2018/10/08 のログ
キュリオ > 複数の男に群がられ、犯されている女の姿。
厳命により、精液はその体にも、胎内にも撒き散らされては居ない。
強制的に雌として体を嬲られた女を見て、舌を覗かせると唇を舐り。

後には、雌の鳴き声が響き続け――――

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からキュリオさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にアシュリーさんが現れました。
アシュリー > こつこつとブーツの踵を打ち鳴らして富裕地区の通りを歩く、白い装いの騎士。
見習い騎士故にその挙動は隙だらけだが、よくよく見れば付かず離れずを練度の高そうな女騎士が護衛している様子。

とはいえ、当の本人はそれに気づいておらず、精一杯隙の無さをアピールするようにキョロキョロと周囲を見回しながら街を巡視している。

ぽんこつ騎士見習いアシュリー、はじめての単独警邏である。
正直、ウキウキするのが2割、8割は心の底からビビって――なんていませんわよ!! ホントですわ!!

アシュリー > 「いひぃぇ!?」

夜の富裕地区に響く女の悲鳴。

「な、なんだ猫ちゃんですの? 脅かさないでくださいまし!!」

路地から飛び出した野良猫に腰を抜かしそうなほどビビる。
ふぅ、と目を閉じてため息を吐いて気を落ち着かせ、再び瞼を開いてふと見た横の壁に、トカゲ。

「えひぃぃぃぃっ!!!!」

この令嬢、ホントに貴族子女かってくらい騒がしい。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にノワールさんが現れました。
ノワール > 十二師団の本来の任務を全うすべく、とある屋敷を監視中だった。
この時間から取引される武器の密輸の情報、以前より集めていた情報をもとに割り出した。
それがここ、この屋敷で行われる取引であった。
十二師団のメンツ、約30名ほどで裏と表を固め取引の現場を押さえる。
すでに中には、一人おとりとして少し突撃馬鹿で正義感の強い部下を潜り込ませていた。
そして作戦はすべて終わり、今まさにその主犯を取り押さえて連行しているさなかであった。

『お、王国騎士団風情がこの私に…ガーベルライラの投手である私にっ!
刃を向けるなど…その意味が分かっているのか、貴様ぁっ!!
終わりだぞ、十二師団の糞どもが、終わりだぞぉぉぉっ!!』
「……終わるのは貴様らだ、阿呆め。
不正にティルヒアからの武器製造のための密輸、そしてその技術者を囲いあげての奴隷化。
罪状はあとできっちりとまとめておいてやるから、覚悟しておけ。」

大きな声で騒いでいる帰属を、今まさに十二師団が囲いあげて連れていくさなかであった。
少なく見積もっても、この貴族は没落確定だろう。
豪華に作られた家を肩越しで見やり、フルフェイスの向こうで肩をすくめた。
ひと段落ついた、とはいえまだまだ問題は山盛。
面倒なことだと悪態をつきかけたところで、なんだか騒がしい声が…。

「…………おい、ベル。ここは任せるぞ。」
『うぃっす、まああとは連れてくだけなんで。』

しかし、負けず劣らずの大騒ぎだな…。
何をしているのやらと、そちらへと向かった。

アシュリー > ぜぇぜぇと肩で息をして、トカゲがへばりついていた壁から離れた側を歩く。と、なにやら騒がしい物音。
あちらは確か、此処最近で急に裕福になった貴族の……

「事件かもしれませんわ。あるいは貴族の富を狙って押し入った不遜の輩かも」

お嬢様の正義感に火が着いた。
これ、そのまま全身に燃え移って大火事になるタイプの火である。
そのまま護衛が様子に気づいて止めようとする前に、貴族邸に向かおうとして――

