2018/10/07 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にアシュリーさんが現れました。
アシュリー > 富裕地区の昼下がり。
ざっざっと隊伍を組んで巡回する警邏の騎士達の最後尾を、肩で息をしながらひぃひぃと追いかけるものがいる。
優雅ながらも実戦を考慮したスタイルの騎士にあって、ひたすらに優雅だけ追求したような白装束。
ひと目見ればお飾りとわかる少女騎士は、じわじわと行進の速度を落とし、ついには置いていかれてしまった。

「ひぃ、ぜぇ。ま、まってくださいまし…………置いてか、あぁ……
 …………置いていかれてしまいましたわ。ふー……休憩したら詰め所に帰りましょう……」

そこらのちょっとした段差に座り込んで、ふぅふぅと息を整える。
あるいは、行ってしまった先輩騎士の誰かが気づいて引き返してくれないかな、ときょろきょろ見回しながら。

アシュリー > 「……平和ですわね」

――見える範囲は、であるが。
富裕地区の、騎士が巡回するようなところは治安が良い。
けれど、そうでないところは果たしてどうなのか。
あるいは、治安などに欠片も関心を向けないような貴族が受け持っている地区は。

いや、もしかすれば騎士団が遠く離れれば、ここも平和とはいい難いのかも知れない。
道行く人々を思わず疑ってしまいそうになる思考を、首をぶんぶんと振って追い払う。

「まずはわたくしが民を信じませんと。
 善き民のための善き騎士として頑張るって決めたのですから!
 ……そのためにも基礎体力、からですわねぇ……はぁ」

まだまだ力不足。お手軽に強くなれたりすればいいのに、と横着なことも考えてしまうくらいには、未熟。

アシュリー > ぐぅぅ……とお腹が鳴った。
育ち盛りの身体が、運動の後で栄養を欲している。
恥ずかしい音を誰にも聞かれていないか赤い顔できょろきょろと周囲を見回し、
それからどこか軽食でも買える店はないかと周囲を見て

「あ。お財布は持って歩くと危ないからって、家に置いてきたのでしたわ……」

迂闊。いや自分が迂闊な自覚はあるし、だからこそ落としたりしないように置いてきたのだけれど。

――――まさか王都のド真ん中で、貴族たるわたくしが飢えることになろうとは。
親愛なるお父様、お母様。騎士団の皆様、謹慎中の護衛の皆さん。
それとどこに居るかわからない家出中のお兄様。
わたくしの恥ずかしい死に様をどうかお許しくださいませ……

と、多少小腹が空いてお金を忘れた程度で死を覚悟した絶望の表情で座り込み続ける。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にノワールさんが現れました。
ノワール > 神の教えを広めるため、というのはなかなかにいい言葉だとは思う。
貴族の中にもやはり、そういったことを巡視するものは多い。
が、それを素直に教える前にまずやるべきことが一つ。
あの欲望にまみれた連中にありがたい神の言葉よりもまず、神の鉄拳を食らわせるところから始めなければ。
それがいちいち面倒で、頭を抱えたくなる。

「そんなだから、孤児院で子供らの面倒を見たくなるんだよ…。」

ため息をつきながら、女はゆっくりと歩く。
修道服は動きにくい、けれども普段の生活には全く支障はない。
そんな、あきれ顔をしながら歩いていると、一人の騎士を見かけた。
座り込んでいるその姿は明らかに騎士なのだろうけれども…どうも様子がおかしい。
どうしたのだろうかと気になり、そちらに歩み寄った。

「…もしもし、そこの?何かあったのか…?」

そう、騎士のアシュリーの格好…?
いや、騎士というよりも騎士風の令嬢?に声をかけた。

アシュリー > 「へわっ?」

不意に声を掛けられて、間抜けな顔でその出処に視線を向ける。
まず思ったのが、「おっきな方」であった。
自分も結構な長身の部類だと思うし、実際に先輩女性騎士より背は高いことも多い。
けれどそんなちょっとした長身自慢なんてなんでも無いくらい、男性より背が高いかも知れない相手を見上げ

「し、シスター、さま?」

自信なさげにぽつりと問う。

「何か、といいますか……そ、その。お腹がすいたのと、小隊からはぐれてしまって……」

貴族として恥は隠すべきだろうけれど、聖職者には素直であるべきだろう、と事情を話す。
それにしても大きな方だなあ、なんてまじまじと見つめながら。

ノワール > どうしても、この高身長だと高圧的になってしまいがちになる。
だからだろう、相手と目線を合わせるようにするのは、癖のようなもの。
随分としょぼくれているのを見かねたのが理由だが。

