2018/12/03 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にアデラさんが現れました。
アデラ > ――そこは、紳士淑女の社交場と銘打たれた、とある地下の酒場だった。
僅かな飲食物と、後は場のみを提供する。そこで何が起ころうが店は関与しない。
そういう約束事の上で、決まり事を弁えた富裕層達が夜ごと乱痴気騒ぎに興じる場。

「ふー……っ、この格好は、嫌いじゃないけど……」

今はその一画に、珍しい花が飾られていた。
四肢を革の枷に繋がれ、枷は鎖に繋がれ――それによって天井から、半ば宙づりになっている少女。
少女の身体を覆うものは、脚と腕に纏う黒の薄布ばかりで、それ以外に秘すべき部位は全て曝け出されている。
店内の熱気が故か、それとも周囲に集まる女性客達が戯れに触れた故か、その身体はうっすらと汗ばんでおり――

「喉が渇いたわ。誰か、お水をくださいな」

鳥の雛が餌を強請るように口を開けると、周囲の女性客のひとりが、コップの水を口の中へ注いだ。

アデラ > コップが傾く。中身の水が、少女の口の中へと注がれていき――

「ん、ん、っ……ぷっ」

唐突に少女は、口内の水を噴きだした。
距離の関係で必然、それは餌付けするようにコップを構えていた女性の顔を酷く濡らす。
その女性は少しの間、呆然と立ち尽くしていたが、やがて少ししゅんとした様子で席へと戻って行く。

「やっぱり、お水じゃないのが良いわ。甘いお酒をちょうだいな。
 ……でもね、そんなつまらないコップを持ってこないで。私は今、不機嫌なのよ?」

天井から吊された花は、そんな風に我が儘を言う。
この夜の趣向はこれだった――つまり理不尽な要求を向けてくる少女を、誰が最初に満足させるかだ。
幾人かが〝次の課題〟の参加の為、見栄えの良いグラスを探し始める。その様子を少女は、物足りなそうな顔をして眺めていた。

アデラ > やがて――この遊びの参加者のうち数名が、グラスの美しさを競っては、一蹴されて。
何が正解だろうかと、しょげながらも遊びに興じていると、その中のひとりが立ち上がった。
彼女は、吊された少女へと近付くやその顔を掴み、上を向けさせ――酒瓶を逆さにして、中身を一滴残さず少女へと浴びせた。

「ぶっ……ぐ、待っ、っか、は、ぁ、っ――」

むせるような度数の強さの酒が、少女の顔を洗い、鼻や口から呼吸器へと入り込む。
その暴力的で、かつ侮辱的な行為に、少女がどう機嫌を損ねるかと懸念する者もいたが。

「……ふぅ、ぅ……っふふ、あなた、ちょっと今の素敵だったわ……」

そう少女が告げた時、店員のひとりが、酒瓶を手にした女性へと小さな鍵を差出した。
少女を繋ぐ枷を外す為の――そうしようと思えば針金でも真似できそうなちゃちなものだが――鍵。
今夜の遊びの勝者に、他の参加者が快く拍手を送る。
その様を〝景品〟は吊されたままに眺め、やがて伸びてくるだろう手を期待して身動ぎし、鎖をしゃらりと鳴らした。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からアデラさんが去りました。