「みぎゃーっっ!? お、お化けですわ――ッ!?!?」

夜道にぬっと現れたデカいフルプレートに遭遇し、失神しそうなくらいビビって腰を抜かす

ノワール > 「………あ?」

夜道で大きなフルプレートを着ているもの。
ああ、お化けに間違われても仕方がないかと思い、軽く頭を抱えた。
かくん、と首をもたげたが、仕方がないとフルフェイスの中でため息をつく。
腰に手を当てて、腰を抜かした人物に近寄って、かがみこむ。

「貴族のお嬢様が、そんなはしたなく大声をあげるものではない。
私はお化けでもなければ、魔族でもない。とりあえず落ち着け、そして深呼吸をしろ。」

ああ、この娘だったかというのは心の中の声。
どうも縁があるようで、こんなところでまた会うとは思ってもいなかった。
貴族街での出来事ではあるから、もしかしたらという淡い希望はなかったといえばウソにはなるが。

「貴族のお嬢様が、こんな夜更けに出歩くのは感心できないな。
屋敷を抜け出してのお散歩か、それとも家出か?」

アシュリー > 「しゃ、しゃべった……! 祟らないでくださいませ、わたくし誓って殺生は……ふぇ?」

目にも留まらぬ速さで平伏し、続けて掛けられた優しい言葉にきょと、とその顔を見上げる。
フルフェイスのヘルム。夜中に外で見るものではない。やっぱすごく怖い。
――が、この屈んで優しく声をかけてくれる感じは、少なくとも生あるものを問答無用で祟り殺してくるタイプのお化けではなかろう。
たぶん、きっと。怪奇小説では「かかったなアホが!!」してくるお化けもいるけれど。

「ち、違いますわ。今宵は一人で警邏を任されたのです。私はロンディニア家のアシュリー、騎士……見習いですわ!! そういう貴女こそそんな格好で、不審ですわ!!」

ずびしぃと人差し指を突きつけて師団長閣下へのこの物言い、世間知らずにも程があろう。
追いついてきた護衛の女騎士は、アシュリーに気づかれる前に急停止し、
鎧騎士の素性に気づいて一礼、後はおまかせしても? と視線で問うてすっと下がっていく。

ノワール > 「…………………。」

あの時も…そう、シスターとして昼間にここではない貴族街であった時も思ったが、この娘。
世間知らずにもほどがあるだろうと突っ込みたくなった。
貴族の中では悪名高い部隊を知らないとは。
それだけ俗世から離れさせられていたのか、それとも単純に聞いていなかっただけなのか。
後ろにいる後ろの騎士の様子からして、どうやらまだ知らないらしい。
フルフェイスの中で、苦笑を作っているのだが。

「ロンディニア家のアシュリー嬢、私も名乗らせてもらう。
王国騎士団、第十二師団団長。ガジュール・シュライゼン・フォン・ノワールだ。
アシュリー嬢の父上から名前くらいは聞いたことがあると思うが。」

あの女騎士も、面倒なことを押し付けてくれる。
まあ、疑われてもなんだしガントレットについている紋章を見せようか。
王国騎士団の証である紋章、それを上書きするように大鷲をかたどられた紋章。
これが王国騎士団、そして十二師団の証のエンブレムだ。

「仕事中で、この先の貴族の館を監視していた。」

アシュリー > 「………………………………」

おうこくきしだん。
だいじゅうにしだん。
だんちょう。
ガジュール・シュライゼン・フォン・ノワール卿。

「………………………………………………………………」

頭上にいっぱい浮かんだ「?」がひとつの大きな「!」に変わるような、そんなイメージ。
はっと目を丸く見開いて、しゅばっと土下座。

「も、申し訳ございませんでしたわ!! し、師団長閣下とはつゆ知らず……!
 な、何卒このご無礼をお許しくださいませ!!」

靴とかお舐めしますから許して!! と言わんばかりの激烈陳謝。
何しろ交易監査の十二師団。
完全に軍事一辺倒のロンディニア家にとっては敵対的な脅威ではないし、
むしろ庶民に還元されるべき富を不当に独占するものを打倒する彼らは好ましい。
他ならぬアシュリー自身も、将来の進路の一つとして漠然とした憧れを持っている部隊だ。

