2017/05/06 のログ
■シャロン > 思いの外響いた声は、周囲の注目を少女と彼に集める。
そして彼がこの場を辞去すると、視線の中心が少女にずれた。
こうなると、のんびり楽しんでもいられず、どこか居心地悪そうに周囲を探る。
自分の踊りたい相手はいるか、と言うよりもどこかに逃げ場はないかという視線の動かし方だ。
やがて、ホールに備え付けられているバルコニーを見つけると、人気を確認。
先客の有無は、多分いないという程度の把握。急いでいるのだから仕方がない。
かつり、とヒールを鳴らし、そのまま足早に、暗いバルコニーへとまろびでる。
途中でもう一杯、カクテルをいただくのも忘れずに。
「……うぅ、お貴族様のゲームには付き合ってられませんよ」
あれで誘いに乗れば、何人のダンスに付き合うことになるか。
踊り好きな友人は構わないが、少女からすれば面倒事以外の何物でもない。
こうして、会場から僅かに離れて、一人になった少女は外を見ながら嘆息する。
見える夜景の町明かりは美しく、わずかに火照った体には夜の風が心地よかった。
■シャロン > 最早、弦楽器の演奏もヴェールの向こう側。
今この場には、少女一人しかいないような錯覚すらあるバルコニー。
しんと静かな中に、遠くから町の喧騒が聞こえてくる。
平民地区は今夜もまた、酒場で晩酌を酌み交わす人々たちで賑わっているのだろう。
あるいは彼方、ドラゴンフィートも――そう、目を細めてみる先には、月に照らされた山体の影。
あのどこかに、密かに確かにある己の帰る場所を思いながら、夜が更けていく。
「……さて、もうこれで踊りに誘われることもないとは思いますが……」
しかし、あの広間には居づらいからどうしたものか。
逡巡すれば、その分だけ無為に時間が過ぎていく。
手元のカクテルも既に空っぽで、なんともなしに口寂しい。
そろそろ中に戻るべきか――中々悩ましい選択肢をちらつかされながら、恐る恐る中の様子を調べる。
気配を殺し、耳をそばだてるその仕草は、刺客もかくやというものだった。
■シャロン > やがて、隙を見つければ少女はそっと身を駆けさせて、奥の部屋へと入っていこう。
あとはそのまま、終わりの際を見計らい、友人とともにこの場を辞去することになる――。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2 クラブ」からシャロンさんが去りました。