2020/04/18 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/王立劇場」にビョルンさんが現れました。
■ビョルン > 【待ち人在り】
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/王立劇場」にアンネリースさんが現れました。
■ビョルン > 王都は早めの夕食を済ませた頃、というような時間。
今日は珍しく誰も連れずに劇場前で人待ち。
正しくは、自らは誰も引き連れずというところだろうか。
両家からの監視の目は既に有るはず。
そうして今日は、許嫁は彼女の父親が手配した馬車で劇場まで送られてくるだろうか。
表向きまだ浅く清い仲らしいデートを、という両家の示し合わせのようだ。
■アンネリース > 普段は会うのを厳しく制限される毎日。
そんなある日に急に父より会う事を許可され、既に予定まで立てられていると聞き。
早めの食事を済ませては用意された馬車により揺られる事しばし。
とある劇場の前で馬車は止まって、そして。
「ビョルン様、お待たせしました」
馬車の扉が開けば軽く会釈と共に挨拶して降り立ち。
笑みを見せてその傍にと駆け寄って。
■ビョルン > 場所柄、己を見て駆け寄る許嫁の姿には慌ててこちらも足早に迎えに行く。
礼をして手を取ればその甲へと口づけ落とす。
「ごきげんよう、フロイライン。
どうぞこちらへ」
そのまま手を取って劇場へ入れば
「足元お気をつけ、
──と、形式とは厄介なものですがこの場は案内させてください」
互いに聞こえるようなボリュームで言い添えて2階の桟敷席へ。
チケットを渡して通されるのは正面側から舞台を見下ろせる席。
2人掛けのベンチシートと低い柵の間にはロウテーブルがあり、冷たい炭酸水のボトルと2脚のグラスが置かれている。
■アンネリース > 「えぇ、ごきげんよう、ビョルン様。
エスコートお願いいたします」
手の甲への口付けに擽ったそうにし、その手を取られ導かれるままに劇場へと続き。
「ありがとうございます。
ふふ、お優しいビョルン様」
小さくお礼を口にし、案内してくれるという彼に微笑み。
両親が用意をしていた席は正面から舞台を見下ろせる一番の場所。
何度か足を運んだことはあるが彼とは初めて、そっとベンチシートに腰を下ろせば彼に隣にと言うように見上げて。
■ビョルン > 「舞台からは少し遠くなりますが、全体が見える席は好きです」
許嫁の少女が席に座ると己はその視線に頷いて隣へ。
「演目は先日申し上げていた『オフィーリア』です。
大戯曲家四大悲劇のうちのひとつとも評されていますが、主に描かれるのはタイトルであるオフィーリアの謂わば彼氏側、ハム王子のお家騒動と血の呪い……と、言ったらわかりやすいでしょうか。
少し、昔の言葉の表現も多いと思いますので、知らない言葉があれば、何なりと」
上演を待つ間、演目について説明した後に用意されていたグラスに炭酸水を注ぐ。
周囲はシャンパンを飲んでいるのだろうか。
ここの席だけ若いのかもしれない。
■アンネリース > 「もっと早くに判っていればオペラグラスを用意しましたのに…」
全体が見えるのは良い事であるが少々遠く。
もっと早くに判っていればと、隣に座る彼につい言ってしまい。
「オフィーリアは観賞するのは初めてですので楽しみです。
ビョルン様は本当に色々な事にお詳しいのですね。
えぇ、その時はお願いいたしますわ」
彼に今日の上演内容を聞けば微笑みを浮かべて楽しみだと。
早く始まならないかと舞台を見ていたが彼が炭酸水をグラスに注いでいるのが見え。
始まるまでに乾杯をしましょうと片方を手にもって。
■ビョルン > 「あまり劇に熱中せず、話を弾ませろというお計らいかもしれませんよ」
零すように言う口ぶりが微笑ましく、柔い語調で取りなして言う。
「読書もご趣味でしたね。
──では、こんな話はどうでしょう。