「そんな師団の団長様にわたくしなんて不敬なことを……!」

ぐすぐすと鼻を啜りながら額を石畳に擦り付けんばかりに謝る。
お仕事の邪魔をしてしまったかもしれない、というのも申し訳無さに拍車を掛ける。

ノワール > 本当にころころと態度の変わる娘だ。
面白いというのもあるけれども、何より汚れを知らなさすぎるくらい。
箱入り娘として育っていた印象を抱くには十分すぎる。
だが、そこに割って入るのは昼間のあの一コマ。
正義感の強さ、そして何よりも庶民を思う心。
それらを見ていなければ、おそらくそのまま何も言わずに帰らせただろう。
こっちを見ているあの後ろの女騎士に、無理矢理にでも押し返して。

「気高い貴族が、庶民に頭をこすりつけて謝るべきではない。
むしろ、お勤めご苦労と激励するくらいでちょうどいいくらいだぞ、アシュリー嬢。
早く頭をあげてくれ、でないと私が君の父上に大目玉を食らってしまう。」

しかし、名乗った時点で気づかれるとは思ったが。
やはりこの娘、気づいていないような気がする。
それが少しだけおかしくて、肩を震わせてしまうのだが…。
いや、ここは我慢するべきだろう、何しろまだ仕事中だ。

「ロンディニア家のことは、私も立場上耳に入れている。もちろんその娘のこともな。
武家の娘がそのように頭を下げては、父上の名誉にも傷がついてしまうぞ。」

それこそ不敬ではないのか、と私は思うと。
頭を揚げるまで、大女は屈んで頭を揚げるのを待っていた。

アシュリー > 「いいえ。確かにわたくしは貴族ですし、貴女は平民の出かもしれません。
 ですがわたくしも未熟と言えど軍籍を目指す身、であれば見習いと師団長の関係を崩すべきでは無いのです。
 平の騎士にすら満たないわたくしが将校に舐めた口を利いては、そちらの兵も不満に思うでしょう。
 ロンディニアの名誉より、軍の規律を。父もそう言うはずですわ」

未熟でも、腐っても、たとえ適正が疑問視されようとも。
己は騎士見習いである、と、立場を下に置く。
それがロンディニア家なのだ、と。

「とはいえ、無関係の者に見られて、師団長閣下にあらぬ噂が立つのも申し訳ありませんわ。
 お言葉に甘えて、立たせていただきます」

自らの我を通すだけでは、相手にも家族にも迷惑がかかるやもしれない。
先日街で出会ったシスターさまにそう教わった。確かシュライゼンさまと…………
………………………………………………………………
………………………………………………………………

「つかぬことを伺ってもよろしいでしょうか、閣下。
 ご家族やご親戚に、街で孤児院などしていらっしゃるシスター様がいらっしゃいませんか?」

ノワール > 「気にすることはない、私の十二師団は気の軽い連中ばかりでな。
舐めた口をきいたところで、笑って済ませる程度の連中だ。」

だから別にため口を聞いたところで、何の問題もない。
むしろどんどんいろんな話をしてくれても構わないし、不満を言うような連中ならもっと硬い部隊になっている。
貴族にあまりいい感情を持っていない、というよりも自分たちの力がそれを上回っている。
余程のことがない限り、不快に思うことはない。
そう、女は説明を続けた。

「シスター………?」

ああ、どうやら気づいたらしい。
いつもならここでごまかすのだけれども…この娘は気に入っている。
だが、まだそのときじゃないと判断していたが…。
何しろ、この娘は勧誘したいと…そう思っているくらいだから。
可愛いものにはどうしてもひかれてしまうのは、私の悪い癖かと心の中で独り言ちた。

