2018/03/26 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にエレイさんが現れました。
エレイ > ────夜。
表通りから外れた人気の無い暗い路地を、コツコツと靴音を鳴らしながら独り歩く、紳士風の人影一つ。

銀色と赤という一風変わった色合いのステッキを片手でくるくると回しながら、
シルクハットの鍔を摘みつつ時折辺りを観察するように眺め。
その整った顔には、今は考えの読めぬアルカイックスマイルを浮かべていて。

月明かりの下、サラサラと煌めく金髪をなびかせながら、男は独り言を漏らすこともなくゆっくりと歩を進めてゆく。

エレイ > 暫く歩き続ければ、やがて公園に辿り着く。
何処ぞの貴族が道楽で作ったというその公園は、富裕地区内の施設だけあって
綺麗に整えられており、昼間は貴族たちの長閑な憩いの場となっている。
その一方で死角となる場所も多く、特に夜ともなるとここは秘密の逢引場所と化す。

公園に足を踏み入れた男の耳に、何処からかかすかに情事の声が風に乗って届いてくる。
フ、と小さく笑うと、男はおもむろに手にしたステッキの石突でトン、と地面を小突いた。
その点を中心に、地面に一瞬、光の波のようなものが公園全体に広がり奔る。
然る後、男は首を動かし周囲を見渡して。

「──いやはや。皆さん夜中にお盛んなことですなあ……まああんまり人のことは言えんのだがね」

などと、肩をすくめて笑いながら独りごちる。……格好を変えても中身は相変わらずのようである。
それから遊歩道を少し歩き、やがて平民地区のものとは違った立派な装飾の施されたベンチに近づくと、優雅な動作で腰を下ろし脚を組む。

──さて、自分以外に一人でここを通りかかる奇特な人物はいたりするだろうか。
そんな事を考えながら、男は暫くそこに居座ることを決め込むのだった。

エレイ > しかし、今宵はそうした縁もないらしく。
やがて男はふ、と息を吐いてゆるりと立ち上がれば、しゃんと背筋を伸ばして悠然と歩き出し、一人公園を後にした。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からエレイさんが去りました。