2020/11/22 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/商業区域」にビョルンさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/商業区域」にアイリースさんが現れました。
■ビョルン > 仕事の後、冬支度を揃えようという提案をしたのは朝餉の最中だった。
そうして日が落ちかけた今、本家を出た四辻。
己の護衛とも自称する相手、気配は感じねど。
「──居るんだろ」
歌うように風に乗せて問いかけるような言葉を紡ぐ。
■アイリース > 「まぁ、居ますけれども」
声をかけられたのなら。私は、返事をして、相手の背後に姿を現す。
いや、現す、と言っても。別に魔法やら魔術のように姿を現すのではなく。
単純に、相手の頭上、住宅の屋根にいたから。そこから降りただけだけれども。
「お疲れ様です。それで、どちらへ?」
一応、護衛の任務を受けている身としては。
相手がどこに向かおうと、ついていくだけではあるが。
行き先を知っていると、多少なりとも、やりやすくなるのは事実。
なので、一応聞いておく。
■ビョルン > 本家の傍では殊更慎重に隠れていると見えた。
「お互い様、お疲れさん」
平屋家の屋根から街道へと着物の裾すら乱さず降り立った相手に感心したような表情で返すと、歩き出す。
「夏にワンピースドレスと帽子と靴を買っただろう、あの店で」
恐らく己は寸法を測るだけ。
そうして冬は歳を重ねても衣装のほとんど変わらぬ、けれど大きさばかりはぴったりと合った服を求める。
相似形のスーツと外套。
それを求めに商業区域まで足を伸ばす。
■アイリース > 「私は疲れてはいませんが」
相手の言葉に私は返答しつつ、一度ため息。
いや、正直なところ。
家の中にいる相手の気配を感知しつつ、有事に備える、というのは。
実際疲れるわけなのだが。疲れました、とか。
そんなこと言ったら護衛失格である。
「……あぁ、そういう」
なるほど、と私は頷きつつ。
確かに。最近の寒さは厳しすぎるなぁ、と考えてしまう。
実際、護衛をしている間も。
体が震えそうになることが何回あったことか。
とにかく。相手から目的を聞けば、私としては、護衛をこなすだけの話だ。
■ビョルン > 「んー、じゃあ俺も」
挨拶言葉として以上に労われることは特にない1日であった。
その傍らに護衛の苦労があろうが──聞くことはない。
護衛とは得てしてそういうものだと見ている。
ふと視線を転じれば、相手の頭の天辺へと紅く染まった小さな楓の葉を見つければひょいと指で摘まんで暮れかかる空へ翳す。
「とりあえず、夏に倣って外出着を一式揃えるんだろう?」
暫く空へと重ねて見詰めた紅葉を相手に差し出しながら問い。
■アイリース > 「貴方が疲れていないのは、いいことです」
私が見ている分には、この相手は、どうにも。
仕事をしすぎな気がするので。
疲れていない、というのは。非常に好ましい。
その事実にちょっとほほ笑んでいれば。
頭の上の葉を取られ。思わず、赤面してしまうが。
「……まぁ、えぇ、えっと。
そういう話なら、はい」
なんというか、この相手には色々と世話になり続けているので。
時に遠慮したくもあるのだが。
実際遠慮したら、それはそれで、この相手。
不機嫌になりそうなんだよなぁ、と。ここまで考え。
私は、相手の言葉に、小さく頷く。
■ビョルン > 「玄関の上り口に布団を敷かないという常識を呪う日ほどには、疲れてない」
遊びや付き合いではなく深夜にまで業務が及ぶ日は、そもそも滅多とはないが。
普段通りならば、まあ普通だと言葉を濁すのだ。
相手に差し出した紅葉はそのまま、
「何が要るだろう──俺はわからないから、また見立ててもらうしかないだろうか」
と言って頷く。
夏には服と靴、帽子だった。
余所行きの服には防寒着も、防寒具も必要だろう。
「普段着はどうする。
セーターは編んでやるとして」
夏は一山いくらで仕入れたものがあったはずだ。
東の民はそれで暮らしているとはいうものの、和服の暮らしは寒そうだ。
昨年仕舞った毛糸玉のことを思い出しながら嘯く。
■アイリース > 「なんですか、それ」
冗談っぽく聞こえるけど。
多分、なんか冗談じゃないんだろうなぁ、と考えてしまうが。
この相手は、時々こういう言い回しをする。
「それがいいのでは?
餅は餅屋、とも言いますし」
わからないことあれば、その道のプロに聞く。
それは間違いない選択の一つである。
「……はい?
編む?」
え、私編めませんけど。
アナタ編めるんですか?
