2020/07/13 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にクレス・ローベルクさんが現れました。
■クレス・ローベルク > 屋敷の庭に、テーブルを置いて食事を並べ、そこに楽団でも置いてクラシックを流せばそこはもう立派なパーティ会場だ。
パーティの客には、全く共通点というものがない。
王族と同じ会場に、ミレーや奴隷まで居る有様だ。
「……まあ、そういう無茶が通せるほど、コネと金があるって事なんだろうけど」
給仕が持ってきたグラスを啜りつつ、会場を歩く。
『異業種交流パーティ』という名目を、此処まで現実に即させたものはなかなかない。
少し屋敷の方を見れば、男女が連れ立って、屋敷の中に入っていくのが見える。
おそらく、このパーティにおける『交流』にはそういう意味もあるのだろう。
「さて、俺も誰かに話しかけないとな。暇そうなのはいるかな……っと」
きょろきょろと周りを見渡す。
闘技場の上司に言われて来たパーティだが、これもいい機会。
コネの一つでも作っておくべきだろう。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にニコルさんが現れました。
■ニコル > 賑わっている一帯を抜ければ、後は出口までの最短で且つ目立たないルートを確保するだけ。
その「だけ」が先程から上手くいかない。
たまにはこういった場へと顔を出すのも「仕事」のようなものとは割り切ってはいるけれど。
「流石に少し疲れて来たわね…」
来し方を振り返って溜息を一つ。
袖摺り合うような距離で対面してしまった相手にはとりあえずにこやかに一礼を向けつつ、何か話を振られるより先にその場をすり抜ける。
が、些か強引にすり抜けた所為で早足になっていたのだろう。
人垣を越えたところで不意に其処にいた人とぶつかりそうになり、慌てて歩を止めた。
「あらいやだ、ごめんなさいね? お飲み物は大丈夫でしたか?」
慌てた声で問い掛け、顔を振り仰ぐ。
■クレス・ローベルク > 中々、上手くはいかないもんだな、と賑わう周囲を見て考えていた。
何人か手隙の者に話しかけてみるものの、体よく躱されたり、既に先約が居たりした。
とはいえ、元々が関わりの無い者同士のパーティ。仕方のない事だと思っていたら――
「おっと」
近くに居た人混みから、ドレスを着た女性が飛び出してきた。
綺麗な亜麻色の髪に、落ち着いた黒の衣装。
パーティに相応しい晴れ着ではあるが、どちらかというと貞淑な印象を与える組み合わせだ。
とはいえ、相手はこちらを心配して声を掛けてくれたので、こちらは安心させるように微笑みを返し、
「いや、大丈夫。寧ろ、そちらが転ばなくて良かった。
どうやら、少し早足だったみたいだけど……何か急ぎの用事でも?」
と、聞いてみる。
もし急いでいるなら引き止めるつもりもないが、そうでなければ是非、この美人と話をしてみたかった。
■ニコル > 「ならばよかったですわ。
よそ見をしていたものですから折角のお衣装を汚しでもしたらどうしようかと思いましたの。」
おっとりとした口調は余所行きのもの。
相手に被害を及ぼさなかったと知るとほっとした表情になり、懐こい笑顔を向けた。
その笑顔は営業用と素と半々くらいな配分ではあったが、何れにせよこういった場では取り繕うことが多くて疲れる。
と、そう考えていたタイミングで同じ答えを返す問いを向けられて目を瞬いた。
「……いいえ。
そうね、強いて言えば、人目につかず、上手にこの場から逃げることを急いでいたの。
人が多い場は疲れてしまって。」
肩を竦め、眉をハの字にして見せる。
■クレス・ローベルク > 「ああ、いや。元々、これは汚れても良い服だから……どのみち気に病む事はないよ」
と言いつつ、男は彼女を悟られぬ程度に観察する。
見た目の印象と、貴族然とした振る舞いから人馴れしていると思っていたが。
微妙に、気疲れというか、そういう色が垣間見えた。
こういう場に慣れてはいるのだろうが、しかしそれと好悪は別、というタイプらしい。
「成程。俺は仕事柄、周囲に人が多くても気にならないけど……。
君みたいな美人さんは、声を掛ける男も多そうだしな」
さらりと相手を褒めつつ、少し周りを見渡してみる。
人が一番多いのは料理のテーブルや給仕が居る所。
次いで、楽団が音楽を演奏している所だ。
それらを覗いて、今一番人が少なさそうなのは……。
「それじゃ、あの東屋とか、どうかな」
少し離れた所にある東屋を指差す。
休憩するにしても、パーティ会場のあちらこちらに椅子が置いてあるので、パーティの中心からわざわざ離れてあの東屋まで歩く者は居ない。
一応、蝋燭の明かりは見えるが、中が明らかに薄暗いのも、人が寄り付かない原因の一つだろう。
「俺も、人から言われてパーティに出た身でね。ちょっと休憩したかった所なんだ」
と、うそぶく男。
実際には、彼女と二人きりになりたいという打算も多少ある。
だが、これから更に多くの人に話しかけるよりは、彼女と二人きりで話した方がまだ楽というのも、偽らざる本音だった。
■ニコル > 「あら、そうですの…?
