2017/08/13 のログ
ご案内:「王都マグメール富裕地区 公爵邸」にルクレツィアさんが現れました。
■ルクレツィア > 瀟洒な外観の邸宅、明るい陽光が降り注ぐ其の部屋は、此の屋敷の主の為の執務室。
かつては夫が使っていた其処を、己好みの内装調度に変えさせてから、
未だ、数週間といったところか。
其の、新しいお気に入りの執務室の中、マホガニーブラウンの執務机の上で、
己はたった今認めたばかりの書簡に印籠で封を施し、机の向こう側、
憤懣遣るかた無い面持ちで震える若い女に、其れをつ、と滑らせてやり。
「さぁ、……此れを御持ちなさいな、わたくしからの推薦状です。
此れさえあれば、新しい職場など幾らでも見つかるでしょう、
………ですから一刻も早く、わたくしの家から出ていって下さいな」
此の若い女は1年ほど前から息子の家庭教師だった、けれど己は勿論、
彼女が夫の愛人、第何号かだったことを知っている。
今こそ冷やかな微笑と共に、彼女を此の屋敷から追い出してやるべき時だ。
彼女は何か喚き散らしているようだが、優秀な執事が素早く現れ、
彼女を羽交い絞めにして連れ出して行く。
ばたん、と閉ざされた扉の向こうのことは、もう終わったこと。
誂えの肘掛け椅子へ深く身を沈め、己は軽く仰のいて、深く息を吐いた。
―――安っぽい女の香水の残り香に、僅か、眉宇を曇らせて。
■ルクレツィア > 「……本当に、厄介なひと」
夫であった男のことを、憎んでいる訳では勿論無い。
けれど彼の人は余りにも奔放に過ぎ、余りにも多くのものを遺し過ぎた。
其の中で最も厄介なものは、あの女を筆頭とする愛人たち―――では無く、
己の、此の身体に刻まれた悦楽の記憶。
独り、残された部屋の中で目を閉じれば、内へ向かった意識は容易に、
胎の奥でじくじくと疼く欲望の種火を認識してしまう。
思わず片手でドレスの上から下腹を押さえ、もう一方の手で肘掛けを、
きつく掴んで衝動を堪えたけれど、きっと長くは続かない。
呼ばれなければ、主が独りで居る時、決して中へ入って来ない優秀な執事は、
其れでもきっと、部屋の中へ確り聞き耳を立てている筈。
程無くして女主人が自涜に耽り始めれば、果てる其の瞬間までを、
扉一枚隔てた次の間で聞き届けるのだろう。
或いは、彼もまた其の声を肴に、自らを慰めるのかも知れないが。
決して己には手を伸ばさぬ優秀さを、密かに呪う此の気持ちになど、
気づきもしないのだろう、と恨めしく思いながら―――
白い指先がそっと、秘められた肌を探り始めた、とか。
ご案内:「王都マグメール富裕地区 公爵邸」からルクレツィアさんが去りました。