2020/11/21 のログ
クレス・ローベルク > 意外な事に仕事に真面目な男は、適当な仕事内容なりに真面目にやっていた。
勿論、適当な仕事内容なりの真面目さしか無いので、時折買い食いしながら、街をぶらぶら見て回る程度の真面目さしか無かったわけだが。

「……」

娼婦の方を見て、うむ、あれは良い尻だなと考える男。
そう考える頭の隅っこに、追いやったある思考がうねうねと蠢いていた。
それは、決して考えてはならぬ、考えては負けであるぞと努めて思考と視界から外していた事である。

「……」

だが、いい加減それにも限界があった。
というか、さっきから執拗にケツに視線を送っているので、道行く者たち全員から不審の目で見られている。何故か男のほうが。
男はがっくり肩を落とすと、近くの肉屋で持ち帰り[テイクアウト]した串肉を、一本ラファルに突きつけ、

「解った。俺が悪かった。
とりあえず、これをあげるから、一体何がしたいのか教えてくれ……」

この幼女は、決して侮れない。
実力がというより(実力も決して侮って良いものではないが)その不規則性というか悪戯好きというか適当さ加減が。
故に、あわよくば飽きて普通に話しかけてくれないかなと半ば無視していたのだが、徹底的に何もせずついて来られるとただただ不気味でしかなく。
ついには根をあげてしまった。

ラファル > 「わーい!おにくー!」

 差し出されるお肉、ぴょーん、と飛び上がり、ぱしっ、と勢いよく焼き肉串を奪い取る幼女。
 周囲の視線と、男性の羞恥心と、評価を生贄に、一本の串焼き肉を手に入れた。
 甘辛のたれがしっとりと付いた、焼き加減もとてもいい一本、頂きまーす、ともしゃぁ、と串ごと食べる。
 ドラゴン、お腹も歯も強いのでその辺に負けないのです。ばりばりもしゃもしゃ、ごっくんちょ。

「んーと。珍しい所に、おにーさんが居たから、何してるのか見てたの。
 お尻を見てたのは……美味しそうだなって。」

 じゅるり。
 性的な物ではなくて、肉食的な物、一応、姉や両親に留められているから食べない、我慢してる。
 でも、幼女の本質はドラゴンであり、人間は、食べられるもの、のうち一つ。本来の大きさから言えば、おやつ程度だけれど。
 幼女の大きさなら、食いでの有る……じゅるり、なのである。

「にひ。お仕事後くろーさん!」

 そして、彼が何をしているかは、判っていた模様。まあ、幼女も冒険者だし、掲示板を見ればどんな依頼があるかはわかる。
 後、本来の巣は、この辺りにあるので、居ても不思議はない。
 今はちょっとした事情があって、誘拐されている場所を巣にしてるけれど。
 心配してないと良いけどな―後であやまっとこ、程度な思考。

クレス・ローベルク > 「はあぁぁ……」

一応、木串とはいえ串ごと食っていくラファルを見ていると、恐怖よりも先にため息が出てしまう。
子供とはいえ、本来的には人間など圧倒してしまう存在だ。
男とて、本気の殺し合いとなれば勝率は三割を切るだろう。二割すらも自信過剰かもしれないが。

「一応言っておくけど、万一にも俺の尻肉を食い破ったら、俺しばらくお外を歩けないからね?」

痛いとか怪我とか以前に格好悪すぎる。
剣闘士クレス・ローベルクのブランドイメージというものがある。一応は。
だから、頼むからやめてくれと念を押して、

「まあ、仕事と言っても見回りするだけだけど――君は暇潰しかな?良ければ、一緒に来る?」

と誘ってみる。
何をするかは解らないが、可愛らしいし飽きない少女である。
仕事上のパートナー、としてはやや不安だが、暇を潰す相手としては最高だろうと思う。
……まあ、仕事の難易度はちょっとだけ上がりそうだが。

