2020/07/23 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にクレス・ローベルクさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にニコルさんが現れました。
■クレス・ローベルク > 「別に感謝する必要はないというか、寧ろ逆に調子が狂うというか……」
別に、腹の読み合いをしている訳でもないのに、掌の上で転がされている気分だ。
とはいえ、悔しいとか、馬鹿にされたとは思わない。
寧ろ、こうしてやりこめられるのを、何処か楽しく思う自分もいる。
「ニコルちゃん、ね。それはまあ、我儘な性質だ」
苦笑いしつつ、「それじゃ、失礼して」と置いてから彼女の隣に座る。
貴族相手にちゃん付けとは、本来的には不敬罪だが、下手に畏まるよりは、余程この未亡人の趣味に合うだろうと思う。
何より、格好つけるのはともかく、へりくだるのはこちらの趣味ではないのだ。
「ま、とはいえ退屈が嫌いっていうなら、俺も楽しいお話をする努力ぐらいはしようか。
そうだな――暇を持て余す事が仕事って言っても、趣味ぐらいはあるんじゃない?俺は――まあ、節操なく手を出す方なんだけど」
指折り数えて、ギャンブル、美術館通い、酒飲み、読書と挙げていく。
流石に、娼館通いなど下品なものは挙げなかったが、それでも相当数は挙げた。
「貴族の遊び方ってのにも、結構興味あるんだけど、その辺どう?」
■ニコル > 「あら、ごめんなさい? 悪気があるわけではないのよ?
お礼でないとしたら、光栄だわ、って言うべきだったのかしら?」
調子が狂う、という言葉に対し、困惑した風に眉間を僅かに寄せて。
申し訳なさそうに告げる口振りには、その詫びの言葉も告げる内容にも偽りがないことが滲んでいる筈。
その「困り顔」とでも言えそうな表情がきょとんと固まった後に、軽く吹き出す気配が夜風に紛れた。
「……まぁ。随分な呼び方をして下さいますこと。それこそ、光栄だわ」
そんな呼ばれ方をしたのは久し過ぎて、以前そう呼ばれたのがどれ程以前だったかも思い出せぬ程。
それが可笑しくて暫くの間は肩を震わせ続ける。
傍らへと腰掛けた相手には、まだ笑み滲んだ侭の眼差しを向けて。
「趣味ねぇ。何を趣味にしたら退屈をしないのかしら?
野辺歩きとか、花の世話をするのは嫌いではないけれど、一日中するようなこともでないでしょう?
貴族の遊び…というのは、大抵一人でするようなものではないのよ。
何かのコレクションをするとかなら一人の趣味とは言えそうだけれど、そういった風雅が私にはわからなくて。
旅に出る、遊興をする、美食を楽しむ、珍品のコレクション…、って、あら、こうして考えると貴族の趣味ってあなたの趣味とそう違わないわね」
すごい発見をした、とでも言いたげな表情で目を瞬き、ね?と同意を求めるような目線を向ける。
■クレス・ローベルク > 「(……あー。今のマジの方だったのか)」
てっきり、今のはそういう"からかい"だと思っていたのだが、ニコルとしては違ったらしい。
この辺の空回りは良くある事だが、だとしたら少し申し訳ないことをしたと思う。
とはいえ、吹き出してくれたということは、少なくとも雰囲気が悪いというわけでもないので、此処で謝罪も違うだろう。
「気に入ってくれたのなら良かった。ニコルちゃん、あんまり堅い感じが好きじゃ無さそうだしね。後、何ていうか、ちょっと子供っぽいし」
こちらも、肩を震わせる程ではないが、しかし先程の様な苦笑ではない笑みを浮かべる。
受けが取れて安心したというのもあるが、何よりちゃん付けで笑うその笑い方が可愛らしいというのもあった。
気品がある女性だが、それとちょっとした稚気のギャップがなかなか楽しい。
そんな感じで話していると、ふと貴族の趣味と自分の趣味が似ていると言われた。
言われてみれば、確かに似ていると思ったが、これには理由がある。
「ああ、確かに似てる。まあ、隠すつもりも無いから言うけど、俺、貴族の家から家出した放蕩息子なんだよ。
それで、多分似通うんじゃないかな」
ローベルク家、といえばそこそこ名のしれた怪物退治の家だ。