このハム王子という役は演じるのが難しいとされていますが、それでも若い役者が演じたがるそうです。それも、自分の解釈でどっぷりととりわけ大袈裟に──そこから、表現力のない俳優を『ハム役者』と呼ぶようになったとか。東の国では、何やら味の薄い野菜の名前でハム役者のことを呼ぶらしいですが」
相手がグラスを持つと自分も掲げて、乾杯の仕草と言葉。
炭酸水で口を湿していれば場内の照明が半分程に絞られ、上演開始の鐘が鳴る。
冒頭は、王子が父王の幽霊に遭遇する場面だ。
そうして順次、彼の置かれている環境が描かれていく。亡くなった父王に代わって王室を継いだ現王は、王子にとっての叔父にあたる男だ。
つまり王女である王子の母は、夫の弟と再婚したということになる。
王子役の役者は演じて曰く、
『弱き者、汝が名は女』
と、母へと言い捨てる。
■アンネリース > 「そうなのでしょうか?でしたら場所が……」
この場ではどうしても上演が気になって話を弾ませるのは出来そうにないと少しだけ困ってしまい。
「えぇ、読書では何度も読みましたわ。
実際に演じるとなると本当に大変だと思いますわ。
それでハム役者ですのね」
そう言う理由があったとは思わずに驚いた顔を見せ。
そして彼がグラスを持ち乾杯の仕草をすれば小さく笑い。
飲み慣れない炭酸水を口に運んでいれば灯りが絞られ上演の鐘。
そして始まる内容についつい話をするよりものめり込んでしまい。
読むと観賞するではここまで違うのかと目を輝かせて。
■ビョルン > 「弾みすぎてもまずいということでしょうかね?
──大人の考えることはよくわかりません」
口元へと手をやり一息笑う。
「恰好いいですからね、若い役者ならやってみたいのもわかる気がします。
ですが本で読むのと演劇とは違うのでしょう」
それから横目に少女の表情を見ている。
本で読んだ戯曲が演じられているのを目にして、いたく感動しているらしかった。
暗転するタイミングを見済ましてすい、と婚約者の手に己の手を重ねて握りしめ。
舞台の上、王子は現王が父王を暗殺したのではないかと疑っている。
同時に、恋人であるオフィーリアのことも無論大切である故に悩みを重ねる。
身を捩る王子役の俳優は呟くように演技をする。
『生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ』。
また暗転する舞台。
静寂の間に許嫁の耳元へ向かい囁く。
「俳優ではありませんが、けれど王子の気分が少しわかる気がします。
ご存知かもしれませんが、私は父とも母とも血縁がありません──…」
■アンネリース > 「どうなのでしょうか?
お父様の考える事は時々に判りかねます」
普通に会える場を中々用意はしてくれない。
しかし唐突にこういう事があるので判らないと…。
「やはりそうなのですね。
でも本当に違いますから面白くて」
こんなにも違うと知っていればもっと興味を持てば。
今まで演劇に興味がなかった事に後悔し、そして上演に認めれてしまい。
そして暗転すれば次はどのシーンなのかとドキドキとし、
突然に手を握りしめられると驚いた顔で彼を見て。
そして続いていく劇を彼に手を握られたまま観賞しては時折に彼を見てしまい。
「えぇ、存じております。
やはり……そういうものなのですか?」
■ビョルン > 「うちはほぼいつも養父の考えがわかりません」
おおかた同じ時間に、婚礼についての折衝交渉などしているのかもしれない。
ならば当事者たちは監視つきの元、態よく人払いされたことになる。
「そうでしょう。
演劇化されたら絶対見たいと思うような、お勧めの本などありますか?」
驚いて見上げる視線に暗い中、笑顔を見せる。他の相手には見せにくい表情だ。
視線を交わしたまま、囁きを続けて。
「血盟だ、血の契りだと言いはしますが血脈で繋がることはない一族なのかもしれません──…。
人並みの幸せをあげられないかもしれない、それでも嫁いで頂けますか」