「………はぁ!?」

まず、あきれるというよりもその言葉に驚いた。
騎士が腹をすかしてへたり込んでいるなどと、なかなか聞かない理由だ。
そして、その理由を聞いて、「あっはっはっは!!」と腹を抱えて笑った。

「ちょっ……姫騎士さまがまさか、腹を空かせてッて…!
こいつは傑作だ、あっはっはっはっは!!」

ひとしきり笑った後、女は立ち上がる。
まだその顔には笑っているような笑顔を見せながらも。

「ついてきな、姫騎士さま。
あいにく持ち合わせは少ないけど、少しくらいなら私が出してやるよ。」

アシュリー > 「わ、笑わないでくださいまし! ……たまたま、たまたまお財布を置いてきてしまっただけですわっ!」

ぷんぷんという擬音が似合いそうな、頬を朱に染めて不服を露わにした態度。
確かに自分でも情けなさすぎる現状だとは思うけれど、シスターさまがそこまで笑うことは無いじゃありませんの、と。
ただ、その笑い方は人を馬鹿にしたものではなさそうで、やはり聖職者の方は悪い人ではないのだろうと警戒を緩める。
体格差に気づいて屈んでくださったのも、優しさが滲んでいて好ましい。

「えっ……だ、駄目ですわよ。騎士……貴族たるもの、聖職者や平民の情けを受けるなんて。
 そういうのは貴族が下々に施すもので、逆は駄目ですわっ!」

貴族の誇りだなんだときゃんきゃん吠える一方で、
それで体力を消費した身体はくーきゅうとお腹を連続で慣らして早く何か食べさせろと訴える。
その度に顔に血が昇って、あっという間に耳まで赤く、涙目になって。

「だ、駄目ですけど……でも、その、あの。…………い、頂いてあげても、よろしくってよ?
 困っている人を捨て置くのも、貴女達には不道徳な行いになってしまうかもしれませんしっ!!」

あくまでこれは先方の立場を慮ってのことで、空腹を我慢できないからとかそういうのではない。
断じて。絶対。絶対の絶対に、違うのだ。

ノワール > 「はいはい、たまたま財布を忘れてきただけなら今度また、たまたま私と会った時に返してくれればいいさ。」

感情を押し隠して、ごまかすのは性に合わない。
体に見合った性格の女は、軽く右手を振りながら腰に手を当てて、先導するように先を行く。
治安のいいこのあたりならば、決して困ったことにはならないはずだ。
他の騎士団の面々も、貴族のお守をしているはず。
盗賊、強盗。そんなことをするよりもここでは金に物を言わせる貴族のほうが問題であるだろう。

「……へぇ、こいつはい驚いた。
あんたみたいな貴族様もいるんだねぇ、ちょいと感心したよ。」

目の前にあるのはサンドイッチの屋台。
庶民では手の出ないような値段だが、指をさして領収書に名前を書く。
そして、一瞥をしただけでサンドイッチを2つ、店主は出してくれた。
その片方、卵とツナが挟んであるものを差し出した。
勿論、私のおごりだよと付け加えて。

「そうだね、主様はきっと困っている人間を見捨てるなとお怒りになられるだろうさ。
だから、あんたには是非とも私にサンドイッチをいただいてもらわないとね。」

からかっているつもりは一切ない。
彼女がどういう立場なのかは、服装を見ればすぐにわかるからその誇りを傷つけるわけにはいかないだろう。
貴族が庶民に飯をご馳走するのではない、あくまで庶民が貴族への職務を全うする。
その艇を作り上げておいた。

アシュリー > 「たまたまでは駄目ですわ、いつ会えるかなどわかりませんし!
 わたくしはアシュリー=ロンディニア、ロンディニア家の長女ですわ。訪ねて来てくだされば、この御礼は必ず」

名を名乗れば、貴族である自分にたどり着くことは易かろう。目一杯誇り高く胸を張り、自慢げに名乗って――

本日二回目、置いていかれかけた。

先導するシスターさまにはぐれないよう、とことこと小走りに追走しながら、町並みを見る。
先日抜け出した時と違って、ここはかなり治安も良さそう。
こういった空気を、王都……だけでなく、王国中に広げていけるよう頑張らないと、と考えながら。
世間知らず故か、貴族の立場故か、同じ貴族に警戒するシスターさまほど用心もなくぽやぽやと不用心だ。