「ああ、それは私の別の顔だな。
あまり口外してほしくはないので、内密に願いたいのだが…。」

女は、フルフェイスの仮面を外した。
その顔は昼間に見た、あの大柄のシスターそのもの。

アシュリー > 「では、わたくしが軍の立場に拘っても軽く許してくださいませ」

そちらが問題ないのなら、自分の流儀を貫かせてほしいと頼む。
柔らかな部隊だからこそ、貴族の不正にも斬り込むだけの機動性を持てるのだろう。
けれど、自分は貴族として、ロンディニアの次期当主として、この堅さを棄ててはいけないのだ、と。
そういう旨を、ものすごくしどろもどろになりながら、どうにか説明する。
やはり格上で憧れで強面の師団長閣下を目の前にすると、
半分くらい自分が何を喋っているのかわからなくなりますわね! これ!!

「別の…………はいっ、お約束いたします。この事はわたくし、墓まで……ってええーっ!!??」

夜の富裕地区に響く女の絶叫。
まさか本人だとは思っていなかった。
けれど、まずかがんで視線を合わせてくれる優しい仕草も、声音も、その体格も。
冷静になって見れば見るほど、あのシュライゼンさまだ。
そうしてヘルムの中から出てきた顔も、やっぱりシュライゼンさま。
いや、冷静に考えればこんなに長身の女性が富裕地区に二人も三人もいるのかというと、中々それはないのだけど。
でも、孤児院を切り盛りする優しいシスター様と、苛烈な師団長さまが同一人物とは思わなかった。

ノワール > 「ああ、できればそうしてほしい。…顔を見られることはあまりないからな。」

口調も変えているつもりだし、フルフェイスで顔を隠している。
だから自分の部隊以外は、この事実を知っている人間はそうはいない。
顔を隠しているのは、女だからと侮られるのを避けるためではある。
しかしもう一つの理由は、このことを他に知られるのを避けるためというのがあった。
貴族街に出入りできるシスターというだけならば、警戒されることも少ない。
さて、ここまで話してしまったのならば、もう包み隠すこともないだろう。
後ろで部下がこっちを見ているようだし、フルフェイスをかぶりなおして。

「さて…アシュリー嬢。実は個人的に、君に一つ提案がある。
君は、ロンディニア家の跡取りとして騎士を目指しているようだが…どうだろうか?
こんな形ではあるが、私の十二師団に入るつもりはないか?
何しろ女っ気がなくてな、後ろの狼どもが君の話をして、いたく気に入ったらしくてな。」

勿論私もその一人だ、と笑って見せた。正義感の強さ、そしてその気位の高さ。
騎士を目指そうという気持ちも痛いほど伝わっているからこそ、こちらが面倒を見るのも構わない。

「……私も君と同じ考えなんだ。」

アシュリー > こくり、と深く頷く。
十二師団はその荒々しい手入れでこそ有名だが、だからといって怪しきを無差別に吊し上げているわけではない。
その前の、入念な調査において、きっとあの「シスターのシュライゼンさま」は活躍なさっているのだろう。
その努力をわたくしが壊してはならないと、理解して承諾する。
と、シュライゼンさま……ガジュール卿の背後の騎士達に気づいて、一層気を引き締めて姿勢を正す。

「提案……ですの?」

ぴしと気をつけをしたところで投げられた意外な言葉に首をかしげる。
はて。わたくし如きに十二師団が何かを提案するような利は……
こんなとき、お兄様やシャーリィ……今日は非番の"はずの"お付きの女騎士ならば、答えをさっとくれるのだろうけれど。
いったい何を提案されるのか、と緊張で息を呑む。
ロンディニア家としての援助などであれば、お父様に口利きをしよう。
貴族の立場を活かしての情報提供者となれ、と言われれば不義理にならぬ程度に協力しよう。
さあ、なんでもおっしゃってみてくださいませ、と身構え――

「……………………へっ?」

続いた言葉は意外なもの。
ほしい? 何が? え、わたくしが? 師団長閣下直々のスカウト?
あっ。わかりましたわ、これ夢ですわねウフフ、わたくしったらもう。
自分がまだ騎士団入りには早すぎる貧弱技量なのはわかってるくせに、こんな都合のいい夢なんて見ちゃって。
ちょっと失礼しますわ、と瀟洒に微笑んで、自分の頬を思い切り抓る。

「ああーッ夢なのにとっても痛いですわ!?」

痛かった。涙でた。ほっぺたもげるかと思った。
……………………えっと、夢じゃない?

