2018/10/29 のログ
ご案内:「富裕地区・石箱」にアデリーナさんが現れました。
■アデリーナ > 「うひゃひゃひゃひゃ! やっちゃえベルセルクモード!」
王都でも有数の不気味スポットと名高いクルシンスカヤ魔導技術研究局。
窓のない巨大な石の箱、と形容できる建物の外は、
富裕地区でありながらイカレ研究員どもの玩具が日々爆発四散する実験場となっている。
そんな実験場、街からもフツーに様子を伺い知れるグラウンドで、ゴーレムの肩に腰掛けて爆笑しながら風を切る少女。
巨躯のゴーレムはちょっと気持ち悪い速度で走りながら、進路上で槍や剣を突き出すゴーレムを「轢き殺して」いく。
「うひょーっ、こいつァいい! "制御がぜんっぜんできねぇ"こと以外は最強だな!
やっぱ僕天才じゃね! ベルセルクモード、生きて帰れたら制御できるくらいにダウングレードして新造ゴーレムに組み込も・
――僕生きて帰れるかなあこれ!!」
ゴーレムが疾走る。
止めようとするゴーレムが木っ端微塵になる。
少女は涙目で爆笑する。
――――なんだこれ、と思うかも知れないが。
残念ながらここクルシンスカヤ研では月に3回くらいこういう事故が起こるので、近隣住民の皆さんはもう慣れたものである。
最近は見物人にサンドイッチとか売ってる商魂たくましいおっさんとか出てきたしな!!
■アデリーナ > ――――事の発端は、魔導機兵の暴走事件に遡る。
現在確認されている古代式は、正常な動作をせず暴走状態にあるのではないか。
無論、暴走していることで性能が劣化している(主に思考が単純化したせいで「アホ」になっている)可能性が高いのは周知の通りだが。
じゃあ「制御されてる模造魔導機兵」を暴走させてみたらもっと弱くなるのか、それとも人間の制御の限界を超えて強くなるのか、
という酔っぱらいの与太みたいな議題から発展した実験は、暴走したことでリミッターが飛んで
とんでもなくパワフルになった模造魔導機兵が自壊しながら阻止にあたったゴーレムの半分を粉砕する、という結果をもたらした。
で、この魔導機兵とゴーレムに命を懸けるアホのトップは二度とこういう悲しい事故が起こらないように、という願いを込めて――
ゴーレムのリミッターを外し、暴走魔導機兵とやりあえる性能を引き出す術式を開発して実験用の大型ゴーレムに組み込んだのだ。
それでもってさあどんなもんかなって起動試験を試みたらこのザマだよ!!
――――走馬灯のように誰向けかわからない解説込みの一連の流れを想起する。
そろそろ肩にしがみつくのがつらい。
研究員ども誰か助けろよー。
見てる連中もサンドイッチ食ってねえでたすけて。
そろそろ僕しぬぞ、そらしぬぞ、いましぬぞ。
ご案内:「富裕地区・石箱」に影時さんが現れました。
■影時 > さて、――もう直ぐだったか?