そんな視線を向けてしまう。
いや、私だって。軽い裁縫くらいならできるけれども。
■ビョルン > 「文字通りだよ。
ギャーって泣いたら母親が飛んできて腹を満たしてくれて、寝付かせてくれる赤ん坊が羨ましいくらいに疲れた時」
スタミナ不足ではないけれど、己には疲労を語る語彙だけは豊かであるという自負がある。
だからどうということもないが。
語れども、理解されぬことが平素なのもまた心得ていて頷く。
「餅は餅屋と言われると、菓子屋の餅もあるのかと気にならないか」
そんな興味がふと湧いて、相手に問いかけるが。
いや、餅とはなんだろう、と。そこからだろうか。
ともあれ、驚いたような相手へと意外そうに首を傾げてコートのポッケへと手を仕舞う込む。
「編む。
編み針で。何なら編む前に毛糸を染めるところから」
冗談の気配はない声音で続けると、洋品店はもう目と鼻の距離である。
■アイリース > 「はぁ……なるほど」
なんともはや、な言い回しだな、と。
思わず呆れ半分、苦笑半分となってしまうが。
でも、この相手の言い回しは、うん。
何か、キライではない。
「それはまた別の話ですよ」
専門職以外でも、そりゃあ時々は物を作る。
でも、それはまた、別の部門というか。
分野というかの話なので。それを引き合いに出すのは、ちょっと違うと思うのだが。
これは、説明が難しい。
「……そうですか」
なんか。すっごい悔しいんだけど。
いや、悔しいと言ったら負けな気がするけど。
そう考えているうちに、目的地につくので。
黙っておく。いや、悔しくなんかない。
■ビョルン > 「でも泣き声を上げる気力すらないこともあるしなぁ」
現在の住処の娼館の屋内でスーツのまま身を伸ばしていたら、その時なのだろう。
赤ん坊はいいよなぁ、と繰り返して苦笑いをする。
「別でも、ケーキ屋の餅は甘いんだろうか、粉っぽいんだろうか」
餅としては失敗でも、菓子としては美味だったりはしないのか。
慣用句のわき道を逸れたところにある、獣道へと立ち入った男は密やかに笑う。
「編んでやろうか?」
軽く問いかければ洋品店のドアを押し開ける。
昼間に話は通していたせいか、または時間のせいか他の客は居ない。
店員へコートとジャケットを預けて簡単に採寸させる。
袖丈と肩幅が今のままでは合わぬらしい。
その間、相手には女の店員が付き、冬の洋装のデザイン画などを見せている。
此方は、採寸となれば奥へ行きヌードの寸法を取るのだろうか。
■アイリース > 「あぁ、それはちょっとわかります」
本当に。
死んだように寝たくなることもある。
っていうか、わりとそれが頻繁なのだが。最近。
「……それは。
甘いんではないでしょうか」
分からないけど。
多分、甘くなりそうな気がする。
甘い餅の食べ方もいっぱいあるわけだし。
「ぬっ……。
そう、ですね。それもいいかもしれません」
相手の提案。悔しいけど。
ちょっと、相手のその編み物の腕も見てみたいわけで。
ちょっとだけ、お願いしてみようかな、とか思ったり。
そうして、お店に入れば。
すぐに採寸が始まり。
「……はぁ、はぁ……」
私には女性店員さんが声をかけてくるのだが。
正直、デザインを見ても、どれがいいか、というのは分からないので。
採寸だけしてもらいつつ。デザインに関しては、相手の意見も聞いてみよう、と考える。
……この採寸、というのは。あまり慣れない部分はあるが。
■ビョルン > それから寒くなればなるほど、寝床に居るのが快楽になる。
疲れ云々よりも、そういった季節になったようだった。
甘い餅を想像する己もまた、節制はしているが健啖家であり。
冬の休暇には機会があれば女へと甘い餅をリクエストするのかもしれない。
「ぬ? なんだって?」
答えの歯切れ悪さに束の間怪訝な顔を見せた。
そうして店内で始まった採寸。
己を計るのは店主で、仕立て屋の経歴は長いらしい。
服にゆとりを作るかという話で難しい顔をして幾つか質問を投げてきた。
「もうすぐ19歳になる。
……靴、もそういえば少しきつくなった。
意味の親の背丈は、知らないけど──」
そう答えても店主は難しい顔をしたままだ。
仕事着と普段着と、礼服一式となるとかなりの額になろう。
計算してきますと奥に引っ込んだので、己は連れが採寸を終えるのを待ちながら重ねられたデザイン画の束を捲る。
── 一寸もわからぬ。
■アイリース > 寒さはどこの国もいっしょだなぁ、と思う。
とにかく辛い。身を切るというやつだ。
というか、餅。そう、餅。
餅を相手に食べさせてみるのもいいかもしれない。
なにせ、冬の風物詩だ。
「……いえ、別に」
あわよくば、相手に編み物を教わろう、なんて考えたけど。
それはそれで、何かに負けた気がするので。
まぁ、それはちょっとタイミングを考えないと、だけど。
「……あのぅ」
相手が話を進めてる中、私も採寸が終わり。
