2018/06/28 のログ
ヴィンセント・ミラー > 「俺もそう思うぞ。
まあ、他にも思うことはあるのだが単なる体制批判に繫がるからな。」

少女の言うことは男にとってはもっともなことであった。
それを咎めるつもりもない。
彼女が少しだけ距離を空けたことに気付いても追うつもりもなく。

「残念ながら大勢としてはそうなっている。
だが、うちは違う。
俺が居る部署はちゃんと犯人捜しを続けているぞ。
情報が少なくて難航しているのも事実だがな。」

男は自分たちがその小さな事を追っていることを強調する。
願わくばこれで彼女たちが身の危険を感じて活動を控えてくれることに期待して。

「だからな。 ミレー族のことを考えるのなら
テロ行為は無意味だと言っておこう。
もっと別の方法を探した方が良いな。」

少女がこちらに振り向き、名を告げると男は更に口を動かす。

「ツァナ。 行くところがないならうちに来るか?
俺の所のトップはこの街の近くで広い領土を持っていてな。
君が俺たちの仕事を手伝ってくれるのなら給料も入るし、
頑張れば俺みたいに騎士に取り立てて貰えるぞ。」

ツァナ > 「仕方ない。よ。
体制に向けて、言いたい事、言えない、なんて。
…何処でだって、良く有る事だし。」

(ましてこの国の事を考えてみると。
そういう側面はきっと強いのだろう。
小さく。それでも隠すつもりの無い露骨さで。溜息を零し。)

「ちゃんと、仕事してる人も。…みらー、みたいな人も。
居るって事?……そう。
………頑張って。」

(微妙に発音怪しかったが、取り敢えず、男の名前は覚えた様子。
同時に少し思案していた。
間隙が出来た事は確かで。けれど、一切の目が消える訳でもない、というのは。
当然の事なのだろうと。
取り敢えず、この近辺で請求に動くのは、避けて置いた方が良いと。
そう考える事にしたのは、目の前の男が理由なのだろう。)

「……………………」

(きっと。今までで一番長い、沈黙の時間だった。
男の言葉は決して悪くない、いや寧ろ、魅力的な誘いだったのだろう。
それこそ、迷ってしまうだけの。
だがそれでも。顔を伏せると、もう一歩、後ろに下がり。)

「でもね。
自分だけ救われても、嬉しくない。
……ありがとう。けれど、ごめんなさい。
それこそ、ミレー族の事、考えたら。
忘れられない。忘れちゃいけない。…救われなかった、人、たくさん居るんだって。」

(……だから此処に居た。
同じ星の聖猫派が、ではなく。同じミレー族が、どんな目に遭ったのかを知りに来た。
それは終わったから、そして、これ以上は迷うから。
とんとんと跳ねるように、バックステップ。)

ヴィンセント・ミラー > 「だな。
お互いこれ以上は不穏な発言は控えるようにしようか。」

男は大げさに肩を竦めて見せた。
やれやれと言った面持ちで。

「ああ、ちゃんと地味な仕事してる奴も居るんだぞ。
あんまり馬鹿なことしてるとしょっぴかれるから気を付けろよ。」

ニヤリと笑う男。
その表情は半分冗談、半分本気と言った所か。

「そうか。 心変わりしたらまた来てくれ。
俺のとこの上はいつでも歓迎してくれるぞ。」

今日はこれ以上互いに距離が縮まることはないだろう。
それが分かっているだけに、開いた距離を詰めることは無く。

男も次の現場へと足を運ぶのであった。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からヴィンセント・ミラーさんが去りました。
ツァナ > 「気をつける。取り敢えず、今此処で。
みら…ミラーに、捕まるのは。嫌だ。」

(こちらは、冗談ではなく、本気で口にした。
今は笑っていても、その気になったなら、きっと男は実行に移すだろうし…その時は容赦してくれないだろう。
同時に、今は言葉だけで留めてくれているのだから。
此方から、その均衡を破るのは。何というか、申し訳なかった。
一度離した距離を、少なくとも今夜は、そして此方からは、詰める事のないままで。)

「……………それは。その言葉は。」

(男の方が立ち去った。それを見送った後の言葉は、もう、届く筈がないと解っているが。)

「それこそ、無関係の、巻き込まれるだけの…
きっと、巻き込まれただけの、人達に。
取っておいて、欲しいな…」

(書かれていないだけで、居た筈だ。
巻き込まれて命を落としたミレー族の民達は。
死んでしまった者の分は背負うから。生きている人を、男の様な者達に、助けて欲しい。
願わくば、という祈りを、向ける相手もいないまま。
少女もまた、この場から姿を消して。)

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からツァナさんが去りました。