。
 以降は引継ぎよろしくおねがいします。

 私は”お嬢様”の元へと戻ります。それでは、良い夜を」

 それだけ告げて、使用人から手拭いを受け取ると軽く血を拭きとってから、
 主の滞在する部屋へと向かう。

「失礼します。メイラ様。業務完了いたしましたのでご報告に参りました。
 対象の総数は想定の二割減。捕縛は一名。
 処遇は当屋敷に引継ぎ。

 おそらくは半空座派を騙る一派の差し金かと。

 以上、本日の業務完了をご報告いたします」

 扉をノックし、部屋に入り、鍵を閉める。
 それから主へと報告して、頭を垂れる。

「何かお持ちいたしますかお嬢様」

メイラ・ダンタリオ >

      ―――“ビキッ”―――  


       「あら、好い音。」


それは終わりを告げる音か。
それとも敗北が決まった音か。
何度も、何度も聞きなれた敵方の心が砕けた音だ。

そしてそのあとは、雑多な音に変わる。
先ほどまで明確に拾い上げようとしていた耳は穏やかさを取り戻し
後は全ては蛇足でしかない。

メイラは、その特徴的な口元を深い三日月にする。
綺麗に噛みしめるジグザグの白い戸を魅せる。
嗚呼、暖かい今日はこの為だったのかな、と思うくらいに考えていれば
小さなノック―――の前に、その足音は聊か重い。
穏やかな耳が感じ取る従僕の感情。

―――あれはわたくしを手本にしようとするから わたくしに向ける感情のそれを
―――まるでわたくしが王に向けるようにする。
―――だから血を“軽くふき取っただけ”でここに来るくらいには、粗ぶっているのだろう。


       「ええ、ご苦労様。」


寝そべりから、むくりと両腕を支えに身を起こす。
室内は暗闇 いや、二人には先ほども含めて 眼の慣れと造りがくっきり映しているか。
そのメイラの赤い瞳ですらも。


       「窓、締めて頂戴。」


お嬢様と外で少なく呼ぶ大柄な体躯
肉付きのいいシルエットは良い具合に普通よりはみ出ている。
赤い瞳は、そんなシルエットを眺めて告げ、静々と扉を閉めた様子の間に、ベッドの端に腰を下ろしていた。


        「ん。」


そうして、目の前で手を差し出す。
手の甲を向け、手指を薄く丸めた姿。
ただし、それは口づけの意ではない。

アイネ > 主に命じられれば窓を閉める。
鍵も閉める。カーテンも引いて外から覆う。

それから主の前で傅いて、手を取れば、唇を寄せる。
口づけなどしない。
手指に舌を這わせる。
僅かに吐息を荒げ、主へと尽くす。

主に褒めてもらおうと思わない。
労っていただくなどおこがましい。
己は主に尽くす側。捧げる側。

己を拾い、己に価値を見出し、己に価値を与えてくれた。
狂人。怪力令嬢。何するものぞ。

主の本質を知らず狂人と距離を取る愚者の評価などむしろ心地よくすらある。

狂っている。
自覚はある。
そんな己に手綱をつけてくれる。
そんな主に尽くし、結果を出せる。
主がいるから、自分は成立する。

「私が戻る前に眠っていただければよろしかったのに」

故にこそ、己の未熟さが主の睡眠時間を削ったのが疎ましい。
四半刻にも満たない。そう言われればそうなのだろう。
だが主の腹筋も、躍動も、肢体の全てを形作るに不可欠な眠りなのだ。

メイラ・ダンタリオ >
メイラは最初、撫でてあげるつもりだった。
労い、次へつながるようにする。
王から賜る一言 そう、たった一言だけでもいい。
もう望めない者を前にして、メイラは目の前の重い感情を隠さずぶつける従僕に労りを持った。
しかし、従僕 アイネはと言えば、溶けた視線 熱い舌 冷めぬ肌で手指を舐める。
褒めを受け取るのではない 足を舐めて服従をひたすら誓うかのようなそれだ。

だからこれは おいた ではなく精いっぱいの誓いの現れだろう。
鼻で静かに溜めて息をしながら、20そこそこ 若い娘なのだ。
半魔のメイラのような年齢不明な若作りの婆と呼ばれることもありそうな者に対して
今そうなのはある意味、仕方ないとすら。
若い時の自身もこうだったのだろうかなとど思ってしまう。