ラファル > 「もーぐーもーぐーもーぐ。」

 嬉しそうに肉串をほおばる幼女、彼の精神的な疲労なんて知ったこっちゃねぇと言う雰囲気。
 実際気にしているわけでもないのだ。それが、この幼女の性質とも言えるのだ。
 実力に関しては、見た目こそ幼い物のドラゴンで、そして、とある超人に師事している、もともと種族として強い竜が、人に教えを請い、人と同じ技と、知識を覚えている。
 それは、人にとっては、恐怖でしかないのだろう、強者を打倒すための技術を強者が、覚えている最中という事なのだから。

「多分ボクも外出られないねー。滅、されちゃうかも。」

 かわいらしく、めっ、とか言ってるが、感じが物騒な一言。ブランドもそうだが、危険な存在と思われれば、国が立ち上がる。
 そうならないように、姉が、母が、色々してるので、恐らく竜の里に幽閉とか、有るかもしれない。
 念押しには、大丈夫だよーなんて、にこやかに笑う幼女。

「うーん……。依頼の達成に必要な人材としての要望なら?」

 これでも幼女は冒険者である、立場的には見習いなので、本来受けるには幼女の師匠化、おとなの冒険者【監視役】が必要だ。
 幼女の言い分は、つまるところ、一緒に来るというなら、チームにして、分け前よこせである。
 にっこり、と、ヒマワリのようにきれいで無邪気な笑顔で、ん?と、見上げる。

クレス・ローベルク > 「流石に部位とは言え人食っちゃうとねえ……。
でも、君にもストッパーがいるんだな。それは少し安心した」

と言いつつ、もう一本食べる?と串肉を差し出す。
男の分が無くなるが、どうせまだ暫くは此処で見回りをしているし、串肉の一本や二本で懐が寂しくなるほどカネに困ってもいない。
ともあれ、串肉を食った彼女は、冒険者としてなら、と返してきた。

「んー、"依頼の達成"って意味だと、今回は別に"必要"じゃないんだよなー……」

酷い事を言った様だが、しかし事実ではある。
今回はあくまで見回りであり、強敵を倒す必要性はまずないのだ。
そうなると、少女の有り余るパワーは、寧ろ周囲への威圧にさえなりかねない。
男と違い、彼女はそれを隠すのに慣れていない様だし。

とはいえ。それは彼女が役立たずである事を意味しない。

「じゃあ、こうしよう。竜としての知覚を使って、何か変わった事が無いか調べてくれ。

その結果何もなければ君に報酬の二割。何か見つかったら四割。見つかった上で、君の力を借りたら五割から六割を払う――どう?」

つまり、チームというよりは、オプション付きでラファルの能力を借りようという提案。
これなら、彼女への"払いすぎ"も"払わなさすぎ"もなく、適度に支払いが可能。
本来、冒険者としての雇用形態としては少し異質ではあるが、元より正式な形式での契約でもない。
即席の雇用条件としては、十分だろうと男は判断するが――

ラファル > 「あ。それ、酷いいわれよー。
 ボクは悲しい、だからそれをいしゃりょーとしていただく。」

 食べる、と受け取る。
 ストッパーがいるのは確かだけれども、そもそも、幼女は言う程暴れているわけではない。
 否、人の迷惑のかかるところで暴れたりはしない。分別に関しては、特に厳しく躾けられているのだ。
 まあ、盗賊とか、ならず者とか、そう言った手合いには、容赦は一切しないのは、間違いないが。

「えー……。」

 渋る彼に、幼女はまじかぁ、と肩を落とす。確かに、依頼としては見回りであり、幼女のスキルは便利だが、必須とは言えない。
 依頼が、解決であれば話は違うのだ。
 警備は解決を必ずしも求めているわけではなく、抑止力という物と、もう一つ。
 焙り出し、だの、ギルドの面子と云う、何も知れませんよ、というポーズでもある、覆面と言う所でいえば、後者の面子的には微妙だ。

「無理しなくてもいいのに。それで良いなら、ボクは良いよ?」

 ちなみに、力を隠すことに関しては、彼の想像以上には得意である。
 野性的な姿を見せているだけであり、彼は其れでも問題ないから、そうしているだけで。
 そもそも、本来の力から言うなれば。本来の姿から言うなら――。