「ふふん、わたくしは貴族の責務を果たすことが出来る………………………………
 …………………………………………ように鍛錬の途中ですけれど。
 ごほん、そういうちゃんとした貴族なのですわ! 悲しいことに責務を忘れた貴族も多いようですけれど」

受け取ったサンドイッチは、我が家で料理人がお茶の時間に出してくれるものと比べても遜色ない出来だ。
と、いうことはきっと、結構な値がするのだろう。
貴族の立場や食の好みに合わせてくれたシスターさまの心遣いに感謝しつつ、敢えてそれを言うことはしない。
お礼をするときには目一杯、出来る限りのことをしないと、と胸に刻んで。

「神様がそう仰るなら、わたくしも拒むことは出来ませんわね。偉大な主とシスターさまの慈悲に感謝を」

簡単に祈りを捧げて、サンドイッチに上品に齧りつく。
はもはもと頬張れば、卵の甘みと魚の旨味が口いっぱいに広がって美味しい。
繊細、上品に拘った料理人の作と比べれば、やはりどこか荒っぽいというか、店売りの味だけれど。
でも、食べ慣れないその味が逆に新鮮で、空腹も相まってあっという間に食べ終える。

「とっても美味しいサンドイッチでしたわ。貴女に改めて深く感謝致します」

優雅に感謝の礼をする。
――その頬に、パンくず。

ノワール > 「…ロンディニア家……?」

女は頭の中で、その名前が記憶にないか考えた。
そしてその名前がすぐに思い浮かび、その家柄がどんなものなのかを思い出す。
いろいろと評判の”悪い”家柄だが、アシュリーを見ているとその評判もうなずけた。
軽く含み笑いを向けた後、軽く頭を下げた。

「…私はシュライゼン、本名は長いんでね、そう呼んでほしい。
孤児院で子供らの面倒を見ているシスターだが…こういう場所で主様の教えを説くこともたまにしてる。
だからかな…貴族の話はよく耳にするんだ。」

そういった貴族がまだ残っていることは、女としてもうれしい。
いろんな悪い噂が多い貴族階級だが、彼女のようなものがいる。
それが素直に、この国に在籍している身としては嬉しかった。

「……いや、アシュリーみたいな貴族がいるのは私もうれしいからね。
この出会いに、私は主様に感謝をささげ……って、ほら。
貴族様がそんなはしたない口元をするもんじゃないよ。」

女は、太もものポケットからハンカチを取り出した。
そのハンカチて丁寧に口元をふいてやり、笑みを浮かべる。

「そういえば、あんたが所属してる騎士団はどこの師団だい?」

アシュリー > 「シュライゼンさま、ですわね。
 家の者にも伝えておきますので、いつでもご都合のよろしいときにいらしてくださいませ。
 神の教えを説かれていらっしゃるのですね。わたくし、恥ずかしながら真面目に信仰をしてこなかったんですの。
 いずれ機会があれば、シュライゼンさまのお話を聞かせてくださいませね」

信仰は重要だ、とは思っている。
忠誠を捧げる王が不在の今、ふんわりと王国という大きなものに忠を尽くすより、神というはっきりしたものが支えにある方が強いのだろう。
思えば先輩騎士にも、信仰心の篤い方が多いなあ、なんて思ったところで、特に信仰の篤い――
――先日自分が撒いたせいで、謹慎を食らってしまった護衛の騎士を思い出して、考えなかったことにした。
代わりに、気になる話題に食いつく。

「貴族の話、とおっしゃいますと、どのようなお話が多いんですの?
 やっぱり魔を倒したとか、帝国の脅威を打ち払ったとか、領民に愛されているとか、そういうお話?」

で、あればいいな。と。
そうでないだろうなというのは直感でわかるけれど、少しでもそういう、よき貴族が話題に上がれば、民も安心するだろう。

「口……? はわ、あのえっと、これはたまたまでしてよ! 普段はこんな!!
 こんな、ないですから! 本当ですわ!!!!」

ハンカチで口元を拭かれて、はしたないことになっていたのに気づいた。
目を回しそうなくらい血が上った顔でぺこぺこと頭を下げて。

「…………えっと、ま、まだですわ。
 我が家の私有騎士団で、訓練中ですの。でもいずれは王国の正規騎士団に入って、護国の最前線に立ってみせますわ!!」

ノワール > 「あー……いや、やめておいたほうがいい。
貴族様の家に庶民が入ったとなると、確実にほかの貴族の攻撃の的になる。
角を立てたくなかったら、偶然を願っておいたほうがいい。」

