2018/07/12 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にオフェリアさんが現れました。
■オフェリア > ―――時刻は昼下がり。照りつける太陽が、石畳の通りを灼く。
日差しは強く、気温は高い。時折吹き抜ける風が頬を撫で、移り変わった季節の香りを運んでくる。
夏の、或る日。高級店が立ち並ぶ区画に位置した、或るカフェテリア。
壁一面の大きな窓硝子から覗く店内には、何組かの利用客の姿が見て取れる。
気候に合わせた魔法具に拠る空調管理が行き届き、皆涼を求めて集うのだろう。
女の姿は、店舗の壁沿いに設けられたテラス席にあった。大きなパラソルが日除けを成して居るが、他にテラスを利用する者は居ない。
風に靡く金糸が一筋、揺れて頬を擽っていく。そっと持ち上げた指先で髪を耳へ掛け、先程から読み進めていた書物の頁を捲った。
繊細な彫刻が織り成す、美しいシルエットをした白いカフェテーブル。其処に乗るには聊か不釣合いな、分厚く古めかしい一冊の本。―――魔道書、と。一見して解る者は、恐らく多くないだろう。何せ、中身は遥か西方の何処か、亡国の失われた文字で埋め尽くされて居る。
■オフェリア > 書物に伏せられた白い貌はパラソルに陰り、一層元来の無機質さを際立たせていた。
店内の席を選ばなかったのは、空調に躯が冷え過ぎてしまうから。日差しさえ避けて居れば、今日は風が心地良い。そうした至る思惟さえ滲ませず、時折瞬きに上下する睫が、辛うじて其れ―ひと―らしい、だろうか。
カラリ、溶けた氷が琥珀色の紅茶を満たしたグラスの中で音を立てる。
其れに誘わた様にグラスを手に取り、一口喉を潤した。
指先に纏った水滴をナプキンに吸わせ、赤い眸が見開きの最後まで文字を拾えば、また一頁先へ。
カフェテーブルの上には、其の書物とアイスティー、そして後もう一つ、傍らに女の持ち物が置かれている。
何の飾り栄えもない、銀で出来たシンプルなプレートブレスレットだ。頁を捲る折、視界の端に銀色が留まる。
ゆるり、緩慢な瞬きをもう一度。数刻の間、女はブレスレットを見詰めて何かを思う様だった。―――眉一つ、口角一つ、表情にこそ、変化は無いが。
■オフェリア > 巡らせた思案に区切りを付けて。視線を戻した頁には、女が求めていた知識が記されていた。
昔―――どれ位かも曖昧な程遠い記憶だったが、見当違いに終わらず内心で安堵する。
読み慣れない文字で連ねられた魔法具の製法を読み進め、記述を最後まで見終えぬ内に直ぐ実施をと、逸る気へ抗い視線を走らせてゆく。
購入したアイスティー一杯、其れを飲み終わる迄は。
平穏を纏う貌の下に高揚を燻らせて、赤い眸で文字を拾いながら、馳せる想いは銀のブレスレットに集う。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からオフェリアさんが去りました。