上映中なればこそ、看視者にも他の席にも声が漏れ聞こえることはないだろう。
囁く声で問いかけへと繋いで。
■アンネリース > 「やはりどこの親でも同じなのでしょうか」
彼の父もそうだと聞くとどこもなのかと考えてしまい。
今日のように急に時間をと言う気まぐれにも判らないことだらけ。
「お勧めですか?そうですね…いくつかあります」
驚いた顔は彼の顔を見れば直ぐに安堵の表情になり笑みを見せ。
お勧めの本と問われ、いくつかのタイトルを小さく囁いて。
「私は血の繋がりよりも家族愛の方が大事だと思います。
ビョルン様のお父様は私にはいい人だと思えますわ。
こうして私の知らない事を教えてくださって、楽しい時間をくださいます。
私はそれだけで十分ですわ」
その言葉に勿論ですと小さく囁いて。
■ビョルン > 「この国では、親が居るだけましかもしれません」
そう言いながら、己には血縁者もわからず養父とも同居してはいない。
実質は孤児とは変わらないわけであったが。
いくつか挙げられる本のタイトルには頷いてから探してみましょうかと嘯く。
そうして聞いた少女からの返事にはそこかほっとしたような笑みに変える。
「家族愛。
──それはきっと、本や大人の話からは得られないもので……生憎と、私がまだ持っていないものかもしれません。
それでも勿論と、言って下さいますか」
場面が変わる合間合間に耳元で囁いて繋げた言葉はまたも問いかけ。
今は隠居した育ての親や、義妹の姿も一瞬脳裏をかすめ。
■アンネリース > 「そうかもしれませんわね」
時折に馬車から見る光景はあまり良いと言えるものは少ない。
それだけに親がいるという自分は幸福なのだと思ってしまう。
お勧めした本はどちらかと言えば女性向けも多いので彼が気に入るかは不安。
「そんな事はないと思います。
それにもし…そうでしたら私と一緒にそれを知って持って欲しいと思います」
耳元での問いかけにでしたらとそんな提案。
そしてあなたでしたら大丈夫ですと笑って。
■ビョルン > 自分たちのような極道者が孤児を若干は、増やしているかもしれない。
だが、大半はこの国の歪の間にそうした不都合が起こり得ることの方が圧倒的に多い。
己はどちらだったのだろう。
「本当に小さな頃から、きょうだいのように一緒に育った人間が1人、います。
いつか、会うことになるかもしれませんね?」
いつか、と言葉を繰り返して少女の手をぎゅっと握る。
許嫁の鷹揚な返答に胸が温かくなる思いだが、ふと年上の矜持なるものが心中で存在を主張し始める。
続けざま耳元で、
「今度は初めてを下さい──」
明らかに困らせるような囁きひとつ。
握る手の温度を確かめながら、観劇は続く。
■アンネリース > この国では強者と弱者がはっきりとしている。
そして油断すれば強者も弱者になってしまう危うさ。
それだけに孤児は自分が知る以上に多いのかもしれず。
「そう言う人が居るのがうらやましいです。
私はそう言う方がおりませんから。
えぇ、ぜひお会いしてみたいです」
そんな人が居ると聞けばうらやましそうにしてしまい。
彼は本当に自分が知らない事を知っていて、持っていないものを持っていて羨ましく。
「あ、あの…それは……」
そして突然の言葉に真っ赤になり顔を俯かせ。
その後は観劇を楽しめないほどに動揺してしまって…。
■ビョルン > 明らかな動揺、見て取ればふふっと含み笑いが口を割って出る。
大人げないことにこちらもまだ18歳の少年である。
舞台の幕が下りるまでとりとめのないことを囁きあって手を握り合って過ごす。
上演が終われば馬車の近くで恭しく礼をして見送れば、帰路へ。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/王立劇場」からアンネリースさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区/王立劇場」からビョルンさんが去りました。