2018/12/27 のログ
アデラ > ソファの横のテーブルに皿が置かれて、果物が幾つか乗せられる。
当然これも店の商品で、どこかの客が高い金を払って注文させられたものだ。
とは言えここに集うのは、金と暇だけは有って相手の居ない富裕層。
ささやかな無駄銭も財力の誇示と、寧ろ悦んで金を払うような客ばかり。

「ふーん……悪くないわね」

葡萄の房から実を一つちぎって、皮を剥き、口の中へ。
素直な褒め言葉こそは出ないものの、美味に少し目を細める。
唇の端も僅かに持ち上がり、甘さを愉しんでいるのは明々白々の顔となって――
少しの間、無言で葡萄に手を伸ばしては、ひとつまみ、ふたつまみ。

「……あら、もう無くなっちゃった……つまらないの」

気付けば皿の上から姿を消している葡萄。
夢中になってしまった気恥ずかしさを誤魔化すように、またソファの上にふんぞり返った。

アデラ > やがて夜は更けて――少女は突然、びくんと身体を跳ねさせ、ソファの上に起き上がった。

「……今、何か、すごいおっきな鳥が飛んできたような……」

夢だ。暖かく薄暗い空間で過ごす内に、気付かぬ内に寝落ちていたのだ。
このまま横たわっていてはまた眠ってしまうと、目を擦りながら立ち上がり――
そして少女は店内を見渡す。眠ってしまう前より人数は減ったが、まだ幾人かが残っている。
その内の一人を横柄に手招きし、彼女が近付いて来たならば少女は言うのだ。

「眠気醒ましには良さそうね、貴女」

二階に用意された寝室へ、跳ねるような足取りで向かう。
今宵もまた家には帰らぬままとなるのだろう。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からアデラさんが去りました。