「…………あ、あのっ、ガジュール卿。そ、その、わたくし自分で言うのもなんですけれど、や、役立たずですわよ?
 きっととってもご迷惑おかけしますし……」

正直なところ、これはチャンスなのだろう。
わたくしごときの腕では、良くて家の騎士団でお神輿隊長が関の山。
それではお山の将軍様と何も変わらないし、偉そうに口だけ出すお飾りなんて嫌だ。
それなら平でも、現場の騎士になりたい。なりたいが、その道は遠い――はずだった。
けれど、まさかこんなところでその道が開けるなんて。
でも、そこに両手を挙げて飛びつくほど、わたくしはお気楽ではないのですわ。
絶対迷惑おかけするって自覚ありますもの!! 冷静!!

ノワール > まあ、予想している反応ではあった。
唐突に、しかも騎士団団長自らがスカウトするだなんてことはそうそう、いやまれにも。
万に一つもないことくらい、その立場である自分だからよくわかっているつもりだ。
だが、一度決めたことに、自分が信念を貫こうとしているものを。
このまま一貴族の、近衛兵やただのお嬢様で腐らせるのはもったいない。
今は腐っているこの国を変えるのは、彼女のようなものなのかもしれない。
…年より臭くなったな、と女自身も思うが。

「落ち着け、アシュリー嬢。もちろん君がまだまだ技術不足なのは私も承知だ。
だが、一貴族のところで私兵団としているよりも、現場に出ることを私は勧める。
何より、君は貴族が庶民に敬られるような存在にしたいんだろう?」

それは、今はきっと難しいだろう。
今なら言える、貴族の大半の圧政で庶民が苦しめられている現状。
そんな中で、徹底した一枚岩の十二師団は、私は君にとって最もいい師団だと思っている。
貴族の取り締まりは、きっといい経験になるはずだ。

「……ノワールでいい、アシュリー嬢。私は庶民の出だ、そんな堅苦しい言葉は好きじゃない。
…そして、君のその信念に私は惚れた。だから、私のところに来い。」

信念を守りながら、それを突き破れるだけの器量と技術。
そしてなによりも強い精神を、私のところで学べ。
そういって、女は右手を差し出した。

アシュリー > このまま父の元で鍛錬を積んでも、ロンディニア家の庇護下にある民には貴族のあり方を示せるだろう。
けれど、それは父や先祖が既に築いた道を、荒れぬよう手入れするだけ。
貴族に対して敵意しか持たない民に、正しく貴い貴族の在り方を示すことは、きっと出来ないだろう。
かと言って迂闊な部隊に仕官すれば、良くて左遷、悪くて取り殺されるかも……と、想像することくらいはできる。
であれば、このガジュール卿……ノワールさまの下で働くのはとても魅力的な道だと思う。

「確かに仰る通り、きっとわたくしは父の庇護下から離れ、現実を知るべきなのだと。
 それにはノワールさまの下で経験を積むことが、今選べる選択肢の中では最も安全で、最もよいものなのだと思いますわ」

だから、頷くべき。
その手を取って、道を定めるべき――

「ノワール様。ありがたいお言葉、お誘い、感激に堪えません。
 父の承諾も必要ではありますが、わたくし自身は……そのお誘いをお受けできれば、と存じます」

恐る恐る、右手を差し出し……そして、しっかりと握る。



――握手で良かっただろうか。跪いて手を取るべきだったろうか。
まさかこんなに早く機会が訪れるとは思っていなかったせいで、仕官するときの作法云々は後回しにしていた。
ああっ、わたくしの馬鹿……座学も大事だってみなさん仰ってたのに!