「じゃあ、とりあえず、範囲しらべるよ。」

 口を開き、閉ざす。風を操り、人に聞こえない音を放つ。犬は驚いて逃げた。
 蝙蝠のように、人の耳には聞こえない音を響かせて、周囲を細かく調べる。風の精霊の手伝いがあれば、一区画程度問題がなく。

「三つ先の路地で強姦、アソコの宿で貴族の不倫、あ、シロナボクに隠れてプリン食べてる。後でとっちめないと。
 300m先でスリ。変態貴族の館ではいつものしてる、メイドさん手出ししてるね。
 警備兵の汚職が三件、お金受け取って警備コースとか教えてるのが二軒。警備兵の立場を利用して、女を犯してるのが一軒。
 ミレー族がさらわれてるのが一軒、妖しい魔術師が生贄の実験してるのが一軒。
 借金の片に連れて来た女の子を犯す貴族が一人

 ―――でもこれ、何時も行われてるレベルの事、だね。」

 よくある事、で済ませるが、どれもこれも、犯罪なのは、間違いはなかろう。
 でも、それが、富裕地区に有る、闇なのも確かだ。

クレス・ローベルク > 「多分、君以上に慰謝料を貰うべき人間は他にいるけども。主に闘技場のプロモーターとか……」

と言いつつも、素直に肉を渡すのは上の方の迷惑など知らんという証。
多分、そこそこ遺憾なのは間違い無さそうだと表情から解るが、破天荒な人間(ドラゴンだが)が、自分で思っている以上に自由に見られるのは世の常である。
男も同じ様な事を観客から思われている訳であるし。

「別に、無理はしてないよ。今はお金に困ってないし。
これでラファルが上手いこと犯罪を見つけてくれれば、実績作りになるしね」

二割ぐらいなら、まあ少し目減りはするが痛いという訳ではない。
ラファルの力を見れて、且つその力如何に依っては自分が得する――そういう付帯利益付きのギャンブルだと思えば、納得はできるというものだ。

そして、そのギャンブルの結果は想像以上。
まあ、報告に結構ノイズは入ったが、能力としては優秀だろう。
ひゅぅ、と口笛を吹いてから、検討に入る。
少し考えてから、男はぽつりと、
       ・・・・・・・・・・
「OK。じゃあ、取り敢えず全部やろう」

そう云うや否や、男は走り出す。まずは、今もなお逃げているであろう300m先のスリを殴り飛ばすために。
走りながら、男は続ける。

「ラファルの力を借りれば、大体の事件は解決できそうだからね。
何か、後で後味悪くなるのも嫌だし」

まずは、ラファルの効果範囲から逃げてしまう恐れのあるスリ。
それが終われば緊急性の高い生贄実験の魔術師。
そして、その後は強姦だのを順々に処理という、そういうプラン。
――まあ、流石に不倫だの貴族の館でメイドさんに手出してるだのは民事不介入でカタをつけたい所だが、

「悪いけど、こき使わせてもらうよ。――何せ、どれだけ使っても最高で報酬の六割だからね。実績の代償としては安いもんだ」

ラファル > 「えー。だって、あんなざるなのにー。あ、またそのうち遊びに行くね!」

 プロモーターは泣いていい。組んだはずの、バトル、司会に届くまでにすり替えられていたりとか。
 代行サービスのスカウトの人が、スカウトした積りで連れてきたら、この幼女だったとか。発狂してなければ良いけれど。
 でも、それでしらけるのではなくて、クレス君の手腕もあり、其れなりに観客が満足するから、立ちが悪いのである。
 ある意味、厄災といって良い幼女だった。

「お金の方もそうだけど、勝手な判断の方だよ?ほら、一応ギルド通さないといけない筋とかもあるでしょ?
 その辺も、だと思うよー。」

 お金よりも、冒険者は信用第一だ、故に報連相もそれなりに大事だと、知っている。だから、勝手に追加とか、そう言うのはまずいんじゃないかなー?と言う幼女の思考でもある。
 彼が良いというならそれでいいか、と言う思考も又。
 切り替えてしまえば、幼女は仕事モードへと、移動していく、テンションが下がり、息を長く吐き出して。
 走る為の体勢へ、と。