少なくとも、生まれた時からこの王国で暮らしているから貴族と庶民の壁、というものは痛いほど理解しているつもりだ。
こうして偶然ならばいいものの、堂々と尋ねれば必ず何か角が立つ。
そこを警戒しておくべきだろうと、身分の違いを解いておいた。
頭を撫でながら…だけど。

「……………聞かないほうがいいよ、特に”この場所”ではね…。」

期待しているような話じゃない、暗に女はそう語った。
貴族と庶民の確執は根深いからこそ、聞かせるわけにはいかない。
特に…この貴族街ではそんな話をすればたちどころに反逆罪に問われてしまいかねない。
だから、人差し指を立て、口に当てて片目を閉じた。
これ以上は、私は言わないよと。

「そうかい、……なら、これからもこの国の民を頼んだよ。
私らは何かあったら、結局は騎士さまに頼むしかないんだ。
このサンドイッチは、そうなってほしい私からの依頼料として受け取ってほしいな。」

だから、いつか必ず立派な騎士になってくれ。
女は、笑顔を向けて総頭を下げた。

アシュリー > 「貴女がそう仰るなら、そのように致しますけれど……」

納得がいかない、お礼をするだけで攻撃されるなんて、と憤る。
まだ同じ派閥の、いわゆる「正義面をした」貴族同士の催しでしか社交界を知らない若さ故に、その可能性に思い至らなかった。
いや、当たり前の事をしてそれが糾弾されるなんて、という怒りは、
たとえどろどろとした本当の社交界を知っていたとしても抱いたであろうけれど。

「悲しいですわね。身分が違うのは必要なことです。庶民は貴族を支え、貴族は庶民を護る。
 そう在るべきために身分差があって、身分差が在るからこそ貴族は特権を得て命を懸ける責務を背負う。
 それだけの話ですのに、無駄に壁を高くしてしまって……あっ、もう。頭を撫でるなんて。
 それこそ見られてしまったらなんて言われるか……」

むう、と膨れるが、その顔は決して嫌そうではない。
そして、貴族の話を止めたシュライゼンさまを見て、やっぱりと顔を曇らせる。
ロンディニア家をよく知る領民や、王都の邸宅の周辺に住むもの、そして付き合いのある商人は好意的だけれど。
でも、そうでない人にとってはわたくしもお父様も、「貴族だから」と敬遠されていることに思い当たるフシは在る。
ならば、敢えて深く掘り起こすことはすまい。
ただ、いつか良い話題で憚ること無く誰もが貴族を語れる日が来ますように、と思うばかり。

「む、むぅ。わかりましたわ、高貴なる者の責務として、対価を納められたからにはやり遂げます。
 貴女や貴女の子供たち、貴女の神に危害を加えるものが現れたなら、その時はわたくしが――
 ロンディニア家が全力でそれを守りますわ。騎士として、お約束致します!」

とん、と拳で胸を叩いてお任せなさい! と格好つけようとして、けほけほとむせる。
格好のつかないものだが、約束はした。ならば一刻も早く正規軍の騎士になれるよう頑張らねば!

ノワール > 「……理想的なことだね、でも嫌いじゃない。
アシュリーみたいな騎士ばかりなら、この国はもっともっといい国だったんだろうけどね。」

正義感あふれるとはまさにこのことだろうか。
肩をすくめつつも、その理想的な価値観にはむしろ尊敬の念すらも抱くことが出来る。
撫でていた手を離して、女は少しだけ、悲しそうな眼をした。
まだ幼さの残るような井出達のアシュリーの信念をへし折ろうとする者がいないほうが望ましい。
が、それを楽しむ貴族を知っているからこそそんな表情にもなろうというもの。

「ふっ……ああ、わかったよ。約束だ。
もし何かあったら、その時はロンディニア家長女のアシュリー様にお願いするようにするよ。
だから、一刻も早く立派な騎士になってくれ。」

格好はつかない、けど女にはこれ以上なく格好よく見えた。
若いからか、それとも何も知らないからなのか…その理想的な姫騎士様は、とても輝いてみえる。
だからこそ、ほほえましくもあるのだが。