お庭を弄るのがお好きな風にも見えませんけれど。
まぁ…、そうなの。」
マタドールの衣装は派手やか過ぎるものでもなければ盛装とそう変わらないように見受けられる。
それは自分がそれほど世慣れしていない所為もあるだろうが。
感嘆する風に大仰に頷いて見せるのも、こういった場では処世の一つであり、だからこそ彼に対しても至って真面目に聞いています、とでも宣言するような頷きを返した。
「まさか。
亡き夫の名前だけが今も生きて勝手に一人で歩いている所為ですわ。
まったく、いつまでも困った人なの。」
懐かしむでもなくまるで今も其処に居るかのような言い方をして微笑む。
その微笑みを湛えた瞳が、彼の表情から、彼の指差した東屋の方へと向けられた。
長い睫毛がパチリと音を立てそうな瞬きをしてから、また其方へと視線を戻す。
「そうね、あそこなら丁度いいわね。
そっと抜け出しても庭の影伝いに帰れそうだし。
お言葉に甘えるようで申し訳ないけれど、少し隠れ蓑になってくださいな。」
懐こい口調にて告げると、其方へと片手を差し出す。
異性へとエスコートを依頼する自然な所作は、昨日今日で身に着くものではなく。
手をとってもらえたなら、緩やかな足取りで東屋へと向かう心算。
■クレス・ローベルク > 何というか、良くも悪くも貴族然とした女性だと思う。
こちらに失礼がないように、そしてその上で過度に余所余所しくないように気をつけているように感じる。
「(成程、これは確かに疲れる訳だ)」
男だったら確実に面倒になって立場ごと放り出しているだろうに。
とはいえ、夫の事に関しては、随分と本音が出ているようにも見えた。
まるで今も生きている様な物言いは、夫の死を心の何処かで受け容れられていないのか、それとも別の事情があるかは解らないが。
「それは苦労するね……。妻とは言え、夫の代わりになるという訳でもないだろうに。
成程、勿論構わない……ああ、いや」
うっかり、自然な流れで手を取ろうとしたが、これこそ、折角の機会である。
ただのごっこ遊びの様な物ではあるが、だからこそ無造作にやるのではなく、作法に則ってきちんとやるべきだろう。
だから、姿勢を正して、差し出された手に乗せる様に手を重ねて、
「――光栄です、ご婦人[レディ]」
そう言うと、そのまま東屋の方へと、リードするように歩いていく。
流石に、貴族の模範的な礼儀作法そのままとまでは言えないが、それでもきちんと要所を抑えたエスコートになっているはずで。
■ニコル > 「生きているってことは日々忘れていくってことですものね。
もちろんだからこそ美しいのも愛しいのもわかっているのよ。」
亡夫へのコメントに対して、くすりと笑って悪戯っ子のような仕草で首を竦める。
片手を差し出した後に僅かに開いた間に気付くと、軽く首を傾いで其方を見遣り。
返された言葉に、またも大きく瞬きを返した。
「―――あらあら。宜しくお願いしますわね。」
一見すると母が幼い息子の成長に気付いて笑いを必死に押さえているような、そんな表情と声と。
乗せるように重ねられた手を、その侭軽やかに天地をひっくり返すことで、自分の手を彼の手のひらの上へと預ける。
「そんなに畏まってくれなくてもいいのよ?
傍目に見た時に、私が誰か殿方に手を引かれて庭の散策に出た、という……つまりアリバイがあればいいのだもの。
でも、ありがと。」
エスコートされる道すがら、声を潜めて告げ、楽し気に肩を震わせる。
東屋へと到着すると、漸く人混みから遠退いたことにほっと息をついた。
中央の台で蝋燭の火がチラチラと揺れ、傍らには水差しと葡萄酒らしき瓶。
一応「客」を意識しているのはわかるものの、辺りは薄暗く、そして目論見通り人は居ない。
■クレス・ローベルク > 「生きている事は忘れていく事……か。成程、含蓄のある言葉だ」
自分にも、それなりに死に別れた人間というのは居る。
友人と呼べるほど親しかった人間もその中にはいるが、果たして今、自分は彼らとの時間の何割を思い出せるだろうか。
などと、ぼんやり考えてしまったが、今は彼女の手を引いている途中だ。
「いやまあ、そうだろうけどさ。
例え形だけでも、女性の手を引くとなったら格好つけたくなる生き物なんだよ、男ってのは」
と、少し口を尖らせて言う男。
拗ねた様な物言いだが、しかしそこまで気分を害した訳でもない。
寧ろ、多少なりとも砕けた様で、嬉しくさえもあった。
そうこう言ってる内に、東屋の中まで到着した。
此処まで来れば大丈夫だろうと、手を離して、
「さて。折角、こうして共犯者になったんだ。
少し話をしないかい?まだ、お互いの名前も知らないわけだし」
そう言って、まずは男から名乗る事にする。
名前を尋ねるにはまず自分から――という礼儀もあるが、何より自分の職業は、名前を覚えてもらうことも大事な仕事なのだから。
「俺の名前は、クレス・ローベルク。ダイラスの剣闘士だ」
■ニコル > 「恰好つけ、ねぇ。
そうして頂けたことにお礼を言うべきだったかしら。」
うふふ、等とわかりやすい笑い方で笑って見せる。
尖らせた口元を見れば尚のこと肩を震わせ、東屋へとたどり着くと軽く腰を落とした一礼を向けてから手を解く。
レディとして扱って頂いたお返しに、此方も相応のポーズだけはとって見せた、といったところ。
「あら、そうね。そういえば名乗って居なかったわ。
私はニコル=ヴァリスよ。
仕事は…暇を持て余すこと、かしらね。
退屈は嫌いなのよ。かといって人には酔うから、困ったものね。」
まるで他人事のように告げて、東屋の中の長椅子へと腰掛けた。
そう遠くない場で花が咲いているのか、甘い香が漂う。
香を追い掛けて一瞬だけ彷徨った視線は、彼の方へと向けられるとそこで止まった。
「立ち話もなんでしょうから。お掛けになったら?」
告げて、自分の隣を指し示す。
東屋でのひと時はまだ暫く続きそうで―――
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からクレス・ローベルクさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からニコルさんが去りました。