2023/02/11 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にマージョリーさんが現れました。
マージョリー > 「大丈夫よ、ひとりで帰れるったら!」

苛立たしげに言い放った、その言葉を意訳するなら、

『邪魔しないで、ほっといてちょうだい』

――――と、いったところか。

気取った大人たちばかりの集まりなんて、そもそも退屈なのだ。
お行儀良くして、控えめに微笑んで、神妙な顔でお話を聞く、
その繰り返しだけを求められる席など、なおのこと。
華やかなパーティででもあれば、まだ良いのに―――――。

そんなわけで、夜更けの富裕地区。
貴族の邸宅ばかりが建ち並ぶ通りを、娘はひとり、歩き始めていた。
兄たちが招かれ、今も滞在している親戚の屋敷から、
ほんの数ブロック先にある、メイフィールド伯爵邸まで。
供の者もつけず、かつん、こつん、軽やかな靴音を響かせて、
街灯もまばらな石畳の上へ、細く、淡く、長く、影を伸ばし。

「お兄さまたち、よく、じっとしていられるわよね。
 わたくしは無理、……あんなところにずっと居たら、眠っちゃうわ。
 そうよ、眠っちゃったら、そのほうが失礼じゃない?」

だからこれでいいのだ、と、ひとり頷く。
こちらを少しだけ恨めしげに見つめていた、あの家の跡継ぎ息子の顔なんて、
もう数歩も歩けば、きっと忘れてしまうだろう。

マージョリー > かつん、こつん、かつん、こつん―――――― 

「―――――――― ? 」

ふと、娘の足が止まる。
きょとんとした顔で、肩越しに背後を振り返り。
しばし、薄闇を凝視してから、軽く肩を竦めた。

「……誰か、ついてきてるような気がしたんだけど。
 気のせいかしら、……なにも、見えないし」

呟いて、再び前を向く。
今度はややゆっくりと、数歩、歩いたところでまた止まり。

「―――――~~~ ねぇ、ばあやなの?!
 ついてこなくていいって、わたくし、言ったじゃないの!」

高く張り詰めた声を放ちながら、先刻よりも勢い良く振り返った。
腰に手を宛がって、からだごと向きを変え、お怒りです、のポーズを。

マージョリー > ―――――――― 静寂。

「………ん、ん……?」

誰も居ない。
居るのかも知れないけれど、動くものを認められない。
娘はきゅっと眉を寄せて、首を傾げながら、

「絶対、誰かついてきてると思ったんだけど。
 本当に、気のせいだったのかな……」

まだ半信半疑といった様子で呟くも、見つめる先に動きは皆無。
折悪しく、強い北風が吹き抜けて、娘はぶるりと身震いし、
今度は足早に、屋敷へ向かって通りを辿り始め――――――――

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からマージョリーさんが去りました。