店員さんと会話している相手に声をかける。
正直、デザインに関しては、と考えていたら。
相手も難しそうな顔をしているので。
「……もう、貴方が私に着せたいデザインでいいですよ」
というか。そういう感じで選んでほしい。
相手に選んでもらった服なら。私はうれしいのだから。
そう目線で訴えつつ。相手に近づき、ほほ笑む。
■ビョルン > 相手が先程から何か心中に抱えているようだが深刻な物ではあるまいと楽観視した。
よもや勝ち負けが女の中で発生しているとか、知らぬが仏。
服について決めかねている相手が微笑みながら声を掛けてくると、ふっと笑うように息を抜いて。
「しょうがない。
何を仕立てるかから決めるか。
──ノーカラーの外套は、流行り廃りがなさそうだ。
……ワンピース、は中に着込めないからな。長めのスカートト上着を共布で仕立ててセットアップというのはどうだろう」
デザイン画を捲りながら言って、「あとは任せた」と店員に申し付ける。
そうして女の仕立てをおおかた己が決めてしまえば、店の一角へ目を転じて。
「随分といろんな色がある」
肩掛けショールが色見本のように揃っていた。
相手へと視線を向けて問いかけるには、
「これは今巻いて帰れるから、好きな色を選べ」
と。
■アイリース > 別段、女性が家庭的であれ、ということをいうつもりもないが。
相手と編み物、というのがどうにも繋がらないので。
そこを認めたくない、っていうのもあるのであるが。
「よろしくお願いします。
……なんだかんだ、凄いぽんぽん注文するじゃないですか」
相手の衣服の選び方に、思わず驚きと感心。
そのまま、店員さんに頭を下げてお願いすれば。
なんだか、相手がショールを選べというように言い。
「……好きな色、ですか?
……そう、ですね……」
そのまま、一度相手の姿を見る。
じぃ、と相手のことを見ながら。
「……あの。
ちょっと派手ではない、金色が目立つようなものってあります?」
金色。相手の髪の色。
それを、身に着けたい、なんて。
私っぽくないかもしれないけど。
全体が金でなくてもいい。刺繍が金でもいい。
ただ、そういうものがないか、と聞いてみたり。
■ビョルン > 上肢を疲れさせず、なおかつ編み目の大きさを揃えて編み続けることは完成品という実益を兼ねた技巧修練でもあった。
まぁ、それはさておき。
「そんなに詳しいわけではないけど、
お前の意見まで聞いていたらここで三日三晩粘りそうだもの」
そうしてショールを選ばせるにも、また質問で答えが返ってくる。
けれど、方向性は出た。
ならば、商品棚の上に視線と指先をつるりと走らせ、ぴたと止める。
「紺青<こんじょう>──で、いいかな」
異郷ではアイアンブルー、プルシアンブルー、ベルリン藍などとも呼ばれる色であった。
奥から出ていた店主に視線を向ければ正解だと言いたそうな拍手のジェスチャーがあった。
紺とも群青ともごく僅かに異なった色彩の物を手に取り、一度女の肩へと掛けた。
「今日持って帰れなくはなるが、金糸で刺繍をしてもらおう」
色味を確認して、頷く。
深い色合いは、案外と使う物を選ばないのかもしれない。
「──持ち物には名前を書きたい性質なんだが、
生憎と……女に自分の名前を書くわけにはいかないだろう?」
相手の耳元で囁いて離れた。
女に仕立てる服もそのショールの合う同系の濃淡でという相談をし、前金で半額程の現金を支払う。
用事が済めば、相手の表情、じっと見てやろう。
■アイリース > 「別に、粘りはしないですよ。
……ただ、迷うだけです」
相手の言い方に、思わずむくれそうになるが。
だが、結果としては、相手のいう通りなのではあるが。
相手が、ショールを選んでくれれば。
その色に、目を奪われる。
「……いいですね。これ。
綺麗ですし……」
美しい、という言葉は陳腐かもしれない。
だが、その上で、刺繍に関してまで言ってもらえれば。
「……はい。はい、それで……」
相手が、意図を汲んでくれた。
それが、嬉しくて、思わず何度も頷いてしまう。
「……あの。
そういうのは、その」
困ります、とでも言おうか。どうかと思います、と言おうか。
そう困っている間に、どうにもにやけてしまって。
相手にニヤケ顔を見られないように。
私は、先に店を出るのであった。
■ビョルン > 刺繍の伝票には見本として己の筆跡で”B.B.”と書いた。
数日中に出来た物から届けるとの言葉に礼を言い、店を後にする。
ちらりと見たにやけ面を追うように、店を出ると共に帰路につき。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/商業区域」からビョルンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/商業区域」からアイリースさんが去りました。