尤も、男は男で、貴族としての教育はあまり受けていないが――それでも、今の教養を支えているのはその家での教育だ。
謂わば、育った水が同じなのだから、何処か似通うのは当たり前なのかもしれない。
「俺は基本、一人で街に出て遊ぶ事が多いから、そこは違うけど。
でも、芸術鑑賞とかは家の影響かも」
別に隠すつもりはないし、今更恥じるつもりもないが、それでも気取られると何だか照れくさいような笑みを浮かべる。
実力社会の剣闘士業界で、貴族出身というのは、男にとっては有用ではあるが、同時にちょっとしたコンプレックスと言うか、恥を感じる部分でもあるので中々複雑なのだ。
■ニコル > 「私をそんな風に呼ぶ人なんていないもの。ヴァリス夫人って呼ばれることが一番多いのかしらね。
親しい人は名前で呼んでくれるけれど、そんな風に、ただの少女を呼ぶような人はさすがにね。
堅い感じ…そうねぇ、確かに得意ではないけれど、公の場でならば様式があるって好きよ。
その通りにしていれば少なくとも間違わないから。
でも此処には人の目はないし、あなたは私を子供のように扱うのなら気取る必要はないでしょう?」
またくすくすと肩を震わせて笑った後に、彼の話には軽く首を傾けるようにして聞き入る。
なるほど、と呟きながらに頷きを返しつつ、彼の面映ゆげな笑みにつられたように口角を軽く上げた。
「まぁ、そうだったの。血は争えない、っていうことなのかしらね?
でもそう考えたら確かに当て嵌まるのかもしれないわ。
私は生まれも育ちも野山の中で、結婚をしたから貴族の家庭に入らざるを得なくて。
だからあなたとは真逆ね。それで貴族らしい趣味の一つも持てないのかしらって思うと、納得しちゃったわ」
うふふ、と可笑し気に笑ってから、彼の顔を悪戯な子供めいた仕草で覗き込む。
「じゃあ、あなたの貴族らしい趣味の中で、特に好むものやおすすめのものがあれば、私にも教えてくださらない?
それだけ色んなことをして来たあなたが楽しいと思うことなら、私も続けられるんじゃないかしら」
■クレス・ローベルク > 「そういうもん?まあ、貴族だと、その辺の呼び方も大事なのかな。
俺は逆に、様式があるとそれから逸れるのが怖く感じる質だけど」
この辺、慣れの問題なのかなあと首を傾げる。
そして、今度はニコルの話を聞く。
確かに、それは男と真逆である――男は、生まれたときには自由がなく、それを掴むために家から出たのだから。
「或いは、三つ子の魂百まで、かもしれないけどね。
でも、そうか。何か妙に貴族らしくないとこがあるなと思ったけど――それでその自由を手放すんだから、何というか、本当に好きだったんだね、旦那さん」
今回、男はパーティである事もあって、気を多少抜いている。
だから、ニコルがニンフである事も気付いていない。
そして、その中で、ふと彼女の顔がこちらを覗き込んできた。
綺麗な顔だな、とは思うが、何だか少しばかり、くすぐったく感じる。
それを、隠すように、少し考え込む顔をして、
「俺が好きなもので、おすすめのものか。
うーん――美術鑑賞とかは、もう既にやってるよな。
剣術修行は、流石にニコルちゃんの腕には荷が勝ちすぎるだろうし」
彼女が剣を振るう姿は、正直あまり想像できない。野山の中で育ったというのだから、ひ弱では無いのだろうが。
美術鑑賞はやってはいるだろうが、基本見るのは一瞬だ。
暇潰しとして長くできるものではあるまい。
そうなると――
「あー、本。読書とかどう?難しい本じゃなくても、装丁が立派なら見た目貴族らしいし、話の種にもなるしさ。
ラブロマンス系の小説なら、貴族の若い子との話題の種にもなると思うよ?」
確か、パーティで出席していた誰かが、『娘が恋愛物語の影響を受けて格好良い男を探していて困る』とか愚痴を言っていたのを聞いた気もする。
古今東西、女性はそういう物語に目がないらしいが、彼女はどうだろう、と。
■ニコル > 「自由を選んだつもりよ。あの人の側で生きるっていう自由を。
色々覚えるのは大変だったけれど、一緒なら案外何でも楽しく思えたし…。
だからいまだに、こういうパーティは少し苦手なの。
お手本は身についているからそのとおりには出来るし、それ以外のことをしようと考えるのは疲れるからしたくないのよね。