「ん。判ったよ。じゃあ、先輩。
 ボクは、クラス・ストライダーだよ。だから、魔術師は先行するね?
 連絡用に、分身置いとくから……何かあったら話しかけてね。
 一応、感知範囲は―――この姿なら本気を出せば30キロ。」

 30キロ、と言うのは広い気がするだろう、しかし、空を高速で飛ぶことを考えると、狭い。本来の姿になればもっと大きくできるが。
 人の姿で、制限している状態なので、普通は10キロ程度だろうしかし、スリ程度なら、基本逃がさない。
 普段でも、其れなりに周囲の事を把握しているもので、男の方を見ずに、行ってきます、とダッシュ。
 影に溶け込む様に、消えていくのは、盗賊系の面目躍如という所。風の精霊を使い、足音、匂いも消して消える。

『と、ゆー事で、分身ラファルちゃんが、あいぼーになるます。ま、こき使う、と言うレベルでもないよね、これー。』

 さっくりと、スリを退治している彼の脇で、分身幼女は笑って見せる。
 むしろ、クレス君の方がこき使われてるのではないだろうか、冒険者ギルドにと。
 強姦の方は、あっちだよ、と指さすのだ。

クレス・ローベルク > 闘技場に出たがる奴(特に少女ともなれば)など、剣闘士以外ではそうそういない。
『ザルではなく、必要がないんだ、本来!』と上層部の苦情が聞こえてきそうだった。
まあ、それをフォローできると思って、彼女もクレスと良く戦うのだろうが。

「ああ、そっちか。そっちはまー……現場の判断ってことで」

元より、あっちが損する様な取引ではないのだ。
前もって確定した報酬を前借りして、それで人を雇っている訳だから、少なくとも金の流れとしては変わらない。
多少、報告書を書くのが面倒だろうが、細かい規則にさえ目を瞑れば、問題はない。多分。

「OK。何だったら、魔術師はそっちにあげるぐらいのつもりでいるから遠慮なくやってくれ――ってうぉう」

男の知覚からすら、瞬間で殆ど消えてしまう少女。
それでも、ギリギリ追えてはいるが、そもそも直ぐに男の知覚範囲外から消えてしまう。
男の方も、負けじ(性能的には負けてるが)と、スリにドロップキックをかましつつ、側にいる分身少女に、

「はい、よろしく。……まあ、俺は下っ端のほうが性に合ってるのさ」

まだまだ、夜も仕事は始まったばかり。
男の"実績稼ぎ"は、零時を過ぎても終わることは無かった。

ラファル > 体は闘争を求めるのです、時折。だってドラゴンだもの。でも、余り頻繁に出ても闘技場が困るから。
 こう、最低限にして、ちょろっと遊びに顔を出すことにしてるのです。こう、ラファルの乱入を織り込んでしまえば楽になるよーと上層部に、妖しい囁きかけ。……してみようかしらと思う幼女。
 単に、クレス君が一番遊んでて楽しい、があるのと、彼に任せれば何とかなるという闘技場上層部の思考なのかもしれない。

「んい。それなら、ボクに言うことはないニャー。」

 ギルドへの筋は、彼が通してくれるそうだ。問題ないと先輩が言うなら問題はない。
 むしろ、色々我慢しているものを開放できるチャンスでもある。羽目を外さない程度に羽目を外そう。
 報告書とかは全部先輩に任せて、幼女はルンルン気分で奪取する。

『あーい。ラファル本体、魔術師宅に到着、そのまま扉を破壊してエントリー。呆気に取られてる魔術師にタックル―。
 確保ー。』

 幼女の得意は速度と風。相手が気が付いたときには既に背後にいるが、身上の高速走行ストライダー。走るものは伊達じゃない。
 不意を打ったうえで突撃し、そのまま風の精霊にお願いしてのサイレンス。魔法を封じて、物理的に固めて捕まえたよ、と。
 それを彼に実況する分身。
 ちなみに、分身は、実体のない方なので、誘導や会話が出来ても、戦闘は出来ない其れです。

『社畜こんじょーと言うやつだね!あ、次は―――。』

 夜の夜中。
 眠らぬ街の喧騒の中に紛れ込む二人の冒険者。
 お仕事の時間だ―――。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からクレス・ローベルクさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からラファルさんが去りました。