ノワール > 「………そうか。」

あいにく、そんな作法など気にするような女でもない。
だから握手で構わないのだ、これは個人的に誘っているだけなのだから。
正式な手続きや、その他もろもろはもう少しばかり先になる。
だからまずは、ロンディニアへ説明に赴くべきなのだろう。
騎士団団長として、正式に彼女をスカウトするために。

「ならばアシュリー、後日正式に、貴殿に我が十二師団への加入を通知する。
まずは見習いとして、先輩に多くのことを学ぶといい。あの後ろの狼どもだ。
勿論私も、知恵などを貴殿に授けたいと思う。
……君のその信念を貫けるように、徹底的に扱いてやるからな、覚悟しておけ。」

勿論、まだ早い判断であるかもしれない。
だが、経験を積むのに襲いも早いもあるわけじゃない。
騎士団長として、この信念が腐らせられる前に…鉄壁のようにしてやりたい。
そして、腐り切った貴族へ突き刺さる一本の剣に、してやりたいと思う。

アシュリー > 「はいっ! 先輩方にも多分にご迷惑をお掛けするかもしれません。
 いえ、きっとご迷惑をお掛け致しますが、ご指導お願いいたします!
 わたくしは貴族ですが、生まれの身分など関係なく正義を為される皆様のこと、
 一介の見習いとして指導鞭撻いただけるものと信じていますわ!」

姿勢良く敬礼。実戦を経験し、研ぎ澄まされた騎士達はきっと多くの学びを与えてくれるだろう。
ノワールさまを始めとする歴戦の猛者たちの教練は、本人の言う通りに覚悟が必要だろうな、と思う。
今のわたくしの貧弱な心では、泣き言を言って挫けそうになるかもしれない。
でも、ここで挫けるようでは理想を果たすなど笑い話未満の妄言だ。

「ノワールさまのお言葉を裏切らぬよう、そして正しく貴きものの在り方を示せるよう、このわたくし――
 フィリアルイゼ=アシュリー=ラ=ロンディニア、第十二師団の剣の一本となるべく奮起努力致します!!」

信じてくれた人の想いにも報いることが出来るように。
独りよがりな正義感だけでは脆くとも、誰かのためなら頑張れる。
ロンディニア家の貴族とは、そういうものなのだから。

ノワール > 男ばかりが集まっている十二師団、後ろの狼どもが悦んでいるのを肩越しに見やりながら、女も笑う。
いや、花があるとかそういう意味ではなくこういった信念を持った子が入るのは好ましい。
昼間に、会った時そのままの娘の頭を軽くポンと叩いてやりながら。

「ああ、せいぜい働いてもらうからな。
…さて、それでは今宵は私が家まで送らせてもらおう。
まずは君の父上を説き伏せて、正式に受け取ってもらわないとな。」
『あ、じゃあ団長さん、俺が送りますよ!』
『いや、俺が行きます、俺が!だって十二師団創設始まって以来のまともな女の子ですよ!』

部下のその言葉に、女は頭を抱えた。
きっと、歴戦の勇士などと思っているのだろうけれども、ふたを開けてみればこんなものだ。
オオカミという表現、あながち自分でも間違ってないな。
そう思えた瞬間だった。

「貴様らはまだ仕事が残ってるだろうが…。色目を使う前に、まず自分の仕事を片付けて来い。
アシュリー、多くを学べと言ったが…こいつらの団長を敬うことを知らない姿勢だけは学ぶな、いいな。」

こんながさつ連中に染めて、この娘までがさつになったら困る。
こいつらにも目を光らせないと、と仕事を自分で増やしてしまった気分だった。
かくして、十二師団に新たな騎士が加わることになりそうだが…。
それによってこの男どもがどうなるのか、今から考えると少しだけ気が重い団長であった。