2021/04/21 のログ
ソラム > 華やかな富裕地区の大通り。
少しだけ人の波が落ち着いているが、まだ賑わっているそこでは、裏を返せば、多少の戦闘が起こってもバレることは無いということであった。
人気のない裏道で2つの人影が互いの得物を手に戦闘していた。
片方は茶色いローブを身に纏い、黒い布で顔を覆った大柄な男。右手にはアックスを、左手の指の間には投げナイフが挟まっていた。
もう片方は黒いのコンバットスーツの上に群青色のロングコートを羽織り、そのコートについているフードを頭に被り、目元を隠した小柄な少女。右手には身の丈ほどある大きなバスタードソードを持っていた。

「.......そんなに私のことが気に食わないの?」

少女がおもむろにそう口を開くと、男は肯定すると言わんばかりに左手を振りナイフを放ってくる。
少女は難なくナイフをかわすが、そのナイフは大通りへ向かい、その切っ先にはのんびりと歩く少女のような見た目をした子供が。

「______!」

反応した少女は素早く体制を立て直すと、裏道の壁を蹴り大通りへ飛び出す。
ナイフと子供の間に割って入ると、左手で腰に吊っていた純白のエストックを抜き放ち、器用に刃の切っ先に当て軌道を逸らしていく。
逸らしたナイフの一本が少女のフードを捲り、その顔を大通りの人々に晒されるだろうか。
その顔は毛先の黒ずんだ白銀の髪に血よりもなお濃い深紅の瞳。そして右の額から生える3本の漆黒なツノは、彼女が人外であることを示すものでもあった。

「______っち。逃げた」

男は身を翻し裏道の奥へと走り去った。これ以上派手にはしたくなかったのだろうか。
男の投げナイフを拾い懐にしまうと、後ろにいた子供と目が合うだろうか。
目が合えば、少女は慌てた様子でフードを被り直し裏道へと走り出そうとするだろうか。

ギュンター・ホーレルヴァッハ >  
突然目の前で繰り広げられる剣戟。
多少荒事には慣れていても、流石に少し驚いた様な表情を隠せない。
王都でもそれなりの警備体制を誇る此の地区で、この様な騒ぎが起こると思っていなかった、という事もあるのだが――

どうやら、眼前の少女は此方を庇ってくれた様子。
といっても、此方が標的だった…という訳でも無さそうだ。
戦闘の余波に一般人が巻き込まれるのを防いだ、と見るべきだろうか。
現れた少女を攻撃していた男が直ぐに逃げ去った事。
『逃げた』という少女の言葉が、己の推理を補強する。

大立ち回りの後、白銀の髪と、己と同じ様な深紅の瞳を持つ少女と目が合う。
慌てて駆け出そうとする少女を、追う素振りは見せないが――

「………待て」

ぱちり、と指を鳴らせば少女の行く先。裏通りの入り口を塞ぐ様に現れるのは巨大な甲冑の騎士。
先程少女が対峙していた男と同等のバスタードソード。その剣よりも更に巨大な盾。鈍く輝く甲冑。
オーガを騎士にしたのか、とでも言う様な大柄の騎士が少年によって召喚され、少女の行く手を阻む。

「これだけ騒ぎを起こしておいて、其の侭逃げおおせると思ったか?
事情くらいは、説明する義務があると思うがね」

と、感情の籠らぬ声と表情で、少女に言葉を投げかける。

ソラム > 「.....また、面倒な」

少女は大柄な騎士を前に、ハァとため息を吐き、後ろに振り向き、少年に顔を合わせる。その顔は再びフードを被って目元は見えないが、彼女の右側からは、3本の黒く尖ったツノの先端が飛び出ているだろうか。
正直なところ、少女は男と真正面から戦わずとも壁を使って逃げれたが、説明はしておく必要はあると判断したのだった。

「.....アイツはただの殺し屋っぽい。私には心当たりないけど、ね」

男のことを殺し屋と言い、初めて見ると少女は少年にそう答えるだろうか。
正直なところ、こんなところで自身の正体を晒したくはなかった為、穏便に済ませたいようで。素直に言うことにしたのだった。