「さて…私はそろそろ孤児院に戻らないとな。
アシュリーも早く屋敷に一度戻ったほうがいいんじゃないか?」

こんなところで油を売っていると、怒られるんじゃないのかと。

アシュリー > 「ですからわたくしたちが頑張って、より良い王国を作ってくださる次期王をお支えするのですわ。
 きっとシュライゼンさまの孤児院の子が大人になる頃には、少しでもよき王国を」

こくり、と頷いて。約束を交わしたからには、一刻も早く見習いの外れる騎士になる。
このシスターさまに悲しい顔をさせないような、立派な騎士として民を護るのだ。
それまで、魔にも帝国にも、悪い貴族にも絶対に負けない!
……が、厳しい鍛錬にはたまに負けても構いませんわよね? とちょっとヘタレた。
そうして、改めて状況につっこまれ。

「…………………………………………あ゛」

そうだった。巡回に無理を言って同行した挙げ句、体力不足で置き去りをくらい、その上ルートを外れて買い食い。
絶対に怒られるやつ。ならば、せめて迅速に帰って、騎士団にも無事を知らせるべきだろう。

「そ、っそそそうですわねッ!
 ではわたくしはここでしつれいいたしますわ!!」

面白いくらい動転して、ぺこぺこと頭を下げてから来た道と逆方向に駆けていく。
しばらく進んでから逆方向に気づいて、くるっとターン――しようとして壁に激突し、おでこを押さえながら方向転換。
戻ってきて、今のを見られていると困るので格好をつけてごきげんよう! と挨拶をし直してから駆け出し――

すこーん、と小石に躓いてすっ転んだ。
泣きそうになりながら立ち上がって埃を叩いて、今度こそもと来た道を帰っていくのだった。

ノワール > 「慌てずに帰……あ。」

派手に壁に激突して、そのまま走り去るのかと思ったら今度は小石に毛躓いて…。
本当に騒がしい娘だと苦笑しながら、その背中を見送っていった。
肩をすくめながらも、私服姿の青年が近寄ってくるのを横目で見やり。

『なんか、騒がしい娘でしたねぇ。いいんすか、ほっといて。
せめて送り届けてやるとか、そういうことしてやったらどうです?』
「いや、放っておけ。…だが、なんだか自分の昔を見てるようだったよ。
ロンディニエ家のアシュリーか、うちにぜひとも欲しい逸材だよ。」

女は、笑って青年に話しかけた。
そこのサンドイッチ代、払っておいてくれと言い残して孤児院に帰っていく。
その値段に青年はげんなりした様子を見せつつも、しっかりと払ってくれた。

「…機会があったら勧誘してみるかな。ロンディニアのアシュリーか…。」

その顔は、なんだか少しだけ楽しそうだったとか。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からノワールさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からアシュリーさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にキュリオさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からキュリオさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にキュリオさんが現れました。
キュリオ > 富裕地区にある税収官の邸宅は絢爛豪華―――そして趣味が悪い事で有名だ。
豪華であれども荘厳さの欠片も無い邸宅には今日、ぽつぽつと人が訪れていた。

普段は税を自らの足で取り立てに参るのが常であるが当然、納められるのを受け取る時もある。
今日はそうした、自らの足で税を――或いは”善意で”援助を得た者が訪れる日。
とは言え、主自ら対面することは滅多と無く、部下に対応を任せることが殆どだ。

よっぽどの大物の来客か、或いは食指の動く女が訪れた際には、連絡を受けて自らが相対することもある、という程度。
中には税や援助の見返りの低減を願う代わりにと、生贄の如く何も知らされず――或いは奉公を言い含められて――代理として女性を送り込む輩も居る。
さて訪れる人物が相対するのは、果たして部下となるのか、館の主となるのか。

「…っち、特に目ぼしい者は来ておらんか。何かあったら連絡を寄越せ。
 儂は部屋で”仕事”をしているからな。」

訪問記録に目を通し、興味を引く名も、部下からの推薦も無いと知れば舌打ちを一つ。
なればと、部下へと声をかけ、仕事と言い放ちながらも寝室へと移動する。
今日、既に引っ張り込んだ女で発散しようという目論見だ。
さて、どこぞの女は己を愉しませてくれるものか。それとも、場繋ぎ程度の発散相手になるものか。

下男へと、適当に相手をしておけと言い含めておいてからもう暫く時間が経っている。
ぎぃ、と扉を開き寝室へと足を、踏み入れた。