最近携わっていた探索系の依頼を終えて、街に戻っては暫く休養しよう。そう決めて、散策がてら街に出る。
数件の店で軽く挨拶ついでに季節の食べ物を飲み食いし、ぶらりと何となしに赴く先は曰く付きの場所であった。
何やら、石棺だか石箱だか、頭のおかしい連中が日がな一日籠ってはよく分からないことをしている、という。
その話を聞きつけたのは、数刻前の飲み屋に集うもの好きが「今日もやってるぞ」やら聞いたせいだ。
仕方がない。興味が向いたものは見なければ気が済まない。
だってそうだろう。面白きと興が乗るのであれば、まずは一見に如かずだ。
歩いてゆく先に遠く遠く、見えて来る石箱という表現が似合う建築物。あそこだろう。
おりしも、何やら見物人が居る様子だ。
「おーっと、悪ィなあ。ちょいと邪魔するぜぇ、と」
すまんね、と。片手拝みなぞしながら人ごみの間をすり抜け、至る先は見物の最前列。
顎に生えた無精髭を摩りつつ、見遣るのは最近見慣れた魔導機兵に似て非なるものである。確か、ゴーレムというのだろうか。
兎も角、巨躯のヒトガタが異様な速度で驀進して、進路上の悉くを文字通り一掃してゆく。
凄まじいものだ。故郷に時折跋扈した鬼族など怪異や祟り神なども似たような猛威を振るったが、人間も此処まで至ったか。
「――……凄ェのは、いいんだが。ありゃ、不味くねェかい?」
見物するのはいいが――そろそろ。大丈夫だろうか。誰かに問うでもなく、零す。
巨躯の肩に居る誰かの影の気配をちら、と。目を向けて伺いながら思う。
暴れ馬に乗るよりも辛いんじゃね?と鑑みる程に。うーむ、と腕組みして。
「――おーい。大丈夫かー?」
是非もない。おもむろに声を放ってみようか。
■アデリーナ > 「これが大丈夫そうに見えるならその眼球丸洗いしてお脳の配線見直したほうがいいと思うけどォ!」
人混みから無責任に放り込まれた「大丈夫か」に中指立ててキレ倒す。
どっと笑い。いやネタじゃねーよ!! もはやお笑いの公演かなにかと勘違いしている近隣住民のみなさんは
いつか郊外の優雅な別荘地(最寄りの商店まで徒歩半日)に招待した後家を焼き払ってやる。
「あーだめだなんか脳に血が回んなくなってきた。今代の主任は歴代でも五本の指に入る間抜けな死に様だなァ……」
止めに入ったゴーレムを踏み潰しながら高速で反復横跳びをはじめた大型ゴーレムの肩の上で、いよいよもって死を覚悟する。
こんなことなら起動試験、ほかの研究員にやらせればよかったな――とか。
■影時 > 「ははははは、だよなァ」
そりゃ大変ご尤もである。思わずからからと笑ってしまう位に、だ。
生憎と丸洗いできる造りではないが、この節穴のような目で見立てるにそろそろやはり不味いだろう、と。
笑う声の影で冷静に、あるいは冷酷に見立てよう。
実際のところ、笑いどころではないのだ。当事者にとっては大変シリアスな場面であるのである。
「……――聞ィちまった手前があるからなぁ。
仕方が無ェか。あー、事後承諾で申し訳ないがね。ちょいと邪魔させてもらうぞ」
流石に見物人でこの状況を打開できる性能、能力は期待できまい。
ゴーレムとやらが何処まで何が出来るかというのは知らぬが、流石に斯様な状況での人助けは難しいだろう。
くしゃくしゃと己の髪を掻いて、吐き出す息は重い。だが、直ぐに表情を切り替えて、一歩。前に進む。
グラウンドを囲う柵やフェンスがあれば、足だけの動きで掻き消えるように飛び越える。
そう、不法侵入の現行犯である。
しかし、是非もあるまい。放っておけばこの面白そうな御仁が死ぬかもしれないのだから。
其の侭阻害がなければ、一直線に反復横跳びまでキメ始めたゴーレムの方まで駆け寄ることだろう。
■アデリーナ > 「お゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
視界が上下に激しく揺れながら左右に高速でスライドする。
馬車酔いなんて比じゃないレベルで食べたものがリバースしそうだけど今ここで戻したら全部僕が被るから意地でも吐くもんかよ!
見物人いわく大変にシリアスな場面であり、当人もそのつもりであるのだが、思考がイカれている都合緊張感はかなり薄いのがご愛嬌。
こんなだから近隣住民に娯楽扱いされるのだけれど。
足元が随分静かになって、どうやら阻止に出動した警備用のゴーレムは全滅したらしい。
うっへぇ、大損。コアの予備がまた足りなくなりそうだ。
もっとも、ここで死ねばコアを造ることも出来ないのだが――と、何かが敷地に飛び込んできたような、来なかったような。
おいおい危ないぞ、といいかけて止まる。
今一番危ないのは僕を載せたこのゴーレムだし、侵入者をしばきあげて蹴り出す警備ゴーレムは今しがた全滅した。
――つまり侵入者はノーガードで大切な研究所の隅々まで見れるわけだが
「流石にこの状況で泥棒じゃなくて僕を助けに来てくれたんだよな! な!?
よっしゃ、へそのあたりにコアがあるからこう、貫通する勢いで腹をぶち抜け!」
ぶち抜けったって、樹齢ン百年級の大樹くらいに太い胴体ではあるが。
――やってくれるって僕信じてる!! 誰かしらんけど!!