ギュンター・ホーレルヴァッハ >  
フードから飛び出した漆黒の角。
それは人外であることの証左。流石に、種族迄察する事は出来ないが。
…少なくとも、此方に危害を加えようとしていないのなら、敵対的な種族でないことを祈るばかり。

「随分と恨みを買っている様だな。此の国で相応の恨みを買うということは、貴様もそれなりの事をしているのやもしれんが」

なんだなんだ、と集まりかけた群衆を軽く睨めば、触らぬ神に祟りなし、とばかりにそそくさと散っていく。
纏う衣装や住民達の反応から、少年がそれなりの地位にいる者であることが少女にも伝わるだろうか。

「何にせよ、私も面倒を起こしたい訳でも無い。
貴様を追う殺し屋とやらが此の区域に蔓延らぬ様にして欲しいものだがな」

と、小さく肩を竦めて少女を見据える。
その態度や口調は、年齢に見合わぬ尊大さや傲慢さが含まれているだろうか。

ソラム > 「...当面は来ないよ。アイツ、日を選んでくるから、ホイホイ出ては来ない、筈」

来ないとは断言できない為、敢えて濁して少年にそう返すだろうか。

「...何か、貴方と話してて思うんだけど、悪魔と話している気分」

少年から放たれる傲慢さ等を感じ取り、少女は顔をしかめながら少年にそう伝えるだろうか。
バスタードソードのことを思い出し、背中に背負うと、エストックの切っ先を軽く地面に突き立て、少年の返答を待つだろうか。

ギュンター・ホーレルヴァッハ >  
「ふむ…ならば良い。とはいえ、民草の安寧を願うのも支配者の務めだ。
貴様の火種は、貴様自身で片付けて――」

と、小言めいた言葉を続けようとした時。
少女が零した言葉に、一瞬きょとんとした様な表情を浮かべて――

「…く、ハハハハハ!悪魔、か。成程、面白い事を言うものだ。
王国の支配層。王位継承権を持つ私を捕まえて『悪魔』とは。
不敬罪にて、今すぐ捕えても良いのだぞ?」

言葉は物騒だが、実に愉しそうに笑う。
悪魔、とは何とも的を得た表現ではないか、と。
そうして、可笑しそうに笑いながら…一歩、少女に近付こうとするだろうか。
宛ら、獲物を追い詰める獣。或いは、正しく悪魔の様に。
人間と人外という、絶対的な種族差がありながら、少年はそれを恐れる様子は無い。

ソラム > 「王位?あぁ、あの城に住んでいる?」

王位継承権という言葉を聞き、納得した様子で少女は頷きながらそう言うだろうか。
だが______、

「でも、貴方は人間でしょ?」

彼女は、最もな問題点を少年に突きつけたのだった。
彼は王族だと言えど人間という種族。彼女からしてみれば発展途上な種族と言っても過言では無い。
尤も、こんな王都のど真ん中に龍が居るだなんて夢にも思わないだろうか。

「.....私を捕らえても、メリットはない、と思うけど」

一歩近づいてくる少年に少女はそう告げつつ、体の中で龍血を巡らせ始め、いざとなればここで変身しても仕方ないと心に決めつつ、男の行動を様子見し、警戒するだろうか。

ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「――…その驕りが、何れ人間以外の種族を滅ぼす。
何故、斜陽の王国である我等が魔族と戦争出来ているのか。
シェンヤンは世界に覇を唱える大帝国になろうとしているのか。
"ニンゲン"を侮り続けた貴様達は、何れ滅ぶしかあるまいて」

それは、確信に近い言葉。
脆弱で発展途上で寿命も長くは無い人間。
しかし、その人間が何時か世界を支配するのだ――と。
クスリ、と妖艶な笑みと共に、言葉を紡いだ。

「……そうだな。今のところは、だが。
だから、今日は捕えぬ。そういう気分でも無い。
しかし、私の前でまた騒ぎを起こしたのなら。或いは、相応の何かがあったのなら。
……精々、気を付ける事だ。人外であったとしても、私は興が乗れば犯す性格故な」

最後に、そんな言葉を残して。
ぽん、と軽く少女の肩を叩くと、其の侭立ち去っていくのだろう。
後に残ったのは、少年から漂う上品な香の残り香と、そこに僅かに含まれる煙草の匂いだけ――

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からギュンター・ホーレルヴァッハさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からソラムさんが去りました。