2019/08/19 のログ
竜胆 > 「だったら、ベッドの上で、ちょっとしたおねだりでも、良いのよ?」

 私に対してのアプローチなら、それでもいいの、と少女はウインクを。
 身目麗しいとか、そういうのは別に気にしないし、内面は、知っているから。
 貴女のような子が、頑張ってお誘いをかけるなんて、とても興奮するわ、と。

「ふふ、どういたしまして。
 モリィ、好きよ。」

 素直に言う彼女に少女は軽く笑って、言うのだ。
 自信を持つだけでも、もう少し輝くのよ、と。

「詳しくは、家で教えてあげるわ。
 まあ、簡単に言えば、私の竜としての力、よ。」

 魔法ではないから、魔力は動いてないのと。
 説明しない理由は今は言わないが、後でちゃんと教えてあげるから、と。

「いいえ?だって、モリィは仕事があるんだもの。
 それに、魔術の勉強もしているわ、知らないのが不勉強?そんなことはないわ。
 魔術の勉強していて、魔術を知らないというなら不勉強と言っていいけれど。
 畑違いの事を知らないのは、不勉強とは言わないわ。」

 穏やかなものが良いというなら、こっちの劇場の方がいいかしら。
 くっついたままで行く劇場の中。
 上の階の特等席をしれっと買って、そこに座る。
 他の人の邪魔の入らないいい席で、彼女の手を握って鑑賞するのだ。

 演目は彼女の要望通り、喜劇だが、穏やかな笑いの多いものを選んだ。

モリィ > 「ベッド……って、もう。まだお昼ですよ?」

 まずはそこから……と言うにはふつうのアプローチより難度が高そうだけれど。
 でも、竜胆が喜ぶなら一回頑張ってみるのも良いかもしれない。
 ……いや、でもうーん。考えるだけで恥ずかしいですよこれ。

「私も好きですよ、竜胆」

 お返しとばかりに笑い返して好意を伝える。
 好き、と言うくらいならば、頬が熱くなるけれど言えるようになった。
 これも彼女がくれた自信のおかげだろう。

「もう……おだて過ぎです。私は本当に物知らずなんですから」

 仕事のことと魔法のことと、それすら詳しく知っているとは言えない。
 竜胆と比べれば大人と子供ほどに知識の量に差があるだろう。
 だから竜胆がいろんなことを教えて下さいね、と頼むのだ。
 貴女色に染まっても構わないから、と。

 そんな話も、劇が始まれば口を噤んで一度途切れてしまう。
 楽しくも穏やかで、自然に笑顔になってしまう劇。
 個人の趣向だけを言えば、英雄譚のような格好良く多少激しいものが好きではあるのだけれど。
 でも今はこういうものがいい。お医者様もこういう穏やかな芸術に触れるのがいいと仰っていたし。

「ありがとう、竜胆……とても素敵です」
 周りに聞こえないように、耳元に囁いて微笑む。

竜胆 > 「あら?まあ、姉ではないけれど、私だって、昼間だろうが夜だろうが。
 愛おしい嫁と愛し合うのは、好きなのよ?」

 お昼間だからセックスしないという理由にはならないもの、好きな人を求めたいと思ったら、求められたら、いつでもどこでもウェルカムなのよ。
 少女は、厭らしく笑って見せる。
 お外だって、良いのよ?と。

「ありがとう、モリィ、そういうのでも、良いのよ。」

 先程の積極性に関して。
 自分から、好きを伝えてくれる、それだって、積極といえるだろうから。
 よくできました、と頬をなでなで。

「おだてたつもりはないけれど……?
 自分の生活に必要な知識があれば十分とおもうし。」

 彼女は何事も、自分に対する自信が少ない、それは性格なのだろうけれど。
 卑下しすぎにも思う。けれど、もう少し見守っていこうと思うのだ。
 だって、彼女には向上心があり、今の言葉の通りに教えを求めるから。
 だから、知っていることを色々教えて、そのあとに、決めてもいいだろう、と。

「――――モリィ。
 貴女が望んだから、私は、此処に来たのよ、始めてね。」

 彼女の囁きに、小さく返す返答。

 そう、自分一人では絶対に来ることのない劇場。
 彼女の望みがあったから、此処に来た、それは、凄いことだと思う。
 貴女が、私を変える。
 もう一人の嫁も、私を変えるけれど。
 彼女は自分が思うよりもすごいことをしてるのよ。
 と、言葉に出さずに笑って、見るのだ。

モリィ > 「私だって嫌いじゃないですけど……でもそういうのって夜のほうが……」

 自分は結局何処まで行っても人間の感性でしか居られない。
 竜である彼女の奔放さにはときおり置いていかれそうになるけれど。
 でも、私は竜の妻であるのだからその自覚をもう少し持とう。
 まずは求められたら日中でも……外は絶対ムリなので断固拒否するとしても、そこからはじめよう。

「んっ、もう……竜胆ってば」

 子供をあやすように頬に触れる愛しい人。
 だから好きなのだ。彼女は褒めてくれる。それだけで満たされるのだから。
 ちょっと子供扱い過ぎる気はしないでもないけれど。

「……? そうなんですか? ふふ、じゃあ竜胆のはじめてを貰っちゃったんですね。嬉しいなあ……」

 彼女の言葉に秘められた意味を悟ることは出来なかったけれど、素直に自分よりずっといろいろなことを経験してきた彼女のはじめてを一緒に経験できたのだったら、それは嬉しいことだ。
 また一緒に沢山の初めてを経験していきましょうね、と重ねた手を軽く握る。
 この後彼女のお嫁さんになる、私と同じ想いを胸に抱いた女の子たちに、皆で分かち合って愛し愛されるのだからせめて彼女の初めてくらいは多く貰ってもいいでしょう? と言い訳をして。
 そんなちょっぴりの独占欲を掌に込めて、指を絡めてはにかんだ。

