2022/11/28 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にドラゴン・ジーンさんが現れました。
ドラゴン・ジーン > 夜の帳も降りた時刻。豪華な建物が居並んでいる王都マグメールの富裕地区。どれだけ整然と区画整理がされていたとしても、必ずそこには死角となる場所は生じる。特に人間の行き来が余り想定されていない建物と建物の狭間の狭い路地などは、往来ならば効いている警備の睨みも当然のように無く、ある程度は自由に渡り歩く事が出来ている。

定まった形を持たない生命体ならば尚の事であり、建物の陰から陰にへと隠れながら渡り歩く事もさしたる苦でも無い。

ドラゴン・ジーン > 普段は閑静な区画であるが、今現在はちょっとした騒ぎが沸き起こっていた。この区画に在住する貴族の居宅の一つで盗みが起きたようなのだ。すぐさまに声を掛けられた衛兵達がばたばたと、灯りを手にして区画内を駆け回る気配を周囲に感じる。
だが大抵において覗き込んでいるのはやはり人間サイズの盗人を想定しているのか、怪物が潜んでいる場所とは見当違いも甚だしい場所ばかりだ。その御蔭でこうして逃亡状態を維持可能としていた。

ドラゴン・ジーン > 果たして被害者である貴族は盗まれた物品については吐露しているだろうか?少数の金品についてはもしかしたら報告をしているかも知れない。だが残りの物に関しては、恐らくはその口も鈍るだろう。衣食住に富んだこの場所だからこそ、余剰の娯楽を得る事に追及する輩達も居る。中には明白な危険物に手出しをする者達すらも少なくはない。

その黒い顎に咥えこんでいるのは幾何かの、設定された竜の本能に駆られて盗ってきた貴金属品に加え。そして硝子の容器に収まっている、多くの錠剤型に押し固められた代物。この街ではさして珍しいものとも言えない娯楽の一つ、所謂麻薬だ。それも医療用という言い訳もつかない程に強力な。

ドラゴン・ジーン > 「………」

硝子の容器は体内の酸性に当てられて脆くも罅割れ、その中身は次第に流出を始めていた。薬品の融解と共に白く色づいた気泡は肉体を構成している粘液質に溶け込み、ぶくぶくとその表皮粘膜が泡立ち始め。
そして限界まで膨れ上がった半固形の液状はポップコーンが如きに爆ぜ割れるようにして、内包している気化薬を辺りにへと振り撒き出す。

霧同然の濃い粒子は本体と同様に一定の形を持たず、流動する風に運ばれて、周囲の家々の窓の隙間などから滑り込み。蔓延する薬効はじわじわと拡散されているその証拠に、次第に近隣の家の窓に明かりが灯り、あるいは物音や笑い声が聞こえて来た。薬の影響を受けた狂態の気配だ。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にソラムさんが現れました。
ソラム > 「...ん、この匂い」

 今日も今日とて少女は王都を散策する毎日だが、今日の彼女は白色と金色のトップスに純白のゴシックと、散策に特化した服装をしていた。

 しかし、腰には純白のエストックと、漆黒の銃を収めた純白のホルスターを吊って、自衛力は整えている様子。

 そんな彼女だが、少し異なる匂いを感じ取り、その方向へと足を踏み入れる。

ドラゴン・ジーン > 「………!」

匂い。感じ取ったのはこちらも同じだ。不幸にか幸いにか通りすがった者が此処に近づいて来た頃合いに。奔走暴走を続ける怪物は広い道幅のある場所にへと飛び出す。
即ちにおいては立ち入った相手は認める事になるだろう。全身から湯気のように濁った麻薬の煙をくゆり立ち昇らせ、ガンギマリに狂暴な輝きを湛える三本の触角が、そこにへと振り返る瞬間を。
減速した疾走は自らに急制動をかけてほぼ停止、ゆっくりと振り向き直る。既に知覚していることを表すように体全体をそちらの方にへと。