その結果、どんなパーティでも宴でも同じことの繰り返しになるし、人が多い場所って疲れるでしょ?」
同意を求める風ではあるけれど、必ずしも返事を求めてはいないことが知れる口調にて告げ。
問い掛けに対して律義に返してくれる様子に、片手を軽く顎先に添える姿勢にて彼の口元を見詰めた。
「剣も楽しそうではあるけれど、怪我をしそうなことは周りに止められそうね。
……なるほど、読書ね。昔は結構本も読んだのよ。色んな物語を読むと人のことがわかるかと思って。
ラブロマンス…、……そういうお話も読んだような気もするけれど…。―――そうねぇ」
目を伏せて軽く考えるような素振りを。
蝋燭の灯を風が数度程揺らす間、黙って考え込んで居たものの。
ふと目線を上げ、改めて彼の方へと顔を向けた。
「あなたが心を打たれるようなラブロマンスの物語があるなら教えて頂けたら嬉しいわ。
でも……、……恋はきっと、物語の中で見るより、実際にしてみる方が楽しいと思うの」
少し悪戯な声で告げた後、邪気のない笑顔を作る。
■クレス・ローベルク > 「ふうん……」
要は、大事なのはその人と居る事であり、それが彼女の自由なのだろう。
疲れる疲れると言いながらも、放り出したりしないのも、根っこの部分では、その旦那に繋がるのだろう。
とはいえ、その辺深堀りするとデリケートな部分にも触りかねないので、頷くだけで止め、
「へえ、意外でもないけど、興味深いな。案外、趣味が合うかも――と?」
相槌を打っていた所で、ふと彼女が目を伏せた。
一瞬、疲れたのかと思ったが、違う。何か考えているようで。
そこはかとなく嫌な予感を感じながら、彼女が顔を上げるのを待ち、
「おおっと、そう来ましたか……」
思わず敬語になってしまうが、しかし少女の表情に、冗談の色はない。
どれぐらいの"本気"かは解らないが、少なくともからかいではない様で。
「そうだねえ。パーティで出会った男女が一夜にして恋に落ち――って筋書きか。悪くない」
並んで座っていた彼女との距離を、身体と身体が触れ合う所まで詰めて、更に彼女の手を包む様に握る。
そして、そのまま彼女の手の甲にキスを落とす。
「取り敢えず、最初は紳士的な感じにしてみたけど――どうする?」
どうする、とは茫漠な物言いだが、要は更に踏み込んだ事をしてもいいか、ということである。
彼女が自分の旦那の事を大事にしているのは解っている。
だから、彼女が望まぬ限り、それを損なうつもりはない。
だが――逆に言えば、彼女が望むならば、何処までも。
■ニコル > 「貴族令夫人、と呼ばれる人がしそうなことは、これでも一通り挑戦しているのよ?
それが継続できるかどうか、とか、楽しめるかどうか、とかはまた別みたい。
花や自然は毎日少しずつ違う姿が見られるから飽きないけれど。
趣味が合う、と思われるのなら、庭を弄る才能があなたにはあるかも知れなくてよ?」
半ば冗談めかして言いながら、その様を想像して首を竦めるようにしてくすくすと笑い。
そんな笑い声が止んだのは、膝へと置いたままの片手へと手を重ねられたが故。
近付いた距離に僅かに目を丸くして瞬きを返し、手の甲へと落とされる口付けをその侭に見詰め。
それから、その出来事がなかったかのようにまたくすりと笑った。
「その物語では、ヒロインはどう返事をするのが正解なのかしら?
『本気でいらっしゃるの? お戯れなのでしたらこの手をお放しになって』?
『困りますわ。わたくしには夫がおりますのに。それをご存知の上で仰っているの』?
……他には何があるかしら?」
戯言を楽しむような声音と口調。他のセリフを考えるように宙へと彷徨った視線は、暫し後に間近な距離の彼の双眸へと戻った。
瞳の奥を探るかのように、僅かの笑みの気配と深い緑を湛えた双眸がじっと視線を注ぎ続ける。
「『もしお戯れでないのなら……奪ってみてはいかが?』
……これなんか、物語のヒロインぽいと思うわ。どうお思いになる?」
明確に返事をすれば、互いの立場か、家柄か、それに纏わる何らかの関係か、何れかに角が立つだろうから。
曖昧に避けながらも、そんな風に返したのは、触れ合う手を解かれたくないとちらとでも思ってしまっている所為。