「それで、ですね」

 劇も終わり、お客もちらほらと退席していく中、彼女の手を握ったまま立ち上がらずに、じっと竜胆の目を見て呼びかける。
 秘密にしていたわけではないけれど、なんとなく勇気が持てなくてハッキリと言えずに居た。
 デートのおかげで漂ういい雰囲気の力を借りて、ここで言ってしまおう。

「……聡い竜胆のことだから気づいていたかもしれませんけど、その。……出来ました。此処に、あの……」

 ――ぽつり、と。少しだけ厚めの柔らかな脂肪に包まれた下腹を撫で、竜胆の様子を伺うように。

竜胆 > 「ええ、モリィは……いいえ、人間は夜に性的に興奮するのよね。
 暗くて、ひそやかに、秘めやかに交わるのが良いのだと。」

 自分も人の血が流れているし、それは解らないでもない、でも、昼間からすることの背徳感もまた、少女は好きなのである。
 とは言え、無理はしないつもりなのだ、彼女ばかりに負担を求めるのは良くないだろう、と。

「なにかしら?」

 自分の名前を呼ぶ彼女は何かしら言いたそうで、しかし少女はそれをスルーするように、首を傾いで問いかける。
 判っているけれど、止められないのである。

「ええ、これからも、モリィはいろいろとしてくれるのだと思うわ。
 私に、色々教えて、くれるのだと。」

 彼女の感覚は、一般的な人の感覚、自分の持っていない感覚。
 彼女を通して、自分もまた学んでいくのだと思うのだ。
 一緒に経験していくというのも悪くないわ、と手を握り返して。

「―――最高よ、モリィ。」

 子供ができた、と言う言葉に、少女は嬉しそうに目を細める。
 視線は彼女の下腹部に、まだ、膨らんでいないその場所へと。
 だから、休職していたのね、と得心が行った少女。

「愛してるわ、モリィ。」

 少女はそう囁いて。
 そして、連れ立って劇場を出るのだ。
 彼女と、新たな命を共に。

 デートは、続くのだった――――

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2【イベント開催中】」からモリィさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2【イベント開催中】」から竜胆さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2【イベント開催中】」にホウセンさんが現れました。
ホウセン > ”夏の気候にも合う、良い装束はないか”
そんな相談を持ち掛けられるようになってから、半月少々が過ぎた。
今年の春頃から盛り上がりを見せているシェンヤンムーブメントの余波。
北方帝国への興味を誘引する作用を伴い、彼の国の装束に興味を持った王国民が間々居り、その一部が季節に合わせた物を欲しているらしい。
着飾ることに存在意義を見出しているような道楽人なり趣味人は、どの階級にもいるようで、今宵はある貴族の家に呼び出された模様。

「需要は見込めておったが、こうも立て続けじゃとのぅ。
 魚が釣れねば愉快ではないが、何もせずとも勝手に引っかかるというのは、これはこれで興がないのじゃ。」

取り扱う物は多岐に亘り、商人自身も一つの見本たれと、出身地近くに伝わる衣装に袖を通している。
目立つ顔立ちを計算して、あえて地味な寒色を用い、さして目立たぬ柄の浴衣。
其処彼処に切れ目があり、多少なりとも通気性は良いのだが、王国風の夏装束の方が快適やもしれぬとは、決して口に出さずに。
商談が終わって、平民地区の定宿への帰路につこうという頃合。
馬車を用意するとの厚意を謝絶し、大きな鉄門扉が閉ざされるのを待ってポテポテと歩き出す。
大股では色気がないと、心持ち小股に。
どの道、夜中に子供の一人歩きは、悪い意味で目だって仕方がないというのに。

ホウセン > 颯爽と肩で風を切るには及ばず、さりとて草履であっても歩調に危なげなく。
試しに卸した幾つかの取引先からは、靴よりも保持する部分が少なくて歩き難いという話も聞こえてはいるが。
その辺りは、履き慣れているの一言で片付いてしまう。
その”慣れている”に至っている期間が、人の寿命の内で語れるような尺度であるかは別にして。

「ま、贅沢な悩みじゃというのは理解しておるが、情ばかりは如何ともし難かろう。
 故に、真っ直ぐ宿に帰る予定じゃったが、寄り道を欲するのも、これまた如何ともし難いものじゃ。」

富裕街だけあって、夜間とはいえ通り沿いに設置されている街灯のお陰で、見通しは良好。
少なくとも、貧民街の路地裏のような暗がりとは縁遠い。
区画も整理されているようで、真っ直ぐ伸びる通りの先には、見回りの衛兵と思しき人影も見える。

「…じゃというのに、ここいらの治安も悪ぅなっておるというのじゃ。
 結局は、関わる人間の善し悪しに左右されるのは仕方の無い話しかのぅ。」

犯罪の温床となる要素が軒並み見当たらぬというのに、強盗に遭っただの何処かの令嬢が攫われただの。
そういった話が、世間話や噂話の類として耳に届く。
王国が末期状態だというのは重々承知しているが、人心の乱れは斯くも広がっているのかと。
そこまで理解しながら、無防備そうに、供回りも付けず歩く羽振りの良さそうな子供。
身包みを剥いでください、攫ってください、売り払ってくださいと言わんばかりの鴨が葱を背負っている有様。
見せ餌というまで露骨に期待はしていないが、邪な輩が現れれば突いて遊んでやろうかぐらいの心地ではある。
尤も、善良な人間が童の軽率な振る舞いを諌めるべく、声を掛けてくるかもしれないけれど。