ソラム > 「...む、なんだ。お前か」

 突然横道から飛び出してきた何かに、少女は見覚えがあった。爬虫類に似た外観に、コールタールのような表面。そして、模倣してたであろう3本の角も、既視感があった。

「...?」

 しかし、相手の様子が変なところをみて、少女も何処か違和感を感じたのか、額に隠されていた3本の角を隆起させ、首筋の逆鱗を逆立てながら警戒を始めて。

ドラゴン・ジーン > 「……グルルル」

一欠片も好意的な態度ではない。唸りをあげて睨み付けるかのように触角の輝きが対峙する相手を仰ぎ見る。
そして相手が身構えると同時にこちらにも変化が生じた。

「…………!」

ぬちゃあ、と、石炭色の糸を縦に幾重にも引いたその顎が開かれる。
今は身重の状態ではない。発育器官を収める為の胎内が渦を描くガスの発生によってぶっくりと這い蹲った姿勢から地面に届かんばかりに一挙に膨満。
そして、一挙に全身の粘液質の代替筋肉の稼働により内圧をかけ、上下に裂けんばかりに開口された竜顎を射出穴とし、ぶしゅ!という激烈な音響を引き金にして大量のガスを噴き出した。
周辺を建物で囲われ風の行き来の無い狭い道の中、あっという間に拡散される濃霧のような白い麻薬成分てんこもりの気体の波が火山流が如く相手の元にへと押し迫らん!

ソラム > 「対話はなしか___!!」

 相手の行動、そして吐き出された白くて濃霧のような気体の波が押し寄せてくるのを見た少女は、すぐさま背中から一対の翼脚を展開する。

 そうして展開した翼脚をどうするのかというと、翼脚をそのまま地面へと振り下ろし、その衝撃で舞い上がった砂煙と瓦礫の山で簡易的な天然のバリケードを拵えたのだ。
 これで相殺できるかはわからないが、時間稼ぎにはなるだろう。

ドラゴン・ジーン > 吹き籠る煙と粉塵が拮抗するように辺りにへと立ち籠る、認識。

「………!」

チッ!と即座にその口腔内に構成された舌先が跳ねるようなタンギングを打ち鳴らす。
忽ちにおいて口腔粘膜の激しい摩擦によって火花が飛び、それは直ぐに可燃性のある気体にへと着火する。
轟、と、たちまちに加速的な延焼は拡がり遮る簡易的な遮蔽物周囲まで拡散されていた燃料剤を燃やして炎の吐息(ドラゴン・ブレス)が如き熱量を畳みかけた!
目の覚めるような緋色の燃焼光に当てられ周囲の建物の窓からは何が起きたのかと灯りが次々に灯り出す。

ソラム > 「どうしたものか___」

 天然のドラゴンブレスのような熱量を展開していた翼脚越しからでも察知した少女だったが、同時に周囲の建物の灯りが点灯したのも知覚した。
 今の少女は龍であることを偽っている身。だが、ここで力を使わなければ淘汰されるのもまた事実だ。

「なんでも使え...か!!」

 そう呟いた少女は、瓦礫のバリケードを翼脚で破壊しながら、右側の歯で歯ぎしりが起きるほど力ませると、少女の顔の右側が銀鱗によって覆われ始め、3本の角も肥大化し完全に隆起しきるだろう。

「――――――――――!!」

 そうして、人語を介さずに咆哮した少女の角から放たれるのは、真っ赤で血によく似た真紅の雷光だ。

 バリケードが破壊された今、ブレスの燃焼光で少女の銀鱗がに当たって煌めく中、負けず劣らずに赤い一筋の稲妻が何本にも枝分かれしながら相手へと向かって。

ドラゴン・ジーン > 触角の輝きが緑色に変色する『魔眼』の起動。交戦に入った相手の一挙一動の分析の開始。攻撃が。来る。

「……!」

攻撃が来た。咄嗟に四肢を低く撓ませそれをバネにして跳躍。舗装された街の石畳を蹴り付ける反動でくるりと空中で後転しながら見掛け以上の俊敏さで距離を稼ぎながら着地した。
どちゃ、という濡れた雑巾を地面に叩き付けたような音の響きが辺りに劈き籠る。
だが飛来する雷電が掠めたのか頭部の一部には赤い電流が奔り。見る間において衝撃と電熱によって膨張する頭部の半分が。

「……!!」

ぱあん!と弾けて吹き飛んだ。急激に高められた熱にぐつぐつと煮え立つ飛散物は高熱変成して乾いた一握りの粘土の残骸だけを残して蒸気化。
頭部の質量の大半が欠損した肉体においてもまだ機能停止してこそいないが、ぐらりと急激に変化した体のバランスにぐらりと揺れて傾ぐ。

ソラム > 『...やれやれ、この力を使うことになるとは。それも、同族に近い君に、ね』

 猫のように瞳孔が細くなったりゅうほんらいの瞳と人間での瞳で細めながら、少女は相手へと話しかける。だが、言葉としてではなく、一種のテレパシーに近いものでだが。

『...何故貴方が凶暴なのかはわかりませんが、大人しくなってくれるのなら、幸いです』

 そう語りかけつつも、少女は周囲の電磁波を吸収して角へとチャージしているらしく、角そのものが真紅の光を帯び始め、バチバチと赤い電流が小さく迸っている。