        「アイネ」


優しい声と笑みで見下ろす言葉に、アイネは見上げる。


        「褒めさせて?」


寝てくださってよかったのに、と言いながら誓いといっても
手指を舐めて熱い息を漏らす従僕の姿勢はある意味矛盾めいていて
そのアイネは、舐めていた手指の滑りを、唇で扱いで綺麗にする。

再び頭に手を乗せ、体を丸めて小さく撫でる。
ぽんぽん、と優しくたたいた。


      「いい子ね 無駄に騒がしくもなかったし
       最後にはこの家の者達にもきちんと仕事を与えたんですもの。
       弔いの仕方も、思うとおりにしてあげたから溜飲も下がった。」


そう、従僕らに役に立っていないと思わせるのはいけないし、腐らせるのもいけない。
適度な恩に適度な行動を与えて初めて完成される。
後始末のゴミ掃除を押し付けられたと思う程度では、泥攫いと変わらない。


        「ご苦労様、アイネ。」


小さく撫でながら、アイネが撫でられるたび感度を起こし、小さく震えている
それもわかりきっているから、撫でるままするりとショートヘアから手を離し。
執事にこうもするのは違うことだけれど、とメイラは心で一拍置いてから
両手を頬に合わせて唇を被せ、この姿勢でしか真面にキスはできないからと
唇をしっかり顔を傾け、綺麗に閉じ合わせて、口内で舌を伸ばして絡め合わせる。
びく、びくと手のひらに感じる震えと共に、しっかり口の中を熱さと唾液でトロトロにして。


        「ふふっ。」


逆にアイネを寝静まることができなくさせてやったいけない主だろうかと
メイラはいたずらな笑みを浮かべて、ベッドから垂れていた足を左右に広げる。
バスローブ一枚 結び目すらなかった体が目の前にある。
長い黒髪の一条の三つ編みは、もう背中に今落とされた。

アイネ > 飼われている。
雇われている。
使われている。

それがたまらなく心地良い。
それがたまらなくうれしい。

主の年齢が見た目通りでないことも知っている。
並べば己のほうが年上である、そう思われることすら興奮の一助。

「はい」

名前を呼ばれる。
無表情のまま指を舐めながら答えて顔をあげる。

「はい」

褒めさせて、と言われれば頷くしかなく、こうべを垂れる。
己が舐めしゃぶった指を舐める音がする。
脳が煮える。主と己の唾液が絡み合っている。
それが主の意志で行われている。

それから頭を撫でられる。労われる。評価し、褒めてくださる。

「はい。ダンタリオの家名に恭順するとはいえ、王への忠心からでなく、
 裏で家を狂人と揶揄する不遜な家。
 家一つ守れぬならば巻き込み被害の一つでも押し付けようかと思いましたが、
 お嬢様の今日の寝屋でもありますので」

 こうべを垂れた下で、表情が崩れる。
 歓喜。
 羞恥。
 興奮。
 淫業。

 鉄面皮の下に押しとどめた感情の濁流が溢れ返り、大きく呼吸を吐きながら
 主にのみ心中を吐露する。

「あっ」

 頬に手を添えられれば、労われる。見透かされている。
 唇を重ねられ、舌が差し込まれれば啄むようにしゃぶりついて。

「あむ……♥」

 主にされるがまま唇を奪われ、重ねて、唾液を啜られる。
 先ほどまで悪漢を葬って来た者とは思えない執事は、半ば絶頂を覚えながら視線が裏返る。

 教悦の極み。至極の極み。
 血に濡れたシルクの手袋を外し、唇が離れれば、両足を広げる主の肢体がバスローブの隙間から垣間見える。


「引きちぎってください」

 不意に、主へと告げる。

「メイラ様。燕尾服を引き裂いてください。剥き出しにしてください。
 変えはあります。数着予備を用意してあります。
 褒めるなら貪ってください。使い捨ててください。
 私の体に意味を教え込んでください。」

 普段通りの淡々な口調。しかし頬は紅潮し、吐息を荒げ、顔を寄せ、、手を掴んで己の燕尾服に押し当てる。

「私を”拘束具”から解き放ってください”ご主人様”」

 等と言いながら、主をベッドに押し倒していく

メイラ・ダンタリオ >
―――そして、トスンと押し倒されたメイラが、手指に力を籠め
布地が裂ける音が、すぐにでもその夜 室内に響いた。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からメイラ・ダンタリオさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